基本情報技術者試験と応用情報技術者試験とは
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、IPA(情報処理推進機構)が実施するITエンジニア向けの国家試験です。
基本情報技術者試験は、IT分野の基礎的な知識と技能を評価する試験で、キャリアの初期段階に位置する人向けの試験です。プログラミングやネットワークなどの基本的な知識について幅広く問われます。
一方、応用情報技術者試験は、より高度な知識と実践的なスキルを求められる試験です。難易度は基本情報技術者試験よりも高く、ITエンジニアとしてのさらなるキャリアアップを目指す方におすすめの試験です。
すでにITエンジニアとしての経験を積んでいる方は、受験を検討する際にどちらを受ければいいか迷うこともあるでしょう。
この記事では、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験を受験したい方のために、それぞれの試験の概要を説明し、さらに、合格率や難易度に焦点を当てて違いを解説していきます。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の概要
まず、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の概要について説明します。また、基本情報技術者試験を飛ばして応用情報技術者試験を受験できるのか、ダブル受験ができるのかについても解説します。
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験は、ITエンジニアに必要な基礎的な知識やスキルを持つことを証明するための試験で、これからITエンジニアとしてのキャリアを積んでいきたいと考える方におすすめです。
IPAが主催するIT関連の国家資格にはスキルレベルに応じた4段階があり、基本情報技術者試験はレベル2に位置付けられています。
IT業界で働き始めたばかりのエンジニアやIT系の学生など、システム開発に関わる基礎的な知識やスキルを持つ方が対象の試験です。
実際の試験では、プログラミングやデータベースなどの基本的なIT技術をはじめ、AIやIoTを効果的に活用する能力が問われます。
基本情報技術者試験の試験形式は以下の通りです。
■科目A 試験時間:90分 出題形式:多肢選択式(四肢択一) 出題数・解答数:60問 / 60問
■科目B 試験時間:100分 出題形式:多肢選択式 出題数・解答数:20問 / 20問
【参考】:基本情報技術者試験
応用情報技術者試験の概要
応用情報技術者試験は、より高度なIT知識と技能が求められる試験で、ITエンジニアとして初学者の段階を終え、次のステップに進みたいと考える方におすすめです。
応用情報技術者試験は、IPAが主催する情報処理技術者試験の中でもレベル3に位置し、難易度は高めに設定されています。
ITを活用した戦略の立案や、信頼性の高いシステム構築を独力で行える人材が対象の試験です。
試験ではシステム設計や開発などのITスキルだけでなく、経営戦略やマネジメント、プロジェクト管理やリスク対策など、ビジネスシーンで求められる知識も問われます。
また、応用情報技術者試験に合格すると、ITストラテジストやシステムアーキテクトをはじめとする高度試験の午前試験が2年間免除され、高度資格へのステップアップに挑戦しやすくなります。
■午前 試験時間:9:30~12:00(150分) 出題形式:多肢選択式(四肢択一) 出題数/解答数:80問/80問
■午後 試験時間:13:00~15:30(150分) 出題形式:記述式 出題数・解答数:11問 / 5問
【参考】:応用情報技術者試験
基本情報技術者試験を飛ばすことはできるか
基本情報技術者試験、応用情報技術者試験はともに受験資格には特に制限がありません。そのため、知識やスキルに自信があれば、基本情報技術者試験に合格していなくても応用情報技術者試験を受験可能です。
ただし、基本情報技術者試験の受験から段階的に学習を進めることで体系的な知識やスキルを身につけられるため、一般的には基本情報技術者試験に合格してから応用情報技術者試験にステップアップするケースが多いでしょう。
ダブル受験は可能なのか
ある程度ITエンジニアとしてのキャリアを積んでいる場合、基本情報技術者試験を受ける際に、応用情報技術者試験にも同時にチャレンジしてみたい方も多いでしょう。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験にダブル受験という制度は存在しません。
しかし、基本情報技術者試験は通年受験可能であるため、毎年春期と秋期に実施される応用情報技術者試験と日程が重ならないよう調整すれば、短期間で両方の試験を受験することは可能です。
例えば、応用情報技術者試験の直前に基本情報技術者試験を受験することで、効率的に両方の資格に挑戦できます。
基本情報技術者試験の難易度と試験範囲
基本情報技術者試験の合格率から、その難易度について解説します。また、あわせて試験範囲も確認します。「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の分野で、ITに関する基礎知識が幅広く問われます。
基本情報技術者試験の合格率から見る難易度
基本情報技術者試験は、令和5年度(2023年)から年間を通したCBT方式の試験に移行しました。CBTはコンピュータを利用した試験で、受験申込み時に自分で試験日時、試験会場を選ぶことができます。
CBT導入前までは合格率が20〜30%程度でしたが、令和5年度全体の合格率は47.1%、令和6年度の8月までの合格率は42.9%と、CBT導入後は合格率が高くなっています。
合格率40%台の基本情報技術者試験はIT関連資格の中でも比較的難易度が低めで、初学者でも合格を目指しやすい試験と言えるでしょう。
CBT方式への移行で年間を通じて好きなタイミングで試験を受けられるようになり、十分に対策勉強を行ってからチャレンジできることも、合格率が高めである一因と考えられます。
通年受験できるメリットを活かして学習の予定を立て、万全の準備で試験に臨みましょう。
【参考】:[情報処理技術者試験(基本情報技術者試験)統計資料
](https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/ps6vr70000016ew6-att/202408_fe_toukei.pdf)
基本情報技術者試験の試験範囲
基本情報技術者試験の科目Aの出題内容は、「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」に分かれます。
「テクノロジ系」は、数学や情報理論などの基礎理論から、アルゴリズムやプログラミング、ハードウェアやソフトウェア、データベース、ネットワーク、セキュリティといった技術的な内容が問われます。
「マネジメント系」では、プロジェクトマネジメントやサービスマネジメントに関する知識が問われます。具体的には、プロジェクトの計画やリスク管理、コスト管理、品質管理、そして、プロジェクト全体の統括を効率的に行うための知識が求められます。
「ストラテジ系」は、情報システムの戦略的な活用に関する分野です。経営や業務プロセスの分析、技術戦略の立案、システムの企画・調達、マーケティング、経営戦略、法務などが出題範囲です。
科目Bでは、プログラミング全般や情報セキュリティに関する実践的な内容が出題されます。要求仕様に基づくプログラムの実装やデバッグ、プログラムのテストなどのスキル、アルゴリズム、そしてマルウェアからの保護や、運用状況の点検などの知識が問われます。
応用情報技術者試験の難易度と試験範囲
応用情報技術者試験の合格率から分かる難易度、そして試験範囲について解説します。試験範囲は、午前試験は基本情報技術者試験と共通しますがより深い理解を求められ、午後試験ではより高度で専門的な知識が必要とされる筆記問題が出題されます。
応用情報技術者試験の合格率から見る難易度
それでは、応用情報技術者試験の合格率を見ていきましょう。
近年の合格率は、令和4年度春期が24.3%、秋期が26.2%、令和5年度春期が27.2%、秋期が23.2%と、おおむね25%前後で推移しています。
合格率で比較すると、40%程度である基本情報技術者試験よりも高難易度であることが分かります。
難易度が高い要因として、午後試験が記述式で、より実践的なスキルが問われることが挙げられます。
経験を積んだITエンジニアでも、選択問題で自分の得意とする分野を見極めて問題を選ぶことがポイントです。
【参考】:[情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
](https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/nq6ept000000i5c9-att/toukei_r06a_oubo.pdf)
応用情報技術者試験の試験範囲
応用情報技術者試験の午前試験の試験範囲は、基本情報技術者試験と同様です。「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の分野から出題されます。
午後試験は記述式で、基本情報技術者試験よりも幅広い専門知識が求められ、11問の大問から、必須問題の「情報セキュリティ」を含む5問を選んで解答します。
必須問題の情報セキュリティでは、暗号技術や不正アクセス対策などについて問われます。
また、経営戦略や情報戦略やシステムアーキテクチャやITサービスマネジメント、プロジェクトマネジメントなど、経営戦略の立案などについての問題も出題されます。
技術的な分野では、ネットワーク、データベースの運用・保守、プログラミング、システム監査などの知識やスキルが求められます。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の比較
ここでは、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の難易度や試験範囲、勉強時間、実施方法の違いについて説明します。
難易度の違い
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験は、合格率の違いからも分かるように、難易度と求められるスキルレベルが異なります。
IPAが実施する情報処理技術者試験の中でも、基本情報技術者試験はITエンジニアとしての基礎知識を証明する試験で、応用情報技術者試験はより高度なITスキルや経営知識が求められる試験と位置付けられています。
出題範囲の違い
基本情報技術者試験はIT全般の基礎を問う内容で、プログラミングやデータベース、ネットワークといったシステム開発の基本的な知識が重視されます。
一方、応用情報技術者試験はこれに加えて、マネジメントや経営戦略といった上流工程に必要なスキルも求められ、より高度で幅広い内容が出題されます。
両試験とも科目A・午前試験は選択式で、基本的なIT知識を広く問う点は共通していますが、問題は応用情報技術者試験の方が難易度は高めです。
科目Bと午後試験では、出題範囲の違いがはっきりしています。基本情報技術者試験の科目Bはプログラミングやシステム設計を問われます。
また、応用情報技術者試験の午後試験は記述式で、プロジェクトマネジメントや経営戦略、システム監査など、プログラミングのみに偏らない、システム開発全般における幅広いスキルを問う問題が出題されます。
必要な勉強時間の違い
難易度や試験範囲の違いがあることから、勉強に必要な時間も異なります。
基本情報技術者試験に合格するためには、すでにIT関連の基礎知識がある人や、すでにITエンジニアとしてキャリアを始めている人は50時間程度、まったく知識がない初学者は200時間ほどの学習が必要とされています。
一方、応用情報技術者試験に合格するためには、基本情報技術者に合格している人は200時間程度、IT未経験者は500時間以上の勉強時間が目安とされています。
しかし、この時間はあくまで目安です。どちらも、合格には十分な時間をかけて勉強をする必要があることを理解しておきましょう。
問題集や過去問を活用して十分に点数を取れるようになるまで、じっくりと学習を続けることが重要です。
実施方法の違い
実施方法や受験できるタイミングの違いについても押さえておきましょう。基本情報技術者試験はパソコンを使ったCBT方式で実施され、年間を通して受験が可能です。
そのため受験機会が多く、3ヶ月先までのスケジュールを自由に設定できるため、勉強計画を立てやすいと言えます。
一方、応用情報技術者試験はPBT方式(ペーパー試験)で実施され、春期(4月)と秋期(10月)の年2回、受験が可能です。試験は決められた日時と会場で受験する必要があります。
長期的な予定を立てて、年2回の受験の機会までに十分な対策勉強を行いましょう。
基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の違いを押さえて挑戦しよう
ここまで、基本情報技術者試験と応用情報技術者試験の違いについて解説してきました。両試験は難易度、出題範囲、必要な勉強時間、そして実施方法に違いがあり、それぞれの試験の内容を理解することで、どちらを受験すべきか判断できるでしょう。
基本情報技術者試験は、ITの基礎を学びたい初学者に最適で、応用情報技術者試験は高度な知識を求められる上位資格です。
どちらの試験も挑戦することでITエンジニアとしてのスキルアップに繋がります。ITエンジニアとしてキャリアアップするために、ぜひ受験を検討してください。
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