応用情報技術者試験の勉強法
ITエンジニアを目指す人なら誰もが取得を考える国家資格の「応用情報技術者試験(AP)」ですが、合格率は例年20%台と比較的難しい試験となっています。初心者や文系の方にとっては難解な問題が多く、問題を見ただけで「受かる気がしない」という方も少なくありません。
そんな方のために、ここでは「応用情報技術者試験(AP)」の効果的な勉強法について解説します。「応用情報技術者試験(AP)」へのチャレンジを検討している方は、ぜひ最後までお付き合いください。
応用情報技術者試験とは
応用情報技術者試験(AP)は歴史のある試験で、2000年頃までの約30年間は「第一種情報処理技術者試験」として知られていました。「ソフトウェア開発技術者試験」を経て、2009年から「応用技術者試験」となっています。
応用情報技術者試験(AP)は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)主催の国家試験の1つです。対象者像は「高度IT人材として活躍するために必要な応用的知識や技能を有し、高度IT人材として方向性が確立できている」人で、数年程度の経験を積むプログラマ、システムエンジニアの受験を想定しています。
一般的には、下位資格である基本情報技術者試験(FE)の合格者が次に目指す試験区分と認識されています。
応用情報技術者試験などを含むIPAの情報処理技術者試験には特段の受験者制限はなく、実務の経験がない高校生や大学生も受験可能です。
試験は、春期(4月)と秋期(10月)の年2回開催されます。合格するための条件は、午前試験・午後試験ともに60%以上の得点が必要です。例年、午前試験は80問(四肢一択)、午後試験は記述式問題の出題があります。
【参考】:応用情報技術者試験(AP) ~ ワンランク上のITエンジニア ~
試験の実施概要
応用情報技術者試験(AP)の概略を把握しておきましょう。
▪受験資格 受験者に関する制限はありません。学歴や年齢を問わず誰でも挑戦できます。
▪受験料 7,500円(税込)
▪受験日程 年2回開催、春期試験は例年4月の第3日曜日、秋期試験は10月の第2日曜日です。 申込期間は、試験日の3ヶ月〜1ヶ月前程度の期間です。
▪合格発表 試験日のおよそ2ヶ月後です。詳細日程は試験開催日の夜にIPAのサイトで公表されます。合格証書の発送は合格発表の後、約1週間後です。
▪試験会場 全国主要62都市で開催されます。
▪試験の構成 時間 形式 出題数 合格ライン 時間 備考 午前 記号選択式 80 問 60 % 150 分 概ね 50 問以上正答なら合格ライン 午後 記述式 11 問中5問 60 % 150 分 概ね 3 問正解で合格 (1 問必須、4 問選択)
難易度や合格率
応用情報技術者試験(AP)の公表されている合格率は例年20%前後となっています。基本情報技術者試験の平均合格率が25%なので、レベルが上がり合格率も低くなっていることがわかります。
2014年度の秋期試験から試験方式の改定があり、これまで午後試験では必須だった経営戦略やプログラミングの設問が選択となったことで、インフラエンジニアなどの経営やプログラミングとは関りが低いエンジニアも受験しやすくなりました。
その結果、アルゴリズムやプログラミングが必須となっている基本情報技術者試験(FE)よりも受験がしやすいと考える向きもあり、基本情報技術者試験(FE)の受験を飛ばして、いきなり応用情報技術者試験(AP)を受ける人もいます。
合格率は低めですが、応用情報技術者試験(AP)の試験難易度はスキルレベル3で、基本情報技術者試験(スキルレベル2)と上位資格の高度情報処理技術者試験(スキルレベル4)との中間にあるため、受験対策をしっかり行えば十分に合格を狙えると言えます。
ちなみに高度情報処理技術者試験は、情報セキュリティ・データベース・ネットワーク・プロジェクトマネジメントなどの各分野に分かれており、高度試験の語は用いられなくなっています。
【参考】:応募者・受験者・合格者の推移表 平成21年度春期~
独学で合格できる?
試験範囲が広く合格率も20%前後と、「難しすぎる」と言われることもある応用情報技術者試験ですが、果たして独学で合格できるのか不安に思っている方もいるでしょう。
独学で合格するには、勉強スケジュールをしっかり立てること、そして試験の特徴を抑えた効果的な試験対策をすることが大切です。
計画を立てることが苦手、能動的に勉強するのが苦手という方は有料のオンライン講座などを受講しても良いですが、コツを抑えることができれば独学でも十分に合格を狙えます。試験対策の方法なども後ほど解説するので、それを参考に計画を立ててみましょう。
合格に必要な勉強時間
知識レベルやスキルレベルによって大きく異なりますが、未経験者の場合には500時間程度、実務経験のあるプログラマーやシステムエンジニアだと200時間程度が目安です。一夜漬けはおすすめできませんので、学習計画をしっかり立てて、計画に即して勉強しましょう。
出題傾向や出題範囲
応用情報技術者試験(AP)の出題範囲については、以下の通りです。非常に出題範囲が広く、特に社会人の方はまとまった勉強時間を確保するのが難しいため、出題範囲を網羅するのは厳しいでしょう。
全問正解を目指すと勉強が中途半端になるため、苦手な分野や解きにくい問題は捨てる覚悟も必要です。
午前問題(150分)
午前問題は以下の23項目が出題範囲です。基本情報技術者試験・応用情報技術者試験・高度試験・支援士試験の4試験共通なので、基本情報技術者試験や他の試験を受験したことがある方は解きやすいです。合格ラインは60%で80問出題されますので、50問以上の正解を目指しましょう。
●テクノロジ系(午前80問中50問) 1.基礎理論 2.アルゴリズムとプログラミング 3.コンピュータ構成要素 4.システム構成要素 5.ソフトウェア 6.ハードウェア 7.ヒューマンインターフェイス 8.マルチメディア 9.データベース 10.ネットワーク 11.セキュリティ 12.システム開発技術 13.ソフトウェア開発管理技術
●マネジメント系(午前80問中10問) 14.プロジェクトマネジメント 15.サービスマネジメント 16.システム監査
●ストラテジ系(午前80問中20問) 17.システム戦略 18.システム企画 19.経営戦略マネジメント 20.技術戦略マネジメント 21.ビジネスインダストリ 22.企業活動 23.法務
【参考】:情報処理技術者試験 試験概要(IPA) P27~
午後問題(150分)
応用情報技術者試験(AP)の午後問題の出題範囲は、以下の13分野から11問が出題されます。その内、12.の「情報セキュリティ」は必須問題で、残りの10問から4問を選択します。
1.経営戦略 2.情報戦略 3.戦略立案・コンサルティングの技法 4.システムアーキテクチャ 5.サービスマネジメント 6.プロジェクトマネジメント 7.ネットワーク 8.データベース データモデル、正規化、DBMS 9.組込みシステム開発 10.情報システム開発 11.プログラミング 12.情報セキュリティ※必須回答 13.システム監査 IT ガバナンス、IT 統制、情報システム
【参考】:情報処理技術者試験 試験概要(IPA) P40~
試験対策
応用情報技術者試験(AP)の試験概要・出題範囲を理解したところで、試験対策について解説していきましょう。ここまで読み、出題範囲の広さに肩を落とす方がいるかも知れませんが、合格ラインは60%です。全ての分野を満遍なく勉強をする必要はありません。
勉強の進め方
試験対策としては、午前問題の対策を行ってから午後問題対策へと進みましょう。理由は、午後問題は午前問題の延長線上にあるからです。
午後問題は、午前問題の知識を前提に、その思考力や応用力を問う問題が出題されます。まずは午前問題を中心に基本知識を学んでから応用知識という流れで学習を進めましょう。
勉強スケジュールの立て方
勉強スケジュールを立てるうえで重要なのが、インプットとアウトプットの比率です。IT未経験者はインプットに、経験者はアウトプットに重きを置きましょう。
IT経験者や基本情報技術者試験に合格している人の場合は、いきなり過去問を解くところから始めて、わからない箇所があったらテキストでインプットするというやり方でも良いかもしれません。
午後試験は記述式なので、午前試験よりも難易度が上がります。未経験者でも経験者でも、スケジュールの後半は午後試験の対策を中心に取り組むようにしましょう。
また、時間を決めて勉強することも大切です。「1日何時間」「何分やったら何分休憩」といったようにメリハリを持たせることで集中力が上がり学習効率が良くなります。なお、計画通りにいかない事態も想定して、スケジュールには余裕を持たることをおすすめします。
午前問題の勉強法
午前問題の対策に関しては、以下の手順で勉強を進めましょう。
1.参考書を一通り読み、全体像をつかむ おすすめの参考書は後ほど紹介しますが、まずは参考書に一通り目を通しましょう。初めて知ったことにはマーカーを入れたり、付箋を挟んだりといった形で、読み返すことを前提に印を残しておきましょう。
2.勉強サイトを利用する 応用情報技術者試験ドットコムの「過去問道場」などで、過去問(過去5年間)にチャレンジしましょう。 【参考】:応用情報技術者試験ドットコム
3.過去問で不正解の箇所をメモする 過去問を解いて不正解となった問題、よく分からなかった問題はメモをしておきましょう。
4.不正解となった過去問を改めて解く メモした過去問に関する箇所を参考書で確認し、最後に改めて不正解だった過去問を解いていきます。
午後問題の勉強法
午後問題は11問出題され、そこから5問解答します。問1の「情報セキュリティ」は解答必須のため、問2の「経営戦略」から問11の「システム監査」の計10問から4問を選択します。
出題範囲は午前問題とほぼ被るため、午後問題だけ新たに勉強をするというよりは、ひたすら過去問を解き、解答できなかった問題を参考書で確認する方法で良いでしょう。
問1. 情報セキュリティ(必須問題)
ーーー以下より4科目選択して解答ーーー
問2. 経営戦略 問3. プログラミング 問4. システムアーキテクチャ 問5. ネットワーク 問6. データベース 問7. 組込みシステム開発 問8. 情報システム開発 問9. プロジェクトマネジメント 問10. サービスマネジメント 問11. システム監査
午前問題は丸暗記の勉強法で構いませんが、午後問題は長文読解力が求められるため、長文読解に慣れる必要があります。長文問題では先に設問を読み、設問のキーワードを確認してから問題文を読んで、キーワードに印を付けるとよいでしょう。
午後の選択問題でおすすめの問題は?
問題の選択は、過去問を解いて正答率が高かった分野や、自身が得意な分野から選択すれば良いのですが、問題の解きやすさから選ぶなら、以下の分野をおすすめします。
▪問2 経営戦略・・読解力のある方、文系出身者の方におすすめ ▪問5 ネットワーク・・ネットワークの基礎が分かれば解ける、必須のセキュリティとの共通点もある ▪問8 データベース・・「正規化」「ER図」「SQL」が理解できていれば解ける ▪問9 組み込みシステム開発・・「状態遷移図」「2・10・16進数の変換」が理解できていれば解ける
現役プログラマの方なら、「問8 データベース」を外して「問3 プログラミング」を選択するのが良いかもしれません。上記おすすめの問題をベースに、各自の得意分野を含める形で最適な選択を心掛けましょう。
おすすめの参考書や問題集
独学での合格を目指すには、最低限参考書などによる勉強と過去問の回答が不可欠です。参考書は非常に多いため選択に迷いますが、ここでは実際に合格した方のブログなどにもよく登場する「合格教本」シリーズから紹介します。
令和05年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
「いちばん詳しい、わかりやすい、何でも調べられる」と評判の教科書です。最新版では、データベース分野が大きく整理され、全体の構成もよりわかりやすいものになっています。また、最新19回分の午前問題にチャレンジできる演習アプリの「DEKIDAS-WEB」が付いています。
▪著者:大滝みや子、岡嶋裕史 ▪ページ数:800ページ(A5判) ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2022年12月14日
【参考】:令和05年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
応用技術者試験ドットコム
応用情報技術者試験.comの「応用情報技術者過去問道場」は、過去問題2640問からランダムに出題される、完全解説が付いた無料のWeb問題集です。応用情報技術者試験に関する試験情報に加えて掲示板もあり、受験の心強い味方となるでしょう。スマホやタブレットからアクセスでき、スキマ時間を利用して手軽に勉強できるためおすすめです。
【参考】:応用情報技術者試験.com-応用情報技術者過去問道場
応用情報技術者をキャリアアップの足掛かりに
ここまで応用情報技術者試験の勉強法を中心に解説してきました。まとまった勉強時間の確保が難しい現役エンジニアの方は、100点を目指すのではなく、得意な問題で着実に点数を稼いで60点を取るという考えで、この記事を参考にしながら効率的・効果的な学習を心掛けましょう。
応用情報技術者資格は人気の資格の1つであり、資格手当が支給される企業もあります。ぜひ応用情報技術者試験に挑戦し、キャリアアップや年収アップを図ってください。
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