応用情報技術者試験の合格率はどれくらい?
応用情報技術者試験(AP)は、IPA(独立行政法人:情報処理推進機構)が主催する国家試験の1つです。知名度が高くITエンジニアに人気の資格ですが、取得を目指す方からは「難しすぎる」「なかなか合格できない」といった声も聞かれます。
では実際に、応用情報技術者試験の合格率はどれくらいなのでしょうか。本記事では最新の合格率に加えて、応用情報技術者試験の概要、メリット・デメリット、勉強方法などを詳しく解説していきます。
合格者数と合格率の推移
応用情報技術者試験の合格者数と合格率の推移について、令和元年以降の合格率の推移は以下の通りです。
・2019年(平成31年、令和元年) 春期:合格者数:6,605名、合格率:21.5% 秋期:合格者数:7,555名、合格率:23.0%
・2020年(令和2年) 春期:※新型感染症まん延防止のため試験中止 秋期:合格者数:6,807名、合格率:23.5%
・2021年(令和3年) 春期:合格者数:6,287名、合格率:24.0% 秋期:合格者数:7,719名、合格率:23.0%
・2022年(令和4年) 春期:合格者数:7,827名、合格率:24.3% 秋期:合格者数:9,516名、合格率:24.2%
・2023年(令和5年) 春期:合格者数:8,805名、合格率:27.2% 秋期:合格者数:8,753名、合格率:23.2%
・2024年(令和6年)
春期:合格者数:8,677名、合格率:23.6%
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
大学生・大学院生の合格率が高め
情報処理推進機構(IPA)の統計情報によると、2024年(令和6年)春期における大学生・大学院生の応用情報技術者試験合格率は以下の通りです。
・大学生 理工系の情報系 :28.7% 文系の情報系 :23.4% 情報系以外の理工系:36.2% 情報系以外の文系 :28.8%
・大学院生 情報系 :38.4% 情報系以外 :47.3%
2024年(令和6年)春期の合格率は23.6%ですので、大学院生と理工系大学生が全体平均を押し上げており、チャンスを有効活用していることが伺えます。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
最年長合格者は70代
情報処理推進機構(IPA)のプレス発表によると、応用情報技術者試験の最年長合格者は72歳です。最年長記録であった70歳を半年ぶりに更新しました。
上述したとおり、応用情報技術者試験の合格者には大学生が多いものの、モチベーションを保ちながらコツコツ努力を続ければ、どなたでも合格の可能性がある資格と言えます。
また、実務経験を積んだ上で、認知度の高い応用情報技術者試験に合格すれば、転職の際はかなり有利になります。資格を生かして転職を目指すなら、自分のスキルに合った企業を探してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
【参考】:プレス発表::応用情報技術者試験でも72歳の合格者が半年ぶりに最年長記録を更新
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基本情報技術者試験との比較
ここでは、応用情報技術者試験と基本情報技術者試験とのスキルレベルや合格率、必要な勉強時間などから難易度を比較していきます。
まずはITスキル標準をみていくと、基本情報技術者試験はスキルレベル2、応用情報技術者試験がスキルレベル3です。スキルレベルは数字が高いほどレベルの高さを測ることができます。
【参考】:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
合格率においては、令和6年度7月の基本情報技術者試験は41.7%でした。応用情報技術者試験は令和6年度春期の合格率が23.6%だったので、かなり差があることがわかります。
【参考】:情報処理技術者試験(基本情報技術者試験) 統計資料 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
続いて、必要な勉強時間(IT経験者の場合)を比較してみましょう。基本情報技術者試験の勉強時間は約50時間〜100時間と言われており、応用情報技術者試験は約200〜500時間とされ、およそ倍近くあります。
【基本情報技術者試験】 ・ITスキル標準:スキルレベル2 ・合格率:41.7%(令和6年度7月) ・勉強時間:50時間〜100時間
【応用情報技術者試験】 ・ITスキル標準:スキルレベル3 ・合格率:23.6%(令和6年度春期) ・勉強時間:200〜500時間
上記のことから、初めてIT国家試験にトライする場合は、まずはいきなり応用情報技術者試験に挑むのではなく、基本情報技術者試験からスタートするステップ式での受験がおすすめです。
プロジェクトマネージャ試験との比較
ここでは、応用情報技術者試験とプロジェクトマネージャ試験との合格率やスキルレベル、必要な勉強時間などから難易度を比較していきます。
ITスキル標準をみていくと、プロジェクトマネージャ試験は最難関のスキルレベル4であり、スキルレベル3の応用情報技術者試験の上位資格であることがわかります。
【参考】:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
合格率においては、令和5年度秋期のプロジェクトマネージャ試験は13.5%でした。応用情報技術者試験の合格率23.6%と比較すると、10%ほど差があります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
続いて、必要な勉強時間を比較してみましょう。プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクトマネージャとしての実務経験がある場合では約50時間〜100時間と言われており、応用情報技術者試験はIT経験者の場合で約200〜500時間とされています。
【プロジェクトマネージャ試験】 ・ITスキル標準:スキルレベル4 ・合格率:13.5%(令和5年度秋期) ・勉強時間:50時間〜100時間
【応用情報技術者試験】 ・ITスキル標準:スキルレベル3 ・合格率:23.6%(令和6年度春期) ・勉強時間:200〜500時間
上記のことから、プロジェクトマネージャ試験はかなり難易度の高い試験であり、応用情報技術者試験に合格した後に受験を試みる試験であるといえるでしょう。
データベーススペシャリスト試験との比較
ここでは、応用情報技術者試験とデータベーススペシャリスト試験との合格率やスキルレベル、必要な勉強時間などから難易度を比較していきます。
ITスキル標準をみていくと、データベーススペシャリスト試験は最難関のスキルレベル4であり、スキルレベル3の応用情報技術者試験の上位資格にあたります。
【参考】:データベーススペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
合格率においては、令和5年度秋期のデータベーススペシャリスト試験は18.5%でした。応用情報技術者試験は令和6年度春期の合格率は23.6%であり、10%以上の差があります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
続いて、必要な勉強時間を比較してみましょう。データベーススペシャリスト試験は、プログラマーやシステムエンジニアとして数年ほどの実務経験がある場合では約200時間、応用情報技術者試験はIT経験者の場合で約200〜500時間とされています。
【データベーススペシャリスト試験】 ・ITスキル標準:スキルレベル4 ・合格率:18.5%(令和5年度秋期) ・勉強時間:200時間
【応用情報技術者試験】 ・ITスキル標準:スキルレベル3 ・合格率:23.6%(令和6年度春期) ・勉強時間:200〜500時間
上記のことから、システムエンジニアなどからデータベーススペシャリストへキャリアアップを図る場合は、応用情報技術者試験→データベーススペシャリスト試験といった順番で受験すると合格を目指しやすいでしょう。
応用情報技術者試験の概要
ここからは、実際受験するにあたって知っておきたい応用情報技術者試験の概要を解説します。合格点や難易度をしっかり把握しておきましょう。
受験対象者
応用情報技術者試験の対象者は、ITの基礎知識をカバーするとともに、高度IT人材としてステップアップするために必要とされる応用知識や技能を持つ人です。「応用情報技術者試験(AP)」の末尾APは、「Applied Information Technology Engineer Examination」の略から来ています。
戦略立案に必要な知識と技能、システムの設計・開発・運用に必要な知識と技能を有し、上位者の方針に従い自ら問題解決にあたることを想定し試験が設定されています。
出題範囲
応用情報技術者試験の試験実施範囲などの詳細は、試験要綱・シラバスが情報処理推進機構(IPA)より公開されています。午前試験はテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の3分野において、レベル3の難易度で出題され、セキュリティは重点分野です。
筆記形式の午後試験では、経営戦略、システムアーキテクチャ、ネットワーク、プログラミングなど、幅広い分野が出題範囲とされています。
【参考】:応用情報技術者試験(レベル3)シラバス 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
合格点
情報処理技術者試験では合格点60%が基準とされ、高度区分で実施される午後II論述式では、評価ランクAが合格水準です。応用情報技術者試験も午前・午後ともに60%以上で合格です。午前が150分で四択設問が80問出題されます。午後は150分で記述式を11問中5問解答します。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
難易度
情報処理技術者試験制度は、情報処理推進機構(IPA)により試験区分と難易度が設定されています。難易度はスキルレベル1から4の範囲で設定されます。
応用情報技術者試験は、スキルレベル3に相当します。スキルレベル3では応用レベルの能力が要求される作業を、独力で遂行できなければなりません。このことから、応用情報技術者試験の難易度は高めと判断できます。
【参考】:IT人材の育成 ITSS+(プラス)・ITスキル標準(ITSS)・情報システムユーザースキル標準(UISS)関連情報
試験の日程
情報処理技術者試験は、例年春期と秋期の年に2回実施されています。受験手数料は税込7,500円です。2024年度(令和6年度)秋期は、10月13日(日)に実施される予定です。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 スケジュール、手数料など 【参考】:令和6年度春期試験について(受験申込み) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
応用情報技術者試験合格のデメリット
応用情報技術者試験には、「難しすぎる」「取得しても意味ない」という声が挙がっています。そういった声が挙がる理由としては、応用情報技術者試験の資格には独占業務がない、IT系業務以外では活かせない、難易度が高く学習コストがかかる、などがあります。
IT国家資格においては、情報処理安全確保支援士試験以外は士業として特別な職種に就けるわけではありません。
応用情報技術者試験を含め、たとえ最高難易度のプロジェクトマネージャ試験に合格したとしても、必ずしも希望の職種に就けるわけではないですが、レベルの高い試験への合格は高い能力の保有を証明できます。
また、取得したことで仕事の幅が広がり、キャリアアップに繋がった方も多数います。ただやみくもに受けるのではなく、しっかりと準備をすればその見返りは大きいものとなるでしょう。
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応用情報技術者試験合格のメリット
応用情報技術者試験合格には、様々なメリットがあります。具体的なメリットを確認して、勉強のモチベーションを高めましょう。
就職・転職に有利になる
応用情報技術者試験は難易度の高い国家試験であるため、就職や転職の際は大きな恩恵が受けられます。学生時代に取得しておけば、希望の企業や職種への採用率が高まることが期待できるでしょう。
また、社会人は自身のスキルが証明でき、仕事の幅が広がります。キャリアアップのための転職時にも、公的試験の合格は有利に働きます。
資格手当によって年収がアップすることも
一般的なシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は431万円(※2024年1月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は一般平均年収と比べて、同水準かやや高めであることが分かります。
さらに、IT系企業など会社によっては、資格手当が受けられる場合があります。一時手当や毎月の支給手当に加えて、昇進時に合格が加味されたり要件化されたりすることも考えられます。年収アップを目指す方にも、応用情報技術者試験はおすすめの試験です。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
国家試験などの科目免除を受けられる
応用情報技術者試験に合格すると、高度試験及び支援士試験の午前Ⅰ試験について、その後 2年間受験が免除されます。午前Ⅰ試験ををスキップしながら、上位試験にチャレンジできるので、効率的な受験計画が立てられます。
また、他の国家試験である以下の資格でも、応用情報技術者試験の合格者は一部試験の免除が認められています。
・中小企業診断士の第一次試験「経営情報システム」 ・弁理士試験「理工Ⅴ(情報)」 ・技術士試験の第一次試験「情報工学部門」
【参考】:午前Ⅰ試験免除 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験 【参考】:中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除 【参考】:【別表2】 弁理士試験の選択科目が免除される情報処理技術者試験合格者の試験区分 【参考】:公益社団法人 日本技術士会:第一次試験のよくあるご質問
応用情報技術者試験に合格するには
ここからは応用情報技術者試験に合格するために必要な勉強時間、また具体的な勉強方法を解説します。独学で合格を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
必要な勉強時間
応用情報技術者試験の勉強時間は、明確な想定時間が設定されているわけではありません。しかし、合格体験記などによると、初学者はおよそ500時間程度が必要と言われています。
基本情報技術者試験を受験する場合、およそ200時間程度の時間を要することから、すでに基本情報技術者試験合格レベルの知識を有する方は、応用情報技術者試験向けに200〜300時間程度の追加勉強時間が必要と考えられます。
午後試験の対策が重要
応用情報技術者試験において難関なのが、午前よりも午後試験だと言われています。その理由としては、午前試験においては出題範囲と出題形式は基本情報技術者試験と同じであり、午後試験は応用問題や記述式の問題があるため、知識の他にも文章読解力も必要とされるためです。
午後試験の対策には、過去問の反復や参考書などの練習問題に時間を割くといいでしょう。
過去問を繰り返し解く
応用情報技術者試験の過去問は、公式サイトで公開されています。また、現行制度となる平成21年度以降の問題と配点割合、解答例も掲載されているので、積極的に活用しましょう。最低でも、過去数年程度の過去問題は反復演習しておくのがおすすめです。
【参考】:問題冊子・配点割合・解答例・採点講評(2024年度、令和6年度) | 試験情報 | IPA
おすすめの参考書
前述の通り、記述式である午後試験の対策としては、参考書を活用するのがいいでしょう。インプットとアウトプットを繰り返すことで、知識をより確実に定着させられます。ここでは、応用情報技術者試験の午後対策におすすめの参考書を2冊紹介します。
「2024 応用情報技術者 午後問題の重点対策」 IT試験の参考書として多くの受験者が活用するシリーズであり、わかりやすく丁寧な解説が好評です。本書未収録の本試験問題がダウンロードできるため、本番さながらの演習問題にトライできるでしょう。
▪著者:小口 達夫、アイテックIT人材教育研究部 ▪ページ数:895ページ ▪出版社:アイテック ▪発売日:2023年11月1日
「令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】」 午後試験に特化しており、頻出されるテーマを厳選した問題集です。最新の試験傾向を網羅し、図解が多用されているため理解しやすい参考書としてシリーズ化されています。基礎力と応用力の両方をトレーニングできます。
▪著者:大滝 みや子 ▪ページ数:672ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2024年3月22日
【参考】:令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】
応用情報技術者試験を取得してキャリアアップを図ろう
応用情報技術者試験は基本情報技術者試験の次に狙う試験区分で、より難易度が高い資格です。基本知識を土台として、より深い応用技術が求められます。さらに、その先にある上位資格を狙う足掛かりにもなります。
学生からご年配の方まで幅広く合格を目指せる資格のため、取得すれば社会人にとってもキャリアの選択肢が広がり、多方面で期待に応えられる技術者になれるでしょう。
また、「今よりもっとやりがいのある仕事をしたい」「年収をアップさせたい」と考える方にも取得をおすすめします。応用情報技術者試験は転職の際も大きなアドバンテージになります。
とはいえ、実際に資格を生かした転職が成功するのかどうか、不安な方も多いのではないでしょうか。
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