
基本情報技術者試験に関するCBT/IBT方式併用の実証実験

IPA(情報処理推進機構)は基本情報技術者試験(FE)と情報セキュリティマネジメント試験(SG)の2つの試験区分に関して、IBT方式を利用した実証試験を行うと発表※しました。9月15日12:00頃に参加受付が公開され、申し込みができます。
2つの試験はこれまで年2回(上期・下期)の実施でしたが、年間受験回数の増加や受験生の利便性を考慮し、2023年4月から通年化と試験時間の短縮、午後問題の小問化への移行などが行われる予定※2となっています。
実証試験の目的は、試験会場のPCを利用して受験するCBT方式と、受験者が用意したPCを利用して自宅などで受験するIBT(Internet Based Testing)方式の比較検証にあります。そこでCBT、IBTの両方式で実証試験が実施されます。
【参考】:※基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験でインターネットによる実証試験を実施|IPA
【参考】:※2プレス発表 基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験を通年試験化|IPA

実証実験の概要
試験の通年化と受験生の利便性向上などを目的に、2023年4月の受験制度変更を目的として実証実験が行われますが、ここで実証実験の概要について確認しておきましょう。
来春以降に基本情報技術者試験(FE)、もしくは情報セキュリティマネジメント試験を受験予定の方は、予行演習を兼ねて実証実験に参加してみてはいかがでしょうか。
■ 実証実験の目的
2つの試験区分(FE、SG)を対象とし、IBT方式を試行的に実施してCBT方式との比較を行い、試験運営上の課題抽出を行うことが目的です。
■ 実験期間
2022年10月1日~2022年10月19日
■ 募集期間
2022年9月15日~2022年10月4日
■ 募集人数
数百名~数千名
■実施試験の区分
基本情報技術者試験(FE)と情報セキュリティマネジメント試験(SG)の2区分、
いずれか1区分もしくは2区分のいずれか、もしくは両方の選択と受験が可能です。
■実施方式
IBT方式、CBT方式のいずれかを選択します。
■ 実証実験の参加申込先
株式会社CBTソリューションズ(実証実験委託先)
【参考】:【プレスリリース】実証試験を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)より受託 | 株式会社CBT-Solutions
■ その他
実証実験の参加費は無料です。合否判定はなく、受験後に正解数がパソコン上に表示されます。また、受験後にアンケートに回答することが求められます。

2023年以降の基本情報処理技術者試験の変更点
基本情報技術者試験は2023年4月から実施方式が通年化される予定ですが、出題形式や出題範囲も以下のように変更される予定です。IBT方式の採用以外に午後試験の小問化、トールの試験時間の短縮、プログラミング言語試験は疑似言語に1本化といった点が大きな変更点です。
■ 出題形式
午後問題は小問形式へと変わり、コンパクト化され、出題数・解答数の変更により試験時間は30〜40%短縮されます。その結果、基本情報処理技術者試験(FE)の試験時間は300分から190分に大きく短縮されます。また、午後問題をコンパクト化した小問のサンプル問題が公開される予定です。
■ 出題範囲
基本情報処理技術者試験(FE)は、これまで擬似プログラミング言語に加えて、個別プログラム言語としてC・Java・Python・アセンブラ・表計算ソフトによる出題が行われていましたが、擬似言語に統一し、普遍的・本質的なプログラミング的思考力が問われる形に統一されます。
【参考】:基本情報処理技術者試験(FE)
CBT方式とIBT方式のメリット・デメリット

ここでは、実証実験が行われるCBT方式とIBT方式それぞれのメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
CBT方式のメリットとデメリット
IPAがCBT方式を採用したのは2020年12月のことで、約2年が経過しようとしています。この間、CBT方式は定着し、ネット上では好意的な感想が見られる一方で、デメリットを指摘する声も上がっています。
▪メリット
1.受験日や受験地の制約がなくなり、受験しやすくなった
2.結果がすぐに分かる(運営者側は採点の手間やコストを省ける)
▪デメリット
1.基本情報技術者試験がCBT方式になってから、過去問の公表がなくなった
2.問題流出リスクが高まった
3.災害などによる通信障害が起きるとセンター単位で試験の開催が困難になる(ネットワークの冗長化などの対策が必要)
IBT方式のメリットとデメリット
基本情報技術者試験(FE)と情報セキュリティマネジメント試験(SG)は、受験方法が従来のCBT方式から2023年4月には通年受験に切り替わる予定です。実証実験が行われるIBT方式にもメリットとデメリットがありますので、確認しておきましょう。
▪メリット
1.いつでもどこでも受験が可能となり、受験に関する制約がほとんどなくなる
2.運営側は会場設営コストや採点に関わるコストの削減につながる
3.結果が自宅などですぐに分かる
4.会場までの移動費用が掛からなくなる
▪デメリット
1.カンニングなどの不正防止策を講じる必要がある
2.問題流出リスクが高まった
3.災害などによる通信障害が起きると試験の開催が困難になる(ネットワークの冗長化などの対策が必要)
4.同じ問題が繰り返し出題されるため、問題流出リスクが高まる
ただし、不正対策に関しては、カメラとAIの活用によって、顔認証やAI監視などによってかなり抑止はできますが、一方では利用する端末OSに基準が設けられ、カメラやマイクの設置が必須となると、人によっては受験が困難になるケースも想定されます。
またWi-fi環境が良くない環境にある人には、IBT方式での受験ハードルが一気に上がります。こうしたケースに対応できるよう、主催者は指定端末やWi-fiルータの短期レンタルなどの対策が求められるかも知れません。
今回の実証実験では、こうした点の問題点の把握が行われるものと推測されます。
CBT方式・IBT方式の違い

最近はCBT方式での受験が一般化しており、CBT方式について多くの方はなじみがあると思いますが、IBT方式に関しては初めてという方もいるでしょう。ここでは、CBT方式とIBT方式の違いについて対比しながら解説をしていきます。
それぞれの言葉の意味
▪CBTは「Computer Based Testing」の略で、コンピュータを利用した試験方式のことです。
▪IBTは「Internet Based Testing」の略で、インターネットを利用した試験方式のことです。「オンライン試験」と称することもあります。
受験場所の違い
▪CBT・・全国にあるテストセンターで受験します。
▪IBT・・インターネットに接続している場所(自宅)などで受験します。
受験に用いる端末の違い
▪CBT・・テストセンター側が用意した端末を利用して受験します。
▪IBT・・受験者が用意したパソコンやタブレットで受験します。
不正防止対策の違い
▪CBT・・試験受付や試験監督による本人確認や監視が行われます。
▪IBT・・Webカメラの利用を前提にして、カメラ越しに本人確認や不正チェックを行う方法、AIとカメラによる不正検知など、さまざまな対策があります。とはいえ、全面的にIBT方式に移行する場合には、確立され実証された不正対策が必要になるかもしれません。
一度に受験できる人数の違い
▪CBT・・事前に確保された会場のキャパシティによって受験人数は限られます。
▪IBT・・受験者自身が受験場所を確保できた人数まで同時受験は可能ですが、一気に受験者が集中するとサーバや回線のキャパシティオーバーとなり、レスポンス低下や障害発生のリスクが高まるため、あらかじめ受験制限が設けられる場合があります。
IBT方式やCBT方式の受験で注意すべきこと

IBT方式やCBT方式の受験に際しては、いくつか注意すべきことがありますので紹介します。ペーパー試験しか経験していない方は、こちらを参考に気を付けましょう。
カンニングは厳禁
試験の主催者側ではカンニングを想定した防止策を講じています。そのため、カンニングは見つかる可能性が高く、発覚した場合には失格になるとともに、受験料も返金されないため、非常にリスクが大きいと自覚しておく必要があります。
試験問題の漏洩は禁止
パソコンなどで受験するため、試験問題の持ち出しは認められておらず、利用したメモ用紙の持ち出し、スマホなどでの撮影も厳禁です。そうした行為が試験監督に見つかった場合には試験は失格となります。
受験のタイミングに注意
IBTやCBT方式は受験のタイミングを選択しやすいのがメリットですが、仕事や行事との兼ね合い、受験勉強計画などを考慮し、ベストな日程を選択するようにしましょう。また日程変更も簡単にできるので、都合が悪くなりそうであれば、早めに日程変更をしましょう。
初めての方はデモ動画などで事前チェックを
コンピュータ試験は、基本的に申込サイトなどでデモ試験やデモ動画などを確認できるようになっています。CBTやIBT方式での受験が初めての方は、当日になって慌てることがないよう、受験方法や回答方法などをあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
IBT方式での受験対策に万全を

2023年4月から、IBT方式による通年試験が予定されている基本情報技術者試験について、実証実験の目的や概要、CBT方式やIBT方式の特徴、メリット・デメリット、受験に際して気を付けるべきことなどについて解説しました。
ペーパー試験に慣れた方にとって、CBT方式やIBT方式での受験には不安がつきまとうことでしょう。しかし、いつでもどこでも受験ができるこれらの方式は慣れると大変便利です。
基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の受験を予定されている方は、この記事を参考にして受験対策を講じ、合格に役立てていただけると幸いです。

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