基本情報技術者試験を独学で合格する
基本情報技術者試験は、情報処理技術者の登竜門としてITプロフェッショナルを目指す方が最初に取得を目指す国家試験です。勉強方法はスクールや通信教育を活用する方もいますが、独学で合格を目指す方もいます。
試験は令和2年よりCBT(Computer Based Testing)方式が取り入れられており、2023年4月(令和5年度)からは通年試験に移行されています。試験の要綱は、情報処理推進機構(IPA)により、試験要綱として公開されています。
ここでは、独学で基本情報技術者試験に合格するために必要なポイントを整理して解説していきます。
【参考】:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
独学のメリット
独学のメリットは多いですが、代表的な点としては、自分のペースで学習できることが挙げられます。時間管理が自由で自分のペースで学習できます。また、通学のように移動時間も不要であるため、すきま時間を有効活用できます。
さらに費用負担が少ないことも、メリットの1つです。費用は受験費用と教材代金のみで、低コストで自身のスキルアップが可能です。教材は無料の勉強サイトなどのウェブコンテンツや参考書代のみですので、使いまわしもしやすい特徴があります。
独学のデメリット
独学にはメリットがある半面、デメリットもあります。これをデメリットに感じない方は独学が有効です。
1つは、すべて自力で解決する必要がある点が挙げられます。頼れる情報源は、ウェブや参考書に限定されており、自身の達成度を客観的に確認することができません。第3者に教えてもらう場合は、過不足をフィードバックしてもらえますが、独学は自己判断で進める必要があります。
学習が進まない場合にリカバリーできない点も、デメリットと言えるでしょう。独学の場合は、セルフペースで進めることになります。そのため、理解が進まない場合にサポートしてもらえないことや、短期間でキャッチアップが難しい点はデメリットとなります。
独学がおすすめな人
独学はメリットとデメリットがありますが、おすすめできるのはITの基礎知識がある人です。参考書を読んでもすぐに理解できますので、通学と大差ない効果が得られるでしょう。
すでに独学の実績がある場合も、活用しやすい勉強方法と言えます。自分で計画を立て、やる気を維持できる方は、独学でも成果が得られやすいはずです。
独学をおすすめしない人
ITの基礎知識がない場合、あるいは基礎から学びたい方は、独学よりは通学や通信教育が効果的です。講師から指導を受けることで、全体の知識の抜け漏れを把握することができます。同様に、独学は時間を要しますので、知識吸収の効率を優先したい人も通学や通信教育が有効です。
基本情報技術者試験では科目Aの免除制度があります。科目Aの免除を申請する人も、免除対象講座の受講が必要です。
【参考】:科目A試験免除制度 基本情報技術者試験(FE) | 試験情報 | IPA
基本情報技術者試験の概要
ここでは、そもそも基本情報技術者試験はどういった試験なのかを確認するために、試験概要や出題範囲、合格率などの情報をまとめました。
試験概要
基本情報技術者試験の試験情報は以下の通りです。
・実施時期:随時 ・受験方式:CBT方式 ・受験条件:なし ・出題形式:科目A・科目B ・合格基準:各科目の評価点が基準点(600点)以上 ・申込方法:専用ポータルサイトより申し込み ・費用:7,500円(10%消費税込み) ・合格発表:受験月の翌月中旬に公式サイトで確認可能
【参考】:基本情報技術者試験(FE) | CBT-Solutions CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト
また、科目Aと科目Bの試験時間・出題形式・出題数は以下の通りです。
【科目A】 試験時間:90分 出題形式:多肢選択式(四肢択一) 出題数:60問 解答数:60問
【科目B】 試験時間:100分 出題形式:多肢選択式 出題数:20問 解答数:20問
【参考】:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
出題範囲
基本情報技術者試験の出題範囲は、科目Aと科目Bで異なります。
【科目A】 ・テクノロジ系 ・マネジメント系 ・ストラテジ系
【科目B】 ・プログラミング全般 ・プログラムの処理の基本要素 ・データ構造及びアルゴリズム ・プログラミングの諸分野への適用 ・情報セキュリティの確保
科目Aではテクノロジ系の問題が多くを占めており、基礎理論から開発技術、経営戦略まで幅広い知識が求められます。
科目Bのプログラミングに関する問題では、疑似言語により普遍的・本質的なプログラミング的思考能力を問う問題が出題されます。
科目A・B共に1,000点満点中600点が合格基準点です。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
難易度と合格率
令和5年12月における基本情報技術者試験の合格率は、41.7%でした。直近の合格率は以下の通りです。
・令和5年11月:44.8% ・令和5年10月:42.4% ・令和5年9月:47.7%
新試験制度が始まる2023年より以前は平均で20%前後の合格率でしたが、現在は40〜50%の合格率に上がりました。
また、上記の通り合格率は大幅に上がりましたが、ITSS(スキル標準)はレベル2のまま変更はないため、難易度に関しては特に大きな変化はないと考えられます。例年通り、過去問や参考書などを活用した試験対策が重要です。
【参考】:情報処理技術者試験(基本情報技術者試験) 統計資料
基本情報技術者試験に向けた独学の進め方
独学で 基本情報技術者試験に合格するためには、学習計画をしっかり立てて時間を確保しながら勉強を継続する必要があります。ここでは、独学の進め方を具体的に解説します。
学習計画を立てる
何かを実行するための準備は大切で、事前に計画を立てることが成功につながります。独学で基本情報技術者試験合格を目指す場合は、しっかりとした学習計画を立てる必要があります。ゴールとなる試験の日程や、現在のスキルレベルから逆算して学習計画を立てるのが良いでしょう。
そのため、自身の能力や理解度を現状分析し、しっかり把握することが有効です。勉強開始時に模擬試験や演習を解いてみて知識の過不足を確認しておくことをおすすめします。
勉強時間を確保する
試験勉強は勉強時間の確保が必要です。IT初心者の学習は、およそ200時間程度必要で、期間に換算すると約2カ月要します。ITの基礎知識がある人は、50〜60時間程度必要となり、3週間〜1か月程度で合格水準に達します。
やる気を維持できるように、無理のかからない範囲で時間を確保して進めるのが良いでしょう。
科目A試験に向けた勉強方法
科目A試験は、これまでの午前試験に相当します。テキストを読み理解を深めるとともに、過去問に目を通しておきます。ここで重要な用語を理解し、反復演習するのがおすすめです。丸暗記とは言いませんが、数年分の過去問を解くと、出題の意図として問われていることが徐々に分かっていきます。
インプットとアウトプットでは、インプットの比率を多めにして勉強しましょう。
科目B試験に向けた勉強方法
科目B試験(午後試験)は、大問形式が小問形式に変更となり、よりクイックに答えられる内容に変わりました。アルゴリズムはロジックを理解することが大切です。
プログラミングは、従来はJavaやPythonなどプログラミング言語の文法や用法をしっかり頭に入れる必要がありました。2023年4月より、疑似言語が取り入れられたため疑似言語の考え方を理解しておくことが求められます。
実際のプログラミング言語に依存しない、普遍的・本質的なプログラミング的思考力が試されますので、解答はしやすくなっています。
科目B試験の勉強は、インプットとアウトプットではアウトプットの比率を多めに確保しましょう。設問の意図を別の人に説明したり、解答を説明したりすると理解度を高められるはずです。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱 【参考】:基本情報技術者試験 科目 B のサンプル問題 【参考】:基本情報技術者試験 科目B サンプル問題 問題冊子
基本情報技術者試験の独学におすすめの参考書
ここでは、基本情報技術者試験の独学におすすめの参考書をまとめました。基本情報技術者試験は通年試験に移行し、全体の時間と設問がコンパクトになったので、取りこぼしのないように準備しましょう。
公式サイトの過去問
情報処理技術者試験の公式サイトには過去の問題と解答が掲載されており、令和元年度秋期試験(2019年10月)までの情報が確認できます。残念ながら2020年以降は、CBT方式へ移行したために過去問が公開されていません。
シラバスを見ると問題の範囲と内容は変わらないので、過去問を見ることはプラスになるでしょう。
【参考】:情報処理技術者試験 過去問題(問題冊子・配点割合・解答例・採点講評)
令和06年 イメージ&クレバー方式でよくわかる かやのき先生の基本情報技術者教室
本書は、参考書と問題集がセットになった総合参考書です。科目Aと科目Bをイラストを交えて楽しく勉強を続けることができます。記憶に残る連想ゲーム方式で、知識の定着を図ります。
▪著者:栢木 厚 ▪ページ数:576ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/11/27 【参考】:令和06年 イメージ&クレバー方式でよくわかる かやのき先生の基本情報技術者教室
【令和6年度】 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集
本書は、テキスト部分に過去問集が加えられています。頻出382問の過去問を徹底研究し、一発合格が狙えます。直前対策に必要な確認リストも付録で掲載されています。
▪著者:高橋 京介 ▪ページ数:768ページ ▪出版社:SBクリエイティブ ▪発売日:2023/12/15 【参考】:【令和6年度】 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集
キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 令和06年
本書は、イラストレータ兼コンピュータプログラマーの筆者が書き下ろした参考書です。イラストを交えながらも、広範な内容をカバーしています。ITの用語のみならず手法や関連法規もしっかり説明されています。本書でも、過去問を重視しており仕上げとして掲載しています。
▪著者:きたみ りゅうじ ▪ページ数:816ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/12/2 【参考】:キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者 令和06年
令和06年 基本情報技術者 合格教本
本書は、これまで好評だった参考書を改定し、令和6年版に対応したものです。新制度をカバーし、さらにスマホやPCからアクセスできる「問題演習Webアプリ」を提供します。問題演習は過去20回分の問題が収録されており、自己採点機能は独学に最適な機能でおすすめします。
▪著者:角谷 一成、イエローテールコンピュータ ▪ページ数:592ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/11/22 【参考】:令和06年 基本情報技術者 合格教本
令和05-06年 基本情報技術者の新よくわかる教科書
本書は、ページ数が少なめで必要最低限の勉強で短時間で合格レベルに到達するための参考書です。イラストと図解で短期間で理解を深めることを目的としています。模擬試験をダウンロード可能ですので、他の参考書を終えた後の仕上げに良いでしょう。
▪著者:イエローテールコンピュータ ▪ページ数:232ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2022/11/10 【参考】:令和05-06年 基本情報技術者の新よくわかる教科書
令和05年【上期】基本情報技術者 パーフェクトラーニング予想問題集
本書は、新制度の問題に特化した問題集です。他の参考書のテキストとセットで用います。科目Aと科目Bが計4セット収録されています。読者特典として、重要・頻出用語集をダウンロード提供します。
▪著者:山本 三雄 ▪ページ数:448ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2022/12/17 【参考】:令和05年【上期】基本情報技術者 パーフェクトラーニング予想問題集
令和04-05年 基本情報技術者 試験によくでる問題集【午前】
本書は、テーマ別問題集で科目A(旧午前試験)に特化した問題集です。内容は午前試験の内容ですが科目Aと範囲と内容が変わらないので、頻出問題の理解を深めるには最適です。特に2020年(令和2年)以降は、過去問が公開されていないため問題集としては価値が高いものとなります。
▪著者:イエローテールコンピュータ ▪ページ数:416ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2022/1/19 【参考】:令和04-05年 基本情報技術者 試験によくでる問題集【午前】
基本情報技術者試験を独学で確実に合格しよう
基本情報技術者試験は、2023年4月(令和5年度)から通年試験に移行しました。CBT方式ですが、解答結果が素点方式から IRT(Item Response Theory:項目応答理論)に基づく評価点方式に変更されています。そのため、序盤のケアレスミスを防ぐ必要があります。
以上を踏まえてしっかりと事前に準備することで、独学での合格が可能です。事前に立てた計画に基づいてしっかりと準備を進めましょう。
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