応用情報技術者試験は午後対策が合格のカギ
システムエンジニアへの登竜門と呼ばれる国家試験の応用情報技術者試験(AP)では、長文読解、記述式問題が出題される午後試験が鬼門と言われています。それは「午前試験が80点取れたのに、午後試験で60点に達せず落ちた」という方が少なくないからです。
勉強すれば合格点を取れる午前試験に対して、午後試験は午前と同じ勉強法では合格が難しいため、特別な対策が必要です。ここでは、応用情報技術者試験の午後試験の攻略法について解説します。ぜひ午後試験対策の参考にしてください。
【参考】:応用情報技術者試験
応用情報技術者試験とは
応用情報技術者試験(AP)は、誕生してから50年以上の歴史がある国家試験です。これまで名称が2回変更されていますが、2009年から応用情報技術者試験として定着しています。
応用情報技術者試験とは「高度IT人材として必要な応用的知識や技能を有し、高度IT人材として方向性が確立できている人」を受験者像とし、レベル2の基本情報技術者試験(FE)の上位資格として位置づけられています。
試験を主催するIPA(情報処理推進機構)の情報処理技術者試験では、受験制限が設けられていないため希望すれば学生でも受験が可能です。
応用情報技術者試験は春期(4月)と秋期(10月)の年2回開催され、午前試験・午後試験それぞれで60%以上の得点が合格の条件です。合算での60%ではないため、午前試験で満点を取っても、午後試験で59%だと合格できません。
午前試験は80問(四肢一択)、午後試験は記述式問題・穴埋め問題となっており、午前と午後で出題方法が変わります。
【参考】:応用情報技術者試験
午後試験の特徴
応用情報技術者試験の午前試験は、四肢一択の問題形式で80問出題されます。問題数は多いものの、参考書を一通り読み、過去5年分の過去問を解くことで合格を目指せます。
一方、午後試験は「応用」という名の通り、実務に即した内容が出題される傾向が強く、実務での応用力が問われます。
出題内容については以下の通りです。
【必須回答】 Q1.情報セキュリティ
【選択解答】 Q2.経営戦略、情報戦略、戦略立案・コンサルティング技術 Q3.プログラミング Q4.システムアーキテクチャ Q5.ネットワーク Q6.データベース Q7.組み込みシステム開発 Q8.情報システム開発 Q9.プロジェクトマネジメント Q10.サービスマネジメント Q11.システム監査
必須のQ1.情報セキュリティ以外、10問から4問を選択して解答します。また、応用情報技術者の午後試験は以下のような特徴があります。
1.出題範囲が広く実務に即した問題が多い 2.午後問題はセキュリティのみ必須で、他4分野は選択式 3.合格ラインは午前、午後それぞれ60%以上(合計ではない)
【参考】:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問題冊子 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午後試験の問題選択におけるポイント
午後試験は必須回答の情報セキュリティ以外、どの分野を選択しても構いません。
アルゴリズムや計算が苦手な方は「Q3.プログラミング」を避けても構いませんし、理系出身でストラテジ系が苦手な方は「Q2.経営戦略、情報戦略、戦略立案・コンサルティング技術」を外して構いません。苦手な分野は避け、得意な分野で勝負しましょう。
また、長文を読み、問題に対する対策、その採用理由、不都合の発生原因などを30字程度で記述する設問がある点も特徴的です。長文の読解力・対応の実践力・応用力が問われる内容が出題されるため、注意が必要です。
午前試験はテキストの丸暗記でも合格点を取れますが、午後試験はITエンジニアとしての思考力・判断力・実践力が問われるため、それなりの準備と訓練をしておかないと合格は難しいでしょう。
【参考】:令和5年度 春期 応用情報技術者試験 午後 問題冊子
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記述式問題の対策
応用情報技術者試験(AP)の午後試験は、午前試験の四肢一択とは異なり、自ら回答を記入する記述式が多くあります。四肢一択であれば分からない問題でも25%の確率で正答できますが、穴埋めや記述式は答えが見つからなければ得点ができないため、以下の対策が求められます。
最初から分野を絞る
午前試験は広く勉強しておくことで得点を得られますが、午後試験は分野を絞ることで得点を確保できます。限られた時間内にあれもこれもと勉強するのは非効率です。必須のセキュリティ分野以外は4〜5分野に絞って勉強するのが良いでしょう。
当日の問題選択も、全ての問題に目を通していたら時間が足りません。最初から決めた分野に対応する問題だけを選択し、解答に専念しましょう。
決めた分野の基礎をしっかり学ぶ
午後試験は事例問題が中心で、事例問題で問われるのは基礎的な知識の有無です。設問の意味や意図を理解できるよう、しっかりと基礎を学ぶことが重要です。この基礎部分ができていないと試験合格は難しくなるでしょう。
短文解答の練習をしておく
午後試験では「〇〇文字以内で延べよ」といった設問が多く出題されます。たとえば、「20文字以内で延べよ」という場合、正答は15文字〜20文字の範囲に収まります。正解が分かっても20文字の答えとなると、難しく感じてしまいます。
また、文字数が足りても他人が理解できないような文章では正答にはなりません。この記述式問題は文章力も問われますので、過去問を用いた訓練や反復練習が必要です。
時間配分を意識する
午後試験は150分の間に5問解答します。1問30分の中で見直す時間を考えると、1問25分以内の解答を目指す必要があります。各問題の解答時間を25分に設定し、その時間内で回答を済ませる練習をしておきましょう。
各問題を25分で終えると、全体で25分の余裕が生まれます。その25分を利用して、解けなかった問題に再チャレンジする、あるいは全ての解答を見直す時間に充てられます。このようにして正答率を高める工夫をしましょう。
何を問われているかを先に確認する
長文問題では、先に何を問われているかを理解することが重要です。設問を理解してから問題文を読むことで、どの部分に注目して読めば良いかがわかります。答えと関係ないようなところは読み飛ばすこともできるため、解答時間の短縮にも繋がります。
なお、設問を理解するのは大事ですが、設問自体の理解にあまり時間をかけすぎないように注意しましょう。設問の意図がわかりにくければ、問題文を読んだあとにも確認できます。
問題のキーワードを見つける
長文問題では、すべての文章をじっくり読む時間がありません。そのため、問題文からポイントとなるキーワードを見つけ、印をつけながら読むのがおすすめです。印をつけることで、自分が問題についてどのように考えたのかがわかります。
問題文を読み返すときや、すべての問題を解き終わって見直しをするときにも、印をつけた部分を見ればどのように解答したのかがわかりやすくなります。
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午後試験でさらに正答率を高めるコツ
応用情報技術者試験(AP)は惜しい失点を防ぐことが合格のカギであり、それは分野や問題の選択にかかっていると言っても過言ではありません。ここでは分野選択のコツ、解答ミスを減らす方法について解説します。
正答率が高い分野を知る
IPAは、これまでの試験の問題・解答・採点講評を公開しています。この採点講評には、各問題ごとに「全体として正答率は高かった」「全体として正答率はやや低かった」といった講評が必ず述べられています。この講評を各問題ごとに時系列で追っていくと、以下のように問題ごとの正答率が分かります。
【正答率が高い】 Q3.プログラミング問題
【正答率が低い】 Q10.サービスマネジメント問題
過去の傾向では、プログラミング問題の正答率が高く、サービスマネジメント問題の正答率は低めであることが分かりました。
ただし、これは受験者の特性にもよるでしょう。現役プログラマーであればプログラミング問題の正答率は高くなり、経験値が低いサービスマネジメント問題は正答率が低くなることが推察できます。
自身の興味分野・得意分野・各分野の過去問の難易度などから、自身が得点を得やすい分野を決め、選択した分野を集中的に学習するという勉強方法が有効だと言えます。
文系、理系の得意分野も考慮する
応用情報技術者試験の出題範囲には、文系向き・理系向きの分野が存在します。例えば、「Q1.経営戦略」や「Q11.システム監査」などは文系に向いていますが、「Q4.システムアーキテクチャ」や「Q7.組み込みシステム開発」は理系向きです。選択に迷った時は自身の出身分野、専攻分野を選ぶのも1つの手です。
未解答、誤解答を減らす
「答えは分かっているのにうまく解けない」「解いたが解答の仕方が間違っていた」といった理由で失敗する例が少なくありません。
▪読解力の不足により、設問の意図を読み違える ▪問題文を熟読せず、思い込みで解答を誤る ▪答えは分かっているのに、表現力の不足で誤った解答をしてしまう
上記のような例も珍しくなく、せっかく勉強して知識があっても正しく解答できないのは何とも惜しいところです。こうしたミスを防ぐには、出題の意図をしっかり理解するところから始める必要があります。問題文を読み、出題者が求める解答を推測しなければなりません。
そのためには、過去問をできるだけ多く解き、その問題や解答に関する詳細の解説をしっかり読み込むことが重要です。その反復練習で次第にコツがつかめ、読解力や文章力が上がっていくでしょう。
記述問題で減点を防ぐ
記述問題では、指定された文字数で正確な解答が求められます。文字数は長くて40文字程度で、その中で指定されたキーワードや正しい文末表現を使っているかどうかが正答のポイントとなります。
なお、誤字脱字や文字数制限は必ず確認しましょう。見直しの時間を必ず確保し、落ち着いて見直すことが大切です。折角正しい答えを書いていても、誤字脱字や文字数の過不足などで減点されることがあります。
応用情報技術者試験に合格するメリット
難易度の高い応用情報技術者試験ですが、合格できれば多くのメリットを享受できます。ここでは試験勉強のモチベーションを高めるためにも、応用情報技術者試験に合格することで得られるメリットを3つ紹介します。
就職や転職で有利になる
応用情報技術者試験の合格率は、例年25%前後を推移しています。同じくIPAが主催しているITパスポート試験の合格率50%程度であることを考えると、取得は困難で資格としての価値が高い試験だと言えます。
そのため、応用情報技術者試験の資格があれば、IT分野への就職や転職で非常に有利となります。資格を活かしてITエンジニアを目指すなら、自分のスキルに合った企業を探してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
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その他の試験が一部免除になる
応用情報技術者試験に合格すれば、以下の高度試験の特定分野が免除になります。どれも難易度の高い試験のため、特定分野が免除になることは大きなメリットです。
・中小企業診断士の第一次試験「経営情報システム」 ・弁理士試験「理工Ⅴ(情報)」 ・技術士試験の第一次試験「情報工学部門」
【参考】:中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除 【参考】:【別表2】 弁理士試験の選択科目が免除される情報処理技術者試験合格者の試験区分 【参考】:公益社団法人 日本技術士会:第一次試験のよくあるご質問
年収アップが期待できる
例として、一般的なシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は431万円(※2024年1月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は一般平均年収と同水準かやや高めであることが分かります。
しかし、応用情報技術者試験のように広く知られた国家資格を持っていれば、知識や技術の証明になるため、幅広い仕事に携われる可能性が高まります。また、企業によっては資格手当を設けている場合もあるので、合格することで年収アップが期待できます。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
午後対策におすすめの参考書5選
午後試験の対策に、午前試験に照準を絞った参考書や、午前試験・午後試験を全て網羅した参考書では粒度が荒くなってしまいます。そのため、なるべく午後試験にフォーカスした参考書や問題集などで学ぶのがおすすめです。
ここでは、午後試験対策の参考書・問題集・おすすめのサイトを紹介します。
2024 応用情報技術者 午後問題の重点対策
午後試験対策では定評のある参考書です。シンプルかつ読みやすく、解説が丁寧で分かりやすいと評判です。付録として、「演習問題解答シート」と「過去本試験問題」のダウンロードができるようになっています。
▪著者:小口達夫 ▪ページ数:895ページ ▪出版社:ITEC(株式会社アイテック) ▪発売日:2023/11/02
令和04-05年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】
応用情報技術者の午後試験に頻出の問題を厳選し、丁寧に解説してあるテーマ別の問題集です。解説では図解を多用しており、苦手分野をトレーニングできます。また、午前試験にも頻出する問題に必要な知識を整理し、午後試験に向けた基礎知識を固めることができます。
▪著者:大滝みや子 ▪ページ数:656ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2022/03/16
【参考】:令和04-05年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】
うかる! 応用情報技術者 [午後] 速効問題集
本書は、応用情報技術者試験における問1の必須問題、問2から問11のうち4問に絞って解き方を紹介している本です。そのためテクノロジ系は掲載されておらず、問1(情報セキュリティ)90問、問2(経営戦略)60問、問9(プロジェクトマネジメント)60問、問10(サービスマネジメント)60問、問11(システム監査)60問を収録しています。
「参考書は1冊にしたい」という方におすすめの書籍です。
▪著者:村山 直紀 ▪ページ数:352ページ ▪出版社:日経BP 日本経済新聞出版 ▪発売日:2023/03/01
令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
本書は、直近に実施された試験はもちろん、旧試験や高度試験も網羅的に分析し、丁寧に開設している本です。過去問から厳選されたサンプル問題を解いていくことで、確実な合格力が身につくことを目指します。
また、最新21回分の本試験午前問題に挑戦できる問題演習アプリ「DEKIDAS-WEB」も付いており、応用情報技術者試験の受験を控える全ての人におすすめです。
▪著者:大滝 みや子、岡嶋 裕史 ▪ページ数:800ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/12/14
【参考】:令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和06年
本書は、全ての解説をイラストベースでわかりやすく読み解いていく本です。試験範囲が広い応用情報技術者試験は、試験内容をきちんと理解することが何よりも重要です。受験に際して、まずどういったところから学習していけばいいのかわからない人は、本書を活用することで基礎知識や仕組みを理解できるようになります。
また、本書に紹介されている過去問を解いていくことで自身の理解度を測ることができるでしょう。
▪著者:きたみりゅうじ ▪ページ数:944ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/12/02
【参考】:キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和06年
おすすめの学習サイト
応用情報技術者試験の受験者にとって、定番の試験対策が無料で行えるサイトです。同サイトの「応用情報技術者過去問道場」では、任意の試験回・分野・模擬試験形式などを条件にして、任意に過去問題を出題することができるため、分野を絞って受験対策ができます。
最新の試験情報や回別の合格率など統計情報もあり、受験生にとっては至れり尽くせりのサイトです。
【参考】:応用情報技術者試験.com-応用情報技術者過去問道場
応用情報技術者をキャリアアップの足掛かりにしよう
ここまで、応用情報技術者試験の午後試験対策を中心に解説しました。午後試験は得意な分野に絞り、着実に60点以上を取るという考え方に立って対策を進めることが合格を勝ち取る秘訣です。
また、いかにして失点を防ぐかという点にも留意しなければなりません。参考書や過去問でしっかりと対策をして、万全の状態で臨みましょう。
応用情報技術者試験に合格すれば、さらなるキャリアアップも夢ではありません。今後転職を考えている方には、特におすすめの資格です。しかし、実際に資格を活かした転職先が見つかるか不安に感じる方も多いでしょう。
そこでぜひご活用いただきたいのがマイナビIT エージェントです。
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