基本情報技術者試験の難易度は?
基本情報技術者試験とは、IPAが主催するIT系の国家資格の1つであり、ITエンジニアの登竜門とされる試験です。
情報処理推進機構(IPA)によると、令和6年1月における基本情報技術者試験の合格率は43.8%です。「難しすぎる」や「簡単になった」など、受験者によって感想が異なりますが、ここでは統計情報に基づいて難易度を解説します。
【参考】:情報処理技術者試験 統計資料 令和6年1月分 基本情報技術者試験
合格の基準点
基本情報技術者試験の合格点は、科目A・科目Bそれぞれ1,000点満点中600点です。注意すべき点は、科目A・科目Bそれぞれ600点以上をとる必要があることです。例えば、科目Aが1,000点満点とれたとしても、科目Bが500点の場合は不合格です。
2024年9月までの試験要綱については、以下のリンクをチェックしましょう。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
なお、2024年10月からは以下に変更されます。合格基準に変更はありません。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
簡単になった?合格率が上がった理由
基本情報技術者試験は、2023年4月より新試験制度に変更されました。旧試験最後である令和4年秋期の合格率は35.6%であり、令和6年1月の43.8%と比較すると合格率が上がっています。
合格率が上がった理由の1つとしては、試験開催時期が年2回からITパスポートと同様の通年開催に変更されたことが大きいと考えられます。自分の都合に合わせた試験日程が組めるため、受験ハードルが下がったのかもしれません。
また、科目B(旧午後試験)の出題方式・出題範囲が変わりました。選択式から共通問題に変更されて問題数が多くなったこと、出題範囲が狭まったことから、旧試験より合格点に届く人が増えたと見られています。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料 【参考】:情報処理技術者試験 統計資料 令和6年1月分 基本情報技術者試験
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そもそも基本情報技術者試験とは
基本情報技術者試験を含む「情報処理技術者試験」は、情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。この試験区分は、IT利活用者(ITユーザ)と情報処理技術者(ITプロフェッショナル)向けに分けられ、基本情報技術者試験は「情報処理技術者」に位置づけされます。
試験には、プログラミング・ソフトウェア・ハードウェアといった技術的なことに加え、システム戦略・経営戦略マネジメントといった経営戦略も含まれます。技術・経営両方の知識が問われるため、勉強する範囲は広いと言えるでしょう。
【参考】:試験区分一覧 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:情報処理推進機構 基本情報技術者試験(FE)
基本情報技術者試験の受験者層
基本情報技術者試験の受験者平均年齢は、令和6年1月で27.3歳でした。また、令和5年度の学生の受験者数は、全体の約3割です。このことから、基本情報技術者試験は社会人2~3年の方、またはITスキルを高めたい学生に人気の資格であることがわかります。
また、近年では子ども向けのプログラミング講座の普及により低年齢からITに関する知識を学ぶ機会が増え、高校生などの学生も受験しています。
出題範囲が広いことなどから基本情報技術者試験に合格するのは「すごい」と言われることもありますが、しっかりと勉強すればITエンジニアとしての実務経験が少なくても合格を狙えることがわかります。
【参考】:情報処理技術者試験 統計資料 令和6年1月分 基本情報技術者試験
ITスキル標準について
情報処理推進機構(IPA)では、高度IT人材のキャリアとスキルを定義した「ITスキル標準」を策定しています。その中で、スキルレベルを以下のように定義しています。
・レベル7:国内のハイエンドプレイヤーかつ世界で通用するプレイヤー ・レベル6:国内のハイエンドプレイヤー ・レベル5:企業内のハイエンドプレイヤー ・レベル4:高度な知識・技能 ・レベル3:応用的知識・技能 ・レベル2:基本的知識・技能 ・レベル1:最低限求められる基礎知識
【参考】:2.ITスキル標準とは -ものさしとしてのスキル標準 | デジタル人材の育成 | IPA
以上のレベル定義に基づき、情報処理技術者試験ではスキルレベルのレベル1から4を対象に、次の試験区分と出題範囲を設定しています。基本情報技術者試験は、レベル2「基礎試験」にあたります。
・レベル4:高度試験 ・レベル3:ミドル試験 ・レベル2:基礎試験 ・レベル1:エントリ試験
【参考】:ITスキル標準V3 2011 1部概要編
下位試験や上位試験との難易度の違い
基本情報技術者試験はITプロフェッショナル向けの資格となり、スキルレベル2に相当します。下位試験である「ITパスポート試験」はスキルレベル1の一般利用者向けの資格であり、上位試験の「応用情報技術者試験」はスキルレベル3に相当します。
ここでは、ITパスポート試験と応用情報技術者試験との難易度の違いについて見ていきましょう。
ITパスポート
ITパスポート試験の出題内容は一般利用者向けの初歩的な内容であるのに対し、基本情報技術者試験の出題内容はITプロフェッショナル向けの専門的な内容です。
ITパスポート試験の合格率は、令和5年9月で50.5%でした。同時期の基本情報技術者試験の合格率は43.8%とITパスポートの方がやや高く、受験の対象者層や出題内容にも違いがあるため、やはり基本情報技術者試験の方が難易度は高めだと言えます。
【参考】:ITパスポート試験 【参考】:統計情報 ITパスポート
応用情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITプロフェッショナル向けの登竜門となる資格です。上位試験として応用情報技術者試験があり、「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」を対象者と位置づけられています。
情報技術を活用した戦略の立案や、システムの設計・開発・運用を主導できることを想定しており、令和5年度春期の合格率は27.2%でした。基本情報技術者試験と比較すると合格率はグッと下がり、難易度が一気に上がったように感じます。
まずは基本情報技術者試験からチャレンジすることで受験ハードルを下げやすくなるでしょう。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
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基本情報技術者試験は意味ない?合格するメリット
基本情報技術者試験は度々「意味ない」と言われてしまいますが、合格することでどういったメリットがあるのでしょうか。
「意味ない」と言われる理由
基本情報技術者試験が「意味ない」と言われる理由は、大きく分けて2つあると考えられます。
1つ目は、国内向けの資格であるため、外資系企業では評価されにくいことです。ヘッドオフィスが海外にあるような企業、もしくは日本人以外の人材が多い企業においては知名度が高くありません。OracleやCisco、AWSなどの資格の方が有利に働くでしょう。
【参考】:オラクル認定資格制度 【参考】:トレーニング & 認定 - Cisco 【参考】:AWS 認定 – AWS クラウドコンピューティング認定プログラム
2つ目は、基本情報技術者試験はITの基礎知識が問われる試験である、なおかつ受験者が多いことです。ITエンジニアとしては比較的初心者が受ける基礎的な試験であり、資格保有者も多いため、「保有していてもあまり意味ないのでは」といった懸念があるのかもしれません。
スキル証明を対外的にアピールできる
基本情報技術者試験の合格は、社会人にも学生にもメリットがあります。社会人に対するメリットは、試験合格によりIT系企業で昇進できる・転職時に自身のアピールポイントとなることです。また、学生が早期に資格を取得すれば希望の企業や職種への採用率が高まることが期待できるでしょう。
さらに、基本情報技術者試験に合格した後は難易度の高い応用情報技術者試験(AP)を目指すことで、将来に向けたステップアップも期待できます。
資格取得は年収アップにつながる
基本情報技術者試験がおすすめのエンジニアには、プログラマーやシステムエンジニアなどが挙げられます。資格を取得することで資格手当やキャリアアップにつなげることもできるため、結果として年収アップを目指せます。
そこで、ここでは資格取得者の参考年収として、システムエンジニアの年収を紹介します。
「マイナビエージェント 職種図鑑」での「システムエンジニア」の平均年収は431万円(※2023年10月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種の「エンジニア/プログラマ」を参考にすると、平均年収592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアは平均年収と同等かやや高いことが分かります。
システムエンジニアが基本情報技術者試験に合格することで、上位職種のマネジメント職への足がかりとなります。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
出題範囲と試験の実施方法
情報処理技術者試験の試験実施においては、情報処理推進機構(IPA)が試験要綱・シラバスを公開しています。ここでは、開示されている試験要綱から試験の出題と試験実施方法について解説します。
基本情報技術者試験の出題範囲
基本情報技術者試験は、試験を受ける者に「基本戦略立案又はITソリューション・製品・サービスを実現する業務に従事し、上位者の指導の下に、次のいずれかの役割を果たす」ことを期待しています。そのため、以下の分類においてスキルレベル2の設問が出題されます。
・テクノロジ系(情報技術領域) (1) 基礎理論:基礎理論・アルゴリズム・プログラミング (2) コンピュータシステム:コンピュータ構成要素・システム構成要素・ソフトウェア・ハードウェア (3) 技術要素:ヒューマンインタフェース・マルチメディア・データベース・ネットワーク・セキュリティ (4) 開発技術:システム開発技術・ソフトウェア開発管理技術
・マネジメント系 (経営管理) (5) プロジェクトマネジメント:プロジェクトマネジメント (6) サービスマネジメント:サービスマネジメント・システム監査
・ストラテジ系 (経営戦略) (7) システム戦略:システム戦略・システム企画 (8) 経営戦略:経営戦略マネジメント・技術戦略マネジメント・ビジネスインダストリ (9) 企業と法務:企業活動・法務
基本情報技術者試験の出題形式・出題数
基本情報技術者試験の出題形式や出題数は以下の通りです。科目A・科目Bともに、1,000点満点中600点の獲得で合格できます。
・科目A試験(小問) 試験時間:90分 出題数:60問 解答数:60問
・科目B試験(小問) 試験時間:100分 出題数:20問 解答数:20問 ※選択問題なし(全問必須)
試験項目は、前述のテクノロジー系・マネジメント系・ストラテジ系の3分類から出題されます。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
基本情報技術者試験の試験実施方法
基本情報技術者試験は2023年4月から新制度となり、試験開催時期が大きく変更されました。以前は春期と秋期の年2回開催でしたが、新試験では随時試験を行う通年制度になりました。試験実施方法については、令和2年からのCBT方式で変更はありません。
受験の申し込み方法も一新され、アカウントを作成して受験の申し込みを行う、というシンプルな申し込み方法に変更されています。詳しい申し込みの流れについては、以下の公式サイトで確認しましょう。
【参考】:基本情報技術者試験(FE) | CBT-Solutions CBT/PBT試験 受験者ポータルサイト
試験合格に向けた独学のポイント
では、実際に試験合格に向けて勉強する際は、どのように学習を進めれば良いのでしょうか。基本情報技術者試験は独学で受験に臨む方も多いので、ここでは独学をする場合のポイントについてまとめていきます。
勉強時間の目安
基本情報技術者試験に合格するための勉強時間は、50〜200時間ほどと言われています。既にITに関する知識をある程度持っている場合は、50時間程度の勉強時間でも合格できる可能性が高いでしょう。基礎知識を一から習得する場合は、200時間程度必要になってきます。
1日の勉強時間を2時間とすると、知識がある人では1ヶ月、ない人では3か月〜4か月で合格を目指せることになります。ただし、出題範囲が広いことから、十分な勉強時間を確保して試験に臨むことをおすすめします。学習スケジュールを立てて、試験日までに出題範囲を網羅できるようにしましょう。
過去問を繰り返し解くのがおすすめ
独学の場合、市販のテキストなどを利用した学習が中心になりますが、効率よく勉強を進めるにはインプットだけでなくアウトプットの機会を十分に設けることが大切です。過去問を繰り返し解くことで、知識をしっかりと定着させましょう。
特に科目Aではこれまでと類似の問題が出題される可能性が高いです。試験制度変更前の問題も含め、できるだけ多くの問題を解きましょう。また、科目Bは試験範囲や出題形式が変わっているため、変更後の過去問を重点的に見る必要があります。テキストを購入する場合は最新のものを選びましょう。
IPAの公式サイトには科目A・科目Bともにサンプル問題や1部の過去問が公開されているため、こちらもチェックしておきましょう。
【参考】:情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化)|IPA 【参考】:過去問題|IPA
事前のITパスポート受験や通信講座などの方法も
ITに関する基礎知識がなく、一から勉強しなくてはいけないという人には、基本情報技術者試験の前にITパスポートを受験したり、通信講座などを利用する方法もおすすめです。
ITパスポートはIPAが主催する試験の中でも最も基礎的な試験で、それまでIT知識がなかった人でも挑戦しやすいです。ITパスポートの出題内容は基本情報技術者試験の範囲にも含まれますので、知識の土台を固めるのに役立つでしょう。
また、自分一人で学習を進めるのが不安な場合は、通信講座などを利用すると効率よく体系的に知識を身に付けることができ、挫折もしにくいです。学習計画を立てるのが苦手なひとにもおすすめです。
【参考】:ITパスポート試験
基本情報技術者試験に合格してステップアップを図ろう
基本情報技術者試験は合格者の平均年齢が若いことから分かる通り、ITプロフェッショナルを目指す学生や社会人に人気のある資格です。資格取得により、学生の方はIT企業への就職活動で差別化を図れ、社会人の場合は会社の昇進審査や転職に有利となります。
しかし、資格を活かすには、それを評価してくれる企業との出会いが重要です。1人での転職活動は骨の折れる作業であり、うまくいかないと感じてしまうこともあります。
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