基本情報技術者試験の合格率はどれくらい?
2023年4月(令和5年度)から通年試験に移行した基本情報技術者試験。
基本情報技術者試験は、IT人材に求められる情報処理の基本的な知識・スキル・活用能力が試される試験です。令和4年度における試験では、約10万人もの人が受験しました。情報処理技術者試験の中では基本レベルですが、一方で「難しすぎる」という声もあります。そこで本記事では、実際の合格率や難易度はどれくらいなのかを解説します。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:試験区分一覧 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
基本情報技術者試験の合格率は上昇傾向
基本情報技術者試験は一般的にそれほど難しくないと思われがちですが、合格率はそれほど高くはありません。ただし、ここ数年の合格率は高め傾向です。ここからは実際のデータを元に、難易度や合格率の推移、社会人と学生の合格率の違いを見ていきましょう。
基本情報技術者試験の難易度レベル
情報処理技術者試験では、難易度を4種類のレベルに区分しています。基本情報技術者試験はレベル2にあたり、資格を取得することでITに関する基本的な知識やスキルの証明になります。レベル1にあたるのがITパスポート試験、レベル3にあたるのが応用情報技術者試験です。
さらに、レベル4に属する試験として、ネットワークスペシャリスト試験やプロジェクトマネージャー試験などの専門試験が挙げられます。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:試験区分一覧
基本情報技術者試験の合格率の推移
基本情報技術者試験は令和5年現在通年実施となっていますが、令和4年度までは春と秋の年に2回行われていました。ここでは、平成21年度から令和4年度までの春秋合計の合格率と、最新の令和5年度4月の合格率を紹介します。
年度 合格率 平成21年度 31.8% 平成22年度 22.8% 平成23年度 25.4% 平成24年度 25.5% 平成25年度 22.5% 平成26年度 23.7% 平成27年度 25.8% 平成28年度 26.6% 平成29年度 22.1% 平成30年度 25.6% 令和元年度 25.7% 令和 2年度 48.1%(年内1回のみの実施) 令和 3年度 40.7% 令和 4年度 37.4% 令和 5年度 56.4%(4月実施分)
昨年までで最も合格率が低かったのは平成29年度の22.1%、最も合格率が高かったのは令和4年度の48.1%です。平成21年度から令和4年度までの春秋累計合格率は27.9%です。
同じくIPAが主催している基礎レベルの、ITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験の合格率は50%程度のため、それほど高いとは言えないことがわかります。
ただし、通年実施が開始となった令和5年度(2023年)4月の合格率は56.4%と、例年よりもかなり高めでした。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料 【参考】:情報処理技術者試験(基本情報技術者試験) 統計資料
CBT移行後に合格率が上がった?
基本情報技術者試験は令和2年度よりCBT方式に移行しており、上述した合格率の推移を見ても、CBT移行後から合格率が上がっています。CBT移行前までは20〜30%程度の合格率でしたが、最新の令和5年度4月の合格率は56.4%と、およそ2倍になりました。
このことから、「問題が簡単になったのでは?」という声も聞かれます。実際、CBT方式によって試験を行いやすくなったことに加えて、令和5年度からは試験時間や問題数が大幅に改定されたことで、合格率が上昇したと考えられます。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料 【参考】:情報処理技術者試験(基本情報技術者試験) 統計資料
学生よりも社会人の方が合格率は若干高め
令和5年度4月の基本情報技術者試験では学生が51.7%、社会人が60.1%と社会人の合格率の方が上回っています。理由として、社会人の方がITの実務に携わる機会が多く、深い知識を持っている方が多いことが挙げられます。
しかし、大学生以上の学生に絞れば70~85%とかなり高い合格率です。小中学生で合格するケースもあるので、実務経験がなくとも勉強次第で十分合格できる資格と言えます。
【参考】:情報処理技術者試験(基本情報技術者試験) 統計資料
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基本情報技術者試験とは
ここからは、基本情報技術者試験がどういう試験なのかを改めて解説します。試験の内容や、試験に合格することで年収がどう変わるのかも見ていきましょう。
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験は、独立行政法人情報処理推進機構であるIPAが主催している試験で、情報処理技術者試験である国家試験の1つです。ITエンジニアの登竜門とも言われている試験で、企業によっては基本情報技術者試験の資格が昇格条件となっていることもあります。
試験はCBT方式で行われており、令和5年度4月より通年実施となりました。そのため、自分の好きな日程で受験可能です。
また、令和4年度の基本情報技術者試験の受験者数は、上期・下期合わせて10万人以上です。受験年によって変動しますが、例年10万人前後が受験するかなりの人気資格と言えます。
【参考】:基本情報技術者試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
基本情報技術者試験の受験者層
令和4年秋期の基本情報技術者試験に合格した方の平均年齢は25.3歳でした。年齢が低い理由の1つとして、受験者のうち学生が占める割合が多いことが挙げられます。学生のうちに基本情報技術者試験の資格を取得することで、IT企業への就職に役立てられます。ちなみに、令和5年度4月の最年少合格者は10歳未満の小学生、最高齢合格者は75歳以上の方でした。
もちろん、現在就労中の社会人にも十分役立つ資格です。社会人受験者ではIT系の職種の方が最も多く、約半数を占めています。特にIT系企業に所属している新人社員には、基本情報技術者の資格取得を推奨している企業も多くなっています。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 平均年齢 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
基本情報技術者試験の内容
基本情報技術者試験は科目A試験と科目B試験に分かれており、両方の試験に合格することで資格を取得できます。試験時間は科目A試験が90分で、問題数60問の四肢択一式です。また、科目B試験は100分で、問題数は20問の多肢選択式です。
科目A試験では「テクノロジ系」「マネジメント系」「ストラテジ系」の3分野から問題が出題され、特にテクノロジ系の問題が多く占めています。科目B試験では「アルゴリズム・プログラム言語分野」「情報セキュリティ」の知識が必要です。合格点はどちらも1000点満点中600点です。
【参考】:基本情報技術者試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
基本情報技術者試験合格者の年収
システムエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は431万円(※2023年5月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は、調査媒体によってバラつきがあることが分かります。
システムエンジニアを含むITエンジニアの報酬は、実績が重要視される傾向があるため、さらに年収を上げるにはスキルアップを図る方法が効果的です。人気の国家資格である基本情報技術者試験に合格すれば、スキル証明ができるので、年収アップや上位職へのキャリアアップに繋がる可能性があります。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
基本情報技術者試験に合格するメリット
ここからは、基本情報技術者試験に合格することで具体的にどういったメリットがあるのかを解説します。
ITの基本知識を身に付けられる
基本情報技術者試験は、IT関連の仕事で活躍するための入門的な試験です。ITエンジニアに必要な基礎知識を浅く広く、体系的に習得することができます。
特に若いうちに合格へ向けた学習をすることで、システムエンジニア・プログラマー・アプリケーションエンジニア・サーバーエンジニア・WEBデザイナーなど、多くの職業における基本知識が身に付きます。
スキルの証明ができる
IT業界は実務経験が重要であり、「資格は役に立たない」という声もあります。しかし、国家資格である基本情報技術者試験に合格していれば、基本的なITスキルが身に付いていることを対外的に証明できます。また、合格することで自らのITスキルに自信がつき、より仕事への意欲が湧いてくるでしょう。
転職や就職に役立つ
基本情報技術者資格を取得すれば、履歴書に保有資格として記入することができるため、より有利に作用します。この資格は、即戦力を求めるベンチャー系企業よりも、大手企業への就職・転職に有利です。
さらに有利な条件で転職したいと考えている方には、プロに相談できる転職エージェントの利用がおすすめです。ITの転職事情に精通したキャリアアドバイザーが、個々の能力に合ったぴったりの求人を提案してくれます。
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基本情報技術者試験に合格するための勉強時間・勉強方法
ここでは、基本情報技術者試験に合格するための勉強時間と勉強方法についてご紹介します。
基本情報技術者試験の勉強時間
基本情報技術者試験に合格するための勉強時間は、人それぞれです。ITに関する知識がある方と文系出身などで全く知識がない方では、勉強時間が大きく変わります。ITに関する知識がない場合の勉強時間の目安は、150時間〜200時間程度です。
一方、ITに関する知識がある場合の勉強時間の目安は50時間〜100時間程度と言われています。ただし、これはあくまでも目安であり、200時間以上の勉強時間が必要な場合もあります。
基本情報技術者試験の勉強方法
基本情報技術者試験について独学で合格を目指す場合、勉強方法が重要です。勉強の仕方によって合格までに要する時間や知識の身に付き方が大きく変わります。ここからは、基本情報技術者試験の勉強するにあたっての順序を解説します。
1.スケジュールを立てる
まずは学習スケジュールを立てましょう。合格までの道筋を明確にさせることで、勉強のモチベーションを維持できます。試験までの時間や試験範囲を把握した上で、自分に適した勉強時間やペースを設定してください。すべての範囲を満遍なく対策するのではなく、頻出範囲や苦手分野を重点的に学習するようなスケジュールプランを立てます。
2.参考書を利用して学習する
スケジュールを立てたら、参考書を活用してインプットを中心とした勉強を行いましょう。まずは参考書にひと通り目を通し、試験範囲や試験内容について理解を深めてください。そして、苦手な部分を重点的に学習することが重要です。時間に余裕がある方は、何度も参考書を読み直して学習することで、知識が定着します。
以下におすすめのテキストを2冊紹介します。
・「【令和5年度】 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集」
ITの知識が全くない状態の未経験者や学生、新社会人の方々でもスラスラと学習を進められるように、多くの図版を用いて丁寧に解説されています。、繰り返し何度も出題されている頻出の過去問(382問)も掲載されており、短期間の一発合格も目指せます。
▪著者:高橋 京介 ▪ページ数:760ページ ▪出版社:SBクリエイティブ ▪発売日:2022/12/20
【参考】:【令和5年度】 いちばんやさしい 基本情報技術者 絶対合格の教科書+出る順問題集
・「2023年度版 ニュースペックテキスト 基本情報技術者」
新しいシラバス(Ver.8.0)に対応するだけでなく、科目B試験の出題範囲・配点の変更にもしっかり対応しています。気になる新試験対策法も掲載されているため、より合格に近づけます。本試験で狙われる論点を、新学習機能によって効率よくマスターできる基本テキストです。
▪著者:TAC株式会社(情報処理講座) ▪ページ数:664ページ ▪出版社:TAC出版 ▪発売日:2022/12/20
【参考】:2023年度版 ニュースペックテキスト 基本情報技術者
3.過去問を活用して演習を行う
試験範囲の内容が理解できたら、過去問にも取り組んでみましょう。基本情報技術者試験の過去問は、 勉強サイトよりダウンロード可能です。過去問を解くことで頻出問題や出題傾向を理解できます。また、過去問を解いたら必ず復習も行ってください。
基本情報技術者試験では、過去問と類似した問題が多く出題されるため、時間に余裕があれば過去問を10年分ほど解くことを推奨します。
【参考】過去問題
基本情報技術者試験に合格してスキルを証明しよう
ここまで、基本情報技術者試験の合格率・受験者層・難易度などについて解説しました。また、試験に合格するための勉強時間と勉強方法もあわせて紹介しました。
基本情報技術者試験の合格率は上昇傾向にあるものの、他の基礎レベルの試験と比較すると難易度は高めです。しかし、基本情報技術者試験はITに関する基本問題が出題されるため、丁寧に対策を行えば合格することは決して難しくありません。
合格すればITのスキル証明となり、転職などのキャリアアップの場でも有利になります。しかし、基本情報技術者試験の資格が転職で本当に生かせるのか心配な方も多いでしょう。
そこでぜひご活用いただきたいのがマイナビIT エージェントです。
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