応用情報技術者試験の難易度はどれくらい?
応用情報技術者試験は高度IT人材を目指すための国家資格であり、情報処理技術者試験の1区分です。プログラマー、システムエンジニア、インフラエンジニアなど、多くのITエンジニアが受験しており、IT資格の中でも代表的な人気資格です。
そんな応用情報技術者試験に関しては、「難しすぎる」「なかなか合格できない」といった声も聞かれます。実際、応用情報技術者試験の難易度はどれくらいなのでしょうか。本記事では、試験レベルや合格率から、応用情報技術者試験の難易度を解説していきます。
応用情報技術者試験に求められる知識
応用情報技術者試験は午前と午後に試験が分かれており、それぞれ時間は150分です。午前は選択式、午後は記述式です。毎年、春(4月)と秋(10月)の2回実施されており、2024年(令和6年)春の日程は4月21日(日)です。
応用情報技術者試験は基本情報技術者試験と似ていますが、基本情報技術者試験はエンジニアとしてキャリアをスタートさせる人やエンジニアを目指す大学生などが多く受験するのに対して、応用情報技術者試験は現役エンジニアも多く受験するのが特徴です。
応用情報技術者試験では、エンジニア職が基礎知識として持っておきたい知識・スキルに関する幅広い問題が出題されます。プログラミングやアルゴリズム、ハードウェアなどのITスキルはもちろん、マネジメントやストラテジー関連の知識も求められます。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:応用情報技術者試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
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応用情報技術者試験の難易度はやや高め
応用情報技術者試験の難易度について、合格率を踏まえて解説します。また、IPAが実施しているその他のIT国家試験の合格率も紹介するので、比較しながらご覧ください。
応用情報技術者試験の合格率
応用情報技術者試験の合格率はIPA公式サイトで公開されています。ここでは、令和元年度からの合格率についてまとめました。
・令和元年度秋期:23.0% ・令和2年度10月:23.5% ・令和3年度春期:24.0% ・令和3年度秋期:23.0% ・令和4年度春期:24.3% ・令和4年度秋期:26.2% ・令和5年度春期:27.2%
合格率は年度によってそこまで大きな差はなく、23〜27%程度で推移していることが分かります。応用情報技術者試験は情報技術者試験の中でも現役エンジニア向けという位置づけのため、基本情報技術者試験などに比べて受験者のレベルも高いことが推測されます。
それにも関わらず、4人に1人程度しか合格できないということは、難易度はやや高めだと言えるでしょう。特にエンジニアとしての経験が浅い場合、合格するには長時間の学習が必要だと思われます。ちなみに偏差値に換算すると、基本情報技術者試験は50前後、応用情報技術者試験は60〜65程度だと言われています。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
他の試験と応用情報技術者試験の合格率比較
令和4年度春期における、他の試験と応用情報技術者試験の合格率をIPA公式の資料から比較しました。
・情報セキュリティマネジメント:61.2% ・基本情報技術者:39.6% ・応用情報技術者:24.3% ・ITストラテジスト:14.8% ・システムアーキテクト:15.0% ・ネットワーク:17.4% ・支援士(情報セキュリティスペシャリスト):19.2% ・ITサービスマネージャ:14.8%
高度な知識技能が必要な試験と比べると、応用情報技術者試験の合格率は高いことが分かります。このことから、情報処理技術者試験の中で見ると、応用情報技術者試験の難易度は中級程度と言えます。
しかし、ITエンジニアの登竜門と呼ばれる基本情報技術者試験と比較すると、応用情報技術者試験の合格率はやはり大幅に低いため、準備せずいきなり受験して合格するのは難しいでしょう。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
応用情報技術者試験の難易度が高めな理由
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験など代表的なIT資格に比べて難易度が高めです。応用情報技術者試験の難易度が比較的高い理由としては、次の3つが挙げられます。難易度が高い理由を知ることで、試験対策も立てやすくなるでしょう。
高度IT人材を目指す人が対象者のため
公式サイトの対象者像の欄には「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」と記載されており、応用情報技術者試験は現役エンジニア向けの試験であることが分かります。
そのため、エンジニア未経験者の方がいきなり応用情報技術者試験に挑んでも、1発での合格は難しい可能性があります。しかし、「今後はITの分野で活躍したい」「ITエンジニアに転職したい」という方には、とても魅力的な資格です。
資格を取得しておけば、未経験からITエンジニアを目指す場合でも、就職・転職活動を優位に進められるメリットがあります。さらに、自分のスキルに合った企業を探してくれる転職エージェントを活用すれば、転職活動をスムーズに行うことができるでしょう。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:応用情報技術者試験
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出題範囲が広いため
応用情報技術者試験は出題範囲が広いのが特徴であり、受験者はまんべんなく知識を備えなくてはいけません。具体的には、プログラミング・アルゴリズム・マネジメント・システム戦略・システム企画など、幅広い問題が出題されます。
特にマネジメントやストラテジ分野の問題は、エンジニアとして長く働いている方でも苦戦する内容です。これらの分野については、経験者でも一から勉強しないといけないケースが多いでしょう。
興味のある分野や、現在の仕事に関わる分野のみ勉強していても、なかなか合格はできません。とはいえ、幅広い分野を勉強することは、エンジニアとしての視野を広げることに繋がるため、出題範囲が広いことは決してデメリットではありません。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
記述式問題があるため
応用情報技術者試験の午後は記述式問題です。選択式問題の場合、知識があやふやな状態でも正解できることがありますが、記述式は覚えた内容に少しでも誤りがあると不正解になってしまいます。そのため、正確に記憶していないと解答は困難です。
また、記述式問題では解答時間が足りなくなる可能性もあります。そのため、問題文を素早く読み解き、的確にまとめる訓練が必要になります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
応用情報技術者試験を受験するメリット
応用情報技術者試験の難易度は比較的高めですが、だからといって受験を諦めてしまうのはもったいないことだと言えます。一部の方からは「ITエンジニアに資格は意味ない」という声がある一方で、応用情報技術者試験の受験者数は例年3万人を超えています。
それは応用情報技術者試験には多くのメリットがあるからです。ここでは、代表的なメリットを4つ紹介します。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
高度IT人材を目指すためのスキルを獲得できる
応用情報技術者試験を受験することで、システムエンジニアやプロジェクトマネージャーなど高度IT人材を目指すためのスキルを獲得することができます。
特にマネジメント職を目指すなら、プログラミング以外の知識を身に付けることは大切です。応用情報技術者試験ではマネジメントやストラテジ系の問題も多く出題されるため、マネジメント職にも適しています。
資格を取得しなくてもスキルを身につけることは可能ですが、資格という目標があった方がモチベーションを保ちやすいうえに、偏りなく各分野を勉強することができます。
資格手当がもらえる可能性がある
応用情報技術者試験は多くの企業に認知されている国家資格のため、企業によっては資格手当制度が設けられていることがあります。資格手当は毎月の給料に上乗せされるものです。難易度が比較的高い資格のため、それなりの資格手当がもらえる可能性もあります。
ちなみに、一般的なシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は431万円(※2024年2月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は一般平均年収と比べて、同水準かやや高めであることが分かります。
システムエンジニアを含むITエンジニアの報酬は実績が重要視される傾向があるため、さらに年収を上げるには、スキルアップを図る方法が効果的です。応用情報技術者試験に合格すれば、年収アップや上位職へのキャリアアップに繋がる可能性が高まります。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
転職時にスキルを証明できる
応用情報技術者試験に合格することで、転職時にスキルがあることを証明できます。資格獲得だけで転職できるわけではないものの、基礎スキルや学習意欲があることを証明する手段として、応用情報技術者試験は有効と言えます。
面接では単に資格取得をアピールするだけでなく、資格を通じて得たスキルやそのスキルの活用例などを具体的に話すのがポイントです。
他の高度試験の一部が免除になる
応用情報技術者試験に合格することで、その他の高度試験を受ける際に特定分野が免除になります。これらの試験は難易度が高いと言われていますが、特定分野だけでも免除になれば他分野に勉強時間を割けるので、効率的に合格を目指せます。
免除になる試験と分野は以下のとおりです。
・中小企業診断士の第一次試験「経営情報システム」 ・弁理士試験「理工Ⅴ(情報)」 ・技術士試験の第一次試験「情報工学部門」
【参考】:中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除 【参考】:【別表2】 弁理士試験の選択科目が免除される情報処理技術者試験合格者の試験区分 【参考】:公益社団法人 日本技術士会:第一次試験のよくあるご質問
応用情報技術者試験に向けた独学のポイント
応用情報技術者試験に合格するための独学方法について解説します。応用情報技術者試験は比較的難易度の高い資格のため、効率的な独学方法を選択することが大切です。他のIT資格においても通用する独学ポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。
独学で合格するための勉強時間目安
応用情報技術者試験に合格するための勉強時間の目安は、200〜500時間程度とされています。ただし、当然ながらエンジニアとしてどれだけの知識があるかによって、必要な勉強時間は変わります。エンジニア経験が全くない方の場合は、500時間以上の勉強時間が必要になるかもしれません。
参考書の問題を繰り返し解く
たくさんの参考書を並行して使うよりも、1つの参考書の問題を繰り返し解く方が記憶に定着しやすく効果的と言われています。参考書には基本何も書き込まず、何度も解けるようにしておきましょう。
時間を測って過去問を解いてみる
応用情報技術者試験は問題数が多いため、時間配分が重要になります。そこで、実際に時間を測って過去問を解いてみることをおすすめします。
IT資格の中には過去問が公開されていないものもありますが、応用情報技術者試験は公式サイトに平成21度からの過去問および回答例が公開されているため、対策は立てやすいと言えるでしょう。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 過去問
難しいなら基本情報技術者試験から勉強する
応用情報技術者試験の難易度が高いと感じる場合は、基本情報技術者試験やITパスポートから受験するのがおすすめです。これらの試験も出題範囲は広めですが、基礎的な問題が多いうえにすべて選択式であるため、難易度は下がります。
応用情報技術者試験の対策におすすめの書籍
上記で触れたように、応用情報技術者試験に向けて独学で勉強をする際に大切になるのが参考書などの書籍を使った学習です。ここでは、応用情報技術者試験の対策におすすめの書籍を3冊紹介します。
令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
本書は、過去問からの出題比率の高い応用情報技術者試験のために、旧試験や高度試験も網羅的に分析し、まとめられている王道の学習テキストです。ほぼ全ての出題範囲をカバーしており、これ一冊で本試験に十分に対応できるレベルで内容が充実しています。
内容が充実している分、ITエンジニア未経験者には少々難しく感じられることもあるかもしれませんが、口コミ評価も高く、本書を使ってじっくり勉強すれば出題範囲を体系的かつ確実に理解できるようになっています。
また、巻末には模擬試験として活用できる「サンプル問題」が用意されており、最新21回分の本試験午前問題に挑戦できる問題演習アプリ「DEKIDAS-WEB」も提供されているなど、試験対策がしやすい仕様です。
▪著者:大滝みや子、岡嶋裕史 ▪ページ数:800ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/12/14
【参考】:令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和06年
本書は、『令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本』と同じ技術評論社から出版されているテキストです。キタミ式イラストIT塾シリーズは、すべての解説がイラストベースでわかりやすいことが特徴です。
応用情報技術者試験に向けて学習を始めるにあたってまず重要となる、「幅広い試験範囲の内容を一通り理解する」という関門を突破しやすいテキストとなっており、実務経験がない方や初めて応用情報技術者試験を受ける人におすすめです。
イラストを用いた視覚的に理解しやすい解説のため、試験勉強に苦手意識がある方でも学習を進めやすいでしょう。
▪著者:きたみりゅうじ ▪ページ数:944ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/12/2
【参考】:キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和06年
2024年度版 ニュースペックテキスト 応用情報技術者
本書は、学習しやすいオールカラーで本試験で狙われる論点を効率よくマスターすることができるテキストです。オールカラー印刷のため、図解箇所が一目で理解できるようになっています。
午前試験・午後試験ともにカバーしたテキストで、午前試験の対策ページでは頻出項目を図表を用いてわかりやすく、午後試験のページでは記述試験対策用に知識レベルを掘り下げ、解答プロセス中心に解説されていることで、効率的に知識をインプットすることができます。
また、学習する順番や関連性を示した「学習map」、アイテムごと・重要度ごとに色分けされた側注、各章末の「確認問題」・巻末の「令和5年度春期試験問題」(どちらも解答解説付き)など、学習をサポートする工夫が随所に施されています。
▪著者:TAC株式会社(情報処理講座) ▪ページ数:780 ページ ▪出版社:TAC出版 ▪発売日:2023/12/15
【参考】:2024年度版 ニュースペックテキスト 応用情報技術者
応用情報技術者試験を取得してキャリアアップしよう
本記事では応用情報技術者試験の難易度について解説しました。応用情報技術者試験の難易度が高い理由がお分かりいただけたかと思います。応用情報技術者試験は他のIT試験と比べて難易度がやや高めに設定されているため、試験に合格するにはしっかり勉強しないといけません。
しかし、難易度が高い分、合格すれば高度IT人材としてのスキルがあることを証明でき、転職や昇格の足掛かりになります。今の仕事に満足していない方や、もっと好条件の企業で働きたい方は、ぜひ応用情報技術者試験合格を目指しましょう。
とはいえ、本当に資格を取得することで転職が有利になるのか、そもそも自分のスキルに合った条件のいい仕事が見つかるのかなど、転職には不安を感じる方が多いのではないでしょうか。
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