応用情報技術者試験はCBT方式で受験できない?
国家資格であり、IT系資格の中でも難易度が高いことでも知られているのが応用情報技術者試験です。高いレベルの知識を求められる試験であり、キャリアアップに有効な資格として人気が高まっています。
そんな応用情報技術者試験ですが、近年さまざまな試験で採用されているCBT方式で受験は可能なのでしょうか?応用情報技術者試験のCBT化についてまとめました。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:応用情報技術者試験
応用情報技術者試験はCBT化されていない
結論として、応用情報技術者試験は2023年時点でCBT化されておらず、試験用紙を使用した筆記試験(PBT方式)を採用しています。大半のIT資格試験がPCを利用したCBT方式を採用している中、なぜ応用情報技術者試験は筆記試験のままなのでしょうか?
その理由として、問題形式との相性や難易度の維持が挙げられます。以下より、応用情報技術者試験の内容やCBT方式について詳しく説明するとともに、応用情報技術者試験でCBT方式が採用されない理由を独自に考察していきます。
【参考】:応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験(PBT方式)
応用情報技術者試験とは
まずは、応用情報技術者試験についてその概要を説明していきます。
同試験は情報処理推進機構(IPA)が主催している情報処理技術者試験の1つであり、難易度としては4段階の内、上から2番目に難しいものです。応用情報技術者は、ITに関する知識や技能が一定水準以上であることを証明する資格であり、国家資格として認定されています。
【参考】:試験区分一覧 【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:応用情報技術者試験
応用情報技術者試験の概要
応用情報技術者試験は午前と午後の2部構成であり、それぞれが2時間半の長丁場です。午前問題は選択式であり、知識を問われる時間勝負の試験です。一方、午後問題は全11問から5問を選択して解答する記述式です。かなりの長文かつ記述式でもあり、難易度は高く本試験の鬼門とも呼ばれています。
なお、午前・午後ともに会場にて行われる筆記試験形式(PBT方式)であり、CBT方式は採用されていません。
対象者が「高度IT人材としての方向性を確立した者」と定義されているだけあって、試験内容も理論から経営まで幅広いIT分野から出題されます。資格取得を取得すれば、高レベルのスキル証明になることから転職でも有利になるでしょう。
応用情報技術者試験を活かして転職を考えている方には、自分のスキルにあった企業を探してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:応用情報技術者試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
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応用情報技術者試験の申し込み方法
応用情報技術者試験は春季と秋季の年2回実施されており、令和5年度(2023年)の場合だと4月16日・10月8日が実施日です。申し込みには期限があり、それぞれ3カ月前である1月・7月中に行わなければなりません。
受験回数の少なさや申し込みから受験まで時間がかかることから、計画的に受験計画を立てなければならない試験であることがわかります。ちなみに受験料は7,500円(税込)です。
【参考】:スケジュール、手数料など
応用情報技術者試験の合格率
応用情報技術者試験は国家資格であるため、合格の基準も明確に定められています。午前午後ともに100点中60点が合格点です。ただし、午前試験で合格点を取れなければ、午後試験は採点すらされないため、せっかく午後試験を解いたとしても採点結果が分からないまま不合格ということもありえます。
IPA公式の統計データによれば、平成21年から令和4年までの合格率は平均22.1%です。受験者数が多いことを考えても、相当難しい試験であることが分かります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
応用情報技術者試験合格者の年収
一般的なシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は431万円(※2023年5月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は、調査媒体によってバラつきがあることが分かります。
システムエンジニアを含むITエンジニアの報酬は実績が重要視される傾向があるため、さらに年収を上げるには、スキルアップを図る方法が効果的です。企業によっては難易度の高い資格に手当や報奨金を出すところもあるので、応用情報技術者試験を突破すれば年収アップも期待できます。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
CBT方式とは
ここでCBTという試験方式について、おさらいしていきます。CBTはComputer Based Testing(コンピュータ ベースド テスティング)の略であり、PC上で試験が完結する方式です。ここではより詳しく見ていきましょう。
CBT方式の仕組み
CBT方式はテストセンターと呼ばれる試験会場に行って、備え付けのPCで受験する試験形式です。一方、似た試験形式であるIBT方式は、自分のPCを使用し自宅で受験する方式です。その点で、CBT方式は不正行為が行われにくいという特徴があります。
CBT方式では複数の日程から選んで受験することができますが、近い日程で全く同じ問題が出題されないように、フォームと呼ばれる試験問題のセットから受験者ごとランダムに問題が出題されます。ただし、受験者数が多い試験では膨大なフォームが求められるため、改良されたLOFT方式などが採用されています。
【参考】:CBTソリューションズ:CBTとは何ですか? - よくあるご質問
CBT方式の申し込み方法
CBT方式での申し込み方法で通常の試験と異なる点は、上記で述べたように受験日程を複数から選べることです。
申し込み時に希望する受験会場を選ぶとともに、希望する日時を選択します。定員が埋まっていれば、他の日程を選んで予約をしなければなりません。日程が分散している分、受験しやすい日程はすぐに埋まってしまう傾向があるので注意が必要です。
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CBT方式のメリット
CBT方式の最も大きなメリットは、前述したように受験日程を柔軟に選択できることです。通常の試験のように受験の日時が1日に決められているわけではないので、自分の都合の良い日時に受験することが可能です。
また、PC上で試験が全て完結することから、誤字や記入ミスが最小限に抑えられることもメリットと言えます。
応用情報技術者試験にCBT方式がない3つの理由
記事前半で述べたように、応用情報技術者試験はCBT方式が採用されていません。そのため、受験の日程を柔軟に決めることができません。
同団体の基本情報技術者試験はCBT方式に対応しているにもかかわらず、応用情報技術者試験にCBT方式が採用されていないのはなぜでしょうか。ここでは、その理由について考察していきます。
長文問題とCBT方式の相性が悪いため
CBT方式の特徴として、受験者は複数の日程から受験日を選べます。仕組みの項で説明した通り、近い日程で同じ問題が出題されないよう受験者ごとに解答する問題はランダムです。これは通常の試験形式に比べて、試験問題自体をより多く用意する必要があることを意味しています。
応用情報技術者試験で出題される午後問題はいずれも問題文が長文であり、大問1つ1つが非常に作り込まれています。さらには選択式でもあるので、受験者が解く以上に問題のバリエーションを用意しておく必要があります。
作り込まれたこのような問題を、毎年試験回数以上に作成することは非常に労力がかかるため、これがCBT方式が採用されない大きな理由と考えられます。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:応用情報技術者試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午後問題が完全な記述式のため
午後問題の解答方法が完全な記述式であることも、CBT方式が採用されない理由であると考えられます。
過去問を参照してみると、問題の解答として数値を記入するだけでなく、字句を記入したり、指定文字以内で記述したりする問題が存在しています。CBT方式において、PC上の解答結果がそのままPC上で自動的に採点が行われると考えると、解答結果に複数の言い回しが存在することや部分点が存在することは、非常に相性が悪いと言えます。
CBT方式における採点を人の手が行うという手段も考えられますが、受験者ごとに解答する問題が異なるため、採点効率が非常に効率が悪くなると推測できます
【参考】:過去問題
試験自体の難易度を維持するため
応用情報技術者試験では問題の解答形式が、CBT方式採用にあたって大きな障壁となっていることがわかりました。一方で、解答形式を自動採点に適した形に絞れば、CBT方式の採用が可能であると言えます。
しかし、問題形式を選択式や数値解答のみに変えることは、難易度の低下を招く可能性があります。CBT方式における出題のランダム化も完璧ではないため、問題自体がリークし、それによって合格率が大幅に上がるかもしれません。
応用情報技術者試験は情報処理技術者試験の中でも、上から2番目の非常に高難易度な資格です。もしも、こうした形で合格率が上がってしまうと、資格自体の品位を落とすことにもなりかねません。こうした懸念が、CBT方式の採用を見送っている理由の1つであると考えられます。
基本情報技術者試験はCBT方式で受験可能
応用情報技術者試験はCBT方式で受験できませんが、前述のように、基本情報技術者試験はCBT方式で受験することが可能です。ここでは、この基本情報技術者試験について詳しく説明していきます。
基本情報技術者試験と出題形式
基本情報技術者試験は応用情報技術者試験より1ランク下の試験であり、対象者は「基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」です。出題範囲は応用情報技術者試験と同様に理論から経営までと幅広いですが、内容は基本レベルであり、難易度もそこまで高くありません。午後問題の解答形式も選択式のみであり、受験のハードルも低めです。
午後問題が応用情報技術者試験と同様に長文形式であるにも関わらず、選択肢の問題のみであることがCBT方式が採用されている理由とも言えます。
基本情報技術者試験の日程と申し込み方法
基本情報技術者試験は2023年4月より通年実施となりました。応用情報技術者試験のように決められた試験日はなく、いつでも自分の好きな日を選ぶことができます。このような試験形式が実施できる理由は、CBT方式を採用しているためです。
申し込みは株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズのWebサイトから行います。全てWEB上で完結する上に、試験日の3日前まで変更が可能なので非常に便利です。
【参考】:情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験(CBT方式)
基本情報技術者試験のスコアレポートと合格率
CBT方式を採用しているため、受験後に「スコアレポート」と呼ばれる受験結果を照会することが可能です。午後問題については、問題ごとの選択状況や正答率も参照することができます。
基本情報技術者試験の合格率は、IPAの統計結果によると、平成21年から令和4年までで平均27.4%であり、応用情報技術者試験と大きく変わりませんでした。合格率に差が見られず難易度に違いがある理由は、受験者層がIT技術に精通していない入門者や学生が多いことが考えられます。
注目すべきはCBT方式を採用した令和3年以降は、合格率が20%台から40%前後へ大きく増加していることです。
これはCBT方式を採用したことで、午前と午後試験を分けて集中力を切らさずに受験できるようになったことや、応用情報技術者試験と並行して受験しようとする実力のある受験者が増えたことが考えられます。
【参考】:統計情報(応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験)
応用情報技術者試験は計画的に勉強して突破しよう
応用情報技術者試験はCBT方式を採用しておらず、今後CBT方式が採用される可能性も低いと推測できます。受験に挑む際は、日程が制限されていること、記述式の午後問題の難易度が高いことに注意しておきましょう。
応用情報技術者試験のハードルは高く感じるかもしれませんが、計画的に勉強を進めて過去問をベースに取り組めば、突破も夢ではありません。もしも、同資格を取得することができれば、資格手当や報奨金により年収アップも期待できます。
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