基本情報技術者試験が2023年から変わる?
基本情報技術者試験(FE)は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が主催する資格試験です。IT系を活用したシステムやソフトウェアを作るために基礎的な知識や技能・実践的能力を持つことを証明する国家資格で、ITエンジニアの登竜門と言われています。
IPAは、2023年からこの基本情報技術者試験の試験制度が大きく変わることを発表しました。主な変更点としては、2022年まで年2回開催であった試験を通年試験にしたことや、出題形式、出題範囲の変更などがあります。
そこでこの記事では、これから基本情報技術者試験の取得を考えている方のために、2023年から基本情報技術者試験がどのように変わるかを解説します。
基本情報技術者試験の変更点とは
IPAは2020年からの基本情報技術者試験に、試験会場に設置されたコンピュータを使用して実施するCBT(Computer Based Testing)方式による試験を導入するなど、時代に合わせた取り組みを行ってきました。
2023年からの変更では、基本情報技術者試験を随時受験できる通年試験とすることで、さらなる利便性の向上を目指すとしています。
この通年試験化に伴い、出題範囲などの変更も併せて行われます。変更点の内容を2022年までと比較して解説しますので、どのように変わったのかをしっかりとチェックしましょう。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化)
春期・秋期試験から通年試験に変更
2022年までの基本情報技術者試験は、上期(4〜5月)と下期(10〜11月)の年間2回の日程で行われていました。
2023年からは、年間を通して受験できる通年試験になります。これによって受験者は自身の都合の良い日時に受験できるようになり、年間で受験できる回数も増えることとなります。
■変更前 上期(4〜5月)と下期(10〜11月)の年2回
■変更後 随時受験可能・年間2回以上受験可能
変更後の試験は2023年4月より開始されます。申し込み受付開始時期は2023年3月です。申し込み方法や再受験規定(リテイクポリシー)については後ほど解説します。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:令和5年度 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の実施予定について
採点方式が素点方式からIRT方式に変更
採点方法が、試験で正解したそのままの点数で評価する素点方式から、IRT方式に変わります。
■変更前 素点方式
■変更後 IRT方式
IRT(項目応答理論:Item Response Theory)は、問題の難易度や周りの回答者と比較することで問題ごとに点数調整が行われる採点方法で、主に採点の公平性を保つことを目的に使われます。
IRT方式により、異なるテスト間でも公平に採点を行うことができ、年間を通しての随時受験や複数回受験が可能です。
午前試験・午後試験が科目A試験・科目B試験に変更
これまでの「午前試験」「午後試験」の名称が、それぞれ「科目A試験」「科目B試験」と変更になります。
■変更前 午前試験/午後試験
■変更後 科目A試験/科目B試験
試験時間・出題形式・問題数の変更
2023年からの科目A試験・科目B試験は、旧午前試験・午後試験に比べて試験時間が短くなり、問題数にも変更があります。
旧午前試験は試験時間が150分で80問出題でしたが、科目A試験では90分、60問出題になります。同じ10分当たりで考えると、解かなければならない問題数が5.3問から6.6問に増えるため、従来よりもスピーディに回答する必要があります。
旧午後試験は試験時間150分で、11題の大問のうち5題を選択して回答する形式でしたが、科目B試験では100分、小問20問出題になり、全ての問題に回答することになります。つまり、従来のような選択問題がなくなり、時間配分もこれまでと変わるため、注意が必要です。
午前試験→科目A試験 ■変更前 ・午前試験(小問) 試験時間:150分 題数:80問 答数:80問 ■変更後 ・科目A試験(小問) 試験時間:90分 出題数:60問 解答数:60問
午後試験→科目B試験
■変更前
・午後試験(大問)
試験時間:150分
出題数:11問
解答数:5問
※選択問題あり
■変更後
・科目B試験(小問)
試験時間:100分
出題数:20問
解答数:20問
※選択問題なし(全問必須)
出題範囲の変更
科目A試験の出題範囲は旧午前試験に準じて変わりありません。一方、科目B試験は、旧午後試験から出題範囲が変更されます。
午前試験→科目A試験 ■変更なし
午後試験→科目B試験 ■変更前 11の大問の中から5問を選択して回答(「情報セキュリティ」と「データ構造及びアルゴリズム」は選択必須) 個別プログラム言語(C、Java、Python、アセンブラ言語、表計算ソフト) ■変更後 「情報セキュリティ」と「データ構造及びアルゴリズム(擬似言語)」を中心にした構成 プログラミングに関する問題は普遍的・本質的なプログラミング的思考力を問う擬似言語による出題に統一
これまでの旧午後試験では、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」の2問が回答必須、「ソフトウェア開発」でプログラム言語(C・Java・Python・アセンブラ・表計算)から1問を選んで回答、残る8つの大問の中から2問を選んで回答する形式でした。
これが、2023年からの科目Bでは、これまで必須回答だった「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」を中心とした小問20問が出題されます。
科目B試験の問題数の内訳については、試験要綱によると、20問のうち「アルゴリズムとプログラミング」(旧「データ構造およびアルゴリズム」)分野が16問、情報セキュリティ分野が4問とされています。
また、プログラミングに関する問題では、これまでのようなプログラミング言語の選択はなくなり、疑似言語により普遍的・本質的なプログラミング的思考能力を問う問題が出題されます。
【参考】:情報処理技術者試験 情報処理安全確保支援士試験 試験要項
この変更で試験問題が簡単になる、ということはありませんが、試験対策としては従来のような幅広い勉強は必要とされず、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」に絞って勉強すれば良いことになります。
2023年度基本情報技術者試験の試験情報
では、2023年度の基本情報技術者試験の試験情報について見ていきます。申し込み方法などをよく確認してから試験に臨みましょう。
申し込み方法
IPAは、2023年3月15日から基本情報技術者試験の申し込み受付を開始しています。受験資格はなく、誰でも受験可能です。
申し込みはインターネットで行います。初めて受験申し込みを行う人は、まずIPAにてマイページアカウントを作成し、利用者IDとパスワードを取得します。なお、作成した利用者IDはIPA主催の他の情報関連試験(ITパスポート試験を除く)でも使うことができます。
登録が終わったら、受験予約を行います。マイページにログイン後、「CBT試験申込」より手順に従って入力・選択をすれば申し込み完了です。
試験日と試験会場
2023年度の試験は2023年4月5日より開始予定です。受験申込をする月から起算して3ヶ月後までの試験日時が選択可能です。
試験会場は株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズ(CBTS)が認定する全国のCBTテストセンターです。なお、試験会場によって開催する試験日時が異なる場合があります。
【参考】:基本情報技術者試験・情報セキュリティマネジメント試験の申込受付開始日等について
合格発表日
受験月の翌月中旬に、合格者の受験番号がIPA公式サイトにて発表されます。また、IPAのマイページからも確認できます。
合格者には、経済産業大臣から「情報処理技術者試験合格証書」が交付されます。合格証書の発送時期は、IPAホームページに掲載されます。直近の合格発表・合格証書発送予定日は以下の通りです。
■2023年4月受験:5月17日発表、6月14日証書発送 ■2023年5月受験:6月14日発表、7月12日証書発送 ■2023年6月受験:7月14日発表、8月10日証書発送
【参考】:IPA:基本情報技術者試験(CBT方式)
リテイクポリシー(再受験規定)
リテイクポリシー(再受験規定)については以下の通りです。
■一度受験申込をした試験区分の再申し込み 申込済みの試験の終了時刻を過ぎたら、再申込が可能になります。なお、システムの都合上、終了時刻から数時間~1日程度かかります。
■一度受験した試験区分の再受験日 前回の受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降を、受験日として指定可能です。なお、前回の試験を受験せずに欠席した場合、このリテイクポリシーは適用されません。
【参考】:基本情報技術者試験:サンプル問題セット・リテイクポリシーの公開
2023年からの基本情報技術者試験で気をつけたいこと
試験の実施方式や出題範囲などの大きな変更についてはお分りいただけたと思いますが、その他の気になるポイントをチェックしていきましょう。
午前試験免除は継続される?
IPAの認定を受けた講座を受講すると1年間午前試験が免除になる「午前試験免除制度」は、「科目A試験免除制度」として継続されます。制度の内容にも大きな変更はありません。
従来は年間の試験回数が2回だったため、指定講座を受講した後の1年間で2回の午前免除の機会がありましたが、2023年4月に通年試験となった後は、受講後1年間の中で行う受験において何回でも午前免除の申請ができます。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:午前試験免除 基本情報技術者試験(FE)
問題数の変更への対策はどうすればいい?
科目A試験、科目B試験ともに、旧午前試験・午後試験は時間が短くなりましたが、時間当たりで解く問題数は増えています。そのため、問題を素早く読み取り、回答をスピードアップする必要があります。
そのためには、学習内容をインプットするだけでなく、参考書や問題集などを解く練習の回数をこなすことが重要です。実践的に問題に当たって解けば解くほど、回答速度は速くなります。IPAでは科目B試験のサンプル問題も公開していますので、確認しておきましょう。
【参考】:IPA 「基本情報技術者試験 科目B試験のサンプル問題」PDF形式
これまでの基本情報技術者試験の時間配分で対策してきた方は、新しい試験時間である科目A試験の90分、科目B試験の100分という時間の長さを意識してできるだけ多くの問題を解き、時間配分の感覚を身につけることをおすすめします。
これまで勉強したことは活用できる?
科目A試験は、旧午前試験対策と出題範囲に変わりありませんので、従来の勉強で得た知識をそのまま活用することができます。
一方、科目B試験についても、旧午後試験で必須回答問題であった「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」の内容になるため、これらについて勉強したことはそのまま活用できるでしょう。
ただし、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」以外の旧午後試験対策として勉強した知識については、基本情報技術者試験で活用できる可能性は低くなります。
当然のことながらこれらの知識も技術者として働いていく上で必要なものであり、無駄になることは決してありませんが、あくまで科目B試験対策として考えると、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」を中心に勉強を進めることをおすすめします。
過去の基本情報技術者試験用のテキストは使用できる?
これまでの基本情報技術者試験対策のために、学習用テキストを用意した方も多いでしょう。しかし、2023年からの試験では出題範囲に大きく変更があったため、2022年までに出版されたテキストには使えるものと使えないものが出てきます。
2022年以前のテキストの中でも、午前試験対策の内容や、午後試験の「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」に焦点を当てた部分は、2023年からの試験対策にもそのまま役に立つでしょう。
ただし、午後試験のアルゴリズムに関しては、C言語やJavaなど旧午後試験で選択できた個別の言語の言語の知識ではなく、基本的なプログラミング的思考に関する箇所を学習に役立てましょう。
すでに2023年の基本情報技術者試験対策テキストも多く発売されています。これから対策勉強を始める方は、2023年版のテキストを入手して勉強することをおすすめします。
2023年からの基本情報技術者試験の変更点をしっかり押さえて対策しよう
基本情報技術者試験が通年試験化されたことで、従来は年に2回だけだった受験の機会が増え、自分の都合に合わせて受けることができるようになり、大幅に利便性が改善されました。
試験が受けやすくなったことは大きなメリットですし、試験自体の難易度は変わりませんが、従来の試験対策の勉強をしてきた方にとっては、試験時間や試験範囲の変更には戸惑いもあるかもしれません。変更点をしっかりと押さえて2023年からの基本情報技術者試験対策を行い、合格を目指して勉強に励みましょう。
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