ITエンジニアのOSの選び方は?

ITエンジニアにとって、開発環境を整えるのに避けて通れないのがOSの選択です。デジタル化の進む現代社会においてはITエンジニアの領域も広がりを見せており、それぞれの開発領域に合わせた動作OS(オペレーティングシステム)の選択が求められています。
そこで本記事では、主要なOSの特徴を踏まえ、各領域でどのOSが最適と言えるかについて解説していきます。
ITエンジニアが使う主要なOSの種類

OSの種類は用途に応じて多数リリースされています。プログラム開発環境では、主にWindows・macOS・Linuxが用いられています。以降で各OSのメリットとデメリットについて解説していきます。
Windowsのメリットとデメリット
WindowsはWindows 95以降、爆発的に利用者が増えました。理由は標準的にインターネットが利用できGUIベースの操作環境であるため、情報端末として業務利用からエンターテイメントまで利用の幅が広がったからです。
出荷台数も非常に多いので、統合開発環境(IDE)もWindows版に注力しています。そのため無償版の他、有償版も比較的低コストで開発環境を整備でき、種類も豊富です。アプリケーションも、オフィス業務ソフトウェアからモバイルデバイス用まで多岐にわたり開発することができます。
また最近では、Windows Subsystem for Linux(WSL)によりLinux環境も簡単に構築可能です。
デメリットとしては、出荷台数が多いためセキュリティ攻撃の標的になりやすいことです。ウイルス対策はしっかりと行うことで被害を抑制でき、セキュリティパッチも頻繁に提供されますので、しっかりと運用対策を行って利用することが大切です。
macOSのメリットとデメリット
macOSは、Apple社の思想に共感したユーザーが利用を継続する傾向がありましたが、日本でも海外でもその支持は広がり続けています。直観的な操作環境が提供されるので、ウェブデザインやDTPに活用されることが多いです。そのためデザイナー系の用途でメリットが大きいです。
macOSはApple社の製品ですので、iOS開発環境との親和性が高いことがメリットです。Swiftの利用もmacOSでは簡単で、macOSとiOSのアプリケーション開発がともに可能です。
ただし、会社で利用する業務端末では伝票処理やオフィス業務の対応が求められることからWindowsが採用されることが多く、特に日本国内ではこの傾向が見られます。
そのためmacOSの出荷台数が拡大しにくい状況にあり、これはスケールメリットを享受できずに本体価格やソフトウェアライセンス費用が高止まりすることを意味します。コストパフォーマンスではWindowsに分があると考えられます。

Linuxのメリットとデメリット
LinuxはオープンソースのUnix系OSです。LAMP(Linux・Apache・MySQL/MariaDB・Perl/Python/PHP)の実績あるスタックを構成可能です。低価格・高信頼のシステム構築が可能で、デスクトップからサーバー用途までカバーします。
Linuxは、基幹業務でも活用する場面が増えてきています。特にDockerやKubernetesの利用はLinuxの活用事例を飛躍的に増加させました。
デメリットとしては、オープンソースのため自己責任で対応することが求められる点が挙げられます。デスクトップ業務ではWindowsやmacOSのアプリケーションが使いやすいので、生産性を考えるとバックエンドサーバーでの使用をメインに利用するのが良いでしょう。
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そもそもOSとは

OSとは「オペレーティングシステム」の略で、コンピュータシステム動作時にユーザーとハードウェアを仲介するシステムソフトウェアを指します。類似語で「オペレーションシステム」という単語もありますが、こちらは機械操作や操作端末を指す用語で、通常使用するOSとは異なります。
OSはユーザーの利便性を向上するために、以下の基本機能を提供します。
ハードウェアの操作と管理
ハードウェアを動作させるには、専用の言語(プログラミング言語)で正確に動作指示を与える必要があります。システムを稼働するためには、搭載ハードウェアを詳しく理解する必要があります。ユーザーが直接ハードウェアを操作することは簡単なことではありませんので、OSが代わりにハードウェアを操作し実行する形式をとります。
ハードウェアへのアクセスはOSの他、ユーザーアプリケーションからもリクエストされる場合があります。ユーザーアプリケーションからのアクセスについてはハードウェアを隠蔽し、標準APIを提供することで管理性を向上させています。
システム資源の管理
コンピュータシステムはCPU・メモリ・ストレージを接続し、データ転送とコマンドリクエストを発行して処理します。これらのCPU・メモリ・ストレージ等はシステム資源と呼ばれ、最適な管理が求められます。OSはシステム資源の利用と管理を効率的に行うことを1つの目的としています。
さらに、マウス・キーボード・モニターや各種USBデバイス等の制御が必要ですし、通信装置や通信ポートの制御、およびプロトコル制御も発生します。そのため、OSは各デバイスに対応するドライバーを提供し、デバイス制御や通信プロトコルの制御を実行します。
OSの各機能を提供するモジュール間の整合性を維持し、同期することでシステム資源の利用効率を向上し、ハードウェア性能を最大化できるよう調整します。
ユーザーアプリケーションの実行と最適化
コンピュータシステムを利用する目的は、ユーザーが求める処理や手続きをコンピュータを利用し効率的に実行することです。OSはユーザーアプリケーションを実行するための標準APIを提供し、スケジューラ―機能により優先順位付けしたり、システム資源を占有することでより効率的にアプリケーションを利用可能にします。
OSの構成要素
OSはユーザーの求める処理や手続きを仲介するために、次に挙げる代表的なモジュール群で構成されています。
◾️カーネル OSの中核となる機能で、ユーザーアプリケーションとハードウェアを仲介します。電源投入後、ローダーによってメモリにロードされ、ハードウェア管理と監視を開始し利用可能な状態に設定します。
メモリー管理やCPU管理あるいはI/O管理等をプロセッサの特権を使い、効率的に制御します。ユーザーはシステムコールによりカーネルへ要求を発行し、処理を依頼します。カーネルはユーザーのプログラムをプロセスとして管理し、要求に応じてシステム資源を割り当て、ファイルやI/Oのアクセス要求を受け付けます。
◾️デーモン・常駐プロセス ユーザーアドレス空間のメモリーに常駐し、サービスを仲介したり監視したりするプログラムを指します。主に、OSロード時にバックグラウンドで起動し常駐プロセスとして処理を行います。ユーザー空間に常駐していますので、プロセスステータスを確認するコマンドで稼働状況が確認可能です。
◾️コマンド OSの処理を実行するシステムコマンドと、ユーザー処理を実行するコマンドやユーティリティーが提供されます。
◾️ライブラリ OSの提供APIとなるシステムライブラリや関連ライブラリが提供されます。SDK等の開発環境として提供される場合もあります。

ITエンジニアのOSの利用傾向

エンジニアの職種は多様で、開発で使用するOSもそれぞれ特徴があります。そのため、業務とOSの特性に合わせて選定することが求められます。ここでは、OS別にその利用傾向を整理しておきましょう。
Windowsを活用するエンジニア
Windowsは万能型ですので、多様な業務に対応します。顧客へ提案を行ったり、ドキュメント作成を行う場合はWindowsが有効です。そのため営業エンジニアやプロジェクトの成果物作成にはWindowsが最適です。同様にオフィスアプリケーションを使う場合もWindowsが候補となります。
また、統合開発環境(IDE)としてMicrosoft Visual Studioを使用する場合は、最新版投入が早いWindows環境が適しています。
macOSを活用するエンジニア
macOSはグラフィックデザインやDTPに強みがあります。ユーザーインターフェース設計やグラフィックス系の開発エンジニアは、作業効率化の観点でmacOSが候補となります。同様にiOS向け開発においても、macOS上で開発することで生産性向上が期待できます。
Linuxを活用するエンジニア
ウェブ系システムやサーバー利用にはLinuxはうってつけです。サーバーエンジニアやデータベーススペシャリストはLinuxの操作に慣れておくのが良いでしょう。DockerやKubernetesのコンテナソリューションやオーケストレーションはLinuxが必要となります。
CLIを使ったバッチ処理についてもLinuxが良いでしょう。そのため導入エンジニアや保守エンジニア・運用エンジニアの比重が高い業務はLinuxが適しています。
OS選定のためにITエンジニアの職種を理解しておこう

上記で解説したように、ITエンジニアが選ぶべきOSは携わる分野によって異なります。「PCを買いたいけどWindows PCとMacどっちが良いかわからない」といった場合にも、自身が携わる、あるいは携わりたい分野に合わせて選ばなければなりません。
ITエンジニアの職種分類
ITの適用領域はどんどん増えておりますので、職種は細分化されています。具体的には以下のような分類があります。
◾️システム担当範囲による分類 システムの分担や責任範囲で分類します。プロジェクト全般の責任をもつエンジニアを「プロジェクトマネージャ」と言います。この他にプロジェクトのIT技術の一貫性を保証する「システムエンジニア」や、専門分野を持つ「ITスペシャリスト」等があります。
「ITスペシャリスト」は分野に応じて、「データベーススペシャリスト」「ネットワークスペシャリスト」「IoTスペシャリスト」等に細分されています。また、インフラ全般を担当する「インフラエンジニア」もあります。
◾️作業工程による分類 職種は、プロジェクトの工程において分類することもあります。開発工程を担当する「開発エンジニア」、テスト工程を担当する「テストエンジニア」、導入工程を担当する「導入エンジニア」、保守を担当する「保守エンジニア」「運用エンジニア」等があります。
◾️職制ごとの分類 営業活動に比重を置く「営業エンジニア」や、アプリケーション知識の豊富な「アプリケーションエンジニア」等があります。個々のシステム固有のスキルを持つ場合もあり、ウェブ系システム担当の「ウェブエンジニア」やAIを担当する「データサイエンティスト」や「データ分析エンジニア」等があります。
上記の通り、ITエンジニアの呼称は多岐に渡り、今後も市場拡大に応じて細分化が進むと考えられます。従来のITエンジニアの区分や求められるスキルについては、情報処理推進機構の試験区分が参考になります。必要に応じてご確認ください。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 試験区分一覧
各職種に関する知識を身につけることが大切
以上のように、ITエンジニアの職種はさまざまあります。一口にITエンジニアと言っても、その仕事内容は全く異なる場合もあるのです。OSをはじめ開発環境を整えたいときには、それぞれで必要となる作業内容や開発したいものの特性を理解することが大切です。
前提となる開発環境の構築について知識が深まれば、各企業の開発現場においてもより高度な、あるいは幅広い業務に携われる可能性が高まります。
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これからITエンジニアを目指すならキャリアプランも考えよう

ITスキルを身につけ、これからITエンジニアを目指そうという人は、目指す分野を決めるため、あるいはその分野でのキャリアプランを考えるために、各職種の年収や将来性なども知っておくと良いでしょう。
例えば、代表的な職種であるシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑」での平均年収は431万円(※2024年10月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種の「SE・プログラマ(顧客向けシステムの開発・実装)」を参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の民間給与実態統計調査における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアは一般平均年収と同等か、やや高めであることが分かります。ただし、システムエンジニアはプロジェクトマネージャーなどへのキャリアアップで年収を上げていくことができます。
また、AIなどの成長分野は、その人自身のスキルにもよりますが他の分野に比べても年収が高い傾向があります。このように、各職種でどのようなキャリアプランが描けるのかをリサーチしておきましょう。
【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
用途に応じた最適なOSで業務を効率化しよう

ITエンジニアの業務は多様化しており、OSをはじめ開発環境の選択肢も広がっています。業務に適したOSをベースに作業することで、ITライフサイクル全般の効率化が可能です。自身の業務に適した環境で、OSの特徴に合わせた活用を行うことをおすすめします。
これからITエンジニアを目指す場合にも、開発環境に関する知識は身につけておくべきです。知識があることで、未経験者でもITエンジニアとしての評価が上がるでしょう。
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