管理者の方がエンジニアの目標設定を行うには
管理者としてエンジニアを管理し、育成する場合、エンジニアに適切な目標を設定することが、エンジニア本人や企業にとって重要です。
目標設定によって、長期的なエンジニアの成長度合いや、企業への貢献度が大きく変わっていきます。そのため、管理者はエンジニアの目標設定を適切に行い、その過程と結果を管理する必要があります。
この記事では、管理者の方のために、エンジニアの目標設定の重要性や目標設定のポイント、目標設定の評価のためのコツについて解説し、エンジニア1年目・3年目・5年目の目標設定の具体例も紹介します。ぜひ参考にしてください。
エンジニアの目標設定の重要性
まず、エンジニアが適切に目標設定を行うことが、具体的にどのようなメリットをもたらすのかについて解説します。
エンジニアの将来のビジョンを具体化させる
目標設定の大きな目的の1つが、エンジニアの方向性やキャリアプランを明確にすることです。
将来どのようなエンジニアになりたいのかによって、どういった知識・スキルを習得し、経験を積めば良いのかが変わります。そのため、方向性の決定が早ければ早いほど、エンジニアが目指す将来像に真っ直ぐ向かうために使える時間が増えます。
管理者はエンジニアの目標設定を通して、単なる業務目標の達成を目指すだけでなく、本人がエンジニアとしてどのような将来像を描き、どのようなキャリアパスを考えるのかを把握することが重要です。
エンジニアのモチベーションの向上
エンジニアは日々の業務をこなすだけでは、モチベーションを保つことが難しいものです。目標を設定することで、目標を達成することの喜びを感じ、毎日の仕事にもやりがいを感じられます。
企業で長く勤められるかどうかも、仕事にやりがいを感じられるかどうかが大きく影響します。目標設定をしっかり行い、エンジニアに長く活躍してもらえる環境を作りましょう。
企業の成長の原動力となる
エンジニアのスキルアップやキャリアアップは、企業の業績アップや成長につながります。管理者がエンジニアの目標設定を通して適性や方向性を見極め、育てていくことができれば、数年後には企業を支える人材となります。
エンジニアの目標設定のポイントとは
エンジニアの目標を適切に設定するためには、いくつかのポイントがあります。個人目標と事業目標を意識すること、スペシャリスト志向かマネジメント志向かを見極めること、大きな目標に向かって小さな目標を逆算して設定することです。
個人目標と事業目標を意識する
エンジニアの目標は、個人目標と事業目標を意識して設定しましょう。個人目標とは、エンジニア個人として達成したいタスクや、身に付けたいスキルなどのことで、事業目標とは、会社としてエンジニアに達成を期待する目標値や身につけて欲しいスキルなどのことです。
これを混同すると、適切な目標が立てづらくなります。管理者は企業の目標を達成するためにエンジニアに事業目標目線の目標設定を期待しがちですが、エンジニアは個人目標を達成しようとする方がモチベーションが上がるためです。
各エンジニアの特性や志向をしっかりととらえて目標設定を行い、それぞれの個人目標の達成の延長線上で事業目標が達成されるよう、個人目標と事業目標がリンクする目標設定ができれば理想的です。
スペシャリスト志向かマネジメント志向か
エンジニア個々の将来への志向は、専門分野を極めたいスペシャリスト志向なのか、チームや組織をまとめてマネジメントしたいマネジメント志向なのかに大きく分けられます。入社から3〜5年程度経ったエンジニアには、将来的にどちらへ向かいたいのか、キャリアビジョンを確認しましょう。
スペシャリスト志向の場合は、高度な資格の取得や、さらに技術を高めるための学習、周辺分野の知識の習得など、さらに専門分野を極め、企業の技術力向上に貢献できる人材になることが期待できます。
マネジメント志向の場合は、メンバーを管理し、プロジェクトリーダーなどプロジェクトを円滑に進めるスキルや、コミュニケーション能力を向上させ、将来的に管理職やマネージャー職で活躍してもらうことができるでしょう。
どちらの人材も企業にとっては重要です。エンジニアの目標設置を通して、スペシャリスト志向、マネジメント志向の人材をバランスよく育てることが、組織の安定的な運用につながります。
目標とするキャリアパスから逆算する
エンジニアの目標設定をする時には、まず将来どういった仕事をしたいか、何を達成したいかなどのキャリアビジョンを明確にしておきましょう。そして、それを達成するためにその手前で達成するべき小さな目標を立てて行きましょう。
そうすることで、目標設定がとりあえずの形だけのものにならず、自分の将来につながる大切なものであるという意識を持って達成に取り組むことができます。
まだビジョンがはっきりしない若手のエンジニアであれば、「〇〇さんのような仕事ができるようになりたい」など、具体的に手本にしたい人を挙げて、ロールモデルに設定するのが効果的です。
エンジニアの目標達成を評価するために
管理者はエンジニアの目標達成を適正に評価する必要があります。そのためには、定量的な目標を設定することと、目標達成の期限を定めるという2点が重要です。
数値を盛り込み定量的な目標を設定する
目標設定をする場合、「フロントエンドエンジニアとしてのスキルを向上させる」のように曖昧で数値化できない、いわゆる定性的な目標も重要ですが、これではどの程度達成できたかの指標が明確でなく、評価を行うのが難しい場合があります。
そのため、定性的な目標を達成するため、さらに具体的に数値で表される、定量的な目標を設定することも有効です。
例えば、前述の「フロントエンドエンジニアとしてのスキルを向上させる」という定性的な目標のために、「2ヶ月に1度勉強会に参加する」や、「業務関連資格を1つ取得する」などの定量的な目標設定があると、客観的に評価しやすくなります。
目標達成の期限を決める
目標設定を行うときは、目標達成の期限を設定しましょう。期限がないと、いつまでに達成すればいいか分からなくなり、目標達成への行動になかなか着手しないことになりかねません。
設定する目標の内容によって、1ヶ月・3ヶ月・半年・1年くらいのスパンで適切な期限を切りましょう。そうすることで、エンジニアも期限を守るというモチベーションを保つことができ、管理者も進捗の確認を行いやすくなります。
エンジニアの目標設定の具体例
ここでは、エンジニアの1年目・3年目・5年目における目標設定の具体例を挙げ、解説していきます。実際の目標設定の参考にしてみてください。
エンジニア1年目の目標設定
新人のエンジニアとして入社した1年目は、エンジニアはまだ会社についてよく分からず、仕事の内容を覚えることに精一杯でしょう。この時期は、業務内容の習熟・基本的な技術の習得・必要な基礎的資格の取得などが分かりやすい目標設定となるでしょう。
管理者としては、新人エンジニアがどのような人材なのかを見極める必要があります。目標設定とその評価を通して、設定した目標にどのような姿勢で取り組むか、進捗に対する意識は高いか、専門知識の習得度合いの速さはどの程度かなど、エンジニアの特性をよく把握しておきましょう。
■1年目のエンジニアの目標設定の具体例 ・3ヶ月で業務マニュアルを通読する ・半年で基本的な業務を行えるようになる ・1年以内に基本情報技術者試験に合格する
エンジニア3年目の目標設定
新人エンジニアも2年目にはおおむね業務をこなせるようになり、3年目になると会社や仕事にも慣れ、後輩の指導もするようになる時期です。安定した業務ができるようになり、会社の中でも業務の推進を担うメンバーとして見なされるようになります。
エンジニア自身の一層の技術向上を目指すとともに、社内のより広い範囲や社外にも目を向けてもらい、自分だけでなく、チームや組織の向上に貢献できるような目標設定ができると良いでしょう。
■3年目のエンジニアの目標設定の具体例 ・開発でよく使うライブラリをまとめてナレッジを作成する ・自動化による業務効率化で日々の定常業務の時間を20%短縮する ・2ヶ月に1度インフラエンジニアの社外勉強会に参加し、会社へフィードバックする
エンジニア5年目の目標設定
エンジニアも5年目になると、自分自身でスペシャリスト志向、マネジメント志向の意識も明確になってくるでしょう。スペシャリストとして技術を極めるか、プロジェクトマネージャとしてチームや組織を率いるか、どちらを目指すかによって、立てる目標は大きく変わっていきます。
管理者としても、会社のため本人のためを考えて、個々のエンジニアそれぞれにどのようなキャリアパスを歩んで欲しいという思いもあるでしょう。しっかりと話し合って、目標設定を行うことをおすすめします。
■5年目のエンジニアの目標設定の具体例
■スペシャリスト志向の場合 ・スペシャリスト向けの専門的な資格を1つ取得する ・月に3本ずつ後輩のコードレビューを行う ・機械学習の新しい技術を取り入れた実装を担当する
■マネジメント志向の場合 ・プロジェクトにおける納期と進捗管理を行う ・クライアントと予算や納期などの交渉を行えるようになる ・開発チームのエンジニアの目標設定を行い、管理する
エンジニアの目標設定を適正に行って継続的に成長できる組織を作ろう
ここまで、管理者の方に向けて、エンジニアの目標設定の重要性やポイント、具体的な目標設定例について解説してきました。目標設定がエンジニア本人だけでなく、企業にとっても大きな意味を持つことをおわかりいただけたと思います。
エンジニアが高いモチベーションを保ち、適性に合ったキャリアパスを歩んでいくことで、エンジニアと企業は共に成長を遂げていきます。ぜひ、エンジニアとよく対話をしながら目標設定をしてみてください。
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