エンジニアにとっての職務経歴書とは
どの職種でも転職の際には、「履歴書」と「職務経歴書」を応募企業に提出します。履歴書は学歴と職歴(入退社の日付)を記すだけのシンプルな「自己紹介」ですが、職務経歴書は、これまでの業務経験の内容やスキルを記す、いわば「戦力・戦歴申告書」です。
一般企業では、それぞれの会社の企業文化の違いなどから、職務経歴書では応募者の実力がどれくらいのものか推測できない面があり、それほど重視されないこともあります。しかし、ITエンジニアの転職では、即戦力として必要な部署に配置できるかどうかの重要な判断材料になります。
職務経歴書に書く項目
職務経歴書に決まった書式はありませんが、エンジニアの職務経歴書は下記の項目について記載するのが一般的です。
●経歴概要 : 携わってきた業務の概略を数行でまとめる ●得意とする分野やスキル : 入社後に活かせる経験と知識を箇条書きでアピール ●テクニカルスキル : OS・言語・フレームワーク・クラウドの使用年数やスキルレベル ●職務経歴 : 関わったプロジェクトで、どのような立場でなにをしたかを記載 ●資格 ●自己PR
この中でもっとも重要なのは「職務経歴」つまり関わったプロジェクトです。プロジェクトの目標や規模、使用した言語、プロジェクトでの立場などを簡潔にまとめます。テクニカルスキルの一覧表も必須です。
エンジニアの職務経歴書の目的
職務経歴書は、それを読んだ採用担当官に「面接したい」と思わせるのが目的です。そのためには、必要項目を記載した骨組みの要所要所(注目してほしいポイント)に、肉付けが必要です。
多くの場合、職務経歴書にはどのプロジェクトも無事に目標を達成したように書かれていて、そこに違和感を覚える採用担当者は少なくありません。
どんなプロジェクトにも必ず「難所」があり、それをクリアするためのメンバーの創意と工夫があったはずです。応募者がそこにどう関わったかを一言書くことによって、プロジェクト経歴が肉付けされ、血が通います。それによって、現場で活かされたあなたのスキルや仕事ぶりを採用担当官に印象づけることができます。
採用担当者の中にはエンジニア経験のない人が含まれていることもあり、骨組みだけの経歴書ではあなたのスキルレベルや仕事ぶりが伝わりにくい場合があります。
職務経歴書の書くときの心構え
職務経歴書の書き方の1番のポイントは「知ってほしい自分」について書くことです。自分の得意分野でも、仕事の流儀でも、入社したらやりたいことでも良いでしょう。それを採用担当者に伝えることで、ミスマッチを防ぎ、入社後に仕事に不満を抱くことも少なくなります。
「知ってほしい自分」について書く場所は自己PRの欄だけではない
自己PRの欄は、いわば職務経歴書の「まとめ」の欄で、そこで新しい主張を持ち出すのは唐突な感じがします。採用担当者は、そのアピールが「関わったプロジェクト」のどこに結びついているのかが分からない場合が多いからです。
自己PR以外の各項目でも、「知ってほしい自分」をアピールできる箇所に、頭の中でアンダーラインを引き、一言肉付けをする工夫をしましょう。
職務経歴書の書き方
職務経歴書の各項目の書き方を説明します。
経歴概要の書き方
「経歴概要」は職務経歴書全体の要約です。入退社情報や経験した業務内容を3~4行の文章で簡潔に記載しましょう。
職務経歴(関わったプロジェクト)の書き方
「職務経歴」はもっとも重要な項目で、採用担当者はここに注目して読み込みます。関わったプロジェクト単位に記載しますが、書く順番は直近のものから書いていく逆編年体形式がおすすめです。
各プロジェクトごとに、下記の項目を記載します。
●プロジェクト概要 : 業界名、開発システムの種類など ●期間と規模 : プロジェクトの期間と参加人数 ●プロジェクトでの立場 : PM、PLなど ●開発環境 : 使用言語、OS、DBなど ●担当フェーズ : 要件定義、基本設計、詳細設計、結合テストなど、上流・下流のどの工程に参加したかを記載する ●業務内容 : 仕様書作成、〇〇システムの設計、導入テストなど、担当フェーズをより具台的に記載 ●取り組み : プロジェクトの難所をクリアするために行った工夫など、自分がアピールしたいことに焦点を合わせて記載する
上記でとくに重要なのは、「取り組み」の項目です。この記事の初めに述べた「骨組みへの肉付け」はここで行います。
開発プロジェクトには必ず「難所」があり、ビジネスサイドとのジレンマもつきものです。そういう場面であなたが「何を提案できたか」がエンジニアの力量(技術力の深さ)を計る最大の目安になります。
言い換えると、ビジネスが求める要件やユーザーエクスピアリエンスに対して、エンジニアとしてどんな提案ができたかが、採用担当者がもっとも知りたいことです。
テクニカルスキルの書き方
テクニカルスキルの欄には、使用できるOSや言語、DBを一覧表にまとめます。それぞれに使用期間とスキルレベルを記載することが大切です。
スキルレベルは、OSなら「通常使用に問題なし」「環境設計・構築が可能」など、どの程度使いこなせるかが分かるように記載しましょう。プログラミング言語なら「最適なコード記述が可能」「指導・改修も可能」「基本的なプログラミングが可能」などです。
注意したいのは、使用したプログラミング言語やフレームワークのバージョンをかならず記載することです。バージョンが書かれていないと、その技術に対しての理解の深さ(何がどう変わって、どんなメリットやデメリットがあるのか)を疑われる可能性があります。
「得意とする分野やスキル」の書き方
職務経歴(関わったプロジェクト)やテクニカルスキルの項目で記載した中で、とくにアピールしたい得意分野やスキルを記載します。
志望した会社(働きたい業界)は自分の得意分野を活かせると、あなたが判断したところでしょうから、採用採用担当者から見ても「刺さるポイント」になる可能性が大です。
SE(システムエンジニア)なら、次のような分野で「得意」をアピールすることができます。
●クライアントからのヒアリングと要件分析・定義 ●クライアントの要求に最大限に応えるための最適な使用言語、OS、DBの選択 ●潜在バグを可能な限り排除するためにプログラミングの方針、思考をチームが共有する ●システム試験で見つかったバグを最短期間で修正する対応経験 ●プロジェクトマネジャー、プロジェクトリーダーとして経験
【得意分野の書き方の例】 建設現場の作業進捗管理システムの開発(職務経歴のAプロジェクト)において、元請会社会社の現場責任者へのリアリングを行い要件定義を行いました。とくに、作業工程の遅れの要因を詳しく聞き取り、チェックポイントを可視化するシステムに結びつけました。また、当プロジェクトでPLとして、基本設計の環境設定とチームメンバーへのコーチングを担当しました。
自己PRの書き方
職務経歴書には「技術スキル」をアピールする欄はいろいろあるのに対して、「ヒューマンスキル」をアピールする欄がありません。自己PRでは、あなたの職業人、組織人としてのヒューマンスキルをアピールしましょう。
しかし、単に「コミュニケーション能力には自信があります」と書いても、説得力も真実味もありません。かといって、長々とエピソードを書くスペースもありません。実は、ヒューマンスキルやコミュニケーション能力について、説得力のある書き方をするのはけっこう難しいのです。
考えてみると「得意とする分野やスキル」も自己PRの1種なので、自己PRで書くことに困った場合は、この項目を省略することも可能です。または、シンプルに、普段仕事を行う上で気を付けていることや挑戦中の資格など、モチベーションの高さをうかがわせることを書いても良いでしょう。
【自己PRの例文】 システム開発会社にSEとして3年間勤務し、医療法人や美容店チェーンなどのiOSアプリ開発を行ってきました。クライアントのヒアリングや要件交渉をしっかり行い、無理のないプロジェクト計画を作成し、管理・運営できるのが私の強みだと考えています。
採用担当者が職務経歴書で読みたいこと
採用担当者が知りたいのは、エンジニアがどんなプログラミング言語やフレームワークを「一応使えるか」ということではなく、プロジェクトの難所でどんな技術を選択したか、どんな提案ができたかということです。
また、どんなプロジェクトに関わったのかより、「どう関わったのか」を知りたいと思っています。それをうまく表現するのは難しい場合もあるでしょうが、職務経歴書に血を通わせるというつもりで、考えてみてください。
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