フリーランスエンジニアについて
ITエンジニアは専門性の高い職種です。特にプロ意識の高い方は、組織に縛られるよりもフリーランスエンジニアとして独立したいと考えるでしょう。
しかし、「フリーランスエンジニアは実際に稼げるのか、生活不安はないのか」といったさまざまな不安をぬぐい去ることができず、組織に安住する方も少なくありません。ここでは、フリーランスエンジニアの年収や将来性、活躍の方法などを多面的に考察してまいります。
フリーランスエンジニアとは
そもそも、フリーランスエンジニアとはどんな職種や働き方を指すのでしょうか? フリーランスエンジニアとは一言で表せば、「プロのエンジニア」です。プロスポーツ選手と同じ立ち位置です。特定の組織に属さず、自らの力で仕事を獲得し、その成果物の対価として収入を得るのがフリーランスエンジニアです。
フリーランスエンジニアになる方法
では、どうすればフリーランスエンジニアになれるのでしょうか?
フリーランスは個人事業主です。自営業と同じです。都道府県税事務所に「個人事業の開廃業届出書」を提出します。基本的に、確定申告は自分でしなければなりません。健康保険は国民健康保険、年金は国民年金に加入します。住民税、所得税も自分で支払います。一見、面倒なことに思えますが、独立する以上は避けて通れません。
他、派遣登録をして派遣社員として働く方法もありますが、エンジニアの仕事内容を考えると、わざわざ会社員エンジニアから派遣エンジニアに転職するメリットはありません。
フリーランスエンジニアが契約をとる方法
フリーランスエンジニアになる最大の不安は契約を取ることでしょう。フリーランスが仕事を得るためには自ら動く必要があり、自分の能力と望んだ報酬に見合った仕事を探すのは骨が折れます。まして仕事を得る機会は無数にあり、絶対的に不足していると言われるITエンジニアなら、なおさらです。
ここでは、そんな契約を取る方法について手短なところから4つご紹介します。営業が苦手な方もいるでしょうが、ここは自らが営業部員になった気で、積極的に営業活動をしましょう。
1. 前職の職場、取引先にアプローチする よく知る前職の職場や取引先に声をかけておき、案件があれば声を掛けてもらい、「業務委託契約」を交わして仕事を請け負います。よく知っているクライアントなので、仕事はやりやすいでしょう。
2. クラウドソーシングを利用する 在宅ワークが主体になりますが、案件は豊富にあります。短期の仕事を選択することにより、隙間時間を埋める際にも便利です。まずはクラウドソーシングサービスに登録し、ある程度実績を積んでおくのが良いでしょう。
3. フリーランスエージェントを利用する フリーランスを対象に仕事を紹介をしてくれるエージェントがあります。こうしたところを通すと、希望する職種や案件を紹介してもらえる可能性が一気に高まります。
4. ブログやSNSで宣伝する 結果が出るまでに時間は掛かりますが、ブログやSNSで自己アピールするのも手です。他、フリーランスエンジニアの交流会などに参加し、人脈を広げるのもよいでしょう。
フリーランスエンジニアのメリットとデメリット
会社員エンジニアと比較して、フリーランスエンジニアになるメリットは多々ありますが、一方でデメリットがあるのも事実です。
メリット、デメリットを見極めた上で転身の決断をしましょう。流れや感情に任せて行動し、後で後悔することがないよう、しっかりと自身で正しい判断をされることをおすすめします。以下、メリット・デメリットについて述べていきます。
フリーランスエンジニアのメリット
これはエンジニアに限りませんが、フリーランスになるメリットはおおよそ以下の通りです。
1. 収入アップが見込める 後ほど詳しく触れますが、フリーランスで仕事を請け負うと、ほぼ全額が自分の収入となります。マージンや手数料、管理費といったものがないため、基本的には会社員よりも収入は増えます。
2. 自由な時間が増える シフト制、フレックスタイム制の定着で、会社員も時間的には比較的自由な働き方ができる時代となりましたが、フリーランスの良さは、時間コントロールが自分でできるということです。極端な話、1ヶ月の収入が倍になれば、翌月は丸々バカンスに費やしても構わないのです。それくらい時間に拘束されることがなくなります。
3. 自分で仕事を選べる 会社員である限りは、仕事に好き嫌いは言えません。フリーランスは好きな分野、得意分野の仕事を選ぶことができます。すべて自分の自由裁量で決められます。
4. 仕事に関係すれば経費計上して節税ができる サラリーマンには必要経費というものがほぼありません。フリーランスは仕事に関係するものであれば、すべて必要経費として計上できます。パソコン、通信費、交通費、接待交際費、衣服費、家賃、水光熱費などがそれにあたります。
5. 在宅や避暑地など、好きな環境で働くことができる コロナ禍で在宅ワークが当たり前になってきましたが、フリーランスはさらに自由な環境で仕事ができます。テレワークでほぼ仕事が完結できる時代ですから、バカンスを兼ねて南国の島のロッジを借りて仕事をしても構わないのです。
フリーランスエンジニアのデメリット
続いて、フリーランスのデメリットについて確認しておきましょう。ここをしっかり確認しておかなかったために、フリーランスへの転身を後悔する方がいます。デメリットを飲み込んだうえで転身を決意することが大切です。
1. 収入が安定しない フリーランスは定収がありません。仕事が来なければ、無職です。失業保険もありません。すべて自己責任です。病気や事故に遭うと、いきなり無収入になるので、蓄えや自費保険への加入が必要です。
2. ボーナスや有給休暇などの福利厚生がない 意外に見落とされがちですが、フリーランスにはボーナスがありません。月収が倍増して喜んでいたら、ボーナスがないため、年間を通したらさほど収入増にならなかったという例があります。
さらに収入の項目と重複しますが、有給休暇もないため、仕事ができない問題が発生した場合は無収入になります。家のローンなど、ボーナス払いになっているローンは見直しておくか、ボーナス積み立てをしておくことをおすすめします。
3.メインの業務以外の雑務が増える ここも見落としがちですが、日々の帳簿付け、確定申告、納税、各種手続きはすべて自分で行います。こうした業務を代行してくれるサービスもありますので、これらのアウトソーシング費用も考えておいた方がよいでしょう。
3.社会的信用がダウンする場合が多い 大きな企業に勤めていた人は、フリーランスになると一気に信用力が低下します。今までクレジットカードやローンの与信が通っていたものが、いきなり通らなくなります。ステータスの高いクレジットカードなどは在職中に取得しておくことをおすすめします。
フリーランスエンジニアの収入
フリーランスエンジニアの収入は個人差があるので推察するしかありませんが、推察する前にエンジニアの一般的な標準単価を確認しておきましょう。ITベンダーにエンジニアの派遣を依頼するとおおよそ以下の人月単価が提示されます。以下は大手ITベンダーが提示するエンジニアの最低単価です。
▪プログラマー : 60万円/月 ▪初級SE : 80万円/月 ▪中級SE : 100万円/月 ▪PM : 120万円/月 ▪ITコンサルタント : 150万円/月
これをベースに会社員エンジニア、フリーランスエンジニアの年収を推定してみましょう。
会社員エンジニアの年収
会社員エンジニア本人が給与として受け取るのはクライアントに提示した金額の半分弱です。一般的に会社が支払う人件費はおおよそ、月収×17と言われています。
例えば、月収35万円の社員なら、35万円/月×17で年間595万円の人件費が掛かります。クライアントに人月単価80万円で提示した初級SEが年間10カ月稼働すると、800万円の売上となります。この800万円から先ほどの595万円を引いた残りの205万円が会社の粗利益です。
ちなみに厚生労働省が発表の賃金構造基本統計調査によるとSE(システムエンジニア)の平均年収は約550万円です。
参考:賃金構造基本調査2019
フリーランスエンジニアの年収
フリーランスエンジニアは基本的にはクライアントから得た報酬がそのまま売上となります。
フリーランスSEが月額報酬80万円で10カ月稼働すると、800万円程度の売上が見込めます。そこから交通費、通信費などの諸経費を差し引いて700万円弱程度が年収となります。フリーランスエンジニアは会社員エンジニアと比較すると15%~20%程度収入は増える計算になります。
フリーランスエンジニアが年収1,000万円を稼ぐ方法
フリーランスプログラマーで月80万円以上を稼ぐのは厳しいかもしれませんが、SEであれば月100万円程度の案件はかなりあります。仮に120万円/月として年間10カ月稼働とすると、1,200万円の売上を得ます。ここから必要経費が200万円/年と見積もっても手元には1,000万円が残ります。
ちなみにフリーランス白書2020によると、フリーランスで年収1,000万円以上を稼ぐ人は全体の11.8%です。一般会社員で年収1,000万円を超えるのは全体の5%前後と言われますので、フリーランスの方が年収は高いことが分かります。
参考:フリーランス白書2020
フリーランスエンジニアの将来性
ITエンジニアの人材不足は大きな問題となっていることはご承知の通りです。特にDXの推進、AIやIoT、ビッグデータなどの新たな成長分野の拡大に対応できるIT人材が大きく不足しています。こうした状況を踏まえて、フリーランスエンジニアの将来性を考えてみましょう。
フリーランスエンジニアの需要はさらに高まる
会社員エンジニアは簡単には解雇できませんので、仕事をしていなくとも給料はもらえます。新しい技術を身に付けなくとも失業はしません。会社員エンジニアは時には会社にとってお荷物的な存在となります。
エンジニアを他部門に配置転換し、エンジニアの仕事をアウトソーシングする企業が増えているのは、当然の流れでしょう。会社員エンジニアと比べて、フリーランスエンジニアは企業が必要とする時にだけ働いてもらえば良いので、企業としても掛かる経費は抑制できるというメリットがあります。
実際に多くの企業は雇用の流動化、アウトソーシングの活用を掲げ、直接人件費の削減を進めています。むしろ、フリーランスエンジニアにとっては労働環境は好転しているのです。
DX人材として活躍
日本のITの当面の大きな潮流はDX(デジタルトランスフォーメーション)です。DXへの対応をしない企業は淘汰されると言われています。DX需要は非常に大きく、DXエンジニアは休む暇がありません。フリーランスエンジニアはDX対応の期限と言われる2025年までの4年間は安泰でしょう。
しかし、その先を見据えて、ステップ・アップ・プランをしっかり描くことが必要です。プログラマーやシステムエンジニアは歳を重ねて、同一職種を続けることには無理があります。プログラマーならシステムエンジニアを、システムエンジニアならプロジェクトマネージャーを目指すべきです。
そのためには自己研鑽、自己啓発に励むことです。会社員時代は会社が教育機会を与えてくれます。フリーランスは自ら、その機会を作り出す必要があります。どんな時代にも対応できる、常に成長を続けるフリーランスエンジニアであっていただきたいと思います。皆さんのご活躍を祈っています。
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