ネットワークスペシャリスト試験とは
ネットワークスペシャリスト試験とは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が主催する情報処理技術者試験の1つで、目的に適したネットワークシステムを設計・構築・運用するスキルを認定する国家資格試験です。
近年IT化が進み、ネットワークインフラの重要性はさらに高まりつつあり、これからネットワークエンジニアとして働きたい方、スキルアップや転職のためにネットワーク関連資格の取得を考える方も多いでしょう。
この記事では、ネットワークスペシャリスト試験の受験を検討している方のために、試験の概要や、取得して活かせる仕事、勉強方法などについて解説します。
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ネットワークスペシャリスト試験の概要
ネットワークスペシャリスト試験は、IPAが主催する12区分の情報処理技術者試験の中でも最も高度なレベル4に位置付けられており、ITエンジニアとして専門的な知識を持つことを認定する国家資格です。
ここでは、どのような試験なのか詳しくみていきましょう。
試験概要
ネットワークスペシャリスト試験は、ネットワークを専門分野とし、情報セキュリティを含む情報システム基盤の企画・要件定義・運用・保守などの業務において、中心となる役割を担う人材を受験対象としています。
また、求める技術水準として、ネットワークについて幅広い見識を持ち、状況に応じた選択を行えることが要求されます。受験者に関する制限はないため、年齢や学歴を問わず挑戦することができます。
【参考】:ネットワークスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
試験日
ネットワークスペシャリスト試験は令和元年まで秋期に実施されていましたが、現在は春期の実施で、4月に行われます。令和5年度(2023年)は、4月16日(日)に実施されました。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:スケジュール、手数料など
試験会場・受験料
試験地(地域)を申し込み時に選択し、試験日の約2〜3週間前に発送される受験票に記載される試験会場で受験します。
受験料は7,500円(税込)です。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験:よくある質問
試験時間・出題形式・出題数(解答数)
ネットワークスペシャリスト試験は、試験日1日を通して、午前Ⅰ・午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱの4区分に分けて試験が行われます。
それぞれの詳細は以下の通りです。
■午前Ⅰ
試験時間:9:30~10:20(50分)
出題形式:多肢選択式(四肢択一)
出題数:30問
解答数:30問
■午前Ⅱ
試験時間:10:50~11:30(40分)
出題形式:多肢選択式(四肢択一)
出題数:25問
解答数:25問
■午後Ⅰ
試験時間:12:30~14:00(90分) 出題形式:記述式 出題数:3問 解答数:2問
■午後Ⅱ
試験時間:14:30~16:30(120分) 出題形式:記述式 出題数:2問 解答数:1問
【参考】:ネットワークスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ネットワークスペシャリストを活用できる職種
ネットワークスペシャリストを取得することで、ネットワークエンジニアや、ネットワークと関わりの深いセキュリティエンジニア、また、ネットワークの知識を活かしてフルスタックエンジニアとして活躍することもできるでしょう。
ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアは、ネットワークを設計し、ルータやスイッチなどのネットワーク機器を設置して運用・保守を行うエンジニアです。
ネットワークスペシャリストを取得することで、ネットワークの専門家としての知識や能力を対外的に証明することができます。高度なスキルを持つネットワークのスペシャリストとしてより幅広い現場で活躍できるようになったり、将来を見据えたキャリアアップを目指して転職を検討したりできるでしょう。
セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは、ITインフラの中で、セキュリティに配慮したシステム設計や運用を担い、未然に外部からの攻撃や情報漏洩を防ぐエンジニアです。
近年は、スマートフォンの普及やクラウド環境の活用など、様々なネットワーク環境や通信経路に配慮したセキュリティを構築する必要があり、セキュリティエンジニアの業務内容にはネットワーク関連の知識も必要とされます。
ネットワークスペシャリスト試験では情報セキュリティも試験範囲となっているため、取得することによりセキュリティエンジニアとしてのスキルアップが見込めます。
フルスタックエンジニア
フルスタックエンジニアは、開発速度の向上や資金を抑えることを目的に、通常複数人で行うWebアプリケーションなどの開発を1人で行うエンジニアです。
Webの画面側を構築するフロントエンドと、内部処理を担うバックエンドの両方のスキルを活用して業務にあたりますが、アプリケーションはネットワーク通信を行うことが多く、フルスタックエンジニアにもネットワークの知識が必要です。
ネットワークスペシャリスト資格を取得することで、ネットワークに強いフルスタックエンジニアとして活躍できるでしょう。
ネットワークスペシャリスト資格を活用できる仕事の年収
ネットワークスペシャリスト資格を活用できる代表的な職種であるネットワークエンジニアの年収は、「マイナビエージェント職種図鑑」での平均年収は380万円(※2023年11月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のIT技術スペシャリスト(特定技術(DB・NW・セキュリティ等))を参考にすると、平均年収758万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、ネットワークエンジニアは一般平均年収よりも、やや低めから、高めであることが分かります。
ネットワークエンジニアは、一般的に運用や保守を経験したのち、上流工程(要件定義・ネットワーク設計・提案など)に関わるようになることで年収が高くなる傾向があります。自らのスキルを証明できる資格を取得して、より年収の高い会社への転職も選択肢として考えられます。
【参考】:マイナビエージェント職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
難易度と試験区分
ここでは、ネットワークスペシャリスト試験の難易度や、試験区分に関する情報について説明します。
ネットワークスペシャリスト試験の難易度
IPAの統計情報によると、ここ数年のネットワークスペシャリスト試験の合格率は以下の通りです。
・令和元年度秋期:14.4 % ・令和3年度春期:12.8 % ・令和4年度春期:17.4 % ・令和5年度春期:14.3 %
合格率は15%前後で、IT系資格試験においてはトップレベルの難易度であると言えます。実務経験者でも十分な対策勉強を行わなければ合格は難しいレベルの難関資格です。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
試験区分の詳細
ネットワークスペシャリスト試験の4つの試験区分はそれぞれ特徴があります。それぞれの内容をよく把握しておきましょう。
■午前Ⅰ
午前Ⅰの試験時間は50分です。マークシートを使用した四肢択一式で、30問出題され全問に回答します。基準点は満点の60%です。
IPAが主催する応用情報技術者試験(レベル3)と同じ範囲の問題が出題されます。午前Ⅰでは、ネットワークに直接関係ないシステム監査や経営戦略マネジメントに関する問題も含めて、幅広い問題が出題されるため、出題範囲を確認して勉強しておきましょう。
■午前Ⅱ
午前Ⅱの試験時間は40分です。マークシートを使用した四肢択一式で、25問出題され全問に回答します。基準点は満点の60%です。
主にネットワーク分野、セキュリティ分野からの問題が出題されますが、コンピュータシステム、開発技術の問題も出題されます。各分野の深い知識が問われる難問が多い傾向にありますが、ネットワークとセキュリティに重点を置いて勉強すると効率的でしょう。
■午後Ⅰ
午後Ⅰの試験時間は90分です。記述式で、中規模の問が3問出題され、うち2問を選択して回答します。基準点は満点の60%です。
具体的なネットワーク設計や構成、運用を想定した3つのケースの問題から、2つを選んで回答します。ネットワークシステムやネットワークサービスに関する知識を用いて、問題文から何を問われているかを理解し、適切に記述回答することが求められます。
■午後Ⅱ
午後Ⅱの試験時間は120分です。記述式で、大問が2問出題され、うち1問を選択して回答します。基準点は満点の60%です。午後Ⅰと同様に、ネットワーク設計や運用・保守・障害対応・セキュリティ技術を扱う事例から2問出題され、どちらか1問に回答します。
問題文は高度なネットワーク知識を持っていないと理解することも難しいほどの高難易度です。ネットワークに関する深い知識と経験が必要とされるとともに、長文の読解力と、適切な回答を記述する文章力も必要です。
他のIT試験との難易度を比較
ここでは、ネットワークスペシャリスト試験と他のIT試験との難易度を比較してみましょう。比較対象として、ネットワークの知識が欠かせない試験である「情報処理安全確保支援士」と「CCIE」の2つを選びました。
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は、IPAが主催するIT資格の中でも最高レベルのスキルレベル4に相当する試験です。スキルレベルとしてはネットワークスペシャリスト試験と同等であり、サイバーセキュリティに関する知識や技能を証明します。
試験に合格した後に所定の手続きを行うことで、「情報処理安全確保支援士(登録セキスペ)」の資格保持者になります。
情報処理安全確保支援士試験の合格率は、令和5年度春期では19.7%でした。合格率のみで難易度を比較すると、合格率14.3%のネットワークスペシャリスト試験の方が高いように思えますが、そこまで大きな差はありません。
【参考】:情報処理安全確保支援士試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
CCIE
CCIE(Cisco Certified Internetwork Expert)は、シスコが提供するシスコ技術者認定の1つです。シスコ技術者認定はレベルによって、「エントリー」「アソシエイト」「スペシャリスト」「プロフェッショナル」「エキスパート」の5つに分けられます。CCIEは最高難易度であるエキスパートレベルの試験です。
シスコは合格率を公表していないため数字を元に難易度は割り出せませんが、ネットワークスペシャリスト試験もIPAの資格の中では最高難易度レベルの試験であるため、合格は容易ではないことが分かります。
また、シスコでは「採用担当者の71%が、認定資格によって、応募者の能力に対する信頼度が増す」としており、転職などにおいて資格保有者の優位性を示しています。
【参考】:エキスパート認定 - Cisco
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ネットワークスペシャリスト合格のための勉強方法
ネットワークスペシャリスト試験に合格するためには、どのように勉強すればいいのでしょうか。基本的には、とにかくネットワークやセキュリティに関する知識の絶対量を増やすことが最も重要です。
参考書や過去問で知識を蓄えるとともに、回答のテクニックを身につけ、場合によってはスクールの利用も検討するといいでしょう。
参考書や問題集で勉強する
まずは、試験範囲を体系的にとらえて、さらに重要な部分を理解するために、参考書や問題集などの対策本を活用して勉強しましょう。ですが、参考書を読んだだけではなかなか頭に入りません。特に午後Ⅰ、午後Ⅱ試験は記述式の回答のため、問題集を使って記述回答の練習も繰り返し行いましょう。
対策本の選び方としては、分かりやすく体系的な解説がなされていて、問題文の要点把握や解答例なども充実している参考書や問題集がおすすめです。以下におすすめの参考書を紹介します。ぜひ、参考書を選ぶ際の参考にしてみてください。
■情報処理教科書 ネットワークスペシャリスト 2024年版
本書は、ネットワークスペシャリスト試験で問われるLAN・WAN・TCP/IP・DNSなどの基礎的な知識から、設計・信頼性・性能・セキュリティなどの応用知識までを幅広くカバーし、詳しく解説しています。
スマートフォンで午前Ⅱ試験の過去問100問を収録したWebアプリを利用でき、さらに午後試験向けの学習アドバイスも掲載されているため、午前・午後それぞれの試験の対策も十分に行うことができます。
▪著者:ICTワークショップ ▪ページ数:704ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2023年09月22日
【参考】:情報処理教科書 ネットワークスペシャリスト 2024年版(ICTワークショップ)|翔泳社の本
過去問を解いて問題に慣れる
ネットワークスペシャリスト試験では、過去問を解いて出題の傾向をつかむことが重要です。過去問を繰り返し解いて、問題を読むコツや、どのような回答が求められているのかを理解することで、実際の問題を解く際に役立ちます。過去問は、IPAの公式サイトで公開されていますので活用しましょう。
スクールを活用する
1人で勉強をするとモチベーションが保てない、または分からないところでつまずいて進めない、という方もいるでしょう。独学に限界を感じる場合は、スクールを活用するのも有効な手段です。
専任の講師が、出題範囲をカリキュラムに沿って教えてくれるので、スクールに通うことで効率的にしっかりと勉強を進めることができます。
1人だと勉強を後回しにしてしまってなかなか勉強時間を作れない方でも、スクールに通うことで勉強時間が確保できます。できるだけ効率的に勉強して合格を目指したい場合はスクールの活用を考えてみてください。
自分に合った勉強方法で対策を行い、ネットワークスペシャリスト試験に合格したら、そのネットワーク知識を活用し転職やキャリアアップも目指せるでしょう。
ネットワークスペシャリストを取得してキャリアアップにつなげよう
ここまで、ネットワークスペシャリスト試験の概要や活用できる仕事、勉強方法について解説しました。難関試験ですが、合格を目指して継続的な学習を続ける中で、ネットワーク知識が身に付きます。取得できれば、資格を活用して一層活躍できる企業への転職やキャリアアップを考えることもできるでしょう。
しかし、転職を検討する場合、習得したネットワークスキルを活かせる会社は多くありますが、その中で自分に合う会社を見つけるのはなかなか難しいものです。
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