プロジェクトマネージャーの資格試験
システムエンジニアを目指す人なら、次のキャリアパスとして目指したい職種としてプロジェクトマネージャーがあります。
プロジェクトマネージャーになるには、試験を受けて資格を取得する必要があるのでしょうか?また、キャリアチェンジや転職では資格は必須なのでしょうか?資格試験を受けるとすれば、どの資格試験を受けると良いのかなど、プロジェクトマネージャーを目指す方のさまざまな疑問に答えていきます。
プロジェクトマネージャーを目指すエンジニアの皆さんはぜひ最後までお読みいただき、今後の進路選択の参考としてください。
プロジェクトマネージャーにおすすめの資格試験
「プロジェクトマネージャーになるために資格は必須なのか」「意味ないのでは」という疑問については、結論から言えば、プロジェクトマネージャーに資格は必須ではありませんが必要です。
実際に資格を有していないプロジェクトマネージャーはいますが、新たに採用する側や任命する側からすれば、スキル証明となる資格は大きな判断理由となりますので、積極的な取得をおすすめします。
以下は、おすすめのプロジェクトマネージャー資格を紹介していきます。
プロジェクトマネージャ試験 (PM)
プロジェクトマネージャ試験 (PM)は、IPA主催の国家資格で、プロジェクトマネジメントに関する必要なスキルや知識を有する証明となる資格試験です。
プロジェクト計画の立案、予算管理と品質管理、リソース確保と整備、リスクマネジメント、プロジェクト進捗管理、組織運営と経営に関する問題など、非常に幅広く出題され、IPA主催の情報処理技術者試験の中でも最高難度4という難関試験です。
プロジェクトマネージャー資格としての評価は非常に高く、また就職や転職の際には大変有利になると言われるおすすめの資格です。
「エンジニアとして実務経験10年程度、かつプロジェクト管理経験がある人」を想定した試験のため、座学による知識に加えて、実務経験が求められるハードルの高い資格試験であり、合格すれば周囲から称賛されるほどステータスかある試験です。
このプロジェクトマネージャ試験は、2022年にプロジェクトマネージャ試験の一部改訂が行われました。受験の際には試験の最新情報を確認しましょう。
【参考】:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:プロジェクトマネージャ試験(PM)の関連ドキュメントの一部改訂について
P2M資格試験
PMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)が主催するプロジェクトマネジメントの資格試験です。
P2Mはプロジェクト管理の世界標準と言われるPMBOKをベースに「プログラムマネジメント」を合体させた日本独特の手法です。P2Mは様々な業種に適用が可能なため、IT業界以外にも製造業や建設業で活用されており、さまざまな業界関係者が受験しています。
P2M試験には4段階のレベルがあり、PMC(基礎)・PMS(中級)・PMSプログラム(中級)・PMR(上級)があり、スキルレベルに合わせて受験できます。
PMC試験は、PMC講習の24時間以上受講義務があります。
また、PMS試験は特に受験資格が設けられていませんが、PMSプログラムは、受験資格にPMC資格登録者もしくは情報処理技術者(PM)、中小企業診断士などの資格保有者という条件が設けられています。
PMAJ公式サイトには各試験の合格率が公表されていますが、PMCでは60%前後、PMSでは40%前後の合格率です。PMについて基礎からしっかり学びたい人、IT分野にこだわらずプロジェクトマネジメントを学びたい人におすすめしたい資格試験です。
【参考】:P2M概要・試験・資格制度
プロジェクトマネージャ試験の概要や難易度
ここでは、前述で紹介した多くのプロジェクトマネージャーが取得を目指す「プロジェクトマネージャ試験(PM)」について、概要や難易度について解説します。受験を検討している際はぜひチェックしてください。
試験の概要
プロジェクトマネージャ試験に関する概要を、以下にまとめました。
実施方式:筆記式 試験日:秋期(10月)の年1回実施予定(2023年度の申込受付は終了) 受験費用:7,500円(税込) 受験資格:なし(誰でも受験可能) 試験会場:全国47都道府県の主要都市
【参考】:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
試験は「午前Ⅰ」「午前Ⅱ」「午後Ⅰ」「午後Ⅱ」の4区分に分かれており、それぞれ試験時間や出題形式が異なります。
【午前Ⅰ】 試験時間:9:30~10:20(50分) 出題形式:多肢選択式(四肢択一) 出題数・解答数:出題数30問、解答数30問
午前Ⅰ試験は、高度情報処理技術者試験の全試験区分で共通している選択式問題が出題され、基本知識が試されます。出題範囲は、技術面・経営・法務などの広範囲に渡ります。
【午前Ⅱ】 試験時間:10:50~11:30(40分) 出題形式:多肢選択式(四肢択一) 出題数・解答数:出題数25問、解答数25問
午前Ⅱ試験では、システム開発技術やプロジェクトマネジメント、サービスマネジメントなどの専門知識が求められます。セキュリティやプロジェクトマネジメントを中心に、過去問を活用して網羅的に学習しましょう。
【午後Ⅰ】 試験時間:12:30~14:00(90分) 出題形式:記述式 出題数・解答数:出題数3問、解答数2問
午後Ⅰ試験は、プロジェクトの立ち上げや、実行・コントロールなどの場面における、プロジェクトマネジメント業務の実例に基づいた知識と応用力が求められます。
【午後Ⅱ】 試験時間:14:30~16:30(120分) 出題形式:論述式 出題数・解答数:出題数2問、解答数1問
午後Ⅱ試験は2つのテーマから1つを選び、論述式で解答します。テーマごとに3つの設問があり、指定文字数内で解答します。解答内容の具体性や論理性、主張の明確さなどが評価されます。プロジェクトマネジメントに関する深い理解と、論理的に主張を展開できる文章表現力が求められます。
合格率や難易度
ここでは、プロジェクトマネージャ試験の難易度を解説するために、合格率の観点から推測していきます。毎年IPAが公表している合格率は概ね13%〜14%です。
ちなみに、ITエンジニアの基本スキルの証明となる「基本情報技術者試験」の合格率は直近だと39.6%であるため、そう考えるとかなり難易度の高い試験であり、狭き門ですが、取得メリットを考えるとチャレンジする価値は十二分にあります。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 推移表(平成21年度春期以降)
プロジェクトマネージャーの仕事と役割とは
「いつかはプロジェクトマネージャーに」と憧れるITエンジニアの方は少なくありませんが、プロジェクトマネージャーの仕事や役割、プロジェクトリーダーの違いについて正しく理解しておきましょう。
これからプロジェクトマネージャーを目指したい方向けに、仕事内容や役割についてまとめました。
プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの違い
一般的に、システム開発プロジェクトが編成されると、プロジェクトを統括するプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーが任命されます。
プロジェクトの規模や内容によっては、プロジェクトマネージャーがプロジェクトリーダーを兼務したり、プロジェクトリーダーだけが任命されたりというケースはありますが、ここでは両者の違いについて理解しておきましょう。
プロジェクトマネージャーとは、開発プロジェクトにおいて「マネジメント」が主な役割です。ITに対する知見に加え、高いマネジメントスキルが求められます。プロジェクトの達成責任を負う以外に、対外的な折衝や経営層との調整なども行います。
一方のプロジェクトリーダーは、言わば現場監督であり、プロジェクトを成功に導くための実行責任を負います。プロジェクトのメンバーに対して指示を出したり、働きかけを行ったり、プロジェクトが計画通りに進むように行動します。
メンバーの能力を引き出すための指導やサポートを行うなど、プロジェクトの成功に向けて活動します。プロジェクトリーダーはプロジェクトメンバーに対する具体的な指示を出すため、システム設計以外にもプログラミングやネットワーク、データベースなど幅広いIT知識や経験が求められます。
プロジェクトマネージャーの仕事5項目
プロジェクトマネージャーの主な仕事は、以下の5つに集約されます。
システム開発プロジェクトでは、トラブルや設計ミスなどによってメンバーに大きな負担が掛かり、健康面やメンタル面の問題が生じることもあります。そのような場合に、メンバーの健康管理やメンタルケアに責任を負うのもプロジェクトマネージャーの役割です。
1.システム化計画の策定 クライアントやユーザのヒアリングを通じて、要求定義・要件定義を行い、システム化課題の設定と、システム化計画の策定を行います。さらに開発システムの規模見積もり、システム開発の予算見積やスケジュール立案を行って、システム工数を明らかにします。
2.プロジェクト予算と要員確保 システム化の範囲・実現方法・スケジュール・システム開発予算・要員計画について、経営層やクライアントの承認を得て、ハードウェアリソース・ソフトウェア・開発要員の確保を行います。ここでは、クライアントや経営層に対する根回しや折衝力が求められます。
3.システム開発チームの編成 システム開発プロジェクトでは、そのプロジェクト特性に応じた開発要員の確保とチーム編成が必要です。開発システムがWebアプリの場合であれば、Webダザイナー・Webプログラマー・フロントエンドエンジニア・バックエンドエンジニアの確保が必要です。
自社内での調達が難しい場合には、協力会社やITベンダーに協力を求めます。
4.プロジェクトの進捗管理 開発プロジェクトの方針・目的・開発手法・開発スケジュール・会議体などについて、プロジェクトメンバーに周知徹底を図ります。また、経営層やクライアントからの指示、要求事項などをメンバーと共有し、タスクの進行確認や全体コントロールを行います。
5.レビューと評価 システム開発のポイントごとにレビューを行い、確認された課題や問題点の解決を図ります。また、開発が完了したら「プロジェクト完了報告書」を作成し、経営層やクライアントに対して報告を行います。
以上がプロジェクトマネージャーの仕事と役割です。
プロジェクトマネージャーの年収
プロジェクトマネージャーの年収は、「マイナビエージェント職業別年収ランキング」によると平均年収670万円(※2023年9月執筆時点)、経済産業省2017年発表「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」(プロジェクトマネージャ)では平均年収891万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、プロジェクトマネージャーは一般平均年収と比較してやや高めであることが分かります。
プロジェクトマネージャーは多くのITエンジニアが目指す職種です。そのため、年収は他のエンジニア職よりも高めに設定されていますが、今後さらにプロジェクトマネージャーとして年収を上げるには資格取得や実績をさらに積んでいくことが有効です。
【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング ※【平均年収 調査対象者】2019年12月~2020年5月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7)「プロジェクトマネージャ」 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
おすすめの参考書・問題集
プロジェクトマネージャ試験は「エンジニアの実務経験が10年程度あり、プロジェクト管理の経験がある」人を想定した試験です。主催のIPAによると、プロジェクトマネージャ試験に合格した方の平均年齢は約40歳です。
このことから、合格にはエンジニア経験があり、かつプロジェクト管理に関わった経験も必要と思われます。そうした経験に加え、以下に挙げる参考書や問題集で繰り返し学ぶ勉強方法が重要です。
情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2022年版
プロジェクトマネージャ試験の対策本では定番とも言える参考書です。試験の合格を念頭に置き、エッセンスがぎっしり詰まっています。語りかけるように丁寧な説明と、豊富な図表で読者を惹きつけます。過去問の解説も交えボリュームがありますので、しっかりした学習計画を立てて、計画的な学習が必要です。
▪著者:三好 康之 ▪ページ数:776ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022年03月22日
【参考】:情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 2022年版
2021 プロジェクトマネージャ 総仕上げ問題集
過去3期分の試験問題と解答、解説などが収録されています。本試験対策として解答用紙、未収録問題と解説のダウンロードサービスも付いています。また本試験を想定したオリジナルの「実力診断テスト」にチャレンジすることで、学習成果の確認を行えます。
▪著者:アイテックIT人材教育研究部 ▪ページ数:460ページ ▪出版社:アイテック ▪発売日:2021年6月16日
プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版
論文作成に自信がない方を対象に、文章の書き方から丁寧に説明されています。30本の専門家による論文例が掲載されており、「問題文の趣旨に沿ったな論文」をどのように構成して、時間内にどう仕上げるのかについて解説されていますので、巻末のワークシートと併せて、次第に文章力を高めることができるでしょう。
▪著者:岡山昌二・落合和雄・佐々木章二・長嶋仁・満川一彦 共著 ▪ページ数:357ページ ▪出版社:アイテック ▪発売日:2020年8月21日
【参考】:プロジェクトマネージャ 合格論文の書き方・事例集 第6版
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