情報処理技術者試験にはメリットが多い
情報処理技術者試験とは、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が主催する国家試験の総称です。試験は難易度別にレベル1からレベル4までの4種類に分けられ、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験はその代表的な試験として知られています。
情報処理技術者試験は知名度の高い試験で受験するITエンジニアも多いですが、時には「意味ない」などと言われてしまうこともあります。その理由としては情報処理技術者資格に独占業務がないことなどが挙げられますが、決してメリットがないわけではありません。
IT業界で働くうえで情報処理技術者の資格を持つメリットは多く、さまざまな側面でスキルアップやキャリアアップに役立ちます。今回は、情報処理技術者の試験情報と併せてそのメリットについても詳しく解説します。
情報処理技術者試験一覧
IPAが実施している試験には大きく分けて「情報処理技術者試験」と「情報処理安全確保支援士試験」の2つがあります。実施されている試験一覧は以下の通りです。
情報処理技術者試験はあくまでカテゴライズの名称のため、「情報処理技術者試験」という名称の国家資格ではない点に注意しましょう。
■情報処理技術者試験 ・ITパスポート試験(レベル1) ・基本情報技術者試験(レベル2) ・応用情報技術者試験(レベル3) ・情報セキュリティマネジメント試験(レベル2) ・ITストラテジスト試験(レベル4) ・システムアーキテクト試験(レベル4) ・プロジェクトマネージャ試験(レベル4) ・ネットワークスペシャリスト試験(レベル4) ・データベーススペシャリスト試験(レベル4) ・エンベデッドシステムスペシャリスト試験(レベル4) ・ITサービスマネージャ試験(レベル4) ・システム監査技術者試験(レベル4)
■情報処理安全確保支援士試験 ・情報処理安全確保支援士試験(レベル4)
ITパスポート、基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験は通年実施されており、他の試験は春期(4月)、秋期(10月)のいずれかまたは、双方で実施されています。
そのため、試験によっては受験しようと思ってもすぐに受けられない場合があるので、資格取得に向けては計画的に取り組みましょう。
【参考】:試験区分一覧|IPA
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情報処理技術者試験が「意味ない」と言われる理由
情報処理技術者試験を受験するメリットは多くあります。しかし、情報処理技術者試験の資格を取得しても「意味ない」と言われることもあります。なぜそのように言われてしまうのか、その理由を始めに確認しておきましょう。
情報処理技術者資格には独占業務がないため
司法書士・社会保険労務士・行政書士などとは異なり、情報処理技術者資格には独占業務がありません。情報処理技術者の資格がなければ就けない仕事はほとんどないため、情報処理技術者試験が「意味ない」と言われることもあります。
しかし、情報処理技術者資格を取得すれば、ITに関する幅広い知識を持っていることが証明されます。また、情報処理技術者試験を受験するにあたって勉強した内容は、実務に活かすことができます。
IT業界では資格よりも実務経験や実績を評価する傾向があるため
IT業界では資格よりも実務経験や実績を評価して採用を行ったり、昇進・昇格を決めたりすることが比較的多いです。特にスタートアップ企業や自社開発企業では、即戦力を求めている傾向にあります。そのため、豊富な実務経験のある人材を採用したいと考える企業が多いです。
しかし、近年ではIT人材不足の影響から未経験でもIT業界に就職することが十分に可能です。自分の強みとして経験をアピールできない場合でも、資格があれば業務で必要となる知識やスキルが備わっていることを証明することができます。
また、新卒採用ではポテンシャルを評価して採用を行います。情報処理技術者の資格は、新卒採用において基本的なIT知識やポテンシャルを証明する際にも役立つと言えます。
情報処理技術者試験を受験するメリット
では、ここからは情報処理技術者試験を受験するメリットについて具体的に紹介します。情報処理技術者資格は、IT業界でキャリアを築くための手助けをしてくれます。
ITスキルを客観的に証明できる
IPAの公式サイトの情報によると、情報処理技術者試験はITエンジニアの不足を背景に始まったとされています。これまでの試験の応募者数は述べ2,000万人以上、合格者数は300万人以上と大規模な国家試験の1つです。
そのため情報処理技術者試験の認知度は高く、ITスキルを客観的に証明するための指標として数多くの企業や教育機関などで活用されています。就職先・転職先や昇進・昇格の条件に情報処理技術者試験の資格が基準として使用されることも多いです。
また自分のスキルのレベルの確認をするために、情報処理技術者試験を活用することも可能です。情報処理技術者試験では、対象者別・レベル別・専門分野別に試験が構築されています。
例えば、IT業界に一歩踏み出したいと考えている方には、最もレベルの低いITパスポート試験を最初に受験するのがおすすめです。試験に合格できたら、上位資格の取得を目指すことで、スキルアップができます。
【参考】:試験のメリット|IPA
IT業界で働くための土台となる知識を習得できる
IT技術のトレンドは移り変わりが激しいため、新しい技術が登場し、今習得したスキルが数年後には役に立たなくなる可能性もあります。
しかし情報処理技術者試験では、特定の技術に依存しないような問題を出題しているため、ITに関する本質的な知識を体系的に身に付けることができます。
ITの本質的な知識を土台として身に付けていれば、新しい技術が登場してもそれを習得するハードルは低くなるでしょう。また、業務内容が変わったり、職種が変更したりしても柔軟な対応ができるようになります。
さらに、情報処理技術者試験では、ITに関する技術や環境の変化を試験に反映させているため、最新トレンドの知識も身に付けることが可能です。
IPAでは質の高い試験問題を提供するために、実務現場で活躍している専門家や、大学・研究所に所属している専門家たちからなる試験委員会が試験問題を作成しています。情報処理技術者試験の問題は教育的かつ実践的であり、質は高い傾向にあると言えます。
【参考】:試験のメリット|IPA
資格を習得していればIT業界での就職・転職活動において採用の可能性も高まります。転職エージェントも活用して、資格で培ったスキルを存分に活かせる企業を探しましょう。
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企業によっては試験合格で資格手当や報奨金がもらえる
情報処理技術者試験の資格を取得すれば、企業によっては資格手当や一時金として報奨金がもらえることもあります。
IT業界では国家資格の取得者数によって企業の技術力が証明されることもあるため、積極的に情報処理技術者試験の資格取得を推進している企業が数多くあります。一般的には上位資格になればなるほど、資格手当や報奨金が大きくなります。
さらに、情報処理技術者試験が企業で活用されていることを受け、高校・大学・専門学校などの教育機関でも、情報処理技術者試験が活用される機会が増加しています。
キャリアアップや年収アップにつながる
情報処理技術者資格の取得によって、スキルアップができたり、そのスキルを客観的に証明することができます。そのことは結果的にキャリアアップや年収アップにつながります。
情報処理技術者試験を受験するITエンジニアの職種はさまざまですが、例としてシステムエンジニアの年収は「マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑」での平均年収は431万円(※2023年4月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の民間給与実態統計調査における民間企業平均年収は433万円なので、エンジニアは一般平均年収と同等かやや高めであることが分かります。
IT業界には人材不足の影響があることから、スキルがあれば高い年収が提示されることもあります。資格取得者の年収を推測するのは難しいですが、スキル証明ができることでより良い待遇を受けられる可能性は高まります。
【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
合格すれば上位資格や国家資格における一部試験の免除が得られる
情報処理技術者試験の資格を取得すれば、中小企業診断士試験・弁理士試験・技術士試験・ITコーディネータ試験などの他の国家試験で一部免除を受けることができます。
また、応用情報技術者試験に合格すれば、情報処理技術者試験の高度試験や情報処理安全確保支援士試験の一部免除を受けることも可能です。
【参考】:午前Ⅰ試験免除 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験|IPA
未経験者には基本情報技術者試験がおすすめ
始めに情報処理技術者試験一覧で紹介したように、情報処理技術者試験にはさまざまな試験があります。どの資格を取得したら良いか分からない方もいるでしょう。
情報処理技術者試験を受けたことがない、あるいはこれからITエンジニアを目指す人には最初に基本情報技術者試験の資格を取得するのがおすすめです。
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験はIPAが主催する国家試験の1つで、難易度はレベル2に位置します。基本情報技術者試験ではITの幅広い知識に加えて、マネジメントや経営に関する知識が問われます。
そのため、基本情報技術者試験の資格を取得すれば、ITエンジニアとして働くための基盤となるスキルを身に付けることが可能です。
基本情報技術者試験はCBT方式で年間を通して受験できる試験で、午前試験と午後試験の両方で60%以上を正答すれば、資格を手に入れることができます。
記述式の問題は出題されませんが、アルゴリズムやプログラミングに関する問題は出題されるため、合格するにはきちんと対策を練る必要があります。
【参考】:基本情報技術者試験|IPA
基本情報技術者試験に合格するための勉強方法
基本情報技術者試験に合格するには、目安として約100~200時間程度の勉強時間が必要です。ただし、これまでの経験や勉強方法により勉強時間は変化します。時間にこだわるよりも効率よく勉強することが大切です。
午前試験の対策では、最初は書籍と過去問を活用して学習するのがおすすめです。未経験の方の場合、まずは書籍を活用して基本情報技術者試験に関する体系的な知識を習得しましょう。特に、基本情報技術者試験では用語に関する問題が数多く出題されます。
一通りテキストの確認ができたら、過去問を活用して今の自分のレベルと苦手問題を把握しましょう。基本情報技術者試験の午前試験は過去問と似た問題が多く出題されるため、午前試験の対策において過去問は必須です。
午前試験の合格基準を突破できるレベルになったら、午後試験の対策に移りましょう。午後試験は問題を選択できる箇所があるため、自分の得意分野を把握するのが大切です。
また、午後試験ではアルゴリズムとプログラミングに関する問題は必須回答となっているため、十分な対策が必要です。問題集や過去問を活用して、自分の力で問題が解けるレベルを目指しましょう。
【参考】:試験要綱(PDF)
経験を積んだらIPAの高難易度試験に挑戦
経験者の方や応用情報技術者試験に合格しているような高度IT人材の方には、専門性の高い試験の受験がおすすめです。以下の高度試験の合格者数は、基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の合格者数に比べて少ないため、希少価値が高いです。
・ITストラテジスト試験 ・システムアーキテクト試験 ・プロジェクトマネージャ試験 ・ネットワークスペシャリスト試験 ・データベーススペシャリスト試験 ・エンベデッドシステムスペシャリスト試験 ・ITサービスマネージャ試験 ・システム監査技術者試験 ・情報処理安全確保支援士試験
今の業務に関連する分野や将来目指したい分野の資格を取得すれば、ITエンジニアとしての価値や将来性を高めることができます。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 推移表(平成21年度春期以降)(PDF)
情報処理技術者試験は認知度と質が高い国家試験!
ここまで、情報処理技術者試験が「意味ない」と言われる理由や受験するメリット、おすすめの試験について解説しました。
情報処理技術者試験は認知度が高く、問題の質を重視しているのが特徴です。情報処理技術者試験の資格を取得すれば、ITスキルを客観的に証明できたり、スキルアップできたりするというメリットがあります。
資格を取得できれば、企業によっては資格手当や報奨金がもらえることに加え、就職・転職においても有利になり、キャリアアップや年収アップにつながります。
特に転職の場合は転職前に資格を取得することが望まれるため、早めに準備しておきましょう。転職エージェントを利用すると企業情報の収集や面接対策などが効率的にできるため、学習時間の確保という意味でも利用をおすすめします。
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