情報処理技術者能力認定試験とは
IT技術を証明する資格は今や無数に存在し、難易度も様々です。そんなIT資格の中に「情報処理技術者能力認定試験」と呼ばれる資格があるのをご存知でしょうか。
似たような名称の試験が多く、見分けがつかないという方も多いでしょう。本記事では情報処理技術者能力認定試験について、その試験概要を説明するとともに、取得のメリットや勉強方法を解説していきます。
基本情報技術者試験の科目A試験免除制度に対応
情報処理技術者能力認定試験についてその概要を簡単に説明すれば、基本情報技術者試験(FE)の科目A試験免除の特徴を持つ入門寄りの民間IT資格です。
IT資格の中でも特に知名度の高い基本情報技術者試験は国家資格でもあり、IT系の入門資格として広く推奨されています。しかし、IT技術全般に詳しくなければ難易度は高く感じられるでしょう。それはIT系経験者であっても同様で、馴染みのない分野であればそう感じることも珍しくありません。
そのため、本資格のような1段階難易度を下げた試験を受けることで、ステップを踏んで基本情報技術者試験の合格を目指せるメリットがあります。
基本情報技術者試験との違い
ここでは、サーティファイの「情報処理技術者能力認定試験」と、IPAの「基本情報技術者試験」との違いについて解説します。
IPAが提供する基本情報技術者試験はIT国家資格の1つであり、1〜4に分類されるスキルレベルのうち「レベル2」に相当する試験です。レベルは数字が高いほど難易度が上がるため、基本情報技術者試験は基礎レベルに位置付けられます。
サーティファイの情報処理技術者能力認定試験は民間のIT資格であり、基本情報技術者試験のステップ試験として受験します。出題範囲などに親和性があるため、情報処理技術者能力認定試験に合格することで、基本情報技術者試験への合格が目指しやすくなります。
また、以下の条件をクリアすることで、基本情報技術者試験の科目A試験の免除が可能です。
・2級または2級第1部の試験に合格 ・IPAの「免除対象科目履修講座」を受講 ・サーティファイの「修了認定に係る試験」の合格
【参考】:基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:科目A試験免除制度 基本情報技術者試験(FE) | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:情報処理技術者認定試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
合格率や勉強時間の比較
続いて、情報処理技術者能力認定試験と基本情報技術者試験の合格率や勉強時間を比較していきましょう。
情報処理技術者能力認定試験の合格率は、2022年度における平均は55.9%でした。一方、基本情報技術者試験の合格率は、2023年12月が41.7%です。
情報処理技術者能力認定試験の方が合格率は高いですが、直近数ヶ月の基本情報技術者試験の合格率は40〜50%を推移しているため、そこまで大きな差がないことがわかります。
【参考】:試験概要 | 情報処理技術者能力認定試験 | 資格検定のサーティファイ 【参考】:情報処理技術者認定試験(基本情報技術者試験) 統計資料
勉強時間に関しては、情報処理技術者能力認定試験の場合は90〜300時間、基本情報技術者試験で200時間程度とされています。これはあくまで目安であるため、IT知識の有無や経験によって大きく異なります。
情報処理技術者能力認定試験に合格することで、基本情報技術者試験にかかる勉強時間はかなり短縮できるでしょう。
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情報処理技術者能力認定試験の基本情報
まずは情報処理技術者認定試験について、その基本的な内容を解説していきます。取得者が期待できる年収の額についても、職業を仮定して推測を行います。
試験の概要と等級
情報処理技術者能力認定試験は、サーティファイが認定する民間のIT資格です。公式ページで説明されているように、システム開発やアルゴリズム開発、プログラミング技術を中心にした資格であるため、プログラマやシステムエンジニア向けの資格といえるでしょう。
1級から3級までの3段階の等級があり、最高難易度の1級でも中級程度と定義されているため、どちらかと言えば入門者向けの資格といえます。試験の日程について、1級は年2回ですが、他は年3回実施されており、個人受験の場合はリモートWeb形式で受験することになります。
各等級の試験時間や受験料は下記の通りです。また、2級以上では試験は2部制をとっています。
【1級】 試験時間:第1部90分、第2部90分 受験料:6,700円
【2級】 試験時間:第1部90分、第2部90分 受験料:6,000円
【3級】 試験時間:75分 受験料5,200円
【参考】:情報処理技術者能力認定試験の試験概要
出題範囲
前述したように同試験はシステム開発やプログラミングを主としていますが、具体的な試験範囲はどうなっているのでしょうか。
公式ページによれば、大きく分けて以下が全等級での出題として決められています。
- プログラミング全般に関すること
- プログラムの処理の基本要素に関すること
- データ構造及びアルゴリズムに関すること
- プログラミングの諸分野への適用に関すること
- 情報セキュリティの確保に関すること
各等級では出題範囲も異なりますが、3級では出題されない範囲もあるため、公式ページにて詳細をチェックしておきましょう。
【参考】:情報処理技術者能力認定試験の出題範囲
試験の難易度
本試験はシステムエンジニアやプログラマ向けで、やや入門向けの資格と述べました。ただ、実際にはどの程度の難易度なのでしょうか。
まず、公式ページによる各等級の認定基準を見ていくと、3級は「コンピュータの基礎知識を有する者」、2級は「プログラム設計と作成ができる初級の情報処理技術者」、1級はその中級程度と記載されています。
したがって、レベルとしては2級で基本情報技術者試験と同等かやや易しい程度と見ることができます。
合格率は、先述の通り2022年度の全等級の平均が55.9%でした。等級ごとの合格率は分かりませんが、少なくとも1級は半数以上が合格する試験ではないと言えるでしょう。
試験の合格基準は60%以上の正答率であり、あまり高い合格基準とは言えません。したがって、やや入門向けとは言っても油断できない難易度であると言えそうです。
資格取得者の推定年収
同試験の合格者はどの程度の年収を得られると推測できるのでしょうか。同試験の対象職種からプログラマーを例にとって、その年収を見ていきます。
プログラマーの年収は「マイナビエージェント職種図鑑」での平均年収は344万円(※2024年1月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、プログラマーは調査媒体によってバラつきがあり、一般平均年収よりも高いかどうかは一概に言うことができません。業種や企業によって大きく変わってくるでしょう。
プログラマの年収は一概に高い低いを言うことはできませんが、下流工程であることや同試験の合格だけではそこまでのスキルをアピールできないため、やや低めになると考えられます。とはいえ、上流工程であるシステムエンジニアやキャリアアップすれば、年収も着実に上げていくことは可能でしょう。
【参考】:マイナビエージェント職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
情報処理技術者能力認定試験の勉強方法
ここまでで、情報処理技術者能力認定試験の基本的な情報を説明しました。次に、合格に向けてどのような勉強をすればよいかを紹介していきます。
過去問を使って勉強する
試験対策として最も基本的な方法が、過去問を解くことです。同試験でもその有効性は変わらないでしょう。その一方、公式ページでは過去問は公開されておらず、サンプル問題が公開されているのみです。したがって、まずはこのサンプル問題を解くことで難易度の程度や形式に慣れていくとよいでしょう。
サンプル問題とは言っても、実際の出題形式と同じ形で50問用意されているため、実質過去問と同じとも言えます。問題は等級ごとに別々に公開されているため、受験したいレベルに合わせて解いてみましょう。
【参考】:情報処理技術者能力認定試験:サンプル問題請求フォーム - 入力
公式問題集を活用する
過去問がサンプル問題しかない中では、最も効果的な勉強方法は公式の問題集を解くことでしょう。
情報処理技術者能力認定試験の1級第2部、2級第2部は、2023年度より新形式となりました。それにより、2023年8月よりデジタル問題集の提供が開始されています。PCやスマホで本番さながらの学習が可能です。
書籍を参考に学習を進める場合は、新試験形式に対応している最新のものを選択しましょう。以下のリンクより1〜3級の書籍、またはデジタル問題集を購入できます。
【参考】:検定対応教材 | 情報処理技術者能力認定試験 | 資格検定のサーティファイ
情報処理技術者能力認定試験のメリット
情報処理技術者能力認定試験についての勉強方法まで紹介をしてきましたが、本試験を突破するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。IT職種経験者にとっても感じられるメリットを次に紹介していきます。
プログラマー系職種の入門になる
IT系職種を経験している方の中には、プログラミング経験が全くなく、それでもプログラマー系の職種に転職したいと考えている方もいるでしょう。そういう方が転職のための資格獲得を目指すにあたり、国家資格の基本情報技術者試験はややハードルが高いかもしれません。
そのため、プログラミング技術の勉強や転職に向けた1つのマイルストーンとして本資格を取得することがメリットになるでしょう。転職に向けた活用という意味では、2級以上を受験することがおすすめです。
基本情報技術者試験の予備勉強になる
本資格を受験するメリットとして、基本情報技術者試験に向けた予備勉強として活用できる点も挙げられます。IT職種経験者であっても職種によっては基本情報技術者試験と業務に関連が少なく、資格取得が異業種への転職に効果的に働く可能性もあるでしょう。
その出題範囲を見ての通り、基本情報技術者試験と問題の分野が重なっており、本資格を勉強することは基本情報技術者試験の勉強をしていることにもなります。
したがって、基本情報技術者試験の合格を目標とした場合に、その前哨戦として本資格を受験することは有効な戦略にもなるでしょう。基本情報技術者試験への合格に向けたモチベーションアップにもつながるはずです。
2級が基本情報技術者試験よりやや易しい程度の難易度と考えられるため、2級合格を目指すことが基本です。しかし、あえてより難しい1級に合格を目指すことで高い実力を身に付けることもおすすめです。
基本情報技術者試験の科目A試験が免除される
本資格の大きな特徴に、基本情報技術者試験の科目A試験の免除制度である「科目A試験免除制度」を利用できることが挙げられます。そして、それは基本情報技術者試験への合格を目標としている方にとっては本資格を取得する大きなメリットと言えるでしょう。
ただ、本制度を活用するためには条件があり、本資格合格だけでは条件を満たすことはできません。具体的には、2級の1部試験を突破すること、そして試験範囲外の「免除対象科目履修講座」の受講と「修了認定に伴う試験」の合格が必要です。
一見ややこしく見えますが、主催のサーティファイが一連のプロセスを1年間のスケジュールに落とし込んだモデルカリキュラムを用意しています。基本情報技術者試験の科目Bの試験対策も受講できるため、確実な合格を目指したい方にはおすすめです。
【参考】:科目A試験免除制度
情報処理技術者能力認定試験を突破して転職を成功させよう
本記事では情報処理技術者能力認定試験について、その試験概要から勉強方法、そして取得するメリットを紹介してきました。プログラマーやシステムエンジニアへの転職を検討している方は、その準備として本資格を取得することを考えてもよいでしょう。
勉強の末、本資格を無事に獲得したあとは、資格を活かし、自分が働きたいと思う企業を探す方も多いはずです。しかし、数ある求人の中からそのような企業を個人で見つけることは困難でしょう。
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