ITパスポート試験の合格率と受験者層
ITパスポート試験は、ITの基礎知識を証明したい場合に取得するのがおすすめな試験です。ITに関する国家試験の中では最も簡単と言われている試験でもあります。そこで、ITパスポート試験の合格率などの難易度について気になりますよね。ここでは、ITパスポート試験の概要・受験者層・合格率について詳しくご紹介します。
ITパスポート試験とは
ITパスポート試験とは、独立行政法人情報処理推進機構であるIPAが主催している試験です。ITパスポート試験は情報処理技術者試験の1つであり、国家試験でもあります。ITパスポートを取得することによって、ITに関する基本的な知識を習得することが可能です。これからIT業界へ就職や転職を考えている方やIT業務に関わる方にとっては、取得すべき資格といえるでしょう。
ITパスポート試験の受験者層
現在では、年間10万人以上の方がITパスポート試験を受験しています。2022年度の試験の受験者数は88,028人でした。内訳は社会人が57.3%、学生が52.7%です。
上位試験と受験者層を比較すると、基本情報技術者試験の場合の学生の割合は30%、応用情報技術者試験の場合の学生の割合は10%なため、ITパスポート試験の受験者は*学生の方が多い傾向にあります。
学生の中でも高校生の受験者が多く、ITパスポート試験の資格を取得していることで、大学入試で優遇措置が取られることや単位認定されることなどが理由として挙げられます。
また、大学在学時にITパスポート試験に合格することで、受験料を補助してもらえたり報奨金などが支給されたりするケースもあります。就職する際のアピールとしてITパスポート試験の資格を取得する方も多いでしょう。このような点から、他の試験と比べても学生の受験者の割合が高いといえます。
【参考】:ITパスポート試験ー高校生の方へ 【参考】:ITパスポート試験ー応募者データ 【参考】:ITパスポート試験ー統計資料
ITパスポート試験の合格率
ITパスポート試験の合格率は50%程度といわれています。2022年4月から2022年9月までで算出したITパスポート試験の合格率は53.8%で、内訳として社会人の合格率は57.6%・学生は39.9%です。ITパスポート試験の合格率は、学生よりも社会人の方が高い傾向にあります。
【参考】:ITパスポート試験ー統計情報
ITパスポート試験ではITに関する知識だけではなく、ビジネスや経営に関する問題も出題されるため、実務経験のある社会人の方が深い知識を身に着けていることが合格率が高い理由として挙げられます。そのため、学生がITパスポート試験について勉強する場合、ビジネスや経営に関する分野の勉強に重点をおくことが大切です。
ITパスポート試験の難易度
具体的なITパスポート試験の合格ラインは、どのようになっているのでしょうか。ここでは、ITパスポート試験の合格基準と上位資格である基本情報技術者試験と比較したITパスポート試験の難易度について詳しく解説します。
ITパスポート試験の合格基準
ITパスポート試験では、IRT方式で計算される評価点が合格ラインです。IRT方式とは、解答した結果より評価点を計算する採点方式です。実施された試験によって難易度の差を減らすためにIRT方式が採用されています。つまりITパスポート試験は、いつ受験したとしてもフェアな試験となるよう配慮されています。
問題は全100問ですが、IRT方式のため1問10点といったような簡単な配点では計算されません。
ITパスポート試験の合格基準は総合評価点が1000点満点中600点以上かつ、3つの分野別の評価点がそれぞれ30%以上の取得が必要です。なお、3つの分野とは「ストラテジ系」「マネジメント系」「テクノロジ系」です。そのため、総合評価点と分野別評価点のどちらかが合格ラインを超えただけでは合格できません。
ITパスポート試験の3つの分野
ITパスポート試験には大きく以下の3つの分野から出題されます。
■ストラテジ系 ストラテジ系の分野では、企業と法務・経営戦略・システム戦略に関する問題が35問ほど出題されます。
■マネジメント系 マネジメント系の分野では、開発技術・プロジェクトマネジメント・サービスマネジメントに関して20問ほど出題されます。
■テクノロジ系 テクノロジ系の分野では、基礎理論・コンピュータシステム・技術要素などのIT知識に関する問題が45問ほど出題されます。テクノロジ系の分野がいわゆるITに関する問題です。一方、ストラテジ系とマネジメント系の分野はビジネスや経営に関する問題が出題されます。
ITパスポート試験と基本情報技術者試験の比較
ITパスポート試験の上位資格として、基本情報技術者試験が挙げられます。ITパスポートと同様で、IPAが実施している情報処理技術者試験の1つです。情報処理技術者試験では、難易度を4つのレベルに分けています。
ITパスポート試験はレベル1にあたり、基本情報技術者試験はレベル2にあたります。
また、レベル3にあたるのが基本情報技術者試験の資格を取得した後に受験が推奨される「応用情報技術者試験」です。
さらに、レベル4は「システムアーキテクト試験」「データベーススペシャリスト試験」など専門的な試験が挙げられることから、基本情報技術者試験は、ITパスポート試験より難易度が高いことが分かります。また、ITエンジニアにおける登竜門の試験ともいわれています。
【参考】:IPA情報処理推進機構ー基本情報技術者試験(FE) 【参考】:IPA情報処理推進機構ー応用情報技術者試験(AP) 【参考】:IPA情報処理推進機構ーシステムアーキテクト試験(SA) 【参考】:IPA情報処理推進機構ーデータベーススペシャリスト試験(DB)
基本情報技術者試験の概要
基本情報技術者試験とは、IPA情報処理推進機構によって実施される情報処理技術者試験の1つで、ITパスポートよりも高度な知識を問われる試験です。
試験は午前と午後に分かれており、どちらも150分で100点満点となります。試験では午前試験は80問、午後試験は11問中5問を選択し回答します。いずれも問題形式は多肢選択式です。午前・午後共に100点満点で計算され、共に60点以上で合格です。試験は春期と秋期の年2回あり、CBT方式で実施されます。
試験内容はITパスポートと似通っており、テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系などについて知識を問われる問題が出題されますが、ITパスポートよりもさらに専門的に問われるので事前の学習が大切です。基本情報技術者試験の合格が社内評価の対象となる企業も増えているため、ITパスポート取得後に目指すと良いでしょう。
【参考】:IPA情報処理推進機構ー基本情報技術者試験(FE)
基本情報技術者試験の合格率
2022年9月までのITパスポート試験の合格率が53.8%だったのに対し、2022年度の秋期における基本情報技術者試験の合格率は28.5%でした。合格率は20%〜30%の間で推移しています。
ITパスポート試験は毎月実施されているのに対して、基本情報技術者試験は年に2回しか試験が実施されていません。
また、ITパスポート試験は1回試験のみですが、基本情報技術者試験は午前と午後の2回試験があります。このような点からもITパスポート試験の難易度は比較的容易であることがいえるでしょう。
【参考】:ITパスポート試験ー統計情報 【参考】:IPA情報処理推進機構ー過去の合格発表、試験結果情報 【参考】:IPA情報処理推進機構ー基本情報技術者試験(FE)
ITパスポート試験に合格するための勉強時間・勉強方法
ここでは、ITパスポート試験に合格するための勉強時間と勉強方法について詳しくご紹介します。
ITパスポート試験に合格するための勉強時間
ITパスポートに合格するために必要な勉強時間は、知識の程度によって異なります。
勉強時間の目安は、一般的に100時間〜150時間程度とされています。一般的に、ITパスポート試験に合格するための必要な勉強期間は3ヶ月程度といえるでしょう。情報系の学生やIT関係の社会人の場合、効率よく学習を行えば勉強時間は30時間程度で合格することも可能です。また、現在ITエンジニアとして働いている方は、基本的なIT知識を有している点から、上位の資格である基本情報技術者試験から受験するのもおすすめです。
ITパスポート試験に合格するための勉強方法
IT知識が少ない場合でも、IT知識がすでにある方の場合でも、基本的な勉強の流れは同じです。
まずは参考書や勉強サイトを活用して、試験に出題されている問題の概要を把握しましょう。ITパスポート試験では専門用語に関する問題が多く出題されるため、初めて見た用語は1つずつ丁寧に覚えましょう。
参考書や勉強サイトなどで基礎知識を勉強した後は、過去問を利用して実際の問題に取り組むことが重要です。過去問は下記のIPA公式サイトからダウンロードすることができますので、活用することをおすすめします。
【参考】:ITパスポート試験ー過去問
過去問を解いていく中で、間違えた問題は重点的に復習を繰り返すことで知識を定着させることが可能です。また、過去問を利用すると実際にITパスポートの出題形式に慣れることができます。*さらにITパスポート試験では、過去問と同様の問題や似た問題が多く出題される傾向にありますので、過去問で合格点を安定して取れるようになってから、実際の試験に臨みましょう。
おすすめの参考書
前述でおすすめの学習方法について解説しましたが、ITパスポート試験は知名度が高い試験のため、参考書だけでも数多くの出版社から発刊されています。特に初学者の場合は図解で解説されている本を選ぶことで理解が進みやすく、必要に応じて参考書の購入をおすすめします。
ここでは、初学者の方に特におすすめな参考書について紹介します。
■【令和4年度】 いちばんやさしいITパスポート 絶対合格の教科書+出る順問題集
本書は、ITパスポート試験に短期間で1発合格するための試験対策本です。初学者や学生の方にも読みやすいよう、初歩的な内容も丁寧に紹介されています。
重要な用語はイラスト図解されており、試験に出るポイントも絞って記述されているため、圧倒的に分かりやすいと評判の1冊です。
▪著者:高橋 京介 ▪ページ数:512ページ ▪出版社:SBクリエイティブ ▪発売日:2022/2/17
【参考】:【令和4年度】いちばんやさしいITパスポート 絶対合格の教科書+出る順問題集
■令和04年 イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生のITパスポート教室
項目ごとにイメージイラストで解説しているため、IT系の勉強は難しそうだと構えている未経験者の方におすすめです。
また、独自の方式で、試験に出る要点を「○○とくれば□□」といったようにまとめてある点が特徴的な1冊です。単語帳で覚える感覚で要点を理解できるため、暗記型の勉強法が得意な方に向いています。
▪著者:栢木 厚 ▪ページ数:456ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2021/11/27
【参考】:令和04年 イメージ&クレバー方式でよくわかる 栢木先生のITパスポート教室
ITパスポート試験を受験する際の注意点
ここでは、ITパスポート試験を受験する際に、注意すべき点について解説します。
学習前に受験日を設定しておく
ITパスポート試験は、47都道府県で毎月実施されていますが、まずは学習を始める前に、受験日を定めることで、目標を明確化することが重要です。設定した受験日から逆算して勉強スケジュールを立てられることで、強制力が働きモチベーションも高まることでしょう。
勉強時間は3ヶ月程度必要であることから、3〜4ヶ月後の試験に申し込むことをおすすめします。その際、勉強期間を長く設定すると、却ってモチベーションの維持が困難となってしまう場合もありますので、自分のペースに合わせて受験日を決めましょう。
【参考】:ITパスポート試験ー試験開催状況一覧
ITパスポートはCBT方式の試験
ITパスポートは、パソコンを利用して解答するCBT方式の試験です。CBTとは、「Computer Based Testing」の略称です。試験会場に設置されているパソコンの画面に出題される問題に対して、4つの選択肢の中から1つを選択し、マウスとキーボードを活用して解答します。パソコンの画面は表示倍率を変えることもでき、試験問題について前後の問題に移動することもできます。
ITパスポート試験の合格率は比較的高い!
これまでに、ITパスポート試験の概要・受験者層・合格率・難易度について紹介しました。また、ITパスポート試験に合格するための勉強時間・勉強方法・試験に受験する際の注意点も併せて解説しました。ITパスポート試験の特徴として、学生の受験者数が多いことやIRT方式で評価点を算出していることが挙げられます。
ITパスポート試験の合格率は50%程度で、毎月試験が実施されています。上位の資格である基本情報技術者試験の合格率は25%程度で、年に2回しか実施されないことから、ITパスポート試験の方が難易度は低めです。
ITパスポート試験に合格するための勉強時間は人それぞれですが、平均は3ヶ月程度で合格できます。IT知識を今すぐ身に着けたい方は、ITパスポート試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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