応用情報技術者試験は転職に有利?
ITエンジニアを目指す人の多くが取得を考える国家資格「応用情報技術者試験」は、合格率20%台となかなかの難関です。試験は午前と午後に分かれ、合格するにはそれぞれ60%以上の正答が必要です。特に午後試験は記述式問題があり、応用力が試されます。
また、午前試験は出題範囲が広く、経営や監査、プロジェクト管理などIT分野以外からも出題され、十分な試験対策が必要です。本記事では、応用情報技術者試験の概要、資格取得が転職に役立つ理由、勉強法、取得後の活用法などについて解説します。
応用情報技術者試験について
IPAが主催する応用情報技術者試験(AP)はIT系国家試験としては長い歴史を持っています。汎用機が全盛の頃は、「第一種情報処理技術者試験」という名称で、IT業界では難関試験として高い評価を得ていました。
2001年に「ソフトウェア開発技術者試験」に変わり、2008年からは応用情報技術者試験として定着しています。応用情報技術者試験は「高度IT人材として活躍を目指す人材」を合格者が目指す人材像として掲げています。
受験者制限は特に設けられていませんが、プログラマやシステムエンジニアとして数年程度の経験を積んでいることを主な受験対象者像としています。
応用情報技術者試験は春(4月)と秋(10月)の年2回、試験会場で行われ、合格するには午前試験・午後試験ともに60%以上得点することが条件です。例年、午前試験は四肢一択式で80問必須解答、午後試験は選択式で記述式問題を計5問選択します。
【参考】:応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ぜひ『マイナビIT エージェント』をご活用ください!
試験の実施概要
応用情報技術者試験の実施概要について確認しておきましょう。
▪受験資格:受験者に関する制限なし、学歴や年齢を問わず誰でも受験可能 ▪受験日程:春と秋の年2回(申込は試験日の3ヶ月〜1ヶ月前まで) ▪受験料:7,500円(税込) ▪試験会場:全国主要都市の会場で開催 ▪合格発表:試験日から約2ヶ月後の平日で、詳細日程はIPAのサイトで試験当日の夜に公表 ▪合格証書:合格発表の後、1週間程度で郵送 ▪試験の構成:午前試験と午後試験
【午前試験】 ▪試験時間:150分 ▪出題形式:記号選択式 ▪出題数:80問 ▪合格ライン:60%(概ね50問以上正答で合格)
【午後試験】 ▪試験時間:150分 ▪出題形式:記述式 ▪出題数:11問中5問(1問必須、4問選択) ▪合格ライン:60%(概ね3問正答で合格)
【参考】:応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
難易度や合格率
IPAによると、応用情報技術者試験の合格率は例年20%台です。
応用情報技術者試験はスキルレベル3の試験であり、最難関であるスキルレベル4の高度情報処理技術者試験に次ぐ難易度です。また、午後試験には記述式問題が出題され、暗記するだけでは解けない応用問題もあり、高い応用力が求められます。
合格に必要な勉強時間
受験者の知識レベルや経験値によって左右されますが、SNSなどでの合格体験談などから、未経験者では500時間程度、プログラマーやシステムエンジニアとして経験がある人で200時間程度が目安です。
通勤時間やスキマ時間を有効に活用し、毎日少しずつ学習を進めましょう。
応用情報技術者試験のデメリット
応用情報技術者資格は合格することで多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。資格取得を検討する際は、これらのデメリットをしっかりと理解し、自分のキャリアプランと照らし合わせて判断しましょう。
学習時間とコスト
応用情報技術者試験は情報処理技術者試験の中で難易度は上から2番目のレベルにあり、合格率も20%前後の難関試験です。出題範囲が広く、実務経験を積んだ受験者でも試験対策なしに合格するのは難しいレベルと言われています。
そのため試験に合格するためには多くの時間と労力、学習コストが必要なことから、受験は「意味ない」と敬遠する向きもあります。
独学が難しい
応用情報技術者試験は基礎知識から専門知識まで、多岐にわたる範囲から出題され、単なる暗記ではなく、概念を理解する力や応用力が問われます。また、試験が年2回しかなく、試験勉強は最低でも半年間の長丁場に及び、独学ではモチベーション維持が難しいのです。
保証があるわけではない
苦労して応用情報技術者資格を取得しても、必ずしも希望の企業や職種に就ける保証はありません。転職活動は資格取得とは別に行う必要があり、実務経験やコミュニケーション能力なども必要とされます。
知識の更新が必要
資格は取得して終わりではありません。特にIT業界は常に変化が激しいため、応用情報技術者資格を取得しても、常に最新の技術を学び続ける必要があります。
応用情報技術者資格取得のメリット
応用情報技術者資格は、ITエンジニアとしてのキャリアアップを目指す上で非常に魅力的な資格です。就職・転職、キャリアアップ、年収アップなど様々なメリットが期待できます。1つずつメリットを見ていきましょう。
ITスキルの客観的証明
幅広いIT知識と応用力を問う試験であるため、合格することでITスキルを客観的に証明でき、能力を可視化できるとともに、自分自身の成長に繋がります。また転職活動の際、求職者は特にシステム開発やセキュリティの知識を必要としている企業に対して、即戦力として自分自身をアピールする材料となります 。
強いアピールポイントになる
応用情報技術者試験は難易度が高く、一朝一夕で合格できるものではありません。資格取得には計画的な学習と継続的な努力が求められます。そのため企業側の応用情報技術者資格に対する評価は高く、面接や職務経歴書でのアピールポイントとして強力です。
IT業界での競争優位性
昨今エンジニア人材の枯渇が叫ばれていますが、人気企業の職を求める人材は多く、激しい競争環境となっています。応用情報技術者試験のようにアピール度の高い資格は、他の応募者との差別化に有効であり、厳しい転職活動の強い味方となります。
年収アップにつながる
応用情報技術者資格を活かせる仕事として挙げられるのは、システムエンジニアです。
「マイナビエージェント職種図鑑」によると、システムエンジニアの平均年収は431万円(※2024年10月執筆時点)です。経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」では、「エンジニア/プログラマ」の平均年収は592万円でした。
また、国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、システムエンジニアの年収は平均年収と同じ程度ですが、システムエンジニアの平均年齢は民間企業就業者よりも低い30代が中心であることから、総合的に考えると高年収と言えます。
システムエンジニアはキャリアパスが豊富にあり、プロジェクトマネージャーやITコンサルタントなどへのキャリアアップによって、平均年収は大きく上昇します。他、応用情報技術者試験は難易度が高く、資格手当や昇給を期待できることから、年収アップを期待できます。
【参考】:マイナビエージェント職種図鑑/システムエンジニア ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
他の資格試験の免除
応用情報技術者資格を取得した人は、中小企業診断士や弁理士などの他の資格試験の一部が免除される制度の恩恵を受けられます。これによって他の資格取得のハードルが下がり、キャリアの選択肢が広がります。
【参考】:試験のメリット | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
エンジニア転職のご相談はぜひ
『マイナビIT エージェント』へ!
応用情報技術者試験の対策
応用情報技術者試験に合格し、資格取得が転職に役立つことが理解できたところで、ここでは試験対策について解説していきます。応用情報技術者試験は出題範囲が広く、合格にはかなりの学習量が必要ですが、以下に挙げる対策を参考にして、効率的に学習を進めましょう。
試験勉強の進め方
応用情報技術者試験は、選択式の午前問題と、記述式の午後問題があります。午後問題が午前問題の延長線上であるため、まず午前問題の対策をしっかり行ってから、午後問題対策へと進みましょう。
午前問題の勉強法
ここでは、午前対策の有効な進め方について紹介します。以下に挙げる4つの方法を中心に進めることをおすすめします。
◼︎参考書を一通り読み、全体像をつかむ 後ほど紹介するおすすめの参考書に一通り目を通しましょう。初めて知った箇所はマーカーを入れたり付箋を挟んだりして、後で重点的に読み返すと良いでしょう。
◼︎学習サイトを利用する 学習サイトでよく活用される「応用情報技術者試験ドットコムの過去問道場」で、過去問題(5年間分)にチャレンジしてみましょう。
【参考】:応用情報技術者試験.com-応用情報技術者過去問道場
◼︎過去問で不正解の箇所をメモする 過去問で正解できなかった問題、よく分からずたまたま正解になった箇所はメモをしておきます。
◼︎不明箇所は参考書などで重点的に反復学習する 不正解箇所、理解不足の箇所を参考書等で復習し、改めて過去問に挑戦しましょう。
午後問題も60点以上の正答率が必要
午前試験で100点満点を取れば、午後試験は50点でも受かるという誤解が一部にありますが、午前と午後試験はそれぞれ独立した評価がされるため、午前午後共に60点以上の点を取らなくてはなりません。
午前対策をしっかり行う必要があるのは基礎力を問われるからであり、その基礎力があってこそ、午後試験の解答が可能になるからです。
おすすめの参考書や教材
応用情報技術者試験で合格点するには、参考書などによる勉強に加え、過去問の反復解答が不可欠だと分かりました。次に、応用情報技術者試験のおすすめの参考書や学習サイトを紹介します。
キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和06年
本書はイラストを多用し、図解で分かりやすく解説されているため、IT用語に慣れていない人でも楽しみながら学習できます。過去問解説も豊富に収録されており、実践的な問題演習も可能です。ユニークな会話形式を取り入れた文章で飽きずに学習を進められます。
▪著者:きたみりゅうじ ▪ページ数:944ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023年12月2日
【参考】:キタミ式イラストIT塾 応用情報技術者 令和06年
令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
本書は最新の試験傾向をふまえており、効率よく合格するための学習のロードマップが示されています。過去問や予想問題も豊富に収録されており、実践的な演習を通して理解を深めることができます。また体系的な解説と豊富な図表により、難しい概念もわかりやすく学べます。実践的な問題演習を重視したい方におすすめです。
▪著者:大滝 みや子、岡嶋 裕史 ▪ページ数:800ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023年12月14日
【参考】:令和06年【春期】【秋期】 応用情報技術者 合格教本
応用情報技術者試験ドットコム
応用情報技術者試験の受験生をサポートするウェブサイトです。過去問の公開や、受験に関する情報提供など、受験対策に役立つ様々なサービスを無料で提供しています。また、スマートフォンやタブレットからも利用できるので、通勤時などのスキマ時間に手軽に勉強できるため、忙しい方におすすめです。
【参考】:応用情報技術者試験ドットコム
応用情報技術者資格を活かしてさらなる活躍を
ここまで、応用情報技術者資格の取得と転職の関係性について、試験の概要、難易度、資格取得のメリットなどを解説しました。日本経済はDX化の推進が再生の鍵と言われ、タイムリミットである2025年が目前に迫ってきました。
そのDX推進役として不可欠のエンジニア人材は不足していると言われています。こうした中、エンジニアの求人は豊富にありつつも、人気職種や人気企業への転職は希望者が多く、狭き門となっています。
それを突破するための客観的なスキル証明となる、応用情報技術者資格の取得は必須要件とも言えます。無事に応用情報技術者資格を取得できても、膨大なエンジニアの求人情報から、自分に最適な企業を見つけ、転職準備を進めるのは容易いことではありません。
そこでぜひご活用いただきたいのがマイナビIT エージェントです。
マイナビIT エージェントは、IT・Webエンジニア向けの無料の転職⽀援サービスです。
IT・Webエンジニアの転職事情に詳しいキャリアアドバイザーが、あなたのご経験やスキルをお伺いし、転職活動のプランをご提案致します。
アドバイザーは企業側の人事担当者と直接連携を取れますので、求人票に載っていない企業情報も確認することができます。残業時間や給与面など、働き方などをしっかり確認の上で応募企業を選んでいくのが良いでしょう。
・資格やプログラミングの勉強をしているけれど、企業が求めるレベルに達しているのかわからない ・スキルアップをして市場価値を上げていける企業の選び方を知りたい ・数多くあるITエンジニアの職種の中で、自分に向いている仕事は何か知りたい
こうした悩みを抱えていらっしゃる方は、まずは無料登録でキャリアカウンセリングをおすすめ致します。
マイナビエージェントに無料登録して
転職サポートを受ける
編集部オススメコンテンツ
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから