AWSとは
AWSとは、「Amazon Web Service」の通称で、巨大IT企業「GAFA」(Google、Amazon、Facebook、Apple)の1角を占めるAmazonが提供するクラウドサービスです。
AWSのユーザはインターネット経由で、AWS提供のサーバやストレージ、データベースなどを利用して、さまざまなメリットを享受しています。米Synergy Research Groupの調査※によると、2021年のクラウド市場でAWSは約33%を占め、2位のAzure21%を大きく上回っています。
この記事では、クラウドサービスで圧倒的なシェアを誇るAWSの特徴、メリットと課題、主要サービスについて解説をします。ITエンジニアの常識として知っておきたいことをわかりやすく解説しますので、ぜひお読みください。
【参考】:アマゾン ウェブ サービス(AWS クラウド)- ホーム 【参考】:※Huge Cloud Market Still Growing at 34% Per Year | Synergy Research Group
クラウドサービスの3つの形態
一口にクラウドサービスといっても、実はそのサービスは大別すると3つの形態があります。これからクラウドサービスの3つの形態、それぞれの特徴について解説していきます。
- PaaS(パース)
「Platform as a Service」の略称です。ソフトウェアの開発や、構築したシステムを稼働させるための土台となるサーバやデータベース、ネットワークなどのプラットフォームを提供するサービスのことです。世界三大クラウドサービスと言われるAWS、Azure(Microsoft)、GCP(Google)が提供するサービスの多くはPaaSです。
- IaaS(アイアース、イアース)
「Infrastructure as a Service」の略称で、デスクトップ仮想化サービスや共有ディスクサービスなど、ハードウェアを中心とするインフラ機能を提供するサービスのことです。サーバなどと一体となるOSまでは提供範囲ですが、ミドルウェアやアプリケーションは利用者が手配します。AWSの代表的なサービス「Amazon EC2」はIaaSです。
- SaaS(サーズ、サース)
「Software as a Service」の略称で、クラウド上のソフトウェアをインターネットを経由して提供するサービスのことです。SaaSの代表例としては、Microsoft Office 365やGoogle Workspace、SlackやChatwork、Salesforceがよく知られています。
AWSでできること
AWSが提供する320種類以上のサービス(2023年12月時点)を活用することで、以下のようなことが可能です。
- サーバやWebサイトの構築(Amazon EC2、Amazon S3)
- データの保管(Amazon EBS)
- データベースとしての利用(Amazon RDS)
- コールセンター機能(Amazon Connect)
- VDIの構築(Amazon WorkSpaces)
- BIツール(Amazon QuickSight)
- 機械学習サービス(Amazon SageMaker)
- IoTサービス(Amazon IoT Core)
【参考】:AWS の製品・サービス一覧 | クラウドなら AWS
後ほど詳しくAWSの主要なサービスをいくつか紹介するので、具体的にどういったサービスがあるのかを確認しましょう。
AzureやGCPとの違い
AWSと同様のクラウドサービスに「Azure」「GCP」があります。どれも主要なクラウドサービスとして広く利用されており、それぞれ特徴が異なります。ここでは、AzureとGCPの特徴を紹介するので、AWSと比較してみましょう。
- Azureの特徴
AzureはMicrosoft社が運営・提供するクラウドサービスであり、世界中に60以上のリージョンを備え、140もの国や地域で利用できます。名称は異なるもののAWSと共通したサービスを提供しています。
Microsoft社製の製品・サービスと親和性が高く、オンプレミス連携も可能です。Windows環境とOfficeソフトウェアを利用しているユーザであれば、多くのメリットを享受できるでしょう。ちなみに、2022年における世界のシェア率調査ではAWSに次いで2位を誇りました。
【参考】:Azure 【参考】:Azure データセンターの物理上のセキュリティ - Microsoft Azure | Microsoft Learn 【参考】:Gartner、世界の IaaS パブリック クラウド サービスの収益は 2022 年に 30% 増加し、初めて 1,000 億ドルを超えたと発表
- GCPの特徴
GCPは「Google Cloud Platform」の略称であり、Googleが提供するクラウドサービスです。Googleの持つ高度なデータ解析技術や、機械学習関連技術を利用できます。Googleはビッグデータ解析においても高い技術があるため、SQLや自動化ワークフローを利用して、迅速かつ高い精度でビッグデータを解析可能です。
AWSと比較するとGCPは提供サービスの種類が少なめですが、その分それぞれのサービスにGoogleの先端技術を組み込むことでサービス価格を抑えることができ、コストパフォーマンスに優れています。
AWSの特徴
これからAWSの特徴を見ていきましょう。AWSは利用者が使いたいサービスを使いたい時に、使いたいだけ提供できる点が魅力です。クラウドサービスは今でこそ当たり前のサービスですが、登場した頃は画期的なサービスでした。
AWSが提供するサーバは、基本は仮想サーバです。常時稼働している物理サーバを区切って、仮想サーバとして時間貸しをしているのです。
以下に列挙した項目は、AWS以外のクラウドサービスでも実現しているものありますが、以下に挙げた事柄がAWSの成長を支えてきたともいえます。
責任共有モデル
AWSには「責任共有モデル」という考え方があります。それは、AWSと利用者はそれぞれの責任範囲を明確にし、その責任を分担するというものです。AWSはデータセンターとハードウェア、物理的セキュリティなどAWSが提供するものに対する責任を負います。
一方、利用者はOSやミドルウェア、ネットワーク設定やアプリケーション、データの暗号化などに責任を負います。
利用する前から、それぞれの責任範囲、責任の分界点が明確になっていることで、利用者はユーザ側の負担軽減が明らかになります。利用形態ごとのベストプラクティスを得る事ができ、オンプレミスと比較してコストの低減が図れます。
【参考】:責任共有モデル | AWS
従量課金制度
AWSでは、利用した分だけ料金を支払う従量課金制を採用しています。たとえばAmazonの主要サービスのEC2では、コンピュータが稼働している時間によって料金が計算されます。またその料金はサーバのスペックによっても時間単価が異なります。
使った分だけ支払うという従量課金制度は極めて合理的な考え方であり、無駄な費用が発生しないため、ユーザにとっては納得感を得やすいというメリットもあります。基本的に、ほとんどのパブリッククラウドサービスではこの重量課金制度が採用されています。
【参考】:AWS の料金 | AWS公式
リージョン
AWSが直接管理、運営しているデータセンターは世界中に設けられており、各地域ごとに「リージョン」という単位で地理的に分割されています。また「リージョン」は複数のアベイラビリティゾーン(AZ:Availability Zone)から構成されています。
AZは1つ以上のデータセンターから成り立っています。リージョン内を構成するAZはそれぞれが独立した場所に設置され、仮に大規模災害などで1つのAZが機能停止状態に陥っても、別のAZでサービスの提供を受けるようにすることが可能です。
またリージョン間でもディザスタリカバリ(DR:Disaster Recovery)、すなわち災害復旧対策(BCP:Business Continuity Plan)を構築することが可能です。
【参考】:リージョンとゾーン - Amazon Elastic Compute Cloud
AWS認定資格
「AWS認定資格」とは、AWSの利活用に関する専門知識やスキルを認定するAWS主催の認定資格制度です。近年、クラウドサービスの利用が一般化し、それに伴ってAWSに関する運用・保守スキルを有する人材の価値が高まっています。
AWS認定資格には現在11種類の認定試験があり、それぞれ基礎からアソシエイト、プロフェッショナル、専門知識までレベルが設けられています。クラウドファーストの昨今、クラウドスキルの証明として高い評価を得ているAWS認定資格は人気が高まっています。
【参考】:AWS 認定 | AWS
AWSのメリット
ここでは、AWSを利用するとオンプレミス(自社内環境)と比較してどのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。
初期コストの抑制
自社内にサーバなどの設備を構えるオンプレミスでは、サーバやストレージ、ネットワーク機器などの初期費用が掛かります。一方、AWS利用では基本的にインフラ構築が不要なため、インフラ導入の初期コストを大きく抑制できます。
ただし、IaaS形態では仮想サーバやネットワークなど物理インフラは提供されますが、OSやミドルウェアなどの費用が別途発生する点には留意する必要があります。
環境構築が不要
システムの移行や導入では、サーバやストレージ、ネットワーク機器などのハードウェアの調達、設置を行うなど、インフラ環境の構築が欠かせませんが、オンプレミスでは機器の調達から環境構築まで数カ月を要することもあります。
一方、AWSを利用することで、こうした物理的な環境構築の必要がなく、OSやミドルウェアなどソフトウェア環境の構築に注力ができるため、環境構築の時間を一気に短縮することが可能になります。
自社責任の軽減
オンプレミスでは、災害や機器故障によるサーバ停止リスクがあり、またハッキングやサイバー攻撃などによる情報漏洩が発生すると、その責任をすべて自社で負わなければなりません。一方、AWSの利用によって責任共有が行われ、自社責任の負担が軽減され、リスクヘッジが可能になります。
AWS側の責任範囲となる部分は、AWS側が万全の対策を講じており、ユーザは自社責任部分についてのみ対策を講じればよく、サービスを安心して利用ができるというメリットがあります。
柔軟性・拡張性がある
オンプレミスの仕組みでは、事業の拡大によるデータ量、アクセス数の増加に対しては自社で拡張、増強の対応を行わなくてはなりません。サーバ増築、ストレージの増強、移行作業など、さまざまな負担が発生します。
一方AWSの利用では、利用者側は増強や拡張、リプレイスなどの対応が一切不要です。ただし、AWSでは従量課金制度を採用しているため、データ量の増加などにより、ランニングコストが増加する点は留意し、予算化の措置をしておくことが求められます。
AWSの代表的なサービス
AWSには100種類以上のサービスがありますが、その中でもよく知られた代表的な4つのAWSサービスについて見ていきましょう。
Amazon EC2
「Amazon EC2」はAWSのIaaSサービスの1つで、「Amazon Elastic Compute Cloud」の略称です。EC2は必要に応じてスペックの変更が可能な仮想サーバ構築サービスですが、わずか数クリックで仮想サーバの構築が行える点が特徴です。
Elastic(伸縮性)の名の通り、サーバ台数、メモリースペック、CPUなどを柔軟に拡縮することができます。
【参考】:Amazon EC2 | AWS
Amazon S3
「Amazon S3」は「Amazon Simple Storage Service」の略称で、Webサイト機能を兼ね備えたオンラインストレージサービスです。ファイル容量の制限がなく、また非常に高い耐久性を兼ね備えています。
【参考】:Amazon S3|AWS
Amazon RDS
「Amazon RDS」は「Amazon Relational Database Service」の略称で、AWSが提供するフルマネージド(完全自動)のデータベースサービス(PaaS)です。MySQL、PostgresSQL、OracleといったRDBMSを選択して利用できます。
これらデータベースを画面上で簡単に操作でき、OSやミドルウェアの設定作業、ライセンス管理、バージョン管理はすべてAWSが対応してくれる点が特徴です。
【参考】:Amazon RDS| AWS
Amazon Lambda
「Amazon Lambda」(ラムダ)は任意のプログラム実行環境提供のサービスです。利用者はサーバなどを意識することなく利用できますので、サーバレスコンピューティングサービスとも呼ばれています。
プログラムコードだけあれば、アプリケーションの実行が可能です。また、100万リクエストまで無料で利用できるため、システム開発コストの削減も可能です。
【参考】:AWS Lambda| AWS
AWSを利用する上での課題
AWSの利用は企業にとって良いことづくめに思えますが、いくつか課題もあります。ここでは、AWSを利用する上で留意しておくべき課題について見ていきましょう。
コスト管理は必要
定額制のアウトソーシングであれば、基本的にコスト管理の必要はありませんが、AWSは従量制の料金制度を採用していることから、運用方法によっては思わぬ料金を請求される場合もあります。
たとえば、データ量の増大による処理時間の増加、誤った運用設計によるアイドルタイムの発生など、サーバの稼働時間が増える要因があります。
AWSではインスタンス(仮想サーバ)の起動から停止までの時間が課金対象であり、データ処理量ではなく、稼働時間である点に注意が必要です。
AWSのサービスは効率的に利用し、無駄な費用が発生しないよう留意する必要があります。
クラウドは万能ではない
クラウド利用でコスト削減が前面に出過ぎると、情報システムの本質を見失う恐れがあります。オンプレミスからクラウドに移行することで、初期コストやランニングコストの低減は図れますが、それ以外で残しておくべき機能、強化すべき機能までカットしては元も子もありません。
AWSが提供するのはあくまでもインフラ部分が中心であり、コンテンツの構築や維持管理、運用などの情報システム部門の機能は企業側の担当範囲です。
AWS移行によって情報システム部門は身軽になりますが、情報システム部門の機能を縮小するのではなく、本来行うべきこと、新たなシステムの企画を進めることが重要です。
責任共有の遵守
AWSのサービスは責任共有によって成り立っています。AWSには他の利用者が数多く存在します。クラウドサービスは利用者の不手際によって、他の多数の利用者に迷惑を及ぼすリスクがあります。
そのため利用ルールは遵守し、絶対にAWS側や他の利用者に迷惑を及ぼさないという意識を持って利用する姿勢が求められます。
【参考】:責任共有モデル-AWS
AWSを使ってみよう
今やエンジニアにとってクラウド利用は当たり前のことであり、実際に多くのエンジニアはAWSと何らかの形で関わっています。この記事では、クラウドサービスでは世界一のシェアを誇るAWSについて、概要やメリット、課題について解説しました。
併せて、クラウドサービスの3つの形態について再確認を行いました。AWSを使ったことがないという方は、最大30日間の無料トライアルをおすすめします。自らクラウドサービスを利用してみることがAWS理解の早道です。
【参考】:AWS クラウド無料利用枠 | AWS
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