そもそもクラウドサービスとは?
クラウドサービスとは、インターネットを介して提供されるサービスのことです。企業等が提供しているサービスにインターネットを通しアクセスすることで、利用可能となります。そのため利用者側はサーバーやソフトウェアなどを用意する必要がありません。
クラウドサービスの分類
クラウドサービスとは、個別のシステムとして設計していたITシステムを従量課金制を用いてサービス提供する形態を指します。クラウドサービス事業者は必要とされるIT機器をデータセンターに収容し、サービス契約に応じて払い出してサービス提供をしていきます。
クラウド事業者と利用者は、契約サービス内容に応じていくつかのモデルが提供されます。それぞれ責任範囲が定義されており管理作業の負担が変わってきます。
・IaaS(Infrastructure as a Service) IaaSの場合クラウド事業者はサーバー・ストレージ・ネットワーク・ハイパーバイザー・OSを担当し、利用者はミドルウェア・アプリケーションを担当し利用します。通常クラウドサービスでサーバーを利用する際にはIaaSを選択するケースが多いです。AWSのサーバーサービスであるAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)が代表的な提供例となります。
・PaaS(Platform as a Service) PaaSではクラウド事業者はアプリケーション以外の環境を提供し、利用者は必要なアプリケーションを準備し利用します。このためアプリケーション開発環境に適しています。
・SaaS(Software as a Service) SaaSの場合はクラウド事業者がアプリケーションも含めて提供し、利用者が使用する形態です。CRMを提供するSalesforceが有名なプロバイダーとなります。
クラウドサービスのシェア率
グローバルのクラウド市場は年々成長を続けています。2021年第1四半期におけるシェアのトップは「AWS」の32%、次が「Microsoft Azure」の19%、その次が「Google Cloud」の7%です。上位3つのクラウドサービスは全体の約6割を占めるほどの圧倒的なシェア率を誇っています。中でも「AWS」のシェア率はトップクラスです。
【参考】:Canaly社によるグローバルにおけるクラウドの主要ベンダシェアなどについて
クラウドサービスで利用可能なクラウドサーバー
クラウドサービスの中で提供されるものの1つに、クラウドサーバーがあります。クラウドサーバーとはインターネットを通して利用可能なサーバーのことです。インターネットでアクセス可能な物理サーバー内に各利用者用の仮想サーバーが構築されています。
クラウドサーバーとレンタルサーバーの違い
クラウドサービスの1種でもあるクラウドサーバーですが、これとよく似たものにレンタルサーバーと呼ばれるものがあります。レンタルサーバーとは、運営会社によって用意・設定・保守・運用などが行われ利用者に提供されるサーバーのことです。クラウドサーバーもレンタルサーバーもサーバーをレンタルするという意味では同じですが、両者にはいくつか違いがあります。
まず、クラウドサーバーとレンタルサーバーには仕組みが異なります。クラウドサーバーが1台のサーバー内に利用者ごとの仮想サーバーを立てるのに対して、レンタルサーバーは1台のサーバーを複数の利用者で共有します。
また、サーバー運用業務発生の有無についても異なります。レンタルサーバーは運営会社がサーバー運営に関わる業務を行ってくれますが、クラウドサーバーの場合は運用作業を利用者側で行う必要があります。見方を変えれば、クラウドサーバー利用者側でカスタマイズすることが可能です。
その他に異なる点として、サーバーの導入と運用にかかる費用も挙げられます。クラウドサーバーは導入費用はかかりませんが運用コストはかかります。それに対し、レンタルサーバーは導入時に初期費用が発生しますが運用コストはクラウドサーバーより低いです。
クラウドサーバーとレンタルサーバーで適しているのは?
クラウドサーバーとレンタルサーバーは、用途によって適しているものが異なります。クラウドサーバーの利用が向いているのは「ECサイト」「コーポレートサイト」など、レンタルサーバーの利用が向いているのは「個人ブログ」などです。
「ECサイト」にはデータベースが必要です。データの量が増加することで読み込みにかかる時間も増加してしまいますが、クラウドサービスであればサーバーと合わせて利用可能なストレージを導入することで、この問題を解決することができます。
「コーポレートサイト」が、同一のサーバーを利用している他のユーザーの影響を受けることは好ましくありません。自社サイトへのアクセスが困難になるなどの問題が発生する可能性があるからです。そのため、同一サーバー内でも利用者ごとに仮想サーバーを立てるクラウドサーバーが向いています。
「個人ブログ」はデータベースを使用せずとも構築することが可能です。レンタルサーバーはクラウドサーバーよりも安価であることに加え、利用者側での運用業務が少ないことから誰でも気軽に導入することができます。そのため「ブログ」など個人利用の場合はレンタルサーバーが向いています。
AWSとは?
ここまでクラウドサービスやクラウドサーバーなどについて紹介してきました。ここからはクラウドサービスの1つである「AWS」について紹介していきます。
AWSとは、最大のシェアを誇るクラウドサービスです。豊富なサービスの中から業務に必要なコンピュータ資源を選択し、サービス提供を受けることができます。そのため多様なワークロードを安価にサービス活用することが可能です。Gartnerのクラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービス部門における「2020 マジッククアドラント」においてリーダーポジションを獲得しています。
【参考】:AWS Gartner: クラウドインフラストラクチャとプラットフォームサービス部門における 2020 マジッククアドラント
AWSの提供サービスは?
AWSではサービス製品をカテゴリー分けできます。具体的にはコンピューティング・ストレージ・データベース・分析・ネットワーキング・モバイル・デベロッパー用ツール・管理ツール・IoT・セキュリティ・エンタープライズアプリケーションなどがあり、これらの製品をサービスとして利用することが可能です。
【参考】:AWS クラウド製品
AWSのサーバーサービスは?
AWSのサーバーサービスはAmazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)と呼びます。このサービスを選択することで仮想サーバーを利用することが可能となります。AWSはサーバーサービスに関連するコンピュータ資源のサービスが豊富です。
さらにニーズに合わせた補完サービスが多数提供されています。そのため複数のAWSサービスを併用することが可能となっています。
AWSのサーバーサービスの選択と利用
AWSのサーバーサービスにはAmazon EC2が必須です。加えてサーバーに接続するストレージも必要となります。したがってAWSではAmazon Elastic Block Store(Amazon EBS)というサービスを選択します。Amazon EC2については後述しています。
もしDBサービスを利用する場合にはAmazon Relational Database Service(Amazon RDS)が選択可能です。
サービス利用で活用するストレージ容量がさらに必要であればAmazon Simple Storage Service (Amazon S3)をストレージサービスとして選択することも可能です。Amazon S3により他のサービスとのデータ連携も可能になります。
Amazon EC2とは?
Amazon EC2はAWSのサーバー提供サービスを指します。またAmazon EC2は仮想サーバーを提供するものです。ここでは、Amazon EC2の料金体系やメリット・活用方法を紹介します。また、留意事項等についても説明しているので参考にしてください。
Amazon EC2の料金体系
Amazon EC2は使用に応じた料金が発生する従量課金制です。 オンデマンド・Savings Plans・リザーブドインスタンス・スポットインスタンス・Dedicated Hostの支払方法があります。
なお、無料利用枠が設定されており、1年間毎月750時間分のLinux およびWindowsの t2.microインスタンスが含まれます。実際の利用状況に応じた設定が可能です。
Amazon EC2のメリットは?
Amazon EC2にはさまざまなメリットがあります。ここでは5つ程ピックアップして紹介していきます。
・料金体系 従量制課金となるため、利用料に応じた課金で資産を持たずに業務を開始可能です。
・構成の柔軟性 必要なコンピュータ資源を柔軟に設定できます。同様に初期作業の大幅な削減が可能です。
・耐障害性 複数のロケーションを選択して、アプリケーションを障害から保護することが可能です。
・ソフトウェアの豊富なバリエーション OSの選択肢が多く、ソフトウェアもAWS Marketplaceのアプリケーションが豊富に揃っています。
・高いセキュリティ 多くのユーザに支持されるほど高いセキュリティレベルを誇ります。ネットワークセキュリティのみならずデータの暗号化やIdentity and Access Management(IAM)によりアクセスを保護します。
Amazon EC2の活用方法は?
AWSは世界数百万ユーザを抱えており、Amazon EC2はすぐにでも利用したいサービスの1つです。実際の活用例はECサイトや企業サイトが多数を占めています。また政府系システムの実績も増加し、日本においても2018年に「クラウド・バイ・デフォルト原則」が公表されました。そのため、政府機関の情報システムの構築においてAWSの活用の機会が増えていくでしょう。
その他の活用方法としては、業務アプリケーション基盤・DevOps開発基盤・IoTデータ収集システム・機械学習・データ分析などがあります。このように、Amazon EC2はさまざまな用途で利用されています。
Amazon EC2の留意事項は?
ここでは、Amazon EC2の留意事項を3点挙げていきます。
まず最初は、「AWS全体としてサービスが豊富なのがメリットである半面、留意事項にもなり得る」ということです。豊富な提供サービスであるため、利用サービスの選定や最適化には十分な検討や経験を要するのです。
次に、「問題発生時の責任のあり方」が挙げられます。クラウドサービス全般でいわれていることですが、SLAに従いクラウド事業者と利用者で責任の分担に応じて障害解決の対応をする必要があります。
最後は、「発生コストを予測し最適化をしていく必要性」です。本来所有型に比較して費用対効果の低減が期待できますが、想定以上の性能が必要になった場合は全体費用バランスの調整や業務アプリケーションの見直しが必要になるでしょう。
Amazon EC2の構築方法は?
以下の流れでAmazon EC2のインスタンスが作成可能です。AWS 無料利用枠が利用可能ですので設定変更の確認が可能です。
(1)AWS アカウントをセットアップしにコンソールにログイン AWS マネジメントコンソールにログインして、root アカウントをセットアップします。
(2)インスタンスを起動 EC2インスタンスをAmazon Machine Image(AMI)テンプレート等により作成します。次に、Amazon EC2 ダッシュボードから[インスタンスを起動] を選択し、仮想マシンを作成していきます。
(3)インスタンスの設定 必要とされるCPU・メモリ・ストレージ・ネットワークキャパシティからインスタンスタイプを選択します。加えて、ストレージのサイズやボリュームタイプ・セキュリティグループを選択します。
(4)インスタンスへの接続 EC2 Instance Connectや他のコンセール接続を用いてインスタンスへ接続します。
(5)インスタンスの終了 EC2インスタンスを選択し、[アクション]インスタンス][終了]をクリックします。
【参考】:Amazon EC2の開始方法
AWSのサーバー運用で広がる活躍の場
AWSとは世界最大シェアを誇るクラウドサービスのことです。クラウドサービスやクラウドサーバーの導入には多くのメリットがあります。一方で効果的な利用については多くの経験やサービス連携等の設計能力が必要です。
AWSの中心的なサーバー提供サービスのことをAmazon EC2といいます。Amazon EC2を活用することでさまざまなことができるようになります。
AWSのサーバー提供サービスであるAmazon EC2の実践力を高めてエンジニアとして活躍の場を広げていきましょう。
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