GCPとは何か?
「GCP」は"Google Cloud Platform"の略で、GAFAの一角Googleが提供するクラウドサービスです。Google社内やGoogleが実際に活用している最新技術やインフラを利用して、Web開発やシステム稼働を効率的に行えます。
近年、AmazonのAWSやマイクロソフトのAzureなど、クラウドサービスが急速に展開されていますが、GCPもそのひとつです。GCPのメリットについては後述しますが、Googleの持つ高度なデータ解析技術、機械学習関連技術の利用ができるのが大きな特徴と言えます。
GCPの特徴について
クラウドサービスと聞くと、AmazonのAWSやマイクロソフトのAzureを思い浮かべる方が大半だと思います。では、GoogleのGCPはそれらと何が違うのか、利用している人はなぜGCPを利用するのか気になりますよね。GCPには具体的にどのような特徴やメリットがあるのかを見ていきましょう。まずは、GCPが提供する代表的なサービスを簡単にご紹介します。
■Google App Engine 「Google App Engine」は、Google提供のPaaS(Platform as a Service)でパースと呼びます。Paasとは、アプリケーションを実行するために必要なハードウェアやOSなど(プラットフォーム)を、インターネット上で提供するサービスの形態です。最もベーシックなクラウドサービスの1つです。
■Google compute Engine 「Google compute Engine」はGoogleのIaas(Infrastructure as a Service)で、イァースと呼びます。Iaasは、システムの稼働に必要な仮想サーバーやデバイス、ネットワークをサービスとして提供します。主なOSに対応し、高速のネットワークと高いセキュリティを特徴とします。
■Cloud Datastore 「Cloud Datastore」はGoogle提供の"NoSQL"データベース・サービスです。"NoSQL"とは従来のRDB(リレーショナル・データベース)とは異なる、高速処理を得意とするデータベースの形式で、複数のサーバーにまたがることが可能な拡張性、分散性を特徴としています。
■BigQuery 「BigQuery」は、Google Cloud Platformで提供されている"ビッグデータ解析"サービスです。通常、長時間を要するクエリを、数TB(テラバイト)級のビッグデータでも数秒程度で完了できることができます。
BigQueryは元々はGoogle社内で使用していた、大規模クエリを実行するDremelというシステムを、一般に解放したもので、ビッグデータの処理をしたいユーザーにとっては、設備投資が不要なため、大変便利なサービスです。
GCPのメリット・デメリット
GCPについての概略は分かったと思いますが、より詳しく知るために、GCPのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
まず最初にGCPのメリットについてあげていきます。
1.ビッグデータ解析に強い インターネット検索では"ググる"という言葉が一般化しているほど、Googleの検索エンジンは技術に定評があります。このGoogleはビッグデータ解析においても高い技術を持っており、SQLや自動化ワークフローを利用して、迅速かつ高い精度でビッグデータを解析します。このビックデータ解析は、たとえばコロナ禍での人の動きを把握する際にも利用されるなど、ビジネス以外でも広く活用されており、ますます需要が高まっています。
2.機械学習分野の技術利用が可能 機械学習とは、人や動物が経験を通じて自然に学ぶことを、コンピューターに行わせるデータ解析のテクニックのことです。AI分野においては欠かせない技術です。
GCPでは、Googleが得意とする独自の機械学習技術を利用することが可能で、特別な専門知識がなくとも機械学習を実装できるため、その活用範囲が無限に広がります。
3.仮想マシンの起動速度が速い GCPのメリットして、Googleの持つ最先端技術によって仮想マシンの起動速度が大変速く、さまざまな処理を高速に処理することできます。例えば、管理画面から仮想マシンを起動するまでのステップ数がAWSが6ステップ、Azureは16ステップを踏むのに対し、GCPは2ステップと圧倒的に少ないのです。しかも、GCPはOSのログインも簡素化され、全体として非常にシンプルなため、その分起動が高速に行えます。
4.コストパフォーマンスが高い AWSと比較するとGCPは提供サービスの種類が少ないのですが、その分それぞれのサービスにGoogleの先端技術を組み込めることで、相対的にサービスの価格が低く設定されており、コストパフォーマンスが高いのが特徴です。
また、GCPはサービスの利用状況に合わせて従量課金制を採用しており、サービスに掛かる全体費用も割安です。さらに、長期間の利用で最大30%オフが適用されるのも大きなメリットです。
デメリット
GCPのライバルであるAWSとの比較でデメリットを見ていきましょう。
1.日本語情報が少ない AWSと比較すると日本語の情報が少ないため、英語が得意ではないエンジニアにとっては学習ハードルが高くなります。また、GCPに強い技術者がAWSと比較して少ないことから、GCP移行時のサポート面で不安が残ります。
2.サービスの種類がAWSと比較して少ない 米国調査会社ガートナーの調査によると、2019年のIaaSにおけるシェアはAmazonのAWS45%に対し、GoogleのGCPは5.3%でした。また提供されるサービスの種類も、GCPはAWSやマイクロソフトのAzureと比較してかなりシンプルです。利用者が求める機能のすべてを網羅できていない面はGCPのデメリットといえるでしょう。
GCPとAWSの違い
世界トップシェアを誇るAWS、そのAWSに追随する3番手のGoogleのGCPとは何が違うのか、それぞれの違いを見てみましょう。
両者の比較
それぞれに一長一短があり、どちらが優れているとは一概に言えませんが、優劣に差がある部分について比較してみました。
1.日本語ドキュメント:AWS 先発でもあり、圧倒的なシェアを獲得しているAWSに軍配が上がります。AWSは利用ユーザーが多く、AWS関係のコミュニティ活動が活発でさまざまなノウハウが蓄積され、それらは日本語でも公開されています。
2. 商用ライセンスのサポート範囲の広さ:AWS AWSは先発であることも関係しますが、商用ライセンスのサポート範囲が広いのが特徴です。Oracleなどの商用のサポートが必須のサービスなどを利用する際は、AWSが有利でしょう。
3.ビッグデータ解析 : GCP Googleは優れた検索エンジンの技術を持っていますが、ビッグデータ解析の分野も得意としています。一般的に、クラウドサービス環境でビッグデータの解析を行う場合は、計算リソースの追加、チューニングといった作業を利用者が自ら行う必要があります。しかしGCPを利用する場合は、GCP側で必要なリソースが自動的に割り当てられ、ユーザーは計算リソースなどを気にせず利用することができます。
4.仮想マシンの起動速度の速さ : GCP GCPの仮想マシンは起動にかかるステップを大幅に短縮させており、一般的なクラウドサービスと比べて、マシンの起動時間が半分以下に抑えられています。これは大きな強みで、処理速度の大幅な短縮にも繋がり、ビッグデータ解析やデータベース処理など、スピードを要求される分野では相乗効果が期待できます。
どちらを選択するか
GCPとAWSの比較において、機能面での大きな差はありませんので、どちらかを選択しても特に問題はありません。むしろ、AWSのサービスの種類が豊富過ぎて、AWSに詳しいエンジニアが関わらないと、宝の持ち腐れになる懸念すらあります。
先発のAWSは「圧倒的シェア」と「長年の実績」「膨大なノウハウ」を誇っています。
一方のGCPは、Googleの高度な技術を武器に成長を続けており、AWSとの差別化を図りながら、AWSを追い上げています。AWSと比べてGCPはリージョン数(拠点)の少なさがネックでしたが、日本では東京と大阪の2リージョン制を実現しており、災害対策面でもAWSに追いつこうとしており、Azureとの三つ巴の戦いが注目されます。
Google Cloud 認定資格
GCPにはAWSやAzureと同じように認定資格制度があり、「Google Cloud 認定資格」と呼ばれています。GCPの有効活用を行う上では「Google Cloud 認定資格」の学習や資格取得が求められます。また、「Google Cloud 認定資格」の取得はスキルアップばかりか、年収アップに繋がるとの調査結果もありますので、チャレンジをおすすめします。
認定資格のレベル
「Google Cloud 認定資格」には2つのレベルが用意されています。基礎から学びたい方は「アソシエイト」からチャレンジされるのがよいでしょう。
■アソシエイト認定資格 アソシエイト 認定資格は、「Google Cloud」 でのプロジェクトのデプロイ(準備)、モニタリング、管理などに必要な基礎スキルの習得を目指します。この資格はクラウドの入門編であり、プロフェッショナルの認定資格への準備的な位置づけになります。
■プロフェッショナル認定資格 プロフェッショナル認定資格は、主な技術職務を網羅しており、設計や実装、管理などに必要なスキルの習熟度を確認できます。この認定資格は、業界での経験があり、「Google Cloud」の プロダクトやソリューション知識がある方におすすめします。
Google Cloud トレーニング
Google Cloudの公式サイトにはGoogle Cloud トレーニングのコーナーがあり、オンデマンドや定期海溝クラスで学べるようになっています。ただ、日本語化されたものもありますが、主要言語が英語のため、英語に自信がある方に向いているかもしれません。
認定資格の種類
「Google Cloud 」の公式認定試験は以下の9種類があります。その内、日本語で受験できる試験は4つです。
▪Associate Cloud Engineer(日本語可)
▪Professional Cloud Architect (日本語可)
▪Professional Cloud Developer
▪Professional Data Engineer(日本語可)
▪Professional Cloud DevOps Engineer
▪Professional Cloud Security Engineer
▪Professional Cloud Network Engineer
▪Professional Collaboration Engineer (日本語可)
▪G Suite
今後の需要拡大次第では他の資格試験についても日本語での受験が可能になるかもしれませんが、当面はこの4資格に絞ってチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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