AWSとは
AWS(Amazon Web Service)は、”GAFA”の1つであるAmazonが提供するクラウドサービスのことです。AWSは、世界のIaaS市場で45%のシェアを占め、2位のAzure(Microsoft)18%を大きく引き離しています。日本でも、日本政府が行政サービスのDX化を狙いにAWSを政府共通プラットフォームとして採用するなど、注目を集めています。
本記事ではAWSの概要や活用策に触れ、エンジニアの皆さんの今後の成長に役立てて頂きたいと考えています。
AWSの概要
AWSとはAmazonが提供するクラウドコンピューティングサービスの総称です。
クラウドコンピューティングとは、インターネットを利用してサーバーや各種ストレージ、データベースやソフトウェアなどのインフラサービスを利用することです。クラウドコンピューティング環境を利用する場合は、1台のPCとインターネット接続環境があれば、さまざまなインフラを必要な分だけ利用できるのです。AWSはこのクラウドコンピューティングサービスをあらゆる企業や行政組織、個人に提供することで成り立っています。
AWSで何ができるのか
企業内システムの多くは、オンプレミスという形態で、企業内に独自のコンピューターやネットワークを設けてシステムを運用してきました。オンプレミスは初期投資のみならず、所有コストや運用コスト、セキュリティリスクなど大きな負担を抱えていました。
しかし、AWSを採用すると、初期費用も減価償却費も掛からず、システムを稼働させることができます。システム監視、セキュリティ対策、災害対策もすべてAWSが行ってくれます。企業規模の拡大によるハードの増強などもAWS側で柔軟に対応してくれるのです。このように、システムの自社所有に伴う問題をすべてAWSが吸収してくれることが、各社がこぞってAWSを採用する理由なのです。
Azureとの違いは
AWSの対抗サービスとしてMicrosoft社が提供するクラウドサービスAzureがあります。両者はほぼ同じようなサービスを提供しており、企業がクラウド移行を図る際には常に比較検討されます。
その中でAzureの決め手はOffice365との連携でしょう。Microsoft製品を多く使う企業では、アカウント管理も含めてシームレスにクラウド環境への移行ができる利点があります。
AWSのメリット・デメリット
AWSの概要についてより深く理解するため、ここではAWSのメリットとデメリットについて解説します。クラウド移行を図る際は、必ず自社におけるメリットとデメリットをよく検討した上で採用をする必要があります。
メリット
1.初期コストを抑えられる 自前でサーバー構築を行うオンプレミス環境では、必ず初期コストや時間が掛かりますが、クラウドサービスでは基本的に大きな初期コストは必要なく、単期間でスタートができます。
ただし、クラウドサービスの基本はIaaS(Infrastructure as a Service)です。提供されるのは仮想サーバーやネットワークなどのインフラであり、OSやミドルウェアなどは別途ライセンス料が発生します。家に例えると、建物は提供されますが内装や家具・備品などは別料金というわけです。
2.リスクヘッジができる オンプレミスの場合は、サーバーダウンによる営業損失、ハッキングなどによる情報漏洩はすべて自社責任です。そのため、併せて災害対策やセキュリティ対策を施す必要がありますが、AWSに移行することで、これらの責任の多くがAWSに移転します。AWS責任で起きた問題に対してはAWSが補償してくれるようになるので、リスクヘッジが可能となります。
3スケーラビリティが担保される オンプレミスでは、事業拡大に伴うデータ量の増加への対応を自前で行わなければなりません。それとともに、サーバーの増強、リプレイスといった対応を迫られますが、AWSでは企業側はその対応の必要がなくなります。もちろん、AWSは従量課金制を基本としていますので、データ量の増加などに伴いランニングコストは増加しますが、サーバーがキャパシティオーバーでパンクするといった心配はありません。
デメリット
1.ランニングコストは決して安くはない AWSは初期コストの安さがメリットですが、反面ランニングコストは安くはありません。家庭用プリンターは2万円程度で買えるのに、インク代が数千円も掛かるのと似ています。AWSは自前で莫大な投資を行い、ランニングで利益を上げるビジネスモデルになっているのです。
しかし、コスト比較をする際に顧客側が見逃しているポイントが幾つかあります。オンプレミスのサーバーやハードの償却費用と比較して、AWSのランニング費用は明らかに高くなります。
しかし、オンプレミスの場合の家賃、水光熱費、人件費、セキュリティ対策費用、災害対策費用などを含めるとAWSのランニング費用が低いケースが多いのです。そこを見誤ると、「AWSは高い」というAWS批判に繋がります。
2.コンテンツはあくまでも自前 AWSを利用すると、システム部門を大きく縮小できると考える経営者がいますが、それは大きな誤解です。AWSが提供するのはあくまでもインフラであり、情報システムは企業側が用意しなければなりません。そのコンテンツについては利用者側である企業が全責任を負わなくてはならないのです。
オンプレミスからAWS移行を果たした後、運用やインフラ管理から解放された情報システム部門は企画や情報活用面で機能を果たしていくべきでしょう。
AWS移行の確認ポイント
AWS移行とは、オンプレミスで運用している自社システムの稼働をAWSに移すことを意味します。このAWS移行ではいくつかの確認ポイントがあり、これを行わないとAWSのメリットが半減するばかりか、場合によっては移行に失敗することがありますので、必ず確認を行うべきです。以下そのポイントについてまとめてみました。
Ⅰ.移行可能な要素の洗い出し
1.ハードウェア オンプレミスで利用中のハード(サーバーやネットワーク機器)はAWSに移行できません。AWS移行対象外のシステムでの利用、売却等の対応を検討しておく必要があります。
2.ソフトウェア OSやミドルウェアなどのライセンスがAWS側で継続利用が可能か否かを検討します。これらはつい忘れがちなので、すべて棚卸をして行き先を決めておく必要があります。
Ⅱ.移行による影響範囲の検討
AWS移行に際しては、システムごとの移行シミュレーションを行いますが、中には移行するメリットがないシステムもいくつか出てきます。
移行するシステム、移行しないシステムの切り分けが必要です。移行しないシステムがある場合、システム間連携を考慮しておく必要があります。ここを見逃すと、オンプレミスで残したシステムがシステム間連携ができないために正常稼働しないなどの問題を生じますので、移行計画は綿密に行なわなければなりません。
Ⅲ.非機能要件の確認
AWS移行に際しては、新システムの開発と同様に、機能要件に加えて非機能要件の確認が必要です。例えば、基幹システムがオンプレミスからクラウドに移行することで、従業員が利用する回線がイントラネットからインターネット回線にシフトしていきます。
そうすると、従来のインターネット回線ではキャバシティオーバーをしてしまい、レスポンス低下による業務への影響などが生じます。可用性、運用変更、キャパシティなどの面から事前の十分な検討と対策が必要です。
Ⅳ.コストシミュレーション
AWS移行に際しては、以上述べてきた事項について検討し、シミュレーションをしていくことになります。そのために場合によっては外部コンサルタントやエンジニアの確保が必要になることもあります。AWS側からの見積もり資料だけで予算措置をすると、後から想定外のコストが発生してしまい、AWS移行がとん挫する可能性もあります。
AWS側にもそうした知見を持った営業やエンジニアが多くいますので、力を借りながら緻密な移行プランを立てることが大事です。
AWS認定資格を取得しよう
ここまでAWSの特徴やAWS移行のポイントなどについて解説してきました。実はAWSには「AWS認定資格」という制度が用意されており、この資格取得がさまざまな面でメリットにつながると考えられます。ここからは「AWS認定資格」について解説します。
AWS認定資格とは
AWS認定資格は、クラウドサービスに関する知見を問う、AWS主催の資格試験です。
AWS主催の資格認定だけに、大変信頼度が高く、AWS認定資格を有するだけで、クライアントからの信頼度が増すばかりか、就職(転職)の際にも資格を有することが大きなアドバンテージになります。
取得するメリット
AWS認定資格は、エンジニアにとってはクラウドやAWSに関する知見を有する証明となり、AWS案件に関われる機会が増えます。また雇用側にとっても、AWS案件を進めやすくなり、自社の強みになります。
ただし、AWS認定資格は有効期限が2年と短く、それが逆にAWSへの信用につながっています。ITの技術は日進月歩で変化していますので、最新の技術を学びたい人にとってもAWS認定資格はおすすめできます。
目指せDXエンジニア
冒頭で述べた通り、官製DXをAWSが受注したように、DXの潮流はクラウドコンピューティングの利用が大前提になっています。これからのエンジニアはDXと関わる機会が圧倒的に増えてくるでしょう。逆に言えば、クラウドに詳しいことがDX時代に対応するエンジニアのスキル要件とも言えます。
この記事をお読みいただいたエンジニアの皆さんが、アジャイル開発手法に加えクラウドコンピューティング技術も身に付けて、DX時代に存分にスキルを活かし活躍されることを祈っています。
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