AWS Private 5Gでエンジニアの仕事がなくなる?何ができるか解説
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AWS Private 5Gでエンジニアの仕事がなくなる?何ができるか解説
アンドエンジニア編集部
2021.12.17
この記事でわかること
「AWS Private 5G」は「プライベート5Gモバイルネットワーク」を企業施設内に数日で構築できる新たなサービス
「AWS Private 5G」は通信速度の問題解消だけではなく、ビジネスモデルを根底から変える可能性を秘めている
5Gによって、私たちエンジニアの仕事は激変する可能性があり、常にアンテナを張り最新技術に目を向ける必要がある

AWS Private 5Gとは

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AWS(Amazon Web Service)が、2021年11月30日に同社イベント「AWS re:Invent 2021」にて発表した「AWS Private 5G」が注目を浴びています。

「AWS Private 5G」は「プライベート5Gモバイルネットワーク」を企業施設内にわずか数日でセットアップや拡張を可能とする新しいマネージドサービスです。

ビジネスモデルの革新が叫ばれる今、5Gの導入はそのインフラとして大きな注目を浴びていますが、その導入や構築に関わる大きな負荷が高い壁となっています。こうした中で、AWSが発表した「AWS Private 5G」はその有力な解決策の1つになり得ます。

【参考】:Press Release AWS announces AWS Private 5G

Amazon VPCとは?AWS VPNとの違いもわかりやすく解説

AWS Private 5Gの特徴

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「AWS Private 5G」は、「自前の無線通信クラウドサービス」と言えます。無線免許は不要、しかも初期投資がほとんど不要で、プライベート無線通信環境を迅速に構築できます。また、「AWS Private 5G」のサービスに、モバイル通信事業者は直接関与しません。

AWSの発表によれば、「AWS Private 5G」の利用によって、プライベート・モバイル通信ネットワークの構築や、拡張に何カ月もの期間をかける必要はなく、わずか数日で済むのです。

そのインフラ構築の計画に時間を掛けたり、複雑なネットワークの統合作業を行ったり、あるいは高額の初期投資をしたりする必要がなく、モバイル技術の優れた面を全て利用ができるという特徴があります。

次期ネットワーク5Gの導入を検討している企業にとっては、「AWS Private 5G」まさに理想的なサービスと映るでしょう。

AWS Private 5Gのキャリアは?

「AWS Private 5G」はどのキャリアと組んで進めているのかについては明らかにされていません。これまでAWSとPartnerShipを結び、協業して企業向けのPrivate MECを提供してきた米国通信大手のVerizon社が関わっているという憶測もあります。

しかし、そのVerizon社のCEOであるHansVestberg氏は、「今後必要に応じてAWS Private 5Gに参加する可能性」があると述べています。このことから「AWS Private 5G」は特定キャリアには依存せず、キャリア選択が可能なサービスとして展開する可能性があります。

【参考】:Verizon CEO not worried about AWS private 5G

AWS Private 5Gのメリット

以下、「AWS Private 5G」のメリットを挙げていきます。

▪プライベート5Gネットワ​​ークは遅延を抑え、高帯域幅で大量のデバイスやマシンの接続を可能とします。 ▪長時間の計画、複雑な統合作業が不要で、数日でネットワークを稼働させられます。 ▪ネットワークに接続されたすべてのデバイスをきめ細かくアクセス制御し、ネットワークを保護します。 ▪ネットワークの容量をオンデマンドで拡張、もしくは数回のクリック作業でデバイスが追加でき、利用した容量とスループットによる従量課金により、使った分だけ料金が請求されます。

以上、「AWS Private 5G」はパフォーマンスや導入の容易性、マネジメントやコントロール面、可用性や拡張性などで大変優れたサービスと言えます。

いまさら人に聞けない5G

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この度AWSが発表した「AWS Private 5G」の概要については理解できたでしょうか?ここでは「AWS Private 5G」の登場にどのような意味があるのか、企業活動にどんな影響があるのかを知る前に、5Gについて改めて確認しておきましょう。

5Gとは

5Gは「ファイブジー」と読み、「5th Generation」の略語で、「第5世代通信規格」を指します。

第5世代の前には第1世代から第4世代までの通信資格がありますので、まずはこれらについて説明します。

▪1G…1980年代に登場したアナログ携帯電話の通信規格である。 ▪2G…1990年代に入ってアナログ通信からデジタル通信に移行、インターネット接続にも利用された。 ▪3G…2000年代に登場し、通信スピードが向上し、モバイル機器によるインターネット接続が一般化した。 ▪4G…2010年代に登場した通信規格。さらに通信速度の高速化が図られ、4G対応スマホの台頭によって、生活やビジネスの利便性が大きく向上した。

続いて、2020年代に登場したのが5Gですが、5Gには主に

①高速で大容量の通信が行える ②低遅延により、通信の信頼性が高くなる ③同時に多数の機器の接続ができる

といった特徴を持っています。

4Gによってスマホが、その便利さから生活やビジネスに欠かせないものになりましたが、5Gの普及により、「IoT」(Internet of Things)が更に普及して私たちの生活を根底から変えていきます。またAIとの連携によって、車の自動操縦や自動診察といったことが実現可能です。

4Gとの違い

ここでは、5Gと4Gの違いについて比較してみましょう。

項目        4G     5G 通信速度(最大)  1Gbps    20Gps 同時接続機器数   10万台/㎢  100万/㎢ 遅延速度      10ms    1ms

このように5Gは4Gと比べて、通信速度で20倍、同時接続機器数で10倍、しかも遅延速度は10分の1と、圧倒的なパフォーマンスを実現してくれます。

5Gによって、ネットワーク機器がほぼリアルタイムにコントロールができるようになり、AIと連携させることでその精度が大きく向上するでしょう。

5Gのメリット

5Gのメリットについて、今1度整理しておきます。5Gのメリットは大きく分けて、以下の3つに集約できます。

■通信速度の向上と快適性の向上

5Gを使うことでインターネット通信の速度が飛躍的に向上し、ビジネスや日常生活、娯楽などで通信速度がボトルネックとなっていた部分が解消され、仕事のスピード、日常生活の利便性、快適性などが大きく向上します。

■低遅延化による信頼性の向上

5Gを使うと、従来比で通信遅延が10分の1程度に減少することが期待できます。通信遅延の大幅な減少は、すなわち通信の信頼性向上を意味します。

たとえば、遠隔医療の世界で考えてみると、手術用ロボットを遠隔操作して手術を行う際に、通信遅延が生じると患者の生命に関わる事態が生じる可能性があります。一刻の猶予も許されない状況などでは、通信遅延が大きく減少する5Gがその威力を発揮するでしょう。

また、自動車の無人運転、無人タクシーの実用化が進められていますが、5Gの普及によってさらにその安全性は高められ、実用化に向けて大きく前進します。このように5Gは社会そのものを大きく変革するポテンシャルを秘めています。

■同時接続端末台数の拡大

4G環境の限界は、その通信スピード以外に同時接続端末台数の制約にあります。IoT機器の増加によって、場所や地域によっては、インターネット回線への接続キャパシティがひっ迫しているケースも出てきています。 5G化を図ることで、同時接続端末台数の制約が大きく解消し、IoTの進化と拡大によって、さらに私たちの生活やビジネス環境が快適になっていくことでしょう。

パブリック5Gとプラベート5Gの違い

5Gの提供形態としては、パブリック5G・ローカル5G・プライベート5Gの3形態があります。

ローカル5Gは、企業や自治体が独自に構築するネットワークですが、無線局の免許申請が必要で、ハードルが高いのがネックです。

パブリック5Gはドコモ・ソフトバンク・auなどの通信事業者が提供する広域のサービスで、2020年3月から展開が始まっています。

プライベート5Gは通信事業者などによって企業や自治体に提供されるマネージドサービスで、日本では2022年からソフトバンクが商用化に向けて具体的な取り組みを開始します。

5G化によっておきる変化

コロナ禍において、在宅ワーク・オンライン授業・フードデリバリーなどさまざまな分野でネットワークが活用されました。しかし、5Gの導入や普及によって、更なる大きな変化が予想されています。

パブリック5Gによって、自動運転や遠隔医療の可能性が大きく広がります。エンターテイメント分野では、VRやARを組合わせることで、リモート観劇・リモート観戦のリアリティが高まり、大きな革新が起きると言われています。

プライベート5Gでは、時間や場所を選ばない自由な働き方がさらに広がり、企業活動のスピード化、効率化が進むでしょう。商談や出張、会議もリモートが当たり前になり、従来型のビジネススタイルは消えていくことになります。

AWS Private 5Gをさらに詳しく

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ここまで、「AWS Private 5G」への理解を深めるために、5Gについて改めて整理をしてみましたが、続いて「AWS Private 5G」に関して、より詳しく見ていきましょう。

AWS Private 5G登場の背景

現在のエンタープライズ(企業)ネットワークは、ネットワークを利用するユーザーやデバイス、アプリケーションの需要の増加によって、さまざまな制約を受けています。

通信トラフィックの増大によるレスポンス低下、ネットワークキャパシティの圧迫、コントロール負荷の増大、セキュリティリスクなど抜本的対応を迫られる事態に直面しています。

これらの解決策として、プライベート 5G ネットワークの構築が有効ですが、そのハードルは高く、初期コストも膨大となり、さらに数カ月以上の期間が必要です。

このクライアントのニーズに対応すべく、AWSは新たに「AWS Private 5G」サービスを作り上げました。 クライアントの5G ネットワーク導入に要する時間を数カ月から数日レベルに短縮、ネットワーク接続するデバイスの台数の迅速なスケールアップやスケールダウンを可能とし、これまで使い慣れたオンデマンドクラウド料金のモデルをそのまま利用できるようにしたのです。

かくして、プライベート 5G ネットワーク導入のハードルを一気に取り払ったことで、AWSはクラウドサービスとネットワークサービスを一本化し、オールインワン・サービスとして提供できる道筋を付けました。 企業側のメリットのみならず、AWSの優位性を大いに高めるサービスとして今後が注目されます。

AWS Private 5Gの申込み

「AWS Private 5G」はまだPrivate Preview中ですが、申込みの受付は下記公式サイトから行えます。ただし、米国のAWS Cloudのユーザーだけに限定され、日本のユーザーはまだ利用できません。 利用したユーザーも、厳しい守秘義務を課され、利用した感想なども外部には公開はできませんし、「AWS Private 5G」に関するドキュメント類も現時点では非公開のため、詳しいことはまだ秘密のベールに包まれています。

【参考】:AWS Private 5G Preview

AWS Private 5Gの日本への展開

日本ではプライベート5Gサービスの展開めどはまだ立っていません。ソフトバンクが、プライベート5Gの商用化に向け2022年に研究施設を開設すると発表しています。

またKDDIはすでに「au 5Gネットワーク」と「AWS Wavelength」を組み合わせた、プライベート5Gの先駆け的なサービスの提供を開始しています。

今後、ドコモも交えてプライベート5Gサービス提供に向けた競争が激化していくと考えられます。AWSが今後、日本でどのキャリアと組むのか、あるいは大手3社すべてと組むのかは未定ですが、その動きが具体化してくると、日本版「AWS Private 5G」の全容が次第に明らかになってくるでしょう。

AWS Private 5Gの今後とエンジニアとして留意すること

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「AWS Private 5G」サービスの提供地域は今のところ米国に限られています。しかし、5Gは4Gの延長線にはありません。5Gはビジネスや生活そのものを大転換させるポテンシャルを持っています。

私たちがこれから構築するシステムやアプリケーションは5G化によって根底から変わるでしょう。今回は「AWS Private 5G」の記事を例に、5Gについて取り上げました。引き続き5G化の動向には注目しましょう。

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