データアナリスト・データサイエンティストとは?
AIやビッグデータ解析がトレンドとなる中、関連する職種として挙げられるのが、データアナリストとデータサイエンティストです。よく似た名前の職種ですが、どのような違いがあるのかわからない人も多いかもしれません。
データアナリストとデータサイエンティストは、どちらもデータから価値を創出する役割を担った専門職です。本記事ではそれぞれの共通点と違いを明らかにし、これらを目指す上で必要なスキル、適性、資格などを徹底解説します。
データアナリストとデータサイエンティストの共通点
データアナリストとデータサイエンティストは、混同してしまう人もいるほど似ている職種です。では、具体的にどのようなところが似ているのでしょうか。まずはこの2つの共通点から見ていきましょう。
ビッグデータを活用してビジネスに貢献する
名前に「データ」と付いているように、データアナリストとデータサイエンティストはどちらも企業が持つデータを活用することでビジネスに貢献する職種です。特に、インターネットが普及し、デジタル化が進んだことで生まれた「ビッグデータ」を扱います。
ITスキルと統計やビジネスのスキルが必要
データアナリストとデータサイエンティストはともにデータ分析とビジネスへの活用が必須となるため、以下のスキルは共通して必要です。
・高等数学に関する知識 ・統計学に関する知識 ・プログラミングスキル(PythonやR、SQLなど) ・データ分析基盤構築のフレームワークを扱うスキル(Apache HadoopやApache Sparkなど) ・マーケティングなどのビジネススキル
これらはどちらの職種でも業務を遂行するための土台となるスキルであり、どちらを目指すにしても習得が必要になります。
【参考】:Apache Hadoop 【参考】:Apache Spark™
将来性の高い職種として注目されている
データアナリストとデータサイエンティストは、IT職種の中でも最先端の技術を持つ職種として注目されています。ビッグデータの増加やAI技術への期待の高まりから、データ活用の需要が伸びていることがその背景にあります。
ビッグデータは保有しているだけでは意味がなく、分析して価値のある知見を導き出すことが重要です。AIの開発において必要な機械学習でも、有益なデータをどれだけ学習させられるかがカギとなります。
また、ビッグデータやAIを活用する動きは業界を問いません。IT業界だけでなく、金融、医療、製造、物流、小売などあらゆる業界で必要とされていることも、データアナリストやデータサイエンティストの将来性が高い理由です。
データアナリストとデータサイエンティストの役割の違い
ここからは、データアナリストとデータサイエンティストがそれぞれどういう職種かを理解するために、両者の「違い」に焦点を当てて見ていきましょう。まずは、役割の違いについてです。
データアナリストとデータサイエンティストはどちらもデータ分析を行い、データから価値を創出する役割を担っている点では共通しています。しかし、全く同じというわけではありません。
データアナリストの役割
データアナリストはビジネス寄りの職種と言えます。役割としては、ビジネスにおける課題の整理や分析結果の活用に重きを置いています。
データアナリストの仕事のファーストステップとなるのが課題設定です。課題設定では、ビジネス側の担当者と議論を重ねながら分析する案件を確定していきます。ここでは分析の目的、用いる分析手法、利用するデータを決め、分析スケジュールや分析体制などを取りまとめます。
続いて、データベースを利用してデータの抽出、集計や可視化、シミュレーションなどを行います。そして、データ分析を行って得られた結果についてビジネス側の担当者にかみ砕いて説明します。
得られた結果がビジネスにどのように影響するのか、ビジネス戦略やマーケティングにどう生かせるのかなどについて詳しく解説していきます。
ここからマーケティング担当者がマーケティング戦略を見出していきますが、そうした役割を担える人材がビジネス側に存在しないケースでは、データアナリストが具体的な施策や戦略を提言します。
以上のように、データアナリストは企業が事業を行う中で得られたデータ(顧客動向、商品動向など)を解析し、得られた結果を具体的なビジネス戦略に反映するまでの役割を担います。
データサイエンティストの役割
データサイエンティストはデータアナリストよりも専門領域に近い立ち位置におり、分析モデルを構築する役割を担っています。主にデータクレンジング(データのクリーニング)、分析アルゴリズムの選定やチューニングなどを行います。
データサイエンティストは、データクレンジングを行って不正データや不要データを除去した後、そのデータ分析に適する分析アルゴリズムの選定を行います。機械学習と同様に、「教師ありモデル」と「教師なしモデル」のそれぞれのアルゴリズムから最適なものを選定します。
■教師ありモデル:主に「分類」と「回帰」のグループに分かれる ■教師なしモデル:「クラスタリング」と「アソシエーション分析」のグループに分かれる
最適な分析アルゴリズムを適用した後、パラメータの調整(チューニング)を行い、精度の高いモデルを構築していきます。
分析結果や予測結果はビジネス領域でも活用しますが、ビジネス側との調整や連携はデータアナリストに任せるケースも多いです。
その他の類似職種との違い
データアナリストとデータサイエンティストそれぞれの役割が分かったところで、この2つの類似職種である、データエンジニアとマーケティング職との違いを見ていきましょう。
データエンジニアとの違い
データアナリストやデータサイエンティストは、データエンジニアから提供されたデータの分析を主な仕事としています。一方、データエンジニアはデータを供給できる基盤の構築や、データの分析ができる環境整備などが主な仕事です。
マーケティング職との違い
「マーケター」とも呼ばれるマーケティング職は、売上を上げるための戦略を立案するのが主な仕事です。戦略立案のためにデータを参考にしますが、専門的な分析スキルは必要としない場合が多いでしょう。
対してデータサイエンティストやデータアナリストは、データをより有効活用するために専門技術を駆使してデータの深堀りを行い、データ価値を最大化させることを役割としています。
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データアナリストとデータサイエンティストのスキル面の違い
データアナリストとデータサイエンティストは非常に近しい関係にある職種であるため、必要とされるスキルが似ています。ただし、役割や仕事の内容が異なることから、それぞれ求められるスキルに異なる部分もあります。
データアナリストに必要なスキル
データアナリストは大別すると、「コンサル型」と「エンジニア型」に分かれ、それぞれで求められるスキルが異なります。
■ コンサル型データアナリスト コンサル型データアナリストは、企業などが抱える課題に対して仮説を立て、課題の発見と改善案提案を行うため、分析力や論理的思考力、コミュニケーション能力が欠かせません。また、統計に関する知識は必須です。その他にもマーケティングに関する知識が求められます。
■ エンジニア型データアナリスト エンジニア型データアナリストは、コンサル型データアナリストに必要なスキルに加え、機械学習や自然言語処理などの知識が求められます。ほかにも、コンサル型よりも高度なプログラミングスキルやフレームワークを扱うスキルが必要です。
データサイエンティストに必要なスキル
データサイエンティストとして活躍するには、多くの知識が必要になります。IT開発の知識はもちろんのこと、データを活用するために統計学やビジネスに関する知識が必須です。
■ 統計学 データサイエンティストは主にデータの分析モデルを構築するため、統計処理手法に関する知識が欠かせません。統計学の前提となる数学に関しては、特に確率、微分積分、行列などの分野がデータ分析のための必須知識となります。
■ アルゴリズムとデータベース データサイエンスでは膨大なデータを取り扱うため、高速処理・データ加工・データ解析に必要なアルゴリズムの知識、プログラミングスキルが欠かせません。また、データベースを扱うスキルや広範なIT知識を身につけておく必要があります。
■ ビジネススキル データサイエンティストはデータアナリストと同様に、データの活用を通じて事業に貢献することが重要なミッションです。そのため、対象領域のビジネスに対する深い理解や知識が求められます。また、分析結果をプレゼンテーションするスキルも重要です。
これらのスキルは、実務経験なしで完璧に身につけるのは困難です。そのため、基本的なIT技術を習得したら、それを生かし思い切って転職してみるのも1つの方法です。研修制度が整っている企業であれば、徐々にスキルを磨きながら働くことも可能です。
未経験からデータアナリストやデータサイエンティストを目指すなら、自分のスキルに合った企業を探してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
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データアナリストとデータサイエンティストの適性面の違い
ここでは、データアナリストとデータサイエンティストの適性面での違いを見ていきましょう。
データアナリストに向いている人
データアナリストは数字やデータと直接向き合う職種です。また、分析対象となる分野の業務知識も求められるため、向学心や知的好奇心が強い人が向いていると言えます。
■数字やデータが好き データアナリストは長時間数字やデータと向き合うため、それらが苦にならないことが必須条件です。特に、日頃から数字を中心にロジカルで物事を考えるような習慣がある人が向いています。
■ 知的好奇心や探求心が強い データアナリストはITに関する知見や企業が属する業界の知識が要求されます。これらは常に変化しつづけるため、学ぶ意欲が強い人に向いています。
■ 粘り強く几帳面 データアナリストにとって数字は命です。意思決定に必要な数字にミスがあれば、時には命取りになりかねません。自分を過信せず、几帳面で、結果を緻密に粘り強く検証し、結果に責任を取れる人がデータアナリストには向いています。
データサイエンティストに向いている人
データアナリストの経験を経てデータサイエンティストになる方もおり、データサイエンティストとデータアナリストに向いている人はよく似ています。
■ 分析力を用いた問題解決が得意 何事も分析してみたくなる人はデータサイエンティストとしての適性があります。特に、問題の原因と解決法を見出すのが好きな人はデータサイエンティストの仕事を楽しめるでしょう。
■ ロジカルシンキングが得意 データ分析による問題解決には、ロジカルシンキングが必須です。たとえば、ビッグデータは膨大なデータを集積していますが、ここから必要なデータを抽出し、それらを分析して価値のある情報に高めて課題解決に繋げていくには、高いロジカルシンキング能力が求められます。
■ 地道に継続努力ができる ビッグデータから必要と思われるデータを取り出して分析を行うには、試行錯誤が必要です。様々な観点や条件からデータと向き合い、真に使える情報にするためには地道で継続的な努力が必要です。創意工夫を繰り返し、粘り強く作業を続けられる根気強さも欠かせません。
データアナリストとデータサイエンティストの年収
役割が異なるデータアナリストとデータサイエンティストですが、年収にも違いがあるのでしょうか。ここでは、データベースエンジニアの年収情報を参考にして考察していきます。
データアナリストとデータサイエンティストの想定年収
データアナリストとデータサイエンティストは、仕事内容や求められるスキルに違いはあるものの、それぞれの年収に大きな違いは見られません。
一般的なデータベースエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は424万円(※2024年5月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」からエンジニア/プログラマを参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、データベースエンジニアの年収は一般平均年収と比べて、同水準かやや高めであることが分かります。
ただし、データアナリストやデータサイエンティストは任される仕事量も多く、より専門的な知識や技術が必要な場合が多いため、一般的なデータベースエンジニアよりも年収は高くなる可能性があります。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた) 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
さらなる年収アップを目指すには
データアナリストやデータサイエンティストを含むITエンジニアの報酬は、実績が重要視される傾向があります。そのため、さらに年収を上げるには、スキルアップを図る方法が効果的です。
資格を取得するなど、知識の習得とスキル証明をすることで、年収アップや上位職へのキャリアアップに繋げることができるでしょう。
データアナリストとデータサイエンティストにおすすめ資格
データアナリストやデータサイエンティストにおすすめの資格を紹介します。スキルの裏付けとなる資格があれば、転職の際もより有利になります。これから本格的に勉強を始めたい、スキルアップを図りたいという場合に、資格取得を1つのゴールとするのもおすすめです。
データアナリストにおすすめの資格
データアナリストはデータベースを操作し、必要な情報を抽出して分析を行うため、特に統計分析やデータベースに関する資格の取得が有効です。
■ 統計検定® 一般社団法人 日本統計学会が認定する、主に統計に関する知識、活用力などを評価する全国統一試験です。
【参考】:統計検定|Japan Statistical Society Certificate
■ ORACLE MASTER Gold ORACLE MASTERは民間資格ですが、権威のある資格です。Bronze、Silver、Gold、Platinumと4段階ありますが、データアナリストを目指したい方はSilver以上、できればGoldの取得をおすすめします。
【参考】:ORACLE MASTER Gold DBA 2019 | Oracle University
■ OSS-DB技術者認定資格 オープンソースデータベース(OSS-DB)に関して、その技術と知識を認定するIT技術者認定資格です。
【参考】:OSS-DB技術者認定試験
■ データベーススペシャリスト試験(DB) IPA主催の国家資格です。データ収集の環境構築において必要となるデータベースの設計や構築・運用に関するスキル証明となる資格です。
【参考】:データベーススペシャリスト試験(DB)
データサイエンティストにおすすめの資格
データサイエンティストは分析能力も求められますが、分析環境を構築することが主な役割となりますので、分析環境構築に役立つ資格の取得をおすすめします。
■ Python3エンジニア認定基礎試験 一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が主催する、分析系アプリケーションにおけるプログラミングスキルを証明する認定試験で、開発言語のPythonの認定試験の1つです。
■ データサイエンティスト検定 データサイエンティスト協会が主催する検定資格です。アシスタントレベル、アソシエート、フルデータサイエンティスト、シニアと4レベルありますが、構築レベルのフルデータサイエンティスト以上の取得をおすすめします。
【参考】:データサイエンティスト検定 | 一般社団法人 データサイエンティスト協会
■ 応用情報技術者試験(AP) IPA主催の国家資格です。資格取得によって情報戦略立案、システム設計から構築、導入までの幅広いITスキルの証明となります。
【参考】:応用情報技術者試験(AP)
■ G検定・E資格 日本ディープラーニング協会主催の資格試験です。G検定はディープラーニングの活用を目指すジェネラリスト向けの検定試験です。E資格はエンジニア向け資格で、ディープラーニング理論の理解と、その実装能力や知識を問う検定試験です。両方を取得するエンジニアが多くなっています。
データアナリストとデータサイエンティストを目指そう
データアナリストとデータサイエンティストの職種の違いについて、それぞれの共通点と役割、スキル面、適性の違いについて解説しました。
どちらも似た職種ですが、データアナリストはクライアント向けのデータ分析とそこから導き出されたビジネス面の戦略などの提案を主に行います。一方、データサイエンティストは分析のための環境構築、システム構築がメインとなります。
データアナリストとデータサイエンティストはどちらも求人が豊富で、将来性のある職種です。やりがいを感じながら働くには、両者の違いを理解した上で、自分に合った職種を選ぶことが大切です。しかし、スキルにぴったり合う職場を1人で見つけるのは大変なものです。
そこで利用を推奨するのがマイナビIT エージェントです。
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