データサイエンティストに求められるスキルとは?
データサイエンティストとは、データサイエンスのために収集したデータを分析する統計の専門家を指します。2010年頃から始まったビッグデータによるデータ爆発と、人工知能(AI)の活用加速により蓄積データの活用の場が増大しています。
そのため、従来学術的な意味合いの強かったデータ分析を担当するデータサイエンティストは、情報技術の進歩によりITエンジニアの活躍する領域となってきています。そんなデータサイエンティストには、どのようなスキルが求められるのでしょうか?
人材育成強化が図られているデータサイエンティスト
近年、データサイエンティストは人工知能(AI)の活用拡大により脚光を浴びています。
内閣府ならびに首相官邸により、イノベーション政策強化推進のための有識者会議「AI戦略」(AI戦略実行会議)が行われており、その中で議論されている主なAI適応領域として、各産業界、特に健康・医療・介護・福祉の分野が挙げられています。
データサイエンティストはそのAI適応領域での活躍が強く期待されており、人材育成強化が検討されています。
【参考】:内閣府 AI戦略 【参考】:内閣府 AI戦略2019
データサイエンティストに求められる3つのスキル
データサイエンティストが担当する仕事は、以下の一連のデータ分析に必要とされるビジネスサイクルをカバーします。
(1) ビジネス課題の抽出 (2) データ収集の準備・収集 (3) データ分析 (4) ビジネス課題の解決
上記のサイクルを実務に当てはめると、最初にデータ分析に必要なビジネス上の課題をヒアリングし、データ分析項目定義とゴールを設定します。次に、必要な項目を収集するための環境を整備し、実際の収集を行います。
そして収集データを分析し、問題の可視化を行っていきます。最後にビジネス課題の解決に必要な情報を整理し、ビジネス改善を進めます。上記のビジネスサイクルに関係するスキルとして、「データサイエンス」「データエンジニアリング」「ビジネススキル」が必要です。
データサイエンスはバラつきのあるデータをデータ分析を用いて正しい考察を得るために活用し、データエンジニアリングはデータサイエンスで取り扱う膨大な情報をプログラミング技術などを用いて処理します。ビジネススキルは、最終的にどう経営で活かすのか提案するために必要です。
データサイエンティストの将来性
需要の高まるデータサイエンティストですが、一方で「データサイエンティストはなくなる」あるいは「データサイエンティストはいらない」といった言葉を目にする事があります。
その理由は、AIに仕事がとって代わられるのではないかという懸念や、仕事が細分化して現在のデータサイエンティストではなくなるのではないか、という見方があるためです。
しかし、データサイエンスの分野が今も成長を続けていることを考えると、データサイエンティストの需要の高さは今後も変わらないと言えるでしょう。データをビジネスにどう活用していくかというデータサイエンティストの重要な役割も、現時点ではAIよりも人間の方が得意だと考えられています。
データサイエンスの分野でもAIが担う役割は拡大していくことが予想されますが、そのAIを活用するのは人間です。人間の力とAIの力を効果的に組み合わせ、データ活用をさらに進化させていくことは、今後もデータサイエンティストに期待されるところです。
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データサイエンティストの仕事内容
ここでは、データサイエンティストの役割や仕事内容、気になる年収事情について解説します。
そもそもデータサイエンスとは?
データサイエンスとは、以下に挙げるデータ分析手法を扱う学術研究分野を指します。
- 数学や統計学を用いた数学的手法
- 計算機科学や情報工学を用いたコンピュータ技法
- 機械学習やパターン認識等の人工知能技術
データサイエンティストはこれらのデータ分析手法を活用し、データ分析を行います。
データサイエンティストの役割や仕事内容
データサイエンティストの役割は、大きく分けて以下の3つに分類されます。
・サイエンス的な役割 データサイエンスの分析手法を研究し、利用すること
・エンジニアリング データの分析のための収集や仕組みを作ること
・ビジネス 分析結果から導き出される傾向からビジネスへ活用すること
具体的な仕事内容は、データの収集・分析・加工、レポート作成、業務への組み込みです。企業によって異なりますが、一般的に顧客へのヒアリング後に課題の洗い出しと優先順位の決定を行い、課題の問題点を明確化して膨大なデータの中から活用できるものを選択・収集・保存・提案を行います。
データサイエンティストになるには?
データサイエンティストには、統計学や数学の知識、データベースに関する知識、ビジネスに関する知識、プログラミングスキルなど、「データサイエンス」「データエンジニアリング」「ビジネス」の3つの領域をカバーする様々な知識やスキルが求められます。
そのため、独学のみでいきなりデータサイエンティストになるのは難しいと言えます。具体的には、以下のようなロードマップが考えられます。
- 大学などで情報学や統計学を学んで就職する
- 社内養成制度などを活用する
- エンジニアから転職する
- マーケターやアナリストから転職する
データベースエンジニアなどのエンジニアやマーケターなどは、データサイエンティストに必要なスキルの一部を用いて仕事をしているので、独学で学んだりスクールに通うなどして足りない知識やスキルを補うことで、データサイエンティストになることができます。
データサイエンティストの年収
データサイエンティストの年収についてですが、類似職種であるアナリストの年収を参考にすると、「マイナビエージェント職業別年収ランキング」での平均年収は824万円(※2023年2月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のIT技術スペシャリスト(特定技術(DB・NW・セキュリティ等))を参考にすると、平均年収758万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、データサイエンティストは一般平均年収よりも、やや高めであることが分かります。
スキルや実績、年齢などによって年収が大きく左右されるのが特徴です。また、データサイエンティストのキャリアパスとしておすすめなのは、プロジェクトマネージャーやITコンサルタントです。スキルを活かした転職が行えます。
【参考】:マイナビエージェント 職業別年収ランキング ※【平均年収 調査対象者】2015年から2016年の間でマイナビエージェントに登録いただいた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
データサイエンティストのスキルレベルをチェックする方法
ここでは、IPAが定義するITスキルについてや、データサイエンティストのスキルレベルを確認する「スキルチェックリスト」についてまとめました。
情報処理推進機構(IPA)におけるスキルの考え方は?
IPAでは従来のITスキル標準(ITSS)により、IT技術者のスキルを定義しています。データサイエンティストは、学術を利用したデータサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力を総合活用する領域なので、データサイエンティスト協会と共同でデータサイエンティストのためのスキルチェックリストを作成しています。
【参考】:情報処理推進機構 データサイエンティストのための スキルチェックリスト
データサイエンティスト協会のスキルチェックリスト
データサイエンティスト協会では「データサイエンティスト スキルチェックリスト」を定義しています。スキルレベルは以下の4段階に分けられます。
・シニア データサイエンティスト(業界を代表するレベル) 産業領域全体、複合的な事業全体の課題に対応できる
・フル データサイエンティスト(棟梁レベル) 対象組織全体の課題に対応できる
・アソシエート データサイエンティスト(独り立ちレベル) 担当プロジェクト全体、担当サービス全体の課題に対応できる
・アシスタント データサイエンティスト(見習いレベル) プロジェクトの担当テーマの課題に対応できる
【参考】:データサイエンティスト協会 データサイエンティスト スキルチェックリスト
IPA同様、スキルを大きくデータサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力の3分類で整理し、人材育成に活用しています。どれも相互に重要性を持つものなのでバランスを保った知識吸収が必要です。
デジタルリテラシー協議会とは?
2021年4月、内閣府が策定した「AI戦略2019」において、デジタル時代の人材育成や教育改革に対応すべく、データサイエンティスト協会・日本ディープラーニング協会・情報処理推進機構により、「デジタルリテラシー協議会」の設立が発表されました。本協議会では「デジタルを作る人材」だけでなく、「デジタルを使う人材」を含めて人材育成を進めていく予定です。
【参考】:データサイエンティスト協会 「デジタルリテラシー協議会」設立のお知らせ
リテラシーレベル(DS検定™★)とは?
2021年の秋から、データサイエンティスト協会によるリテラシーレベル(DS検定™★)の実施が始まりました。その目的は、内閣府が策定した「AI戦略2019」に連動したデジタル時代の人材育成です。
受験者層としては、データサイエンティスト初学者、これからデータサイエンティストを目指すビジネスパーソン、モデルカリキュラム教育を受けた学生等、幅広い層が対象です。
【参考】:データサイエンティスト協会 データサイエンティスト検定 リテラシーレベル(DS検定™★)
リテラシーレベル(DS検定™★)では「データサイエンティスト スキルチェックリスト」の想定スキルレベルの中で、アシスタント データサイエンティスト(見習いレベル)を対象として行われています。
【参考】:データサイエンティスト協会 データサイエンティスト検定™ リテラシーレベルとは?
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データサイエンティストのスキルアップにおすすめの資格
データサイエンティストは、サイエンス的・エンジニアリング的およびビジネス的な観点で仕事を進めます。そのため、学術的な知識と技術的な知識および業務的な知識がそれぞれ求められます。
ここでは、資格取得により得られるスキルについて整理します。
データサイエンス力を高める資格
データサイエンス力向上のためには、データ分析能力を証明する以下の3つの資格取得がおすすめです。
・統計検定 データサイエンティストは学術的な知識と技術スキルをデータ分析に活用できるため、数学や統計の専門知識が求められます。統計自体の能力を証明するためには、統計質保証推進協会の統計検定がおすすめです。
・Python 3エンジニア認定データ分析試験 分析計アプリケーションのプログラミング能力を証明するために、Python 3エンジニア認定データ分析試験では、確率や統計の数学技術とライブラリーを用いた分析実践能力が証明されます。
・G検定 人工知能全般の能力を証明するために、日本ディープラーニング協会のG検定がおすすめです。G検定はジェネラリスト向けの検定で、E資格はエンジニア向けです。E資格ではディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているエンジニアレベルにあるか検定します。
【参考】:一般社団法人 日本ディープラーニング協会のG検定、E資格
データエンジニアリング力を高める資格
データエンジニアリング力を高めるための資格として、以下の5つがおすすめです。
・基本情報技術者試験、応用情報技術者試験 IT系の共通スキルとして、情報処理推進機構(IPA)の基本情報技術者試験(FE)および応用情報技術者試験(AP)がおすすめです。応用情報技術者試験に合格することで、情報戦略立案やシステムの設計・開発・構築・導入を主導できるレベルとなります。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) 基本情報技術者試験(FE) 【参考】:情報処理推進機構(IPA) 応用情報技術者試験(AP)
・データベーススペシャリスト試験 データサイエンティストが活用するデータベースの専門スキルとして、情報処理推進機構(IPA)のデータベーススペシャリスト試験(DB)がおすすめです。データ収集の環境構築に必要なデータベースの設計・開発・構築・運用ができるでしょう。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) データベーススペシャリスト試験(DB)
・OSS-DB技術者認定試験、Oracle Master また、オープン系データベースの認定試験であるOSS-DB技術者認定試験、並びに商用データベースオラクルによるOracle Masterの資格取得もおすすめです。データ分析システム用DB技術者は取っておきたい資格です。
【参考】:OSS-DB技術者認定試験 【参考】:Oracle 認定資格一覧
ビジネス力を高める資格
データサイエンティストとしてビジネス力を向上させるためには、実務経験を通じてスキルアップすることが望まれます。実務ではプロジェクト能力を生かしたビジネス判断が求められるため、情報処理推進機構(IPA)のプロジェクトマネージャ試験(PM)が最適でしょう。
資格取得により日程計画やビジネス課題の抽出、優先付け等が可能です。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) プロジェクトマネージャ試験(PM)
データサイエンティストに求められるスキルを磨いて活躍しよう
データサイエンティストはビッグデータや人工知能の適用領域拡大により、一層需要が高まっています。内閣府AI戦略においても今後の人材育成が議論されており、デジタルリテラシー協議会設立が発表されました。この流れは働き方改革による業務効率化を加速するため、スキルアップを図ってデジタル人材としての可能性を広げましょう。
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