論理的思考力とは
エンジニアを目指す皆さんは、論理的思考力(ロジカルシンキング)の必要性について聞いたことがあることと思います。論理的思考力はプログラミングスキル・マネジメントスキル・コミュニケーションスキルと並んで、システムエンジニアにとって必須のスキルと言われています。
論理的思考力とはわかりやすく言うと「物事を筋道立てて考える力のこと」で、ロジカルシンキングとも呼ばれています。ここでは、論理的思考力がエンジニアにとって必要な理由、論理的思考力を鍛える方法などについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
【参考】:マイナビニュース:仕事に役立つ、5分で理解する論理的思考力
文部科学省も注目する論理的思考力
2017年3月公示の「学習指導要領」改訂に伴って、2020年度から小学校におけるプログラミング教育の必修化が決まりました。このニュースに驚かれた方も少なくないと思いますが、その背景には何があったのでしょうか?
それはデジタル社会の到来に対応し、子どもたちのコンピュータを使いこなす力や論理的思考力を育むためだと考えられます。
このプログラミング教育とは、プログラマーの養成というよりは、プログラミング的思考力を身に付けることで、読解力や問題解決力を高めることが目的です。国が子供たちの論理的思考力の向上に向けて大きく舵を切った意味を、私たちエンジニアも改めて認識することが大切です。
【参考】:文部科学省 小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議
問題の解決や対策に有効な論理的思考力
たとえば「ショッピングモールでは午前中の天気が良い日や祭日は売上が悪い」という問題があるとしましょう。この問題を放置し、売上をお天気任せにしていたのでは、必要な売上や利益の確保ができません。天気と売上の因果関係を明らかにし、天気に左右されないマーケティングや販売体制を構築することが求められます。
午前中の天気が良い日祭日に売上が悪いのは
→運動会やレジャーなどに出かけるお客が多いため
だからです。
その対策としては、
・ショッピングモールのレジャー要素を高め、コト消費を強化する
といった対策が考えられます。これが問題点の原因を明らかにし、解決策を見出す「論理的思考」の1つの例です。
このように、論理的思考を行うことで、容易に解決策や対策が見いだせたり、人を動かすための説得力が高まったりなど、さまざまなメリットを得る事が可能です。
ITエンジニアに論理的思考力が必須スキルとされる4つの理由
文部科学省が学校教育において、子供たちに論理的思考力の育成に力を入れていること、論理的思考力が問題解決や説得に効果的であることは理解できましたが、特にITエンジニアにとって論理的思考力が必須スキルとされる理由について見ていきましょう。
最適なシステム仕様や設計に必要
システムを設計・開発する際、ユーザーやクライアントの要望や要求を把握し、要件定義を行います。次に要件定義に基づいてシステム仕様を決めますが、ここで注意しなくてはならないのは、最小のコストで最大の成果を得られる最適なシステム仕様を策定することです。
ただ単にユーザーの要求に従っていれば、コストは膨らむ一方で、場合によってはシステム化の意味が無くなることすらあります。そこで必要となるのが論理的思考力です。
ユーザーの要望から見出した要件を細分化し、それぞれの要件に対する最適なシステム化案を見出すためには、直感やイメージに頼る「直観的思考」ではなく「論理的思考」が不可欠なのです。
最適なスケジュール策定に必要
システム開発では、数百人月という開発規模のプロジェクトは珍しくはありません。例えば工数300人月というのは、30人のエンジニアが10カ月作業をするボリュームです。
このシステム開発スケジュールの策定では、WBS(Work Breakdown Structure)の手法を用いて、各工程ごとの作業項目をできるだけ分解して構造化し、それぞれに必要なエンジニア工数を割り当てます。このWBS作成プロセスでは論理的思考力が最適なスケジュール策定の鍵です。
論理的思考力を発揮してWBSによって策定された精度の高い開発スケジュールは、開発プロジェクトをより効率的、効果的なものとし、プロジェクトを成功に導いてくれます。
障害発生の事象切り分けと対応に必要
システムは障害ゼロが理想ですが、現実には障害を避けては通れません。そこでエンジニアの役割の1つに、障害対応というものがあります。
障害は予期せぬ形で発生することが往々にしてありますが、システムダウンの時間を最小限に止めるために、復旧は可能な限り素早く対応する必要があります。
この障害に対応する際に、その障害がいつ、どこで起きたのか、その原因は何かといったことを正確に把握し、できるだけ早く原因の究明と対策を行わなければなりません。この原因の究明と対策に役立つのが論理的思考力です。
事象の相関関係を把握し、そこから因果関係を見出すことで障害の原因を特定化し、対策を講じることができるからです。この相関関係を把握して因果関係を見出すという思考が「論理的思考」です。
再発防止策の策定に必要
システムにおいて障害の発生をゼロにすることは簡単ではありません。しかし、1度起きた障害を2度と起こさせないようにする再発防止策を講じることは可能です。
再発防止策を講じるには、障害の原因を特定化し、その原因に対する対策や改善策を講じてそれを実施することであり、このプロセスにおいて「論理的思考」が非常に有効なのです。
論理的思考力を鍛える方法
「論理的思考」(ロジカルシンキング)は物事を体系的に整理して筋道を立てる思考法のことでした。この論理的思考力は特に問題解決の場面で大きな力を発揮し、論理的思考力がある人は周囲の人から信頼を得やすくなります。
論理的思考力は鍛えることは可能であり、比較的簡単なトレーニングを行うことで効果を上げられるのです。これから、 論理的思考力の鍛え方について1つずつ見ていきましょう。
あらゆる事柄に対して疑問を抱く
トヨタ自動車では「5回のなぜ」(なぜなぜ分析※)を活用していますが、これはトヨタにおける問題解決のフレームワークです。
トヨタでは何か問題やトラブルに直面すると、社員は「そのことがなぜ起きたのか」を繰り返し考え、その対策を見出し、対応する習慣を身に付けています。この時に必要なのは、直感や思い付きによる答えではなく、「なぜ」を繰り返して見出した真の原因です。
「5回のなぜ」はトヨタ生産方式を生んだ大野耐一元副社長が提唱したと言われており、トヨタ社員は入社後ただちにこのことを徹底して叩きこまれるのです。
この「なぜ」を繰り返すことによって論理的思考力は高まり、問題の根本的な原因を探ったり、その解決策を見出したりすることが当たり前のことになっていきます。また論理的思考力は新たなアイデアが次々と湧いたり、新たな製品を生みだしたりする原動力にもなります。
元手も要らず、ただ「なぜ」を繰り返すだけなので、この方法は直ぐに実践できます。
【参考】:会計でも、トヨタ式「なぜなぜ分析」を5回繰り返す:日経ビジネス
表現力を高める
表現力を高めるには、自問自答するよりは、誰かに話しかけてみることです。他者に自分の考えを伝えて理解してもらうのは大変かもしれませんが、積極的に話しかけることで表現力が高まり、論理的思考力も高められます。
物事を表現する際には、曖昧な表現を避け、具体的なデータを用いたり、専門用語を用いたりすると、より説得力が高まり、理解を得られます。この表現力を高める訓練をすることで、表現力だけではなく、提案力や教える力も強まり、あらゆる仕事で助けとなるでしょう。
文章にしてみる
書くことが苦手という方は少なくありませんが、論理的に物事を考える際には、頭の中で考えをまとめるよりは、実際に紙に書いたり、パソコンで打ち込んだりする方が整理しやすいでしょう。
また書くこと、書いた文字を見ることによってさらに脳が刺激され、創造力を高めます。自分の考えを文章にしてみることは論理的思考力を高める上で効果的な方法ですので、ぜひ試してみてください。
結論を先に述べる
相手に何かを伝える際に、前置き・前振りが長い方がいますが、聞いている方は次第に話に飽きてしまい、相手の話が耳に入らなくなります。こうした状況は会社内でもよく見かけますが、人に何かを伝える際には結論を先に述べた方が伝達力は遥かに高まるでしょう。
結論から伝えることで、相手に伝えたいことが伝わり、会話や説明などのパフォーマンスが確実に上がります。また結論から考え、そこまでのプロセスを見ていくことで物事の流れがより把握しやすくなり、論理的思考力が高まります。
新聞やニュース記事を読む
ニュースや解説記事などは論理的思考力を高める上で有効です。それは論理性を重視した文面から、著者や作者の論理的思考方法を学べるからです。また、そうした記事を読むことで、さらに好奇心が刺激され、自身の論理的思考力が自然に高まっていきます。
論理的思考力を高める問題集や書籍、アプリなどの利用
論理的思考力を鍛える方法については理解できたでしょうか?以上紹介した以外に、「論理的思考力 テスト」を解く、「トレーニング問題」にチャレンジする、「論理的思力を鍛える アプリ」を利用するといった方法でも論理的思考力を高めることが可能です。以下に、参考書籍やアプリを紹介しますのでぜひ参考にしてみてください。
論理的思考力を高めて有能なエンジニアに
ここまで論理的思考力とは何か、エンジニアに論理的思考力が必要と言われる理由、論理的思考力を高める方法などについて解説してきました。
論理的思考ができる人は「頭の回転が速い」「行動力がある」「視野が広い」「アイデアマン」「賢い」「先見性がある」といったポジティブな特徴を備え、周囲から信頼感や尊敬を得られやすいでしょう。論理的思考力を有することは仕事を進める上でも大変有利と考えられます。
ITエンジニアを目標とする皆さんは、ぜひ論理的思考力を鍛えてみてください。
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