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DX推進指標の概要から活用方法まで、企業成長を促すポイントを解説
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DX推進指標の概要から活用方法まで、企業成長を促すポイントを解説

アンドエンジニア編集部
2025.02.14
この記事でわかること
DX推進指標は、企業の経営者や関係者がDXの課題と現状を共有し、DXを進めやすくするためのツールである
DX推進指標は6段階の成熟度、キークエスチョンとサブクエスチョンによる分類で取り組みやすくまとめられている
DX推進指標の自己評価をIPAに提出してベンチマークレポートを入手し、自社のDX推進の分析と次の目標の検討ができる

DX推進指標とは

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DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタルデータやICTを活用し、組織や業務の改革を行うことです。近年、多くの企業がITが進む時代に合わせてDX推進に取り組んでいます。

DX推進指標は、企業の経営者や関係者がDXの推進に向けた課題と現状を共有し、DXを進めやすくなるようにするためにまとめられたツールです。DX推進指標を活用することで、自社の課題を把握し、改善へ向けた取り組みにつなげられます。

この記事では、自社のDXの取り組み方に迷う方や、DX化をさらに進めたい方のために、DX推進指標の概要やメリット、活用のポイントについて解説していきます。

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DX推進指標の概要

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まず、DX推進指標の目的と、自社のDX推進の度合いを確認するための成熟度、キークエスチョンとサブクエスチョンについても説明します。

DX推進指標の目的

経済産業省は2018年9月、「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を発表し、企業の複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが企業に残り続けることで引き起こす、さまざまな問題を指摘しました。

この問題が解決できない場合、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があることを明らかにして、これを「2025年の崖」と呼びました。

そしてその対策として、企業がDX推進のアクションを起こしやすくするために「『DX推進指標(デジタル経営改革のための評価指標)』とそのガイダンス」を発表しました。

経済産業省はDX推進指標を、「経営者や社内の関係者がDXの推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するもの」と説明しています。

【参考】:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省) 【参考】:DX推進指標のご案内 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

DX推進指標を使用した自己診断とIPAへの提出

企業がDX推進指標を活かし、自己診断を行えるように、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が「DX推進指標 自己診断フォーマット」 の配布と、自己診断結果の収集及び分析を行っています。

企業はこの自己診断フォーマットを使用して、経営幹部や事業部門・IT関連などの関係者が集まり議論することで、自社のDX推進指標の進行状況や、次の目標を定めるための役に立てられます。

また、自己診断結果をIPAに提出すると、ベンチマークレポートを取得することができ、他の企業のDX推進の度合いと比較して、自社がどの段階にあるのかを確認できます。

【参考】:DX推進指標のご案内 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

DX推進指標における成熟度と構成

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DX推進指標では、企業のDX推進の状況の段階を把握しやすくするために、DX推進指標の成熟度を6段階に分けて評価しています。また、DX推進の構成を、キークエスチョンとサブクエスチョンに分けて取り組みやすくまとめています。

DX推進指標における成熟度

DX推進指標では、企業のDX推進の成熟度を6つの段階に分けて評価しています。企業がどの段階に位置しているかを把握し、適切な施策を行うための基準にすることができます。

■レベル0(未着手)  DXに無関心か、関心があっても取り組んでいない段階

■レベル1(一部での発散的実施)  企業全体の戦略が定まらず、一部の部門での限定的な実施が行われている

■レベル2(一部での戦略的実施)  企業の戦略が策定され、一部の部門でDXに取り組んでいる

■レベル3(全社の戦略に基づく部門横断的推進)  全社的な戦略に基づき、部門を横断してDXに取り組んでいる

■レベル4(全社の戦略に基づく持続的実施)  定量的指標を活用し、持続的に取り組んでいる

■レベル5(グローバル市場におけるデジタル企業)  DX推進により、デジタル企業として競争上の優位性を獲得し、グローバル競争を勝ち抜くことができる

DX推進指標のキークエスチョンとサブクエスチョン

DX推進指標では、9つのキークエスチョンと26のサブクエスチョンに基づいて、企業のDX推進への取り組み状況を確認します。

キークエスチョンはDX推進やITシステム構築の枠組みを定める重要なテーマであり、経営者が回答することが望ましい項目です。サブクエスチョンはキークエスチョンの詳細情報であり、経営者と関連部門が協力して議論し、回答します。

キークエスチョンは以下の9項目です。まずは、DX推進に関するこれらの項目について経営陣がしっかりと認識して目標を定め、関連部門や担当者と打ち合わせを進めていくことが重要です。

■キークエスチョン ・ビジョン ・経営トップのコミットメント ・仕組み ・マインドセット・企業文化 ・推進・サポート体制 ・人材育成・確保 ・事業への落とし込み ・ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築 ・ガバナンス・体制

DX推進指標活用のメリット

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DX推進指標を活用することで、DX推進指標に対する社内の共通認識の構築、次の目標決定、DX推進の管理や評価など、DX推進を社内全体で継続して行うための活動につなげられます。

社内でのDX推進の共通認識ができる

DX推進指標の自己評価を行う際、関係者が集まって議論することで、認識の共有を持つことができます。課題や施策などの認識が社内で共有されることで、DX推進に向けた議論が活発化し、実行を円滑に進められます。

また、全社的な戦略に基づき、継続的な取り組みを行うためにも、関係者間での情報共有や共通認識が重要です。

次に取り組むべき目標が設定できる

DX推進指標を利用して自社の現状や課題を把握することで、取り組むべき方向性が明らかになります。自己診断を行って達成できていない項目があれば、それが次に取り組むべき目標であることが分かります。

IPAに自己診断を提出してベンチマークを確認し、他社のDX推進成功事例などを確認して、自社に適した施策を取り入れることもできるでしょう。その結果、具体的に次に何を実行すればいいかが明確になり、停滞することなくDX推進への取り組みを向上させていくことが可能です。

DX推進の管理や評価ができる

取り組みを継続するためには、活動の管理や評価が必要不可欠ですが、DX推進は多くの企業にとって前例のない取り組みでもあるため、その管理や評価を行うには、何らかの指標が必要です。

そこで、DX推進指標を活用することで、DX推進の管理や評価を行うことが可能です。定期的にDX推進指標を使って自己診断を行うことで、自社のDX推進指標の進捗度合いを確認でき、行動と評価のアクションを繰り返すことができます。

DX推進指標は実際にどう活用できる?

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DXを進めるには、DX推進指標の活用が重要です。では、実際にDX推進指標は企業でどのように活用されているのでしょうか。ここでは、DX推進指標の活用方法を事例を通じて紹介します。

企業全体のDX推進と効率化

DX推進指標によって自己診断を行い、自社のDXの進み具合や課題を確認することで、次のアクションが明確になります。既存の業務工程をデジタル化させることで業務効率がアップし、生産性の向上やコストカットを達成しやすくなります。

製造業などでは、AIやIoT技術を活用することでDX推進を図るケースもあります。企業によって最適な改善策を見出すきっかけになるでしょう。

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アナログからクラウドサービスへの移行

DX推進指標を活用することで、アナログ業務の存在が浮き彫りになります。企業や業務によっては既存のアナログな方法が最適なケースもあるため、DX推進指標の自己診断を行うことで、クラウドサービスへ移行する業務との振り分けが可能です。

例えば、社内のコミュニケーションをより円滑・効率化させるために「Slack」や「Microsoft Teams」といった、クラウド型のコミュニケーションツールの普及が増えています。

また、勤怠管理や給与管理を行うHR管理システムを「Workday」などに置き換えたり、経理・財務管理として「Money Forward」などのクラウドベースのツールを活用したりするなど、あらゆる業務をクラウド化に置き換える企業が多くなっています。

企業規模や目的に合わせて最適なクラウドサービスを選択し、アナログ業務のデジタル化を進めましょう。

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市場対応力の強化

DX推進指標によって同業他社とのDX推進度合いを比較でき、自社の強みを見出したり、差別化要素を明確にできたりします。DX推進が芳しくない場合は不足箇所を改善し、指標を上回る結果であった場合はそれを強みにできます。

例えば、DX推進にあたって新たな製品やサービスを生み出したり、問い合わせ対応をチャットボットやAIなどに置き換えて24時間365日の対応を可能にしたりするなどが挙げられます。顧客ニーズの変化に対応していき、競争力を高めることで市場での優位性の維持・向上が可能です。

DX推進指標でよくある失敗例

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目的を明確にしてDX推進を図るにはDX推進指標の活用が有効ですが、実は失敗することもあります。ここでは、よくあるDX推進指標の失敗例を対策とともに紹介します。

自己診断のみで終わってしまう

DX推進指標を使用した自己診断で得られた結果を活かさずそのままにし、単なる診断結果の確認にとどまってしまうことがあります。自社のDX推進度合いや課題が見つかっても次のアクションをどう起こせば良いのか分からず、DX化からどんどん遠のいてしまいます。

このような場合は、外部のコンサルタントや専門家によるサポートを得たり、ベンチマークレポートで他社の事例を参照したり、DX推進の責任者を設けて体制を整えるなどの対策がおすすめです。目標達成に向けた具体策を明確にし、1つずつ改善していきましょう。

結果のみを求めてしまう

DX推進指標による良い結果を求めるあまり、単なるITの導入やデジタル技術の適用することに注力し、会社に合わない改革に興じてしまうケースがあります。短期的な成果に偏ってしまい、本来の目的から逸れてしまうこともあります。

DXはただIT化を進めるだけではなく、企業ごとに合うDXの方法を定着させる必要があり、競争力の強化を図るのが目的です。DX導入後は継続的な改善が求められるため、中長期的なビジョンを持つことが大切です。

上層部だけで話が進んでしまう

DX推進は会社全体で取り組むべき改革ですが、上層部のみで話が進んでしまうと従業員の理解を得られにくく、結果的に思ったようにDX化が進まないケースがあります。

経営的な視点のみで改善策を興じるのではなく、従業員の声も聞くなどして新たな体制作りを目指すことが求められます。

先進的すぎるシステムを導入してしまう

DXを行うには、企業ごとのデジタル化度合いや成熟度が大きく関係します。デジタル化が進んでいない企業が、いきなり最新のテクノロジーを搭載した高機能のシステムを導入してしまうと、従業員が扱いきれずに適応できないケースがあります。

先進的なシステムを導入するには、それを扱えるだけの知識やスキルが必要です。また、ハイエンドなシステムは導入コストやメンテナンスなどの維持費がかかってしまい、経営を圧迫する可能性があります。

システム導入の際は必要な機能のみに絞り、コスト面は今後継続できるように現実的に見積もり、中長期的な視点で選びましょう。

DX推進指標の自己診断の手順

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ここでは、DX推進指標を使って自己診断し、IPAへ提出する流れと、ベンチマークの活用について解説します。

DX推進指標による自己診断を行う

まずは、経済産業省やIPAの公式ホームページで提供されている「DX推進指標とそのガイダンス」を入手し、DX推進指標の目的や考え方、実施内容を理解します。

そして、DX推進指標をもとに、IPAで提供されている「DX推進指標自己診断フォーマット」を記入して、自己診断を行います。

9つのキークエスチョンと26のサブクエスチョンを通じて、現状や課題を把握し、経営者と関連部門が協力し、全社的な議論も行いながら自己診断を行いましょう。

このステップが、DX推進指標の活用においても特に重要な部分であると言えます。しっかりと社内で共通認識を形成しましょう。

【参考】:DX推進指標のご案内 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

自己診断結果をIPAに提出する

自己評価を行ったら、さらにDX推進を効果的に行うために、IPAに自己診断結果を提出しましょう。Web申請システム「DX推進ポータル」にアクセスして、DX推進指標の自己診断フォーマットを提出することができます。

【参考】:ログイン(gBizID) - DX推進ポータル 【参考】:DX推進ポータルの利用方法 | 社会・産業のデジタル変革 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

関係者全員で今後のDX推進施策を検討する

提出した自己診断結果の分析結果や比較データは、ベンチマークレポートとして入手できます。

ベンチマークレポートや自己診断結果をもとに、自社のDX推進の進捗状況や、次の目標を明確にすることができます。これを元に、経営陣と関係部門でDX推進の方針や具体的な方策をまとめ、次のレベルを目指して実行に移しましょう。

DX推進指標活用のポイント

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DX推進指標を活用してDX化をより進めるために、経営層が主導して全社で進めること、実行に移して継続的に取り組むことが、重要なポイントとして挙げられます。

経営層が主導して全社で協力して進める

企業がDX化を実現するには、経営者自身が自社の現状や課題を適切に把握し、DXにより何を実現するかというビジョンを明確に持つことが重要です。

その上で、企業全体としてDX化を進めるためには、IT関連部門だけでなく、事業部門や営業部門など、全社にわたってDX推進への意識の向上と認識の共有が不可欠です。

経営陣がDX推進部門に丸投げするのではなく、経営陣が自らDX推進を主導し、社内の認識合わせや各部門への理解を求めながら、部門を横断してDX推進を進めていくことが、DX化を実現するための重要なポイントです。

継続したDX推進への取り組みを維持する

DX推進のためにDX推進指標を取り入れて自己診断を行い、自社の課題や方向性を把握しても、具体的な取り組みが行われなければ効果が上がりません。また、1回だけの取り組みで終わってしまっては、継続的なDX推進につなげることはできません。

DX推進は近年のIT技術の発展は著しく、DXの計画も時代の環境変化に合わせて変える必要があります。

そのため、定期的に自己診断を行い、IPAへの提出を行ってベンチマークレポートを取得し、自社のDX推進状況を把握して長期的な目標を定めて取り組むことが重要です。

DX推進指標を活用して時代に適した企業に成長しよう

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DX推進で目指すべき目標は、IT化が進む社内の中で企業がデジタル技術や先端サービス、データ分析を活用し、組織の変革や新たな価値を創出することです。そのためには、全社的な継続した取り組みが欠かせません。

この記事で解説したように、DX推進指標は、自己診断を通じて現状を把握し、具体的な施策につなげるツールとして役立ちます。自己診断の結果を元に継続的な評価や改善を行い、変化する環境に適応しながら推進し、時代に適した企業として成長を目指しましょう。

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