DX推進ガイドラインとは?DX実現に向けた経済産業省の提言を徹底解説
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DX推進ガイドラインとは?DX実現に向けた経済産業省の提言を徹底解説
アンドエンジニア編集部
2022.03.10
この記事でわかること
DXの推進には、企業戦略と経営トップのコミットが欠かせない
ベンダー企業への依存から脱却して自社システムへのオーナーシップを確立すべきである
DXの全体設計を行う人材が必要である

DX推進ガイドラインとは

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DX推進ガイドラインとはデジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドラインのことで、2018年12月に経済産業省が発表した経済界に対する提言文書です。ここでは、経産省がDX推進ガイドラインを策定した目的とDX推進ガイドラインの内容について説明します。

【参考】METI DX:経済産業省のデジタルトランスフォーメーション特設Webサイト

DXとは?その意味と日本の現状、DX推進の障壁となる要因を分かりやすく解説!

経済産業省が「DX推進ガイドライン」を発表した背景

経済産業省は2018年5月にDXに向けた研究会を設置し、その4ヶ月後には「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」を公開しました。さらに、その3ヶ月後のに発表されたのが「DX推進ガイドライン」です。

このような経産省の動きの背景には、DXレポートの副題にある「2025年の崖(がけ)」が迫っているという危機意識があります。「2025年の崖」とは、日本の企業がDXを実現しないまま既存のIТシステムに依存していると「2025年から年間で現在の約3倍、約12兆円もの経済損失が発生する」という予測のことです。

DX推進ガイドラインの内容

DX推進ガイドラインでは、まず経営のあり方を見直してから基盤となるITシステムを構築することを推奨しています。企業がDXを実現するためには、まず基礎となる経営のあり方を見直す必要があります。経営のあり方が決まったら、次はIТシステムをどのように使って経営方針を構築するかを検討します。

DX推進ガイドラインのユニークな特徴は、提言の各所に失敗ケースと先行事例が例示されていることです。「失敗するとしたらこんなケースが多いのでは」という予測が立てられており、残念ながら現在の多くの企業において予測どおりの失敗が発生しています。以下で、具体的な「失敗ケース」と「先行事例」も含めて解説します。

DXの推進にはまず経営の見直しを

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DX推進に必要な経営のあり方や仕組みとして、ガイドラインが挙げているのは下記の5つです。

1.経営戦略・ビジョンの提示 2.経営トップのコミットメント 3.推進をサポートする体制の整備、人材育成 4.投資の意思決定 5.スピーディーな対応力

DXの取組事例に学ぶDX成功のポイントとITエンジニアへの期待

DXの実現には経営戦略が必要

ガイドラインはまず、DX実現のためには「経営戦略・ビジョンの提示」が必要だと提言しています。急速なデジタル技術、AI技術の進展によって、AmazonやAppleが書籍や音楽の流通で起こしたようなディスラプション(破壊的イノベーション)がいつどこで生じても不思議ではない状況です。このような状況に対応するには「デジタルによる企業の変容」を経営戦略の中に位置付けることが必要です。

ガイドラインでは、下記のような失敗ケースを示しています。

・戦略をもたずに、技術起点のPoC(概念実証)の会議を繰り返して疲弊する ・経営者に明確なビジョンがないのに「AIを使って何かやれ」などと部下に丸投げする

経営トップのコミットが不可欠

DXは企業の情報システム部門のみの改革ではなく、組織・人事の仕組みや企業文化・風土そのものの変革が必要なテーマです。経営トップの積極的なコミットなしではDX推進はできません。必要な変革に対して既存システムにこだわる部門の圧力が大きい場合は、トップが率先してシステムの入れ替えを進めることも大切です。

社員のマインドセットと必要な人材の調達・育成

DXの推進には、「我が社もやればできる」という社員のマインドセットも必要です。ガイドラインでは、仮説検証を繰り返し課題を達成するプロセスを確立することで、社員のマインドセットを醸成することを提言しています。

また、DX推進部門の設置などのサポート体制、人材の育成・確保に向けた取り組みの必要性も指摘しています。

<失敗ケース> 仮説を立てずに実行すること、失敗を恐れて何もしないこと。

コストの大きさで足踏みをしない

DXの推進には当然、多くの資金が必要です。ガイドラインでは「コストがかかるというマイナス面だけでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか」「リターンやその確実性を求めすぎて挑戦を阻害していないか」と提言しています。

また、投資をためらうことでデジタル化するマーケットから排除されるリスクも忘れるべきではないとしています。

スピーディーな対応を心がける

ガイドラインは「2025年の崖」を意識して、上記の4つを含めてビジネスモデルの変革・経営方針の転換・グローバル展開などにスピーディーに対応することが大切だとしています。2025年まであと数年しかないことを考えると、上記で説明した経営トップの判断の遅さやコストの大きさによる足踏みは、早急に対策すべき事案です。

経営戦略に基づくITシステムの構築

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経営戦略に基づくIТシステムの構築については、「体制作り」と「実行プロセス」に分けて次のような提言がなされています。

【体制づくり】 1.全社的なITシステムを構築するための体制(組織や役割分担)を整える 2.全社最適を目指すガバナンスを確立する 3.ベンダー企業に丸投げしないオーナーシップを持つ

【実行プロセス】 1.IT資産の分析・評価 2.IT資産の仕分けとプランニン 3.刷新後のITシステムの変化への追従力

全社的な推進体制と全体設計を描ける人材を確保する

各事業部門のデータやシステムを統合する全社的なITシステムを構築するための体制づくり(組織や役割分担)が重要です。経営変革に合わせたITシステム構築の体制に、DX推進の全体設計を描ける人材を確保しているかどうかが重要なポイントになります。

<先行事例> 経営トップと事業部門、情報システム部門からなる少人数のチームを組織して、トップダウンでDXに取り組む。

全社で最適なITシステムを構築する

部門ごとに最適なITシステムを構築するという方法では真のDXは実現できません。部門ごとにITシステムを変えると企業全体のITシステムが複雑化し、ブラックボックスを抱えることになります。部門ごとではなく、全社で最適なITシステムの構築を目指す必要性があります。

上記のガバナンスは、ベンダー企業に企画や要件定義を丸投げしていては確立されないことも指摘されています。

<失敗ケース> これまで付き合いのあるベンダー企業からの提案を鵜呑みにしてしまう。

ベンダー企業に丸投げしない

ITシステムの構築をベンダー企業に依頼する際、情報システム部とベンダー企業だけでやり取りするのは危険です。上記で説明したように、企業全体で最適なITシステムの構築が目的であるため、各部門を巻き込んでITシステムの構築に取り組むことが大事です。

<失敗ケース>ベンダー企業が情報システム部門としか話ができず、事業部門と密接な連絡が取れない。

IT 資産の現状を分析し、仕分けとプランニングを行う

実行プロセスではまず、PC・サーバー・ソフトウェアなどのIT資産の現状を分析・評価することが大切です。

次に、ビジネス環境の変化に対応してビジネスモデルを変革できるような、システム環境のプランニングを行います。その際には、「廃棄すべきものは廃棄してこれ以上コストをかけない」という仕訳も必要になります。

<先行事例> IT資産の現状を分析した結果、半分以上が業務上利用されていないITシステムであり、これらについては、廃棄する決断をした。

システム刷新後もITの進化に適応する

ITシステムの刷新後も、ビジネスモデルの変化に伴う新たなデジタル技術の導入が必要と予想されます。新システムはこのような変化に迅速に対応できるものでなくてはなりません。

<失敗ケース> スピーディーに機能追加できるようなIТシステムに刷新するという目的設定がなく、ITシステムの刷新自体が自己目的化すると、DXにつながらないITシステムができあがってしまう(再レガシー化)

DX実現のコツ

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ここまで、DX推進のために企業が取り組むべき内容について詳しく説明しました。次に、DX実現のためのコツについて説明します。DX推進ガイドラインとの内容とDX実現のためのポイントを理解し、企業は何をすべきか、自分ができることは何かを具体的に考えてDXの計画を立ててください。

DX推進指標を活用する

DX推進指標とは、DXの実現度を企業が自己診断するためのチェックリストです。2019年7に経済産業省が作成し、公開しました。DX推進指標の目的は、各企業の経営幹部、事業部門、DX部門、IT部門などがチェックリストについて議論・回答し、各部門で課題や成果を共有することです。

内容は主に2つあり、経営のあり方と仕組みについて、DXを実現するためのITシステムの構築についてで構成されています。チェック項目は35項目あり、現在の日本企業が抱えている課題と、課題を解決するための具体策について書かれています。

各部門と共有することを前提として作成されているため、企業全体で取り組むことができるのがポイントです。「DXを実現したいがやり方がわからない」「DXが進まないが何が悪いのかわからない」といった企業は、DX推進指標を参考にすると解決策が見えてくるでしょう。

【参考】デジタル経営改革のための評価指標(「DX推進指標」)を取りまとめました

DXレポート2.1(DXレポート2追補版)を理解する

2021年8月に、経済産業省はDXレポート2(中間取りまとめ)を補完した「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)」を公開しました。2020年12月に公開された「DXレポート2(中間取りまとめ)」では企業のDX推進のための施策が記載されています。DXレポート2.1では、DXレポート2.で明らかにできなかった今後の産業の変化や、変化に対応する企業のあり方がまとめられました。

内容は主に、デジタル産業の加速における各企業の経営の変化について記載されています。企業が取り組むべき施策の方向性や施策に関するチェックリスト(仮)、DX成功パターンなども書かれており、DXを進める上では理解する必要があります。

また、今後も随時新しいレポートや指標(チェックリスト)が公開されると思われます。最新情報は経済産業省のホームページに掲載されていますので、定期的にチェックしましょう。

【参考】デジタル産業の創出に向けた研究会の報告書『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』を取りまとめました

DX推進における課題

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ガイドラインが公表されて数年が経った現在でも、DXを全く推進できていない企業や、DXを意識しているがまだ計画段階である企業が多いです。DXを実行している企業は少なく、古いITシステムのまま現状維持を保っているのが現状です。

DXが進まない原因として、スキル・人材の不足や自社でDXのための教育をする時間がないことが挙げられます。経産省の「DX推進ガイドライン」はこのような進捗状況を予測したかのように、DX推進の「つまずきどころ」を的確に指摘して、それへの備えを提言しています。特に、経営戦略の不在・人材不足・ベンダー企業への依存は、2025年の崖が迫る中でDX推進の大きな障壁になっています。

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