DXのシステム内製化とは?必要な理由と注意すべきポイントを徹底解説!
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DXのシステム内製化とは?必要な理由と注意すべきポイントを徹底解説!
アンドエンジニア編集部
2022.06.25
この記事でわかること
DXシステムの内製化の動きが強まっているのは、DX実現は企業変革がその目的だからである
内製化には、意思決定の迅速化、変化への即応、ノウハウ蓄積などのメリットがある
内製化にはIT人材の育成と確保が重要で、社内外注とならないよう全従業員が当事者意識を持つことが必要

DX実現とシステムの内製化

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経済産業省がDXレポートで示した「2025年の崖」の回避に向け、さまざまな企業が「DX」の実現に向けて、システムの更改、開発を進めています。そんな中、これまでアウトソーシング(外注委託)主体だったシステム開発について、DX化を機に「システムの内製化」の動きが顕著になっています。 

DX実現とシステムの内製化の動きには相関関係があるのでしょうか?この記事ではエンジニアの仕事に大きく関わるDXの内製化の動きについて考察していきますので、ぜひ参考にしてください。

2025年の崖とは

経済産業省は、2018年にいわゆる「DXレポート」(副題:〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜)を発表しました。

このレポートの中では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性が説かれ、企業がDX実現の課題を達成しなければ、2025年の崖に直面し、2025年以降には最大で12兆円/年の経済損失を生じる可能性があると言及しています。

これに対して、現在多くの企業がDX実現に向けて積極的なIT投資を行っていますが、なかなか思うようにはビジネス変革に至っていないようです。その要因の1つとして挙げられているのが、ブラックボックス化した「レガシーシステム」の存在です。

大手金融機関で基幹システムのトラブルが相次いでいることが社会問題化していますが、そのトラブルの原因究明と抜本的対応は進んでいません。こうした「レガシーシステム」に多くの人員や予算を取られていることも、DX化が思うように進まない原因の1つと考えられています。

【参考】:D X レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~(サマリー)|経済産業省

DX推進ガイドラインとは?DX実現に向けた経済産業省の提言を徹底解説

DX実現のシナリオ

「DXレポート」では、「DX実現のシナリオ」を示しており、その中で2021年から2025年までを「DXファースト期間」と位置づけ、システムの刷新を経営戦略の最優先課題として設定し、計画的なシステム刷新の断行を提案しています。

具体的には「不要システムの廃棄」「マイクロサービスを活用した段階的な刷新」「協調領域における共通プラットフォームの活用」などにより、リスク低減の対策を図るよう推奨しています。

また、DX人材の育成と確保という視点から、システム維持や保守業務からDX分野への人材シフト・ 事業部門の人材のIT人材化・人材育成を提言しています。このように、DX人材を自社で確保し、自社が主体的にDX化を進める必要性について説いているという点も注目されます。

DXシステムの内製化とは

そもそもDXシステムの内製化とは、何を指すのでしょうか?DXシステムの内製化とは、各企業が自社のDX実現に向けた取り組み、システム開発において、それらを外部委託(外注)することなく、社内の人間やリソースで対応することを意味します。

DXの推進をSIerに任せるケースも見られますが、内製化では推進体制の構築、プロジェクトの編成から戦略立案などを社内の人材で行います。そのため、DXを推進できるDX人材の確保と育成が内製化の大きな鍵となります。

DX内製化の事例としては、ユニクロ※1を展開するファーストリテイリングの「店舗DX」※2がよく知られています。

【参考】:※1DXレポート2(中間とりまとめ)P13|経済産業省 【参考】:※2ユニクロ 原宿店 6月5日(金)にオープン決定!|プレスリリース

システム内製化の動き

DX実現に向けたシステム内製化の動きは着実に進んでいます。2020年8月にIPA(情報処理推進機構)が「IT人材白書2020」※1を公開しました。

これによると「DX推進企業におけるシステムの内製化状況」は、DXに取り組む企業のうち「上流工程の内製化」を進める割合は41.9%となっていますが、大企業ほどその割合は高くなり47.8%(前年2018年比で14.5%上昇)となっています。(IT人材白書2020-P50)

また、このシステム内製化の動きに呼応するように、「内製化支援」といった新たなサービスにSIerなどが着手する事例も増えています。

IPA発表の「デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書」の13ページ、「(DX)取組内容別の成果状況(従業員規模別)」※2によれば、従業員数1,000名以上の大企業では82.8%が「DXの成果あり」と回答しています。

【参考】:※1IT人材白書2020|IPA

【参考】:※2デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告書|IPA

DXの推進力となる5つのデジタル技術と、企業の適切な選択方法

システム内製化の理由

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DX実現に向け、これまで外部委託に頼っていた企業がシステムの「内製化」にシフトしていますが、どのような理由でシフトチェンジをしているのか、これからその理由を4つ挙げていきます。

自社のビジネスモデルの変革が目的

DXは単に目新しいシステムを導入し、既存のシステムを公開することが目的ではありません。DXの目的は企業文化や自社のビジネスモデルの変革にあります。企業としての競争力を高め、海外企業との競争に打ち勝つことが目的です。

そのためには、企業の経営者を始め、すべての従業員の意識変革、リテラシー向上が求められます。こうした企業文化の変革を成し遂げるには、経営者や従業員の全面的なコミットメントが欠かせません。これらは、外部委託では決して解決できることではないのです。

素早い対応が求められる

DX実現に与えられた時間はごく僅かであり、2025年まで残された期間は3年間です。この限られた期間で企業文化の変革を実現するためには、従来のアウトソーシング中心の体制では対応が困難です。

「2025年の崖」というタイムリミットが設けられており、迅速な意思決定と素早い対応が求められるからこそ、当事者である企業側が自ら動く必要があります。

柔軟な対応が必要

DXは、従来の固定観念に縛られていては実現は困難です。組織変革や発想の転換が求められます。従来の従来のウォーターフォール型開発や、オンプレミス環境に加え、アジャイル型開発手法、クラウドサービスなどを積極的に活用するなど柔軟に対応することが重要です。

こうした最新技術を取り入れながら、大胆かつ変化に即した柔軟な対応をすることが求められます。

ノウハウの蓄積を行える

DX実現の目的の1つである「新たなビジネスモデル」への転換とは、競争優位に立つことです。DX実現においては、業界初や他社にない新たなビジネスモデルの創出が競争優位に欠かせません。

すなわち、自社固有のノウハウの体内化と蓄積がDX実現の鍵となります。これらは外部委託ではなかなか獲得することができません。

システム内製化のメリットとデメリット

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DX実現においては、システム内製化が必要な理由が明らかになりました。では、システム内製化にはどのようなメリット、デメリットがあるのかを確認しておきましょう。メリットと最大化、デメリットの極小化、解消が大きな成果を上げるための秘訣です。

内製化のメリット

システムの内製化には、次のようなメリットがあります。

1.意思決定が早い 社内の意思決定者がプロジェクトにいることで迅速な意思決定が行え、システム化を効率的に進めることができます。またプロジェクト目標が明確になり、メンバーのベクトルを合わせやすいメリットもあります。

2.変化に対応しやすい 状況を見ながら柔軟な対応を行いやすく、変化に対応しやすいメリットがあります。特に意思決定者がプロジェクトにいると、的確な状況判断による迅速な意思決定が行え、変化即応型のプロジェクト推進が可能です。

3.協力とノウハウ蓄積 当事者意識を持った自社メンバーによる協力と、新たな取り組みによるノウハウの開発と蓄積が行えます。これにより、新たに構築したシステムの活用とノウハウ蓄積、ナレッジ共有が円滑に行えるため、DX化による効果の最大化を図りやすくなります。

内製化のデメリット

続いて、想定される内製化のデメリットを見ていきましょう。

1.自社ですべてのリスクを負う 内製化は成功すれば大きな成果となる一方、失敗した場合には関係者がその責任を全面的に負います。誤った意思決定により、プロジェクトが失敗した場合にはプロジェクト責任者や意思決定者が大きな責任を負わなくてはならないリスクを覚悟しておく必要があります。

2.自社でIT人材の確保と育成が必要 内製化では、基本的に要件定義・概要設計・運用設計などは自社で行います。そのため、IT人材・デジタル人材の確保と育成が成功のための鍵となります。こうした組織体制、人事制度を確実に用意できなければ失敗するリスクも高まります。

3.コストが不明確になりがち 外部委託では、費用が明確になることでコスト管理がしやすくなりますが、内製化ではコストの明確化がしにくく、費用対効果の測定がしづらくなります。内製化ではコスト把握、コスト管理を意識して行う必要があります。

システムの内製化で注意すべきこと

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システムの内製化には多くのメリットがある反面、内製化の方法を誤ると期待した効果を得にくくなります。内製化を進める上では、次のことに注意する必要があります。

企業変革の目的を見失わないこと

DX実現の目的は企業変革であり、ビジネスモデルの転換です。このことを忘れ、システム化のみに重点を置いてしまうと失敗しやすくなります。企業変革は経営者の理解と強い意志、全従業員の自覚と認識、リテラシー向上が欠かせません。単なるシステム化ではないことを認識し、全手のメンバーが当事者意識を持つことが成功の鍵です。

社内外注とならないこと

「DX実現はシステム部門の責任だ」という認識が強いと、DXの成功は難しくなります。

企業によってはシステム部門を「DX推進部」に改称しているケースもありますが、システム部門に全責任を負わせるのは社内外注と同じことです。 内製化の主役はシステム部門ではなく、経営者と全従業員であるという認識、自覚が欠かせません。

必要があれば外部委託も検討

システム内製化において、場合によっては外部委託も必要です。その際には、DX化の方針・戦略・内容については自社で決め、詳細設計以降は外部委託に頼るなどの工夫も必要です。

またその際は、ノウハウに関する部分の社外流出がないよう厳重な管理をすべきでしょう。

レガシーシステムは放置しない

基幹系システムにレガシーシステムが残っている企業は少なくありません。このレガシーシステムの負荷が大きく、DXに取り組めない企業もあります。レガシーシステムを放置することなく、マイグレーション(改修)や廃棄も視野に入れて検討をする必要があります。

エンジニアはDX人材(デジタル人材)を意識しましょう

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ここまでDX実現におけるシステムの内製化について解説しました。DX実現においては、DX人材の必要性と重要性について分かりました。DX人材とは、DXの推進を担えるIT人材のことです。

DX人材は企業内のみならず、アウトソーシングにおいても期待が高く重宝される人材です。広義では、プログラマもシステムエンジニアもDX人材です。エンジニアの皆さんはDX実現の目的を正しく理解し、日本のDX実現に寄与できるエンジニアを目指しましょう。

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