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DXにAIは必要な要素であるが、AI導入はDX推進とイコールではない
DXとAI
DXにAIは必要な要素であるが、AI導入はDX推進とイコールではない
アンドエンジニア編集部
2021.07.01
この記事でわかること
DXはデジタルの力を借りて、企業の競争力を高めることであり、デジタル化は目的ではない
DXによる組織変革、ビジネス革新がDXの目的であるのに対し、AIはあくまでもそれらを実現するための手段
DX人材は基礎的なIT知識から始まり、データの利活用に関する理解、UI・UX志向などのさまざまなスキルが必要

DX=AIと誤解されている?

AI

DX時代が到来しましたが、DXに関してはさまざまな誤解や混乱があります。ここでは、ITエンジニアの皆さんがDXに関する認識を改め、DXを自身の成長と活躍にどう生かせば良いのか、AIとの関連も交えて探っていきます。

経営者のDXへの理解不足

DX(デジタルトランスフォーメーション)は最早、流行語ではなくなり、一般社会にすっかり定着してきました。経営層が株主総会などで、企業の重点取組事項に「DX推進」を掲げる事例も増えています。また、企業によっては「DX推進部」などの専門部署を設け、DX化に注力する姿勢を示しているところも少なくありません。

DX推進組織を作るのは間違いではないのですが、経営者が「DX=デジタル化」「DX=AI導入」といった誤解を払拭しないまま進めている企業もあり、一部でDXの失敗や混乱の原因となっています。

DXはデジタルの力を借りて、企業の競争力を高めることです。デジタル化が目的ではありません。ここを見誤ると、DX推進に失敗します。ここはITエンジニアとしても押さえておきたいところです。

DXは組織変革、デジタルによる業務改革

DXの目的は大きく変化する社会環境やビジネス環境に対応し、強い経営を目指すことです。社会が大きく変わっている以上、仕事のやり方を変え、組織も変わらなくてはなりません。

コロナ禍で在宅ワーク・テレワークが推奨されましたが、DXに取組み、リモート会議やテレワークにコロナ禍の前から取り組んでいた企業は直ちに対応できました。一方、DXを単なるデジタル化と捉えた企業は、仕事のやり方も組織変革も行わず、ただ単にAIなどの最新技術を導入しただけで終わっています。企業そのものが変わらなければ、DXとは呼べません

DXの3つのステップ

DXの推進には3段階があります。もちろんデジタル化は必須ですが、DX実現に至るまでに「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」の2つの段階を経る必要があります

1.デジタイゼーション

従来アナログで行っていた業務をデジタル化することです。例えば、稟議書や申請書など、紙ベースで行っていたものをペーパーレスにしたり、電話や書類で行っていたコミュニケーションをメールやLINEに切り替えたりといったものが該当します。

2.デジタライゼーション

デジタル化によって生成・蓄積されたデータを活用し、業務全体を効率化することなどを指します。DXは最初にデジタイゼーションを進め、デジタライゼーションに移行が完了していることがその前提なのです。

この2つのステップを飛ばしてDXに取り組むのは、体力づくや準備運動を飛ばしていきなりプールに飛び込むようなものです。DXは最新技術を取り入れることだけではなく、人や組織が変わっていなければ、絵に描いた餅で終わってしまうリスクがあります。

以上2つのステップを経て、初めてDXのステップに至ることができるということを認識しておく必要があります。

AIとは

AI

DX推進において、よくあるのが「DX=AI」という誤解です。では、AIとは何なのでしょう?AIを導入すると何が変わるのでしょうか?

AIを定義すると

AIの定義は完全に定まっているわけではありませんが、AIとは"Artificial Intelligence"の略語で、人工知能と訳されています。AIとコンピューターの違いは、AIには「学習・推論・判断」といった機能が備わっている点です。そこで、人の作業をAIが行うことが可能となり、しかも24時間365日、AIは不眠不休で働き続けることができる点が強みです。

AIで何が変わる?

AIの進化は目を見張るものがあり、実際に一部の仕事はAIに置き換わっています。AI技術を駆使した無人店舗が登場したり、AIを搭載したコンシェルジュがお客の案内を行ったり、少しずつ人間の仕事がAIやAIを搭載したロボットによって置き換わっています。タクシー運転手の仕事も自動運転技術の発達によって無くなっていくと言われています。

一方で、AIが進展することで生まれる仕事もあります。AIを開発したり、管理する仕事です。データサイエンティスト、AIエンジニアは益々需要が高まるでしょう。

資格がものを言う、税理士や公認会計士の仕事も将来は無くなるかもしれません。弁護士の仕事もAIがかなりの部分を肩代わりするかもしれません。ただし、AIは人の仕事を奪うのではなく、人の仕事を手助けし、分業を図りながら共存する関係へと進化していくでしょう。

DXとAIとの関係

DXとAIの関係

さて、先ほども少し触れましたが、DXとAIを混同している人がいると述べました。では実際のところ、DXとAIは何が違うのかを見ていきましょう。

AIはDXを進める上での1つの手段

AIやRPAなどの最新デジタル技術を単に導入しただけではDXの実現はできません。先ほど述べた通り、DXに到達するためには「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」というステップを踏む必要があります。

DX実現には、これらのステップを踏みながら、併せてAIをDX実現に向けた1つの手段として、AIをどう活用するのかという戦略が必要です。すなわち、組織変革、ビジネス革新がDXの目的であるのに対し、AIはあくまでもそれらを実現するための手段だということなのです。ここを見誤ると、DXは失敗します。

AIとRPAの違い

ここでRPAという言葉が登場しました。AIとRPAは同列で扱われることがありますが、それぞれ概念は異なります。その違いを確認しておきましょう。

▮RPAとは

RPAは"Robotic Process Automation"の略語で、コンピューター上で行われている処理や作業を人に代って自動化する技術のことです。RPAによって人間が繰り返し行うような定常的業務の自動化が図れることから、RPAはデジタルレイバー(仮想知的労働者)とも呼ばれます。

▮AIは頭脳で、RPAは手足

AIには「学習・推論・判断」といった機能が備わり、人の脳と同じような働きを持っています。一方、RPAは作業などの指示をされた事は行いますが、「学習・推論・判断」は行えません。

▮AIとRPAを組合わせる

RPAはあくまでも人が教えた通りに動きますが、RPAをAIと組み合わせることで、AIが人の代わりに判断と指示を行い、その指示に従ってRPAが作業をすることで、高度な自動化を実現することができます。例えば、自動運転自動車などがその例です。

ただし、あくまでもAIはコンピューターであるため、トラブルやハッキングのリスクはあります。緊急時の対応を誰が行うのか、イレギュラー時の対応や法制度面の整備など、実用化に向けた解決すべき課題が残されています。

DX人材を目指そう

DX人材

ここまでDXとAIを題材にして、ITエンジニアとしてDXについて知っておきたいことを述べてきました。DXの重要性はよく理解頂いたと思いますが、皆さん方がDX人材と活躍する上で何が必要なのかについて、DXに求められる人材像から探っていきたいと思います。

DX推進に必要な人材像

DX推進に必要な人材について、独立行政法人情報処理推進機(IPA)が、6つの職種を示しています。これはアンケート調査によって洗い出したものですが、以下参考まで載せておきましょう。

1.プロデューサー:

「DXやデジタルビジネス」の実現を主導できるリーダー格の人材

2.ビジネスデザイナー:

「DXやデジタルビジネス」の企画や立案・推進等を担える人材

3.アーキテクト:

「DXやデジタルビジネス」に関するシステムの設計ができる人材

4.データサイエンティスト/AIエンジニア:

「DXに関するデジタル技術」AI・IoT等に強く、データ解析にも精通した人材

5,UXデザイナー:

「DXやデジタルビジネス」に関するユーザー向けのシステムデザインを担当できる人材

6.エンジニア/プログラマ:

上記以外のデジタルシステムの実装、インフラ構築等を担える人材

参考:デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査~調査結果サマリ~

以上、IPAのレポートからDX推進に必要な人材像を挙げてみましたが、デジタル技術の活用などによって企業の優位性を確保するためには、幅広いスキルを有する人材の必要性がお分かり頂けたかと思います。

DXを推進していく人材には、基礎的なIT知識から始まり、データの利活用に関する理解、UI・UX志向などのさまざまなスキルが必要であり、自ら積極的にそうしたスキルの習得を目指す必要があります。

DX人材になるメリット

DX人材になる最大のメリットは、活躍の場が広がりや収入アップが期待できる点です。また、DX人材を目指すことによってスキルアップやキャリアアップを図ることができます。

DX人材は引く手あまたであり、職探しで困ることはないでしょう。そして、DX開発・DX推進で得たノウハウやスキルは必ずその後の仕事にも活かせます。組織変革や新製品・新サービスの開発にまで関われ、ITという枠を越えて活躍機会が広がります。日本はDX推進によって、世界のトップグループへの返り咲きを目指します。この国策ともいうべきDXに、1人でも多くのITエンジニアの皆さんが参画されることを期待しています。

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