システムエンジニアを憧れの職業と見る人がいる一方、掲示板サイトやSNSなどでは「システムエンジニアやめとけ」という意見が少なからずあります。「やめとけ」派の人たちは、「仕事がきつい」「ストレスがたまる」といったネガティブな面を見ています。
どんな職業にも光と影がありますが、システムエンジニアにはなぜこれほどの両極端な見方があるのでしょう。今回は、システムエンジニアを目指す皆さんに向けて、システムエンジニアの実態を紹介していきたいと思います。
IT社会の到来を反映してか、今や高校生がなりたい職業の筆頭が「ITエンジニア」だそうですが、ITエンジニア(システムエンジニア、プログラマなど)は多くの人にとって憧れの職業の1つになっているのは間違いないでしょう。
マイナビエージェントの記事でも、おすすめの業界として「IT業界」が筆頭に挙げられています。DX推進によってITエンジニアの不足が深刻化し、IT関連の求人が増加していることも、ITエンジニアの人気の理由となっています。
【参考】:マイナビエージェント-転職先でおすすめの職種・業界9選!未経験でも転職しやすい業界まで
ITエンジニア、システムエンジニアに人気が集まる一方で、ネガティブな見方があるのはなぜでしょう。実は、システムエンジニアは「IT土方(ドカタ)」と揶揄された時期がありました。土方というのは、土木工事に従事する労働者の中でも、技能を必要とする土工に対し、主に雑用を担当する人たちを土方と呼ばれていましたが、今ではほとんど使われていない言葉となっています。
ITエンジニアがなぜ、IT土方と言われているかの理由は、不眠不休で働くことが美徳とされた時代、納期最優先で徹夜を繰り返していたITエンジニアの姿が、当時ハードな仕事の象徴とされていた土方のイメージと重なったからでしょう。
実際に彼らの多くは、徹夜作業の中、床に寝て仮眠を取っていたこともあります。IT業界の負の遺産ともいうべき「IT土方」のイメージは今でも根強く残っているのかもしれません。そんなイメージから「システムエンジニアはやめとけ」という意見が挙がるのでしょう。
ITエンジニアに対する見方は、人気の職業と、ハードな仕事という見方の両極端に分かれているようです。ここでは、「システムエンジニアはやめとけ」という否定的な見方がある理由を1つずつ見ていきましょう。
IT業界では残業が多い傾向にあります。特にシステム開発系では納期が迫ると、残業を連日余儀なくされることもあるでしょう。経理部門や人事部門、営業部門でも締めの時期には仕事が集中して残業が発生しがちですが、システム開発系の残業は少し意味合いが違います。
残業の主な原因は、工程見積もりの甘さ、要件定義ミスによる開発工程の手戻り、バグ対応など人的要因にあります。一方で、これらをしっかりコントロールできているプロジェクトでは、ほとんど残業を発生させずに納期を守っているケースもあります。残業の多さは、IT業界特有の問題とは言えません。
ITエンジニアの中でも、特にシステム運用に関わる部門では休日出勤があります。システム入替やメンテナンスによる計画的なものから、トラブル対応のための突発的なものまで、その理由はまちまちです。
また、プログラマやシステムエンジニアもトラブル対応などで突発的な休日出勤が発生することはあります。このようにIT業務の特性による休日出勤があるのは確かですが、その分の代休を平日に取れるため、逆に休日出勤は苦痛ではないという人もいます。
企業のコンプライアンス(法令順守)が重要視され、世間や株主の眼が厳しくなったこともあり、ブラック企業は大手を中心に激減していますが、それまでIT業界にブラックと呼ばれる企業が多かったのは事実です。労働基準法・三六協定を無視した違法な長時間残業・サービス残業が横行し、ブラック企業はメディアにも採り上げられました。
また、ブラック企業では社員の退職・転職が相次ぎ、業績不振に陥ったケースもあります。とはいえ、中小のベンチャー企業では人材不足などから在籍する社員に過酷な労働を強いているという噂がSNS上などで散見されるように、まだ一部にはブラックな企業が残っていることは否定できません。
IT業界は技術革新が早く、大学や専門学校で学んだ知識がすぐに陳腐化してしまいます。また、メインフレーム系のプログラマをしていたら、オープン化の波が来てそれらの知識や経験が生かせなくなったという話もあります。
プログラミング言語でも、「やっとJavaをマスターしたら、開発がPython中心になってしまった」「ウォーターフォール開発からアジャイル開発に移行し、経験が生かせなくなった」という話も聞こえてきます。IT系企業では社員にIT資格の取得を勧める企業が多く、「学生時代よりも遥かに勉強をさせられる」という例も少なくありません。
このような環境に付いていけない人が出てくるのも頷けます。
2000年頃までは「エンジニア35歳定年説」が有力な説として存在していました。これはITエンジニアは技術の移り変わりが激しく、年齢を重ねるにつれ新しい技術のキャッチアップが厳しくなるという見方が説の背景にあったようです。
プログラマを中心に35歳を境に営業部門に移るか、能力がある人は上流工程(システムエンジニアやコンサルタントなど)に行き、それ以外の人は働き口がなくなるという不安が強くありました。
現在は40代・50代でも現役で活躍するプログラマやシステムエンジニアが多く、この35歳定年説は否定されつつあります。しかし、転職に関しては35歳以上だと難易度が上がりますので、ITエンジニアの年齢の壁は一概に否定はできません。年齢が気になる場合はフリーランスになるのも手段の1つです。
大学生の文系・理系の比率は、概ね3:2です。しかし、ITエンジニアでは文系出身者は3割程度なため、文系出身者にとってITエンジニアは狭き門です。また、文系学生は情報処理について学んだ学生が少なく、IT業界に就職してもハンディを負うという見方があります。
そうした理由から「(文系学生は)エンジニアはやめとけ」という声があるように、文系SEの現実に対して厳しい見方をする人もいるのです。
しかし、システムエンジニアは文系出身者の方が向いているという考え方もあり、文系学生にとってIT業界はハードルが高いというのは思い込みや誤解から生じていると言ってよいでしょう。
システムエンジニアになったものの、客先常駐で厳しい労働環境に置かれ、無理難題を押し付けるクライアントに辟易して、社内SEへの転身や転職を希望するシステムエンジニアが少なくありません。クライアントに使われる側のSEにしてみれば、発注者側に立つ社内SEの仕事は楽そうに見えるでしょう。
しかし、社内SEが求められる役割は、客先常駐SEや請負SEの役割とは異なるため、転身を希望すれば叶うというものではありません。転身や転職を希望するからには、社内SEとして必要なスキル(企画力、業務知識やベンダーコントロール技術など)をしっかり身に付けておくことです。
ここまで、ITエンジニア、システムエンジニアに対する否定的な見方とその理由について解説してきましたが、ここからはそのネガティブな考え方に対する対応方法、受け止め方について解説していきます。
認識を改め、発想を転換できれば、システムエンジニアはやりがいのある素晴らしい職種だと気付くでしょう。
「ブラック企業に就職したらどうしよう」と不安視する人がいます。しかし、就活生や転職希望者には会社を選ぶ自由があります。あらかじめブラックだと分かっていて、ブラック企業を選ぶ人は極少数でしょう。ブラック企業か否かは、すぐに分かります。
SNSなどで企業名とブラックのキーワードで検索し、多くヒットすればブラック企業の可能性が高まります。他、その企業に働く人が自社を評価しているサイトなどもあるため、ブラック企業を避け、ホワイト企業の中から就職候補企業を選ぶという姿勢で臨めば失敗しにくくなります。
社員の平均残業時間について公表している企業が多くあり、就職四季報などに記載されていますので、あらかじめ知っておくとよいでしょう。また残業や休日出勤は自身の実力を高めること、計画性を高めることでかなり回避できます。
優秀なシステムエンジニアはシステム化計画の段階で、残業を発生させないための手を打っています。大手のIT企業ではプロジェクト計画と実績の差異を人事評価の項目に入れています。
プロジェクトで残業を多く発生させたプロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダー、システムエンジニアは評価が下がる場合があるので、自らの評価を高める努力をすることで、それらは回避できると考えてください。
【参考】:就職四季報 優良・中堅企業版2023年版
ITエンジニアが活躍できる期間は限られると不安視される方がいますが、ITエンジニアほど豊富なキャリアパスがある職業はありません。
AIエンジニア、データサイエンティスト、IoTエンジニア、インフラエンジニア、セキュリティエンジニア、AR・VRエンジニア、ITスペシャリスト、プロジェクトマネージャー、ITコンサルタント、セールスエンジニアなど2ケタの選択肢があります。
特にコンサルタント系では年齢は関係なく、70歳代でも現役で活躍されている方もいます。
日本ではDX推進という官民一体の取り組みの結果、ITエンジニアの不足が深刻化しています。どの求人サイトを見ても、ITエンジニアの求人数が圧倒的に多いことが分かります。少なくともDX化達成目標である2025年まではこの状態が続くでしょう。
その後もこの傾向が続き、プログラマなど一部の職種ではAIに置き換わっていきますが、システムエンジニアの需要はなくならないと言われています。
【参考】:マイナビAGENT
文系出身者の人の中には、「理系出身者には適わない」という先入観を持っている方がいます。ではなぜ、IT企業は文系出身者を採用するのでしょうか?それは文系出身者のITエンジニアとしての優れた資質や将来性を買って採用しているのです。
即戦力を期待して採用しているわけではありません。新卒エンジニアは使えないのが当たり前です。社内でじっくり育て、大成させたいという希望を持って採用しているのです。スタートラインに理系も文系も差はありません。採用されたら、自信を持ってシステムエンジニアを目指してください。
ここまで、「システムエンジニアやめとけ」の原因と、それに対する対応策や考え方について解説しました。しかし、実際には「システムエンジニアを辞めたい」「やめてよかった」という方がいます。そもそもシステムエンジニアに向いていなかった可能性もありますが、職場や上司、労働環境にも問題があったのかもしれません。
仕事が自分に合わないと感じ、続けることがストレスなら早めに見切りをつける勇気も必要です。
転職するなら早いうちが良いでしょう。そうした方は転職エージェントを利用するのも手です。転職エージェントに登録し、悩みや希望を打ち明けて、自身に合った企業や職場を紹介してもらいましょう。きっと自分に合った会社や職場が見つかるはずです。
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システムエンジニアの皆さんがこの記事を参考にして、ベストな選択をされるよう願っています。
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