機械学習エンジニアは、人工知能・AIの領域でシステムを設計・構築するエンジニアを指します。また機械学習エンジニアは、ML(Machine Learning)エンジニアとも言われています。ここでは機械学習エンジニアの詳細に迫ります。
機械学習の説明をする上で前提となるのが、人工知能についての知識です。人工知能とは、人間が備えている知的な行為をコンピュータの手続き・アルゴリズムに基づき、所定のデータを与えることで機械的に実行することを研究する領域です。人間の介在なしに機械的に実行することができれば人間の負担が減り、従来経験則に任せていた領域も科学的に最適な結果を導くことが可能になります。
機械学習は人工知能の1種で、学習方法を定義して機械的に学習させるため、過去の蓄積データから将来を予測するための技法を指します。関連した用語としてよく聞かれる深層学習(Deep Learning)とは、人間の脳神経であるニューロンをヒントにモデル化されたニューラルネットワークを用いた技術です。
十分なデータ量を与えることで、機械が人間の介在なしに自動的にデータから特徴を抽出し、パターン認識等に活用していきます。したがって、「人工知能 ⊃ 機械学習 ⊃ 深層学習」の関係を持ち、人工知能は全体を包摂する関係にあります。
よく求人サイトの募集職種で、データサイエンティストや機械学習エンジニアが記載されていますが、データサイエンティストとは機械学習アルゴリズムを使うシステム利用者で、データ分析者・統計の専門家を指します。一方、機械学習エンジニアは機械学習アルゴリズムを設計・実装する技術者のことで、ITエンジニアの1種です。
AIエンジニアとは、AI関連の技術職全体を指します。具体的には、上記のシステム構築側の機械学習エンジニアおよびシステム利用側のデータサイエンティストが含まれます。AIエンジニアについて解説する際は、目的別に機械学習エンジニア・データサイエンティスト・データアナリストに分けて仕事内容を説明します。
機械学習エンジニアは、AI分野の技術の専門家として認知されています。一般企業の他、学術系研究機関に勤務される方もいます。ここでは、機械学習エンジニアの具体的な仕事内容について触れていきます。
膨大なデータの収集・整理・管理はもちろん、データの整形までもコンピュータで行います。その際、学習には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3パターンがあり、目的によって使い分けをします。機械学習エンジニアはこれらの作業を行うコンピュータに指示を出したり管理したりする役割があります。
クライアントの要望に合わせて必要な機械学習のアルゴリズムを構築し終えたら、そのモデルを元にシステムやサービスを設計・構築・運用していきます。実際にこの機械学習モデルをサービスとして活用した際に得られる結果が、どういったものになるのかを明確にする必要があるため、複数のモデルを作成して1つに絞り込んで改良していきます。
機械学習を行うには、膨大なデータを処理したり安全・効率的に運用したりする必要があり、それには実行環境を整えなければなりません。Web APIとして呼び出せる設計を行ったりバッチなどの処置を管理したりと、目的に合わせたインフラの構築をするのも機械学習エンジニアの仕事です。
ここでは、機械学習エンジニアにはどのようなスキルが必要なのかまとめました。
機械学習エンジニアはシステム構築サイクルを任されるため、プログラム開発や学習アルゴリズムの設計の知識が求められます。プログラム開発では、Python・C・C++が主な開発言語です。特に、PythonはAI・機械学習・データ解析には欠かせません。C・C++・Javaは人工知能関連の開発で活用されています。
未経験者の場合は、まずはこれらのプログラミング言語の知識から習得しましょう。
機械学習エンジニアが担うアルゴリズム設計には、プログラミング言語の理解の他に、高度な数学や統計理論を多用します。アルゴリズムの目的によって必要な数学的・論理的な知識が異なるため、一定の知識や経験が求められます。例えば、顔認識や文字認識として画像を使用した機械学習を行いたい場合は、画像認識学の知識が必要です。
機械学習エンジニアには、システムインフラの技術も求められます。特に最適化には、ハードウェアの知識に基づいてシステムメモリーの利用や計算手法を最適化するため、OSとハードウェアの知識が求められます。
機械学習エンジニアは、収集したデータを格納するためにHadoopやSQL等のデータベースを理解している必要があります。過去の蓄積データを活用するためには、ビッグデータの理解も合わせて必要です。また、最近ではクラウドにデータを格納することも増えているため、クラウド連携も知識があると有利でしょう。
どのような職種でも実務経験に加えて資格を取得できれば、対外的に自分のスキルを証明することが可能です。ここでは、機械学習エンジニアが取得しておきたい資格について紹介します。
機械学習エンジニアの能力を証明するために、日本ディープラーニング協会の検定「G検定」がおすすめです。G検定はジェネラリスト向けの検定、E資格はエンジニア向けとなります。資格取得により、人工知能ならびに機械学習に関する知識の証明が可能です。
【参考】:一般社団法人 日本ディープラーニング協会のG検定、E資格
統計自体の能力を証明するために、統計質保証推進協会の「統計検定」を取得しましょう。この資格を取得することでデータに基づいた客観的な判断ができ、科学的に問題を解決する統計能力を証明できます。機械学習エンジニアのみならず、データサイエンティストにもおすすめの資格です。
「データベーススペシャリスト試験」は、情報処理技術者試験の1つで、データベースの設計監理者や管理責任者が対象です。高度なIT人材として専門的な知識や技術を証明し、情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守の役割を果たすために役立ちます。
【参考】:データベーススペシャリスト試験(DB)
機械学習エンジニアは、人工知能の領域の経験や統計の知識が求められます。ここでは、その先にあるキャリアの選択肢や結果として得られる年収について説明していきます。
機械学習エンジニアの年収は、求人情報によると600万円〜800万円が相場です。より専門的な知識を要する業務の場合、1,000万円以上も夢ではありません。
海外の場合は年収1,400万円前後が相場ですが、近年シリコンバレーのAI技術者としての給与は、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)の著名なAI技術者を例に見てみると、200万ドル(約2億円)と言われています。
シリコンバレーのNECやNTTの研究開発拠点でも同様の流れがあります。NECでは新人研究者に1,000万円以上、NTTでは経験採用で2,000万円から1億円を支払う準備がある、ということが2019年に話題となりました。
現時点で自身のスキルや経験などから、機械学習エンジニアとしてどの程度の年収が見込めるか求人サイトより算出し、少ない場合は資格取得やスキルアップを行って高収入を目指しましょう。
現実的に機械学習エンジニアとしてのキャリアを積むには、まずは地道に経験を積んでいく方法が1番でしょう。具体的には、ITエンジニアをスタート地点として経験を積んだ後、機械学習エンジニアとして必要な統計や分析のスキルを高めていきます。その後は、フリーランスとして活動することも可能でしょう。
同様に、プロジェクトマネージャとして全体プロセスを担当したり、コンサルタントやリサーチャーとして活躍の場を広げたりしていくことも期待できます。
コツコツとスキルを高めて機械学習エンジニアになった際には、どのような未来が見えるのでしょうか?ここではその将来性や適応業務の領域について見ていきましょう。
機械学習エンジニアの将来性については、現在の求人情報などから読み解くことができます。求人サイト「マイナビAGENT」によると、「機械学習」に関する求人数は2022年1月時点で約900件あります。ちなみに同サイトで「システムエンジニア」で検索すると380件ほどヒットしました。他サイトでも数多くの求人が出されているため、機械学習エンジニアの需要の高さが伺い知れます。
また、機械学習については現在多くの企業やサービスが導入・検討している背景もあるため、今後も伸びていく分野です。しかし、機械学習エンジニアが持つスキルが将来的にエンジニアにとって必須条件となることも考えられるため、機械学習エンジニアという職種自体がなくなるのでは?という見解もあります。
それでも、機械学習のスキル自体は身につけておいて損はないので、今後も継続的な勉強を行いましょう。未経験者の採用を行っている企業も複数あるため、新卒で入社したい場合は資格を取得しておくなどの対策が求められます。
【参考】:マイナビAGENT
機械学習の適応領域は、大まかに3つの分類に大別されます。具体的にはコンピュータ認識の領域、コンピュータ分析・予測の領域、コンピュータ対処応答の領域、に大別され、それぞれ適応が拡大しています。
さらに詳しく見てみるとコンピュータ認識の領域では、画像認識(顔認証や監視等)、音声認識(音声入力や応対等)、文章解析・文章認識(不正検知や検索等)、異常検知(故障や異常行動等)等に適応が拡大しています。同様に、コンピュータ分析・予測の領域では、数値の予測(売上や株価等)、イベント発生の予測(購買予測等)等に活用されています。
コンピュータ対処応答の領域では、行動の最適化(出店や在庫最適化等)、作業の最適化(自動運転や自動応答等)、表現の生成(翻訳や要約等)等に活用されています。今後も適用領域はさらに広がっていくでしょう。
現在、スマートデバイスやセキュリティ機器並びにドローンに至るまで、IoTの広がりにより情報の格納と活用の要求が高まっています。そのため、今後ビッグデータによって蓄積されたデータを活用し、コンピュータによる認識や予測・分析のニーズがさらに高まるでしょう。そのインフラを支える機械学習エンジニアは、必要な技術者として認知されさらにキャリアの選択肢が広がるでしょう。
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