そもそもITスペシャリストとは?
システムエンジニアやプログラマーといったITエンジニアや、IT未経験者でも目指せる転職先として「ITスペシャリスト」がありますが、ITスペシャリストとはどういった職種でどのような仕事を任されるのでしょうか。
そもそもITスペシャリストとは、ITスキルの専門家としてプロジェクトにおける技術面をサポートしていく役割をもつ職種です。そのため、ITのスキルにおいて周囲より秀でていることが期待されます。ここでは、ITスペシャリストの具体的な役割と求められるスキルなどについてまとめました。
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ITスペシャリストはITの特定分野に特化した専門家
まず前提として、ITスペシャリストと認められるには、ITSS(ITスキル標準)が定めた専門分野において、レベル3以上のスキルを1つでも習得している必要があります。
レベルは1〜7まで区分され、レベル1は「最低限求められる基礎知識」を有する者、レベル7は「国内のハイエンドプレイヤーかつ世界で通用するプレイヤー」と明記されており、幅広い位置付けが特徴です。
レベル3は「応用的知識と技能」を持つ技術者として認められ、ITスペシャリストとして任された範囲の仕事を自ら責任もって計画や遂行できる方のことです。
【参考】:ITスキル標準V3 2011
ITスペシャリストの役割は、システムを開発・構築もしくは保守・運用する段階において、専門性の高いIT技術に関する知識・スキルを提供し、プロジェクトの土台を作ることです。そのため、専門分野に関しての深い知識やスキルに加え、プロジェクトを俯瞰できる幅広い視点も求められます。
仕事内容やITゼネラリストとの違い
ここでは、ITスペシャリストの具体的な仕事内容と、類似する職種であるITゼネラリストとの違いについてまとめました。それぞれ詳しく解説しているので、理解を深めましょう。
ITスペシャリストの仕事内容
ITスペシャリストの仕事内容は、自身の専門分野に関する要件定義・設計、保守・運用までのシステム開発工程に関わる一連の流れの中で、専門的な技術面のサポートを行います。
ITスペシャリストは、システム基盤の設計・構築を実施し、その性能・機能性・可用性などに責任を持つことが重要な責務と言われています。したがって、ITスペシャリストは基本的なIT技術全般における知識やスキルは備えつつも、専門分野に特化した仕事を行う職種です。
ITスペシャリストとITゼネラリストの違い
ITスペシャリストと類似する職種として、「ITゼネラリスト」があります。この2つの違いを簡潔にいうと、ITスペシャリストがITの特定分野に特化した専門家、ITゼネラリストはITに関わるさまざまな分野に知見がありオールマイティに活躍できる人です。
それぞれの職種には適性があり、自分がどちらに向いているのか予めの見極めが必要です。以下を参考に、自分がどちらに適性があるのか確認してみましょう。
【ITスペシャリスト】 ・知識を深掘りして探求できる ・集中力がある ・一点集中型
【ITゼネラリスト】 ・コミュニケーション能力や対人スキルが高い ・状況に合わせて臨機応変に対応できる ・好奇心旺盛
ITスペシャリストとSEの違い
ITスペシャリストはシステムエンジニア(SE)と比較される事もありますが、SEはゼネラリスト寄りの仕事です。SEはシステムの要件定義や設計からなる上流工程を担当するほか、下流工程を担うプログラマーなどとも緊密に連携を図る必要があります。
そのため、SEには幅広い知識とヒューマンスキルが重要となります。対してITスペシャリストは、高いIT技術を持つ者として技術面から支えるのが役割となります。
ITスペシャリストの6つの専門分野
ここからは、ITスペシャリストの専門分野について紹介します。これまでに紹介したITTSでは、6つの専門分野に区分されています。それでは1つずつ見ていきましょう。
プラットフォーム
プラットフォームとは、システムを開発する際の土台部分を意味します。
システムを構築する上での枠組みとなるのがプラットフォームです。プラットフォームの分野では、ITスペシャリストはシステムを動作させるための基盤となるOSやミドルウェアの選定や設計から保守・運用までの工程に携わり、システムの基盤に不具合が生じないようにするのが仕事です。
また、システム開発が完了した後の障害対応や性能管理などの業務も行います。
システム管理
システム管理の分野では、ITスペシャリストはシステムの開発の設計から携わり、保守・運用及び管理を行っていきます。またハードウェアやソフトウェア、アプリなどの導入の部分にも関わり、システム全体をサポートしていくのが仕事です。
プラットフォームと同様、システムが正常に稼働するかどうかやシステムに不具合が生じた場合の対応などの業務も行います。
ネットワーク
ネットワークの分野では、ITスペシャリストはネットワークの構成要素の選定から携わり、設計や構築、保守・運用を行います。さらに、ローカルエリアネットワーク(LAN)の構築なども含め、ネットワークの設計や構築、保守・運用も行います。
また、ITスペシャリストは、不具合が生じた場合の障害対応手段についても検討する役割もあります。IT技術においてネットワークは必要不可欠なため、快適なネットワーク環境を常に安定した状態で提供するのがITスペシャリストの役割です。
セキュリティ
セキュリティの分野では、ITスペシャリストは企業内や企業間の個人情報の流出から守るために、セキュリティ機能やセキュリティを担保するための機器の設計、構築を行い、運用していきます。セキュリティが甘くなってしまうと、情報流出が起こり、企業の社会的信用を下げかねない状況を招く可能性があります。
そのため、企業にとって大切な情報を管理するためにも適切なセキュリティ機能を構築する必要があるでしょう。
データベース
データベースの分野では、ITスペシャリストはアプリやシステムに関するデータを管理するデータベースを設計・構築します。また、データベース構築後のテスト計画の作成や不具合対応も行います。データベースは、企業の重要なデータを管理していく中で必要不可欠なものです。
ITスペシャリストは、システムを運用する際に不具合が生じないように設計することや、機能性や可用性などが担保されたデータベースの作成を目標として業務を行います。
アプリケーション共通基盤
アプリケーション共通基盤の分野では、ITスペシャリストは導入するシステムに適したソフトウェア、フレームワークの選定や、ツールの開発・導入を行い、システムの枠組みを作成します。ITスペシャリストは開発するシステムの意図や目的を把握し、それに適したフレームワークを作成するのが大切です。
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ITスペシャリストの年収と将来性
これまでに、ITスペシャリストの詳細や専門分野の領域について紹介してきました。ここからは、ITスペシャリストの将来性や年収について解説します。
ITスペシャリストの需要と今後の展望
ITスペシャリストになるためには、IT技術に関する深い知識とスキルが必要です。また、IT業界全体として人手不足な状況により、ITスペシャリストの数も不足しているため、今後の需要は益々増えていきます。
さらに、急激なIT技術の発展に伴い、今後も一層需要は拡大していくことが予想されるため、ITスペシャリストの将来性は高いと言えるでしょう。
ITスペシャリストの年収は500万〜600万円
ITスペシャリストの平均年収は、およそ500〜600万円です。(※2023年2月執筆時点)技術系(IT/通信) 全体の平均年収は452万円と言われており、地方別にみて最も年収の高い関東の全職種の平均年収は429万円と言われています。
以上より、ITスペシャリストはスキルを磨き、キャリアアップを重ねていくことで高収入を目指せる職種です。
特に、最先端のシステム開発に関する技術をもっている方や、近年需要が高まっているセキュリティに関する知識やスキルをもっている方の市場価値はかなり高いです。場合によっては年収1,000万円を超える場合もあります。
ITスペシャリストのキャリアパス
ITスペシャリストは技術職の中でも上位にある職種なので、より高度なスキルを目指してITスペシャリストとして働き続ける人もいますが、転職などによって他の職種で年収アップを実現することもできます。
■フルスタックエンジニア 同じ技術職としては、フルスタックエンジニアが考えられます。フルスタックエンジニアは複数の分野に詳しい、いわばオールラウンダーです。複数の専門分野を持てば、活躍の幅も広がるでしょう。
■ITアーキテクトやITコンサルタント ビジネススキルを身に付けて、ITアーキテクトやITコンサルタントを目指すこともできます。どちらもビジネス課題を解決する力が求められますが、特にITコンサルテントでは専門分野以外の幅広いIT知識も必要となるでしょう。
■プロジェクトマネージャー プロジェクトマネージャーは、開発プロジェクトにおける全体責任者です。マネジメントスキルが求められますが、現場の経験を活かせる職種なのでITスペシャリストとしての経験が役に立つでしょう。
ITスペシャリストを目指すデメリット
ここでは、ITスペシャリストを目指す際に考えられるデメリットについてまとめました。未経験からITスペシャリストを目指す場合は特に将来に関わってくるので、ぜひチェックしておいてください。
転職先によっては極めたスキルが使えない
ITスペシャリストは1つの分野に特化して学ぶことが多い職種であるため、他の分野について学ぶ時間を取りにくい傾向があります。ITスペシャリストから違う職種への転職をしたい場合、他の分野は未経験なので、一から学習しなければならず時間をかなり多く要してしまいます。
専門家としての需要は高いですが転職先によっては極めたスキルが使い物にならない可能性もあります。他業種への転職よりも、今のスキルを活かしたキャリアパスが必要です。
ITスペシャリストのキャリアパスとして、プロジェクトマネージャーやITアーキテクトなどがあります。また、1人でエンジニアの業務を全てこなせるフルスタックエンジニアなどもITスペシャリストの特性に似ているため向いているでしょう。
管理職への出世には工夫が必要
ITスペシャリストは管理職などの出世が難しい職種だと言われています。前述したITスペシャリストの特性である「知識を深掘りして探求できる・集中力、一点集中型」という部分が、管理職というよりもプレイヤー気質である場合が多いからです。
チームやメンバーのマネジメント業務がメインとなる管理職だと、これまで培った専門的なスキルが発揮できなくなります。
しかし、前述の通りITスペシャリストのキャリアパスとして、管理職であるプロジェクトマネージャーも候補として挙げられます。「スペシャリストはマネジメントができない」という先入観を払拭するため、プロジェクトマネージャ試験などを取得してマネジメント能力があることをアピールすると良いでしょう。
プロジェクトを進める上でこれまで培ったスキルをどう活かせばいいのか、新たなステップとして探求していきましょう。
【参考】:プロジェクトマネージャ試験
ITスペシャリストを目指すメリット
続いて、ITスペシャリストを目指す上でのメリットについてまとめました。「ジョブ型雇用で採用されやすい」「知的好奇心を満たせる」「収入が上がりやすい」などが挙げられるので、それぞれ詳しく解説します。
ジョブ型雇用で採用されやすい
ジョブ型雇用とは、企業の中で必要な職務内容に絞った求人を募集し、採用する形のことを言います。従来は、雇用後に研修制度などを設け、その後個人の希望や適性に合わせて配属先を定めるメンバーシップ型雇用でしたが、ジョブ型雇用が主流である欧米のように日本でも広まってきています。
特定の職務が行える人材が求められるので、スペシャリストが採用されやすい傾向にあります。このジョブ型雇用が広まれば、ITスペシャリストが活躍できる場所がさらに増えるでしょう。
知的好奇心を満たせる
ITスペシャリストは、特定の職務について深い知識が必要なので知的好奇心が欠かせません。自分が興味のある分野をとことん探求できるので、知的好奇心を満たすことができます。1つのことに没頭するのが好きな人や、物事を探求するのが好きな人にとってITスペシャリストは天職と言えるでしょう。
収入が上がりやすい
ITスペシャリストは特定の分野において秀でているので、給与面での交渉が有利になります。唯一無二の存在として自分の価値を高めることができるので、収入を上げやすい職種の1つです。前述の通りITスペシャリストの平均年収は500〜600万円なので、高収入を期待できる職種としておすすめです。
また、フリーランスも目指せるので仕事次第では会社員時代よりも高い収入を目指すこともできます。
ITスペシャリストを目指す方におすすめの3つの資格
ここからは、ITスペシャリストを目指す方におすすめの資格を紹介します。「基本情報技術者試験」「応用情報技術者試験」「情報処理安全確保支援士試験」の3つについて解説します。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は「IPA」という独立行政法人情報処理推進機構が主催する試験で、IT業界への登竜門ともいえる基礎・基本の試験となっており、ITスペシャリストを目指す方なら最初に合格しておきたい試験です。
この試験ではITに関する知識はもちろん、経営や管理の分野についてもある程度出題されます。専門的な知識というよりは、IT関連の知識やスキルを幅広く問われる試験です。
合格率は20%~40%程度、試験はこれまで年2回・4月と10月に実施されていましたが、CBT試験の導入により試験日に変更がありました。令和5年度より年間を通して随時試験が実施されます。受験申込み受付開始時期は、令和5年3月頃になる予定です。
IT業界が未経験者の方でも十分に合格を目指せる資格であり、今後ITスペシャリストを目指す人にとっても他の上位資格を取得するための前提となるような資格なため、ぜひ取得しておきましょう。
【参考】:基本情報技術者試験
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験もIPAが主催する試験で、基本情報技術者試験の上位の試験となっており、よりITに関する応用的な知識を幅広く問われる試験です。試験の合格率は20%程度で、試験は4月と10月に実施されます。
IT業界未経験である方が受ける基本情報技術者とは異なり、応用情報技術者試験は、ある程度SEとして現場で経験を積んだ上で受験することが多いでしょう。
また、ITSSによると応用情報技術者試験はレベル3相当に対応するため、この試験に合格することができればITスペシャリストと名乗ることができます。基本情報技術者試験を取得後は応用情報技術者試験の合格を目指し、さらに上位の専門的試験合格を目指しましょう。
【参考】:応用情報技術者試験
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は、ITスペシャリストの専門分野におけるセキュリティに関する試験です。「情報セキュリティスペシャリスト」に代わり、2017年より実施されています。
合格率は15%前後で、試験は4月と10月に実施されます。試験内容は暗号化に関する技術やセキュアプログラミングなど、セキュリティに関する問題が多く出題されます。また、ネットワークに関する知識を要求される問題もあり、セキュリティ関連の試験の中では最難関なため、専門的で難易度が高いです。
ITスペシャリストとしてセキュリティを専門としていくならば、ぜひ合格を目指したい試験でしょう。前述の通り、セキュリティは現在のトレンド技術であるため、情報処理安全確保支援士試験に合格し、情報処理安全確保支援士になることで、ITエンジニアとしての市場価値を高めることもできるでしょう。
【参考】:情報処理安全確保支援士試験
IT技術の深い知識とスキルを身に付けてITスペシャリストを目指そう
ITスペシャリストはITスキルの専門家として、プロジェクトにおける技術面のサポートをしていく役割をもつ職種であり、システムの性能・機能性・可用性などにおいて責任を担っています。よって、開発したシステムが正常に稼働したときは、達成感や喜びなどの「やりがい」が感じられる仕事と言えるでしょう。
ITスペシャリストになるにはIT技術に関する深い知識とスキルが欠かせないため、資格の取得を目指しながらスキルを磨いていくことが重要です。急激なIT技術の発展に伴い、今後もITスペシャリストの需要は拡大していくことが予想されますが、ITスペシャリストは現状として人手不足です。
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