フルスタックエンジニアとは?
フルスタックエンジニアとは、システムの開発やWEB開発、保守・運用などのエンジニアリング業務における工程すべてを手掛けることができるようなエンジニアのことです。ではまず、フルスタックエンジニアが生まれた背景について見ていきましょう。
フルスタックエンジニアが生まれた背景
「フルスタックエンジニア」という言葉は、もともとは海外で使われ始めました。最近になって日本でも使われるようになりました。フルスタックエンジニアが求められる場面は、新しく事業やサービスを開始する段階が多いです。
フルスタックエンジニアが生まれた背景としては、クラウドの急激な普及によって自社でインフラ設備を用意する必要性がなくなりつつあることが挙げられます。
「クラウド」とは、インターネットを利用してアプリやデータベースなどのリソースを提供できるサービスの総称のことを言います。「Amazon社」が提供する「AWS」などが有名なクラウドサービスです。
プログラミング環境もクラウドで用意することができるため、ひとりでも高度な開発作業を行うことが可能になりつつあります。本来分担しなければならない業務をひとりでこなすことができれば、コスト削減や連携ミスの防止ができるといったメリットもあります。
すべての工程を1人でこなせる人材は、ベンチャー企業やスタートアップ企業などにとって魅力的と言えるでしょう。
フルスタックエンジニアの仕事内容
ここからは、フルスタックエンジニアの具体的な仕事内容について見ていきましょう。フルスタックエンジニアを一言で表わすと「ITエンジニアのなんでも屋」です。幅広い領域をカバーできるためです。
一般的に、ITエンジニアはひとつの専門技術を基とした業務を行うことが多いです。ネットワークの開発ならばネットワークエンジニア、サーバーの開発ならばサーバーエンジニア、アプリ開発ならばアプリエンジニアという具合です。
それぞれの専門分野に対応した担当者をプロジェクトにアサインして業務にあたっていきますが、IT技術は近年急成長を遂げて高度化しており、エンジニアが請け負わなければいけない範囲も拡大しつつあります。
ひとつの専門分野を極めるだけでも大変で、ある分野の業務を一通りこなすために多くの知識と経験が必要となることもあります。フルスタックエンジニアの定義は曖昧な部分もありますが、このような状況から、実際のところ2つ以上のスキルを持っているエンジニアのことをフルスタックエンジニアと呼ぶことも多いようです。
フルスタックエンジニアに必要な3つのスキル
では、フルスタックエンジニアになるためには、どのようなスキルを身に付ける必要があるのでしょうか。ここからは、フルスタックエンジニアになるために必要な3つのスキルを紹介しましょう。
プログラミングスキル
ITエンジニアとしての基本的なスキルのひとつが、プログラミングスキルです。もちろんフルスタックエンジニアも開発スキルを身に付ける必要があるため、プログラミング能力は必須のスキルと言えるでしょう。JavaやPythonなどIT業界で需要の高い言語を習得すると、エンジニアとしての市場価値を高めることができるでしょう。
インフラに関するスキル
インフラエンジニアが扱うOSやミドルウェアのスキルは、フルスタックエンジニアにも求められることがあるでしょう。OSとは、Windows、Linux、iOS、Androidなどのコンピュータ全体を管理、制御する基本ソフトウェアのことです。ミドルウェアとは、OSの機能を強化する役割やOSとアプリケーションの間の橋渡しの役目を担うソフトウェアのことです。ミドルウェアの例としては、Apache、Tomcat、Oracleなどがあります。
【参考】:The Apache HTTP Server Project 【参考】:Apache Tomcat® 【参考】:Oracle
クラウドに関するスキル
コスト削減や開発スピードの向上を実現するために、クラウドサービスを利用する企業が急激に増加しています。そのため、これまでにも説明したように、フルスタックエンジニアにとってクラウドに関するスキルを身に付けることは重要です。クラウドサービスで最も有名なのが、「AWS」と呼ばれるAmazon社が提供しているクラウド型のサービスです。「AWS」の経験やスキルをもっている人材は重宝されることも多いでしょう。
以上のように、アプリ・インフラ・クラウドなど幅広い知識やスキルが求められるのがフルスタックエンジニアです。すべてのスキルを身に付けるのは容易ではありませんが、「アプリ」と「クラウド」など2つでもいいので、複数のスキルを身に付けるとエンジニアとしての市場価値は高まるでしょう。
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フルスタックエンジニアの年収
フルスタックエンジニアは定義も曖昧な部分があるので、明確な年収の指標を求めることができません。そこで、開発現場において工程の全体を見ながらリーダー的な立場でプロジェクトを進めていく「システムエンジニア(SE)」や「プロジェクトリーダー」の年収を参考として見ていきましょう。
「マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑」でのシステムエンジニア(SE)平均年収は431万円、プロジェクトリーダーの平均年収は526万円、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種の「SE・プログラマ(ソフトウェア製品の開発・実装)」を参考にすると、平均年収568万円と分かりました。
国税庁2020年発表の民間給与実態統計調査における民間企業平均年収は433万円なので、マイナビの調査でのSEの平均年収は一般平均年収よりもやや低め、一方で同調査でのプロジェクトリーダーや経済産業省の調査結果ではやや高めであることが分かります。プロジェクトリーダーはSEの上位職であるため、年収もSEより高い傾向にあります。
フルスタックエンジニアは一連の開発工程を1人で担うため、年収も工程全体を見て指揮を執るSEやプロジェクトリーダーと同等か、スキルや経験によってはそれ以上となるでしょう。
【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑/システムエンジニア ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング/職種図鑑/プロジェクトリーダー ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
フルスタックエンジニアの実情
広範囲を1人でカバーできるフルスタックエンジニアのような人材は希少であり、企業からしてみても貴重な人材です。複数の分野にまたがる知識やスキルを身に付けることは自身の市場価値を高める大きなチャンスと言えるでしょう。
しかし、フルスタックエンジニアについてインターネットなどで情報を集めてみると、「フルスタックエンジニアはいらない」などという意見を目にすることがあります。
そう言われてしまう理由は一体何なのでしょうか?また、そのようなイメージを払拭して活躍するためにはどのようなことが必要なのでしょうか?
器用貧乏に陥りやすい
これまで説明してきたように、フルスタックエンジニアには幅広い領域をカバーできるだけの高いスキルが求められます。しかし、フルスタックエンジニアとして十分に通用するレベルに達するためには多くの努力が必要となります。
その難しさから、どの分野に関しても中途半端になって「器用貧乏」に陥っていると言われたり、「フルスタックエンジニア 笑」などと揶揄されたりということが起きているのです。適切なロードマップを描き、名前に見合っただけの知識とスキルを身に付けることが重要です。
環境選びが大切
フルスタックエンジニアがいらないと言われてしまう背景には、海外と日本の企業社会の違いによってフルスタックエンジニアへのイメージが異なっているという事情もあるようです。
フルスタックエンジニアはスタートアップ企業やベンチャー企業でよく重宝されますが、日本はアメリカなど海外に比べてそのような企業が少ない傾向にあります。そして、「職人技」といった言葉があるように、1つの分野に特化した人材を好む傾向もあります。
このような事情が、フルスタックエンジニアに対する良くないイメージを助長している可能性があります。身を置く環境によっては、スキルに見合っただけの報酬が貰えなかったり、十分に能力を発揮できなかったりするリスクもあります。
しかし、フルスタックエンジニアが必要とされていないわけではありません。企業にとって即戦力となるフルスタックエンジニアの需要は、むしろ高まっていると言えます。フルスタックエンジニアとして活躍できる環境を選ぶことが重要と言えるでしょう。
幅広い視野と対応力が必要
フルスタックエンジニアは、通常それぞれ分担して作業を進める工程も1人で担うわけですから、その分仕事量は多くなります。そのため、フルスタックエンジニアとして仕事をこなすにはある程度の実務経験と効率よく作業を進められるスキルが必要です。
まずは特定の分野で経験を積み、それと並行して別分野の知識とスキルを身に付けながら、開発全体を把握する広い視野と対応力を培うことが大切です。
また、常にIT業界全体を見渡し、最新情報やトレンドをチェックしながら、需要や将来性の高い分野のスキルを積極的に磨いていくことが成功のカギと言えるでしょう。
フルスタックエンジニアの将来性
ここまで、フルスタックエンジニアの仕事内容やその実情について紹介してきました。ここからは、そんなフルスタックエンジニアの将来性を解説しましょう。
フルスタックエンジニアの強み
まずは、フルスタックエンジニアの強みについてさらに深掘りして紹介しましょう。ひとつの専門分野だけでなく幅広い仕事をこなせる点がフルスタックエンジニアの特徴です。その特徴を理由とするフルスタックエンジニアの強みについて、具体的に2点紹介します。
■1.開発スピードの向上 複数のエンジニアでプロジェクトを進めていると、認識齟齬が生じるなど足並みをそろえることに苦労することがあります。その結果、会議の回数が多くなって開発遅延が生じるなど、開発のスピードが遅くなることはよくあります。
フルスタックエンジニアひとりで開発を進めることができれば、不具合が起きた場合などもチームで会議しながら解決する手間は不要となり、開発スピードの向上が期待できるでしょう。
■2.人件費などのコストの削減 フルスタックエンジニアはそれぞれ求められるスキルが異なる複数の工程もひとりでこなすことができます。
そのため、チームで開発する場合に比べ人件費の削減が期待できるでしょう。また、プロジェクトが完遂した後に追加開発を依頼する場合、新規のエンジニアを募集することなく、フルスタックエンジニアひとりで開発することができる場合もあります。
以上のように、フルスタックエンジニアには独自の強みがあります。フルスタックエンジニアの採用は、開発する企業側にとって十分にメリットがあると言えるでしょう。
フルスタックエンジニアの需要
これまでも説明しましたが、フルスタックエンジニアは複数のタスクをひとりで担当できるため、多くの企業で重宝されるでしょう。そのため、需要は非常に高いと思われます。
特に、スタートアップ企業やベンチャー企業からのニーズが高いです。これらの企業は即戦力を求める傾向が強く、この傾向は今後も続いていくでしょう。
また、クラウドサービスが急激に普及したことによって、専門的なスキルをもっているエンジニアでなくても、サービスの開発、保守・運用ができるようになってきています。この状況はフルスタックエンジニアにとっても今後有利に働くでしょう。
フルスタックエンジニアの今後の展望
ここまで、フルスタックエンジニアの需要が高いことを説明しました。ここでは、フルスタックエンジニアの今後の展望について2つ紹介します。
■1.フルスタックエンジニアの需要は今後も続く
コスト削減や生産性向上の観点から、フルスタックエンジニアの需要の高さは今後も期待できるでしょう。ひとりのエンジニアが生産性を上げて効率よく開発することができると、多くのエンジニアを雇用せずに済むため人件費が削減されます。また、チームではプロジェクトマネージャーが担う組織のマネジメントやスケジュール管理も最低限で済みます。
■2.スタートアップ・ベンチャー企業での需要が非常に高い
スタートアップ企業やベンチャー企業での開発では、予算が他の企業と比較して少ないことが多いです。限られた予算内で開発を行わなければならないため、即戦力となる複数の技術をもっているエンジニアを求める傾向があります。したがって、フルスタックエンジニアのように複数の技術をもっているエンジニアは、このような企業が優先的に確保したい人材と言えるでしょう。
以上のように、フルスタックエンジニアは市場価値も高く、将来性も十分にあると言えます。
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フルスタックエンジニアの市場価値は非常に高い
フルスタックエンジニアとは、システムの開発やWEB開発、保守・運用などエンジニアリング業務における工程すべてを手掛けることができるようなエンジニアのことです。ひとつの専門分野だけでなく幅広い仕事をこなせる点がフルスタックエンジニアの特徴で、たくさんの強みがあることを紹介しました。
「ITエンジニアとして市場価値を高める最も有効的な方法は、フルスタックエンジニアになること」と言われることがあるほど、フルスタックエンジニアの需要や市場価値、将来性の高さは安定しています。複数の専門分野にまたがる知識やスキルを習得している人材は、それだけでエンジニアとしてのニーズが高くなるのです。
IT業界は、技術の変化が早いです。その中で生き残っていくためにも、ぜひ「フルスタックエンジニア」を目指してみてはいかがでしょうか。
その際には環境選びも大切です。スキルアップに取り組める環境、そしてスキル習得後にはそれを発揮できる環境に身を置くことでフルスタックエンジニアとしての価値も高まっていきます。企業側のニーズと自身のスキルや希望が合致しているかをよく見極めましょう。
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