ITスペシャリストとは?
ITスペシャリストとは、IT系技術者の中で高度な専門性を有する者を指します。ITスペシャリストの資格取得学習を進めるに当っては、情報処理推進機構(IPA)のスキルレベルの定義を理解する必要があります。
情報処理推進機構(IPA)は、IT国家戦略を技術面と人材面で支えるための指針・提言・認定資格試験の実施を行っています。その活動において情報処理推進機構(IPA)はITSS(ITスキル標準)について、ITスペシャリストの定義を行っています。具体的には、以下に挙げる専門分野固有スキル項目のいずれかをスキルレベル1から4とした場合のスキルレベル3以上を有する者と定義しています。
・プラットフォーム ・ネットワーク ・データベース ・アプリケーション共通基盤 ・システム管理 ・セキュリティ
【参考】:ITスキル標準(ITSS) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
SEとの違い
ITスペシャリストはSE(システムエンジニア)と比較されることがありますが、その違いは何なのでしょうか。
SEは、クライアントへのヒアリング、システムの要件定義や設計といった、主にシステム開発の上流工程を担います。システムエンジニアという言葉には特に専門性はなく、どの分野でもそのような仕事をする人をシステムエンジニアと呼びます。
一方でITスペシャリストは、ある特定分野を究めた人のことです。一般的なシステム開発のスキルを持った人をSE、ある分野に関して特に高い知識や技能を持っている人をITスペシャリストと呼ぶ、という認識で良いでしょう。
ITスペシャリストに定義されるレベル・国家資格
ITスペシャリストとは、上述した通り6つの専門分野のいずれかでレベル3以上のスキルを持っている人を指します。ここでは、レベルを定義するITスキル標準(ITSS)の詳細と、ITスキル標準(ITSS)に応じた国家資格について詳しく解説します。
ITスペシャリストに定義されるスキルレベル
ITスペシャリストとは、6つの専門分野のいずれかでレベル3以上のスキルを有する人を指します。レベルはITスキル標準(ITSS)で定義されており、レベル1~7まであります。レベル別に求められるスキルは、以下のとおりです。
・レベル7 国内のハイエンドプレイヤーかつ世界で通用するプレイヤー ・レベル6 国内のハイエンドプレイヤー ・レベル5 企業内のハイエンドプレイヤー ・レベル4 高度な知識と技能 ・レベル3 応用的知識と技能 ・レベル2 基本的知識と技能 ・レベル1 最低限求められる基礎知識
また、情報処理推進機構(IPA)・経済産業省は、2008年に高度IT人材のキャリアとスキルを定義した「共通キャリア・スキルフレームワーク」を策定しました。さらに2014年には、「共通キャリア・スキルフレームワークを発展させた「i コンピテンシ ディクショナリ」が公開されています。
「i コンピテンシ ディクショナリ」では、IT業界で求められる業務(タスク)・IT人材の能力やスキルが体系化され、企業の人材育成に活用されています。
【参考】:ITスキル標準V3 2011 ダウンロード | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:ITスキル標準(ITSS) | デジタル人材の育成 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 【参考】:i コンピテンシ ディクショナリ(iCD):IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ITスペシャリストに対応する国家資格と合格率
ITスペシャリストに対応した国家資格には、情報処理推進機構(IPA)が開催している情報処理技術者試験があります。ITスキル標準(ITSS)のレベル1~4に対応した資格となっており、レベルに適した内容・難易度が定められています。
レベル別の試験は、以下のとおりです。合格率は令和3年度のものです。ITスペシャリストとしてはレベル3 応用技術者試験に相当する能力を持ち、レベル4の専門資格の取得を目指すのが良いでしょう。
・レベル4 高度試験(ITマネジメント系) 「ITストラテジスト試験」 - 合格率 15.3% 「プロジェクトマネージャ試験」 - 合格率 14.4% 「システム監査試験」 - 合格率 16.0%
・レベル4 高度試験(ITスペシャリスト系) 「システムアーキテクト試験」 - 合格率 16.5% 「ネットワークスペシャリスト試験」 - 合格率 12.8% 「データベーススペシャリスト試験」 - 合格率 17.1% 「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」- 合格率 18.3% 「ITサービスマネージャ試験」 - 合格率 15.0% 「情報処理安全確保支援士試験」 - 合格率 21.2%
・レベル3 ミドル試験 「応用情報技術者試験」 - 合格率 24.0%
・レベル2 基礎試験 「基本情報処理技術者試験」 - 合格率 41.6%
・レベル1 エントリ試験 「該当なし」
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験:統計情報
ITスペシャリストにおすすめの資格
ITスペシャリストとしてのスキルを証明するには、資格取得がおすすめです。ここでは、6つの専門分野ごとの資格と、高度なスキルの土台となる基礎的な資格も紹介します。
各分野の基礎となる資格
ITスペシャリストとは、各専門分野のいずれかに専門性を持つIT技術者のことです。まずは、各専門分野に共通するスキルを身に付けることが大切です。共通する項目のスキルを身に付けるためには、資格取得をおすすめします。
基本情報技術者試験(FE)は、資格取得により情報戦略立案・システムの設計・開発・構築・導入が指示通り実施できることを証明できます。次に、上位資格として応用情報技術者試験(AP)がおすすめです。資格取得により、レベル3に相当する情報戦略立案・システムの設計・開発・構築・導入を主導できることを証明できます。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) 基本情報技術者試験(FE) 【参考】:情報処理推進機構(IPA) 応用情報技術者試験(AP)
プラットフォーム
プラットフォーム専門分野のITスペシャリストは、レベル3である応用情報技術者試験(AP)を取得することで、OSに依存しない全体プラットフォームの設計能力を証明できます。
また、実際のシステム設計ではプラットフォームの動作環境としてWindowsやLinuxが採用されるケースもあります。OS固有の知識を高めるためにも、WindowsやLinuxの資格取得を目指しましょう。
組み込みシステム系のプラットフォームを担当するITスペシャリストには、エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)がおすすめです。資格取得により、組み込みシステム固有のプラットフォーム要件に基づく設計能力を証明できます。
【参考】:マイクロソフト認定制度 【参考】:LinuC | Linux技術者認定試験 リナック | LPI-Japan 【参考】:情報処理推進機構(IPA) エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES)
ネットワーク
情報処理推進機構(IPA)のネットワークスペシャリスト試験(NW)は、ネットワーク固有の技術とITインフラを正しく実装する技術を求められる試験です。ベンダーに依存しないネットワーク知識の専門性を証明できます。
なお、実際のシステム設計では最新の通信技術が必要です。大手通信機器ベンダーのシスコシステムズでは、システム構築技術者向けにCCNAやCCNPを用意しています。トレーニング受講によってスキルを高め、資格認定に挑戦しましょう。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) ネットワークスペシャリスト試験(NW) 【参考】:シスコ技術者認定
データベース
データベース専門分野のITスペシャリストには、情報処理推進機構(IPA)のデータベーススペシャリスト試験(DB)がおすすめです。データベースの設計・開発・構築・運用スキルを証明できます。
基幹システムといった実際に用いられるデータベースの経験を有する場合は、Oracle Masterの資格を取得しましょう。資格取得により、大規模システムでのデータベースを担当する機会が得られると期待できます。
同様に、オープンソースデータベース技術者認定試験(OSS-DB)はPostgreSQLのデータベース知識を認定する資格です。OSS-DB Gold取得で大規模運用の技術力が証明できます。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) データベーススペシャリスト試験(DB) 【参考】:Oracle 認定資格一覧 【参考】:OSS-DB 試験概要
アプリケーション共通基盤
アプリケーション共通基盤専門分野のITスペシャリストは、システムアーキテクト試験(SA)を取得しましょう。資格取得により、システム基盤を最適に活用するアプリケーションの設計・開発・構築・運用の能力を証明できます。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) システムアーキテクト試験(SA)
システム管理
システム管理専門分野のITスペシャリストには、ITサービスマネージャ試験(SM)がおすすめです。安全性と信頼性の高いITサービスが提供できることを証明できます。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) ITサービスマネージャ試験(SM)
セキュリティ
セキュリティ専門分野のITスペシャリストには、情報処理安全確保支援士試験(SC)がおすすめです。情報処理安全確保支援士試験(SC)はセキュリティ技術者を増やす狙いで年間に2回試験が開催されており、ほかの試験より受験のチャンスが多いのが特徴です。
情報処理安全確保支援士試験(SC)では、組織の事業・サービス及び情報システムの安全を確保するセキュリティエンジニアや、経営層を支援するセキュリティコンサルタントを想定しています。
そのため所定の登録手続きを行うことで、国家資格「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」を取得することもできます。セキュリティコンサルタントとして独立することも可能です。
【参考】:情報処理推進機構(IPA) 情報処理安全確保支援士試験(SC)
ITスペシャリストのメリットは?
高度な専門スキルを持つITスペシャリストには、さまざまなメリットがあります。まず、スキルが高く専門分野に特化した業務ができることから、高年収が期待できます。ITスペシャリストは各分野の専門家としてのスキルを有しており、業務の質が高いことが年収にも反映されます。
また、転職がしやすいこともメリットの1つです。各分野に精通したITスペシャリストは、あらゆる業界で活躍が期待できます。また、各業界ではIT人材の不足が問題となっており、特にITスペシャリストのような高度なITスキルを持った人材は重宝されるでしょう。
さらに、ITスペシャリストとしての経験は次のキャリアパスにも活かすことができます。ITスペシャリストとしてさらにスキルを極めることも魅力的ですが、プロジェクトマネージャーといった職種へのキャリアチェンジも可能です。
【参考】:ITスペシャリストの求人|求人・転職エージェントはマイナビエージェント
ITスペシャリストの年収
マイナビエージェントでは職種別の年収ランキングを公開しています。ITスペシャリストの職種はさまざまありますが、最も高い年収はシステムコンサルタントの610万円(※2023年2月執筆時点)となっています。これはあくまで平均であり、業種・業界によっては平均年収がさらに高い可能性もあります。
【参考】:職種別平均年収ランキング|求人・転職エージェントはマイナビエージェント 【参考】:ITスペシャリストの求人|求人・転職エージェントはマイナビエージェント
ITスペシャリストのキャリアパス
高い知識や技能を持ったITスペシャリストとして、職種を変えずに続けていく人もいますが、ITコンサルタントやプロジェクトマネージャーにキャリアアップをするという選択肢もあります。
必要なスキルを補完することで、ITアーキテクトとしてシステム全体の設計をする、あるいはフルスタックエンジニアとしてシステム開発の全行程を担うこともできるでしょう。
ITスペシャリストは、自身のキャリアプランに応じて今後の道を選ぶことができます。現場で技術職を続けたいのか、マネジメント職に挑戦するのかなど、適性や希望する環境も考慮しながらキャリアプランを描いていきましょう。
ITスペシャリストの資格を取得してキャリア形成に役立てよう
ITスペシャリストは必ずしも資格取得が必要となるわけではありませんが、資格取得によりその実力が証明され、より活躍の場が広がるでしょう。また、ITスペシャリストとして働いた経験は業務の質や専門知識をさらに高め、今後のキャリア形成に役立つと言えます。
なお、ITスペシャリストとして働きたい場合は自分に合った企業を選ぶことも大切です。自分のスキル・性格などに合っているか、企業が求める人材と自分は一致するかなどを事前に調べる必要があります。
しかし、数多くの企業から自分に合った企業を探すのは大変でしょう。
そこでぜひご活用いただきたいのがマイナビIT エージェントです。
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