データベーススペシャリスト試験は難易度が高い?
近年、社会のIT化が大きく進み、日常的にたくさんのソフトウェアやWebサービスなどが使われるようになってきました。そんな中、ビッグデータの活用や、個人情報や機密情報を守るためのセキュリティ対策など、データの取り扱いや管理への関心も高まってきています。
こういったデータの取り扱いを業務とするデータベースエンジニアが、高度な知識やスキルを持つことを証明する資格試験として、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が主催する国家資格であるデータベーススペシャリスト試験があります。
データベースエンジニアとして働く方の中には、データベーススペシャリストの取得にチャレンジしてみようと思う方もいるでしょう。しかし、一部の方からは「難しすぎる」「なかなか合格できない」といった声も聞かれます。
実際、データベーススペシャリストはどのような内容の試験で、合格率はどの程度なのでしょうか。この記事では、データベーススペシャリスト試験の受験を考えている方に向けて、試験の基本情報や難易度について説明し、合格を目指すための勉強のコツについても解説していきます。
データベーススペシャリスト試験が高難易度な理由とは
データベーススペシャリスト試験は、IPAが主催するいくつもの情報処理技術者試験の中でも難易度が高く、合格することは簡単ではないと言われています。その理由として、合格率の低さ・受験者のレベルが高いこと・問題の難しさが挙げられます。
合格率がかなり低め
IPAで公開されているデータベーススペシャリスト試験の近年の合格率は、以下のとおりです。
実施年度と合格率 平成21年度春期 16.1% 平成22年度春期 15.8% 平成23年度春期 18.2% 平成24年度春期 16.1% 平成25年度春期 16.3% 平成26年度春期 16.7% 平成27年度春期 17.6% 平成28年度春期 17.5% 平成29年度春期 14.5% 平成30年度春期 13.9% 平成31年度春期 14.4% 令和 2年度秋期 15.8% 令和 3年度秋期 17.1% 令和 4年度秋期 17.6%
このようにデータベーススペシャリスト試験の合格率は、おおむね15%前後です。IPAが主催する高度区分試験の中では平均的な難易度ではありますが、他の一般的な資格試験と比べると、かなり低い合格率です。また、偏差値は67前後であると見られています。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 統計資料
受験するには高レベルな能力が必要
対象者としては、高度IT人材として確立した専門分野をもちながら、データベースに関係する固有技術を活用して、情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守の中心的役割を担う技術者とされます。
受験者には企業の膨大なデータを管理しながら、質の高いデータベースを作成する力や、顧客に相応の利益をもたらすデータベースの基盤提供能力が求められます。合格のためには、かなり高度な知識・技術・能力が必要です。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 データベーススペシャリスト試験
長文読解・記述問題が難解
午後試験で出題される長文読解問題の難易度が高いことも、高難易度である主な要因の1つです。データベースに関する豊富な知識と経験のみならず、問題として与えられたデータベースの構成や設問の内容を試験時間内に把握する理解力、さらには記述式にて適切に解答する記述力が求められます。
データベーススペシャリスト試験の基本情報
ここからは、データベーススペシャリスト試験の基本情報を説明します。受験を考えている方は、主催団体・試験日程・受験料などの情報をあらかじめチェックしておきましょう。
データベーススペシャリスト試験の主催団体
データベーススペシャリスト試験は、情報セキュリティ対策やIT人材育成などのIT政策実施を担う公的機関である、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が主催しています。
IPAはIT人材育成を目的に、情報処理技術者試験を主催しています。情報処理技術者試験は、情報処理技術者として一定以上の水準のレベルであることを認定する国家資格試験です。
情報処理技術者試験は分野ごとに分かれており、データベーススペシャリスト試験は特に高度な知識・技術が必要とされる、テクニカルスペシャリストの最高ランクであるレベル4に位置付けられています。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:試験制度:試験区分一覧
データベーススペシャリスト試験の概要
続いて、データベーススペシャリスト試験の細かい概要を紹介します。日程・受験資格・受験料など、基本的な内容を確認しておきましょう。
■試験日程 データベーススペシャリスト試験は年1回、秋期(10月)に実施されます。従来は春期に行われていましたが、令和2年試験から秋期試験に変更となりました。
■合格発表 合格発表は、およそ2ヶ月後の12月下旬ごろです。発表日にIPAのホームページで公開され、後日、官報に公示されます。
■受験資格 受験資格については制限がなく、年齢や実務経験の有無を問わず受けることができます。
■申込み方法と受験料 受験の申込みはIPAのホームページから行います。必要事項を入力し、受験料の支払い(クレジットカード決済・ペイジー(Pay-easy)による払込み・コンビニ利用による払込み)を行うと、受験票が届きます。受験料は7,500円(税込)です。
■試験地 全国に用意された試験地で受験できます。試験に関する最新の情報は、IPAの公式サイトで確認してください。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
各区分の概要と出題内容
データベーススペシャリスト試験は、午前Ⅰ・午前Ⅱ、午後Ⅰ・午後Ⅱの4区分で試験が進められます。それぞれの区分で出題内容や問題数が異なりますので、把握しておきましょう。
午前Ⅰ試験
午前Ⅰ試験の試験時間は50分で、マークシートによる四肢択一式により30問出題され、全問回答必須です。
■試験時間 9:30~10:20(50分) ■出題形式 四肢択一式 ■出題数 30問 ■回答数 30問
出題内容はデータベースに関する固有の内容ではなく、「情報と経営」「システム監査」など、企業におけるIT技術の活用や運用に関すること、情報処理に関する法律などの知識を問う問題が出題されます。合格の基準は満点の60%で基準点に達しない場合は不合格となり、午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱの回答は採点されません。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 データベーススペシャリスト試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午前Ⅱ試験
午前Ⅱ試験の試験時間は40分で、マークシートによる四肢択一式により25問出題され、全問回答必須です。
■試験時間 10:50~11:30(40分) ■出題形式 四肢択一式 ■出題数 25問 ■回答数 25問
出題内容はデータベース関連の問題が主で、その他、コンピュータシステム、情報セキュリティなどに関する基礎的知識や実装技術が問われます。合格の基準は満点の60%で基準点に達しない場合は不合格となり、午後Ⅰ・午後Ⅱの回答は採点されません。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 データベーススペシャリスト試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午後Ⅰ試験
午前Ⅰ試験の試験時間は90分で、記述式による回答を行います。3問出題され、その中から2問を選択して回答します。
■試験時間 12:30~14:00(90分) ■出題形式 記述式 ■出題数 3問 ■回答数 2問
データベース設計、SQL、DBMS(データベース管理システム)の運用・保守などから出題されます。出題は午前Ⅰ・午前Ⅱのマークシート回答と異なり、長文の問題文を読んで記述式で回答することになるため、時間配分に注意が必要です。合格の基準は満点の60%で基準点に達しない場合は不合格となり、午後Ⅱの回答は採点されません。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 データベーススペシャリスト試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午後Ⅱ試験
午後Ⅱ試験の制限時間は120分で、記述式で回答します。出題数は2問で、うち1問を選択して回答します。
■試験時間 14:30~16:30(120分) ■出題形式 記述式 ■出題数 2問 ■回答数 1問
出題は、実際のシステムを想定したデータベースの情報が提示され、これに関して与えられる設問に回答する方式です。問題は10ページ前後以上にわたる長文となり、提示される構成も複雑で、読解に非常に時間がかかります。豊富な実務経験や高いスキルを問われ、問題を把握して短時間で回答することを求められる、非常に高難度の内容です。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 データベーススペシャリスト試験 【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午前Ⅰ試験の免除について
IPAが主催する応用情報技術者試験・高度試験・支援士試験に合格するか、または高度試験・支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績を収めると、その後2年間、データベーススペシャリスト試験の午前Ⅰ試験が免除されます。
応用情報技術者試験はIT系の幅広い基礎的な知識や技術が問われる資格で、高度試験の前に取得する方も多いでしょう。データベーススペシャリスト受験の前に応用情報技術者試験にも合格していたら、午前Ⅰ試験の免除を活用しましょう。
【参考】:午前Ⅰ試験免除 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験
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データベーススペシャリスト取得のメリットとは
実務経験とスキルが重要視されるIT業界では、「資格をとっても役に立たない」という声もあります。しかし、認知度の高い国家資格であるデータベーススペシャリストは、取得することでさまざまなメリットが考えられます。
実力の証明になり、社内の評価が上がる
データベーススペシャリストを取得することで、高度なデータベースエンジニアとしての能力を持つことを対外的に証明することができます。取得することで所属する会社での評価も上がり、データベースエンジニアとしてより活躍できる案件に携わるきっかけにもなるでしょう。
年収アップが見込める
データベースエンジニアの年収は「マイナビエージェント 職種図鑑」での平均年収は424万円(※2023年5月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から高度SE/ITエンジニアを参考にすると、平均年収778万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、データベースエンジニアの平均年収は一般平均年収と比較した際、調査媒体によってバラつきがあることが分かります。
データベースエンジニアを含むITエンジニアの報酬は実績が重要視される傾向があるため、さらに年収を上げるには、スキルアップを図る方法が効果的です。企業によってはデータベーススペシャリスト資格取得に対して、特別手当や報奨金を出しているところもあります。
【参考】:マイナビエージェント 職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
他の国家資格を受ける際、一部免除になる
データベーススペシャリストを取得すると、2年間他の国家資格を受ける際に試験の一部が免除になります。対象の国家資格には以下のようなものがあります。
・弁理士試験:論文式筆記試験選択科目(理工Ⅴ[情報])が免除 ・技術士試験:第一次試験の専門科目(情報工学部門)が免除 ・ITコーディネータ(ITC)試験:専門スキル特別認定試験の受験が可能(ITコーディネータ試験の一部が免除されたもの)
【参考】:公益社団法人 日本技術士会:第一次試験のよくあるご質問 【参考】:【別表2】 弁理士試験の選択科目が免除される情報処理技術者試験合格者の試験区分 【参考】:ITコーディネータ協会:対象の専門資格一覧(2020.4.1改訂)
有利な条件で転職できる
一般の認知度も高い国家資格であるデータベーススペシャリストを持ってることで、より良い条件での転職ができる可能性が高まると考えられます。また、前項にあるような国家資格も一部免除で受けられるため、併せて取得すればより有利になります。
条件のいい転職先を探すなら、プロの目線で希望に合った企業を提案してくれる転職エージェントの活用をおすすめします。
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データベーススペシャリスト合格のためのコツとは?
データベーススペシャリストを取得するには、データベースエンジニアとしての実務経験を積みながら資格勉強を進めなければなりません。効率よく勉強するためのコツについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
合格にはどれくらいの勉強時間が必要?
データベーススペシャリスト試験に合格するには、データベースエンジニアとして実務経験を積んだ方でも200時間以上の勉強が必要であるとされています。日頃の仕事と並行して勉強するのであれば、半年〜1年はかかることも考えられます。
もちろん個人差はありますので、もっと短くて済む方やより多く必要な方もいるでしょう。どちらにせよ、かなりの勉強時間が必要であることは間違いありません。ひとまず200時間を目安として計画を立てて、勉強の進捗状況により随時スケジュールを変更していくのがおすすめです。
また、データベーススペシャリスト試験は年に1回のみですから、次の試験に間に合わないと思ったら、初めから次の試験に照準を合わせるのも1つの方法です。あるいは、合否を気にせず、試験の雰囲気や実際の問題を把握するために1度受けてみるのも良いかもしれません。
過去問を活用して勉強する
データベーススペシャリスト試験の勉強方法としてまずおすすめなのが、過去問を中心に勉強を進めることです。データベーススペシャリストの試験は高難易度ですが、過去問を解くことでパターンを押さえて得点できる問題もあります。過去問はIPAのホームページに掲載されていますので、積極的に活用しましょう。
スクールや通信講座を活用する
過去問を活用し、各種対策テキストを使って勉強すれば、独学で取得することも可能です。しかし、「もっと効率的に勉強を進めたい」「より短期間で合格したい」という方には、スクールや通信講座の利用をおすすめします。
スクールや通信講座を利用すると、組まれたカリキュラムに従って勉強を進めるため、どういった順番で勉強に手をつけるか悩まなくて済むことが大きなメリットです。
また、分からない部分を講師に確認したり、受験日までのスケジュールを一緒に管理してもらえたりと、さまざまな合格へのサポートが受けられます。
時間配分の感覚を養うことが重要
データベーススペシャリスト試験を高難易度とさせている理由の1つに、時間配分の難しさがあります。午前Ⅰ・午前Ⅱは選択式の問題ですが、それぞれ50分、40分しか試験時間がありません。この40〜50分という時間は、実際に問題を解いていると非常に短く感じられるでしょう。
1問あたり1分30秒程度で次々に回答しなければなりませんので、何度も過去問を解いて短時間で回答できるよう練習を積みましょう。
午後Ⅰ・午後Ⅱは、10ページ前後の長文読解と記述式のため、特に意識せず取り組もうとするとすぐに時間が足りなくなります。こちらも何度も過去問を繰り返して、長文読解の概要の把握や、記述する回答文の要領をつかみつつ、時間配分をよく考えておくことが重要です。
【参考】:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 データベーススペシャリスト試験
高難易度のデータベーススペシャリストにチャレンジしよう
ここまで、データベーススペシャリストの試験内容や難易度、勉強のコツについて解説しました。難易度が高く、取得には時間をかけてじっくりと取り組む必要があることがお分かりいただけたと思います。
簡単に取得できる資格ではありませんが、データベースエンジニアが目指す最高峰クラスの国家資格として、自分のスキルを証明するためにデータベーススペシャリスト試験に挑んでみてはいかがでしょうか。
また、データベーススペシャリストの資格を取得することは、今後のキャリアアップにも大きなメリットとなります。特に、転職を考えている方にはぴったりの資格です。とはいえ、実際にデータベーススペシャリストの資格を活かせる転職先を見つけるのは大変ですよね。
そこでぜひご活用いただきたいのがマイナビIT エージェントです。
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