フルスタックエンジニアは器用貧乏?
フルスタックエンジニアは「スーパーエンジニア」「マルチエンジニア」とも呼ばれ、複数の分野における技術や知識を身につけた能力値の高いエンジニアのことですが、「フルスタックエンジニアはいらない」など、一部では揶揄されてしまうケースがあります。
また、「フルスタックエンジニアは器用貧乏」と言われる側面もあり、多彩なスキルを十分に発揮できていない人もいるようです。ここでは、フルスタックエンジニアのネガティブなイメージについて掘り下げ、器用貧乏とならないための方法について解説します。
そもそも器用貧乏とは
「器用」は大抵誉め言葉で使用され、「器用だね」と言われると悪い気がしませんが、「器用貧乏」という言葉には「器用だから何でもこなせるけれども、1つのことを極めて大成することができない」というネガティブな意味が込められています。
何でもできてしまうが故に便利屋として良いように利用されてしまい、本来自分がしたいことができないような人を器用貧乏と言います。何をやってもそこそこできるけれど、中途半端な印象があり結果として損をすることもあります。
器用貧乏と言われるフルスタックエンジニアたち
一言でフルスタックエンジニアといっても、イメージが湧きにくい方もいるでしょう。Webサービスの開発で考えると、少なくともフロントエンド・バックエンド・インフラの3つの領域のエンジニアが必要ですが、それらを1人でこなせるのがフルスタックエンジニアです。
さらに言えば、iOS開発・Android開発ができるエンジニアも必要ですが、フルスタックエンジニアの中には、この5つすべてに対応できる器用なエンジニアがいます。それにも関わらず、他のエンジニアと大して給料が変わらなかったり、プロジェクトで不足する要員の穴埋めをさせられたりする人もいます。
このような状況が「フルスタックエンジニア=器用貧乏」と捉えられ、フルスタックエンジニアへのマイナスなイメージの要因にもなっています。本来プラスとなる能力が器用貧乏のレッテルを貼られてしまうのは、そもそも現在の仕事内容が自分に合っていなかったり、後ほど解説する性格的な特徴に起因していたりもします。
フルスタックエンジニアとして活躍するには、自分に合う企業探しが重要です。器用貧乏に傾きやすい性格の特徴については後述して解説します。
【参考】:マイナビIT エージェント
フルスタックエンジニアの仕事内容
フルスタックエンジニアが担当するのは、以下のような領域が挙げられます。
・フロントエンド開発 ・バックエンド開発 ・モバイルアプリ開発 ・インフラ周り
このように、本来システム開発では上記を専門とするそれぞれのエンジニアを配置しますが、フルスタックエンジニアにはこれら全てを一任されます。
フルスタックエンジニアが誕生した背景
フルスタックエンジニアは元々海外から始まり、日本でも認知されるようになったのは最近のことです。フルスタックエンジニアが求められる場面は、新しく事業やサービスを開始する段階が多く、クラウドの普及によってエンジニア1人でも開発が可能になってきています。
特にベンチャー企業やスタートアップ企業では、コスト削減や連携ミスを防ぐ目的もあり、オールマイティな能力を持つフルスタックエンジニアは魅力的な人材と言えるでしょう。
フルスタックエンジニアに必要なスキル
フルスタックエンジニアに求められるスキルは以下の通りです。
・プログラミングスキル 要件定義からシステム運用まで一通りこなすため、プログラミングスキルは必要不可欠です。
・実務経験 実務経験が重視される職種なので、知識のみならずこれまで培ってきた実務での経験も重要視されます。
・OSに関する知識 Windows系のシステムもあれば、Linux系・MacOS・Android OSでの開発もあるので、それぞれのOSに関する知識が必要です。
・クラウドに関する知識 AWSやAzureなどのクラウドに関する知識も欠かせません。
・データベースに関する知識 フロントエンドのみならず、バックエンドも担当しなければならないため、データベースに関する知識は必須です。
・コミュニケーションスキル 各工程間の調整をし、時にはプロジェクトリーダーやPMとして顧客と折衝することが求められます。
フルスタックエンジニアになるためのロードマップ
フルスタックエンジニアには、大前提としてプログラミングスキルが必要です。ITエンジニアは通常、プログラマーとしてシステム開発の下流工程から仕事を始めます。その中でプログラミングスキルを磨いていきましょう。
プログラミングをこなすだけではなく、クラウドやOSに関する知識、データベースに関する知識も積極的に吸収していかなければなりません。基本的なスキルを身に付けながら、周辺知識や技術についても理解を深める必要があります。
下流工程で経験を積んだら、要件定義や設計などの上流工程も担当するようになります。クライアントともやり取りをしなければならないので、コミュニケーションスキルも磨かれるでしょう。
これで一応はシステム開発の全行程を経験したことになりますが、フルスタックエンジニアには専門性も求められます。基礎力を付けた後は特定の専門分野を深めなければなりません。クラウドやAIなど最先端の分野は特に需要が高いでしょう。
フルスタックエンジニアと自称できるレベルに達しても、安心はできません。複数の分野で高いスキルを保ち続けるのは辛いと感じることもあるかもしれませんが、最新知識や最新技術に疎いエンジニアは市場価値が下がるため、継続的な学習が必要です。
器用貧乏な人の特徴
全てのフルスタックエンジニアが器用貧乏というわけではありませんが、器用貧乏になりやすい性格の特徴はあります。では、どのようなタイプの人が器用貧乏に陥りやすいのでしょうか。以下の項目にまとめたので、ぜひ参考にしてください。
飽き性で、1つのことに集中できない
好奇心が旺盛で様々なことにチャレンジしますが、ある程度慣れたり分かってきたりすると飽きてしまい、極めるまでは続かない人がいます。物知りで何でも器用にこなすため、周りからは重宝されますが、熱しやすく冷めやすいのが特徴です。場合によっては器用貧乏となり得ることがあります。
人から頼まれると断れない
器用貧乏な人は何でもそつなくこなせるため、周囲の人からの頼まれごとが多くなりがちです。NOと言えず、ついつい何でも引き受けてしまいますが、それなりにこなせるのも特徴です。
その結果、また頼まれごとが増えるという悪循環に陥りやすくなり、器用故に他人に頼まず自分でやってしまうため、本来よりも仕事量が増えてしまいます。
競争意識が低い
他人と張り合うという意識があまりないため、そこそこの出来栄えで妥協・満足してしまいます。100点満点を目指さず80点で満足する傾向にあるため、何かを極めるということがあまりありません。競争意識が低く平和主義の反面、出世欲も少ないので、出世ルートから逸れやすく便利屋的に利用されてしまいがちです。
器用貧乏を許容するのも1つの生き方
上記のような特徴があり、器用貧乏だったとしてもそれは決して悪いことではありません。企業にとっても組織にとっても大切な人材です。器用貧乏かもしれないと気になる方はもう1度自分を見つめ直し、どういう人材が求められるのか、出世には何が必要なのかなど、バランスを取ることを考えてみましょう。
無理をして自分を変える必要はなく、重要なのは環境選びです。自分に合った企業に出会うことで、オールマイティに活躍できるスキルを存分に発揮することができます。
フルスタックエンジニアのデメリット
独力でシステムの開発ができるフルスタックエンジニアは、憧れのエンジニアでもありますが、メリットばかりではありません。フルスタックエンジニアを目指す方は、デメリットも知った上で目標設定をしましょう。
仕事の量が増える
仕事の幅が広いため、求められることが多くなり、結果として業務量が増えやすくなります。プログラマーならプログラミングに専念できますが、フルスタックエンジニアはミドルウェア・インフラ・クラウドなどの業務が加わるため、結果として多忙を余儀なくされることもあります。
知識の更新が大変
IT技術の進化は日進月歩です。常に有する知識をアップデートしておかなければ、ついていけなくなります。担当範囲が広がることで、それに比例してアップデートすべきことも増加します。多忙な中、そうした勉強や情報収集も日々しなければならず、さらにプライベートの時間が減ってしまうケースもあります。
思うように年収が上がらないことも
フルスタックエンジニアの求人は、ベンチャー系やスタートアップ系企業が中心です。こうした企業は大企業と比較して賃金水準が低めの給与体系が設けられていることが多く、期待しているほどの給与が得られないことがあります。
ITエンジニアは転職を繰り返すことで、現在よりも良い環境を得られやすい業種なので、年収に悩む場合は思い切って転職してみるのも次なるステップの1つです。
【参考】:マイナビIT エージェント
フルスタックエンジニアのメリット
フルスタックエンジニアになる上でのデメリットについて理解できましたが、ここでは、エンジニア側の目線で、フルスタックエンジニアになるメリットを紹介します。
開発プロジェクトにおいて、アサインされやすくなる
オールマイティであることから、プロジェクトにおいて重宝され、メンバーとしてアサインされる確率が高まります。企業においてはとても重要な人材・ポジションであるため、その分高収入を得られる可能性が高くなります。
年収がアップする可能性が高い
特にベンチャー企業やスタートアップ企業では、複数の工程を担当できるエンジニアを求めており、フルスタックエンジニアはそうした企業への転職の際に有利です。自分のスキルや実績を交渉の材料として提示できるため、高収入を目指しやすくなります。
豊富なキャリアパスを得られる
プロジェクト全体を俯瞰できるため、プロジェクトマネージャーやITコンサルタントへの近道となります。また、CIOやCTOといった経営層へのステップアップも可能な立ち位置です。フルスタックエンジニアはコミュニケーションスキルも備わっているため、マネジメント能力が必要な役職にもぴったりです。
独力でシステム開発ができる
独力でシステムの開発が行えるため、フリーランスでの活躍や独立の可能性が高まります。ある程度実績を積むことで、自由な働き方ができる道を選択することもできます。多彩な能力があるため、様々なプロジェクトや案件を受けることが可能です。
フルスタックエンジニアの年収と専門性
フルスタックエンジニアが器用貧乏と言われる理由の1つに、高年収を得られにくいのでは?ということが考えられます。求人情報などを見ると、フルスタックエンジニアの年収は、他のエンジニアよりは高めですが、際立って高いわけではありません。その理由について探ってみましょう。
フルスタックエンジニアの年収
現状「フルスタックエンジニア」と限定している求人情報はなかなか出てきません。年収については他のエンジニア職の年収を参考にしてみましょう。以下に、システムエンジニア・サーバーエンジニア ・社内システム企画・社内SEの平均年収を記載します。
・システムエンジニア:443万円 ・サーバーエンジニア:465万円 ・社内システム企画・社内SE:516万円
(※2023年2月執筆時点)
【参考】:IT・インターネット・通信 年収ランキング:マイナビIT エージェント
フルスタックエンジニアの担当領域は、上記に挙げた職種にも含まれるため、各フェーズに担当者を配置するよりも、フルスタックエンジニアを1人雇った方が企業としては助かります。明確な定義のない職種の年収は企業によって大きく異なりますが、比較的に他の専門職種よりも高い年収を期待できます。
際立って高い年収を目指すなら、資格取得や企業選びが重要になります。
予算の潤沢な大規模開発では専門家が求められる
フルスタックエンジニアの求人は、大手企業ではあまり見かけません。プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーの求人はあっても、大手企業においてフルスタックエンジニアとしての求人を見かけないのは、分業制が確立していることや、専門エンジニアを採用した方が全体の効率が良いと考えられます。
大企業が開発するシステムは大規模システムが中心になります。求められる品質要件が高いため、スケーラビリティやセキュリティ要件は一層厳しくなります。
フルスタックエンジニアよりも各分野において専門性の高いエンジニアを束ねた方が、より高品質のシステムを作りやすいのです。また、大企業は予算も潤沢にあるため、その分専門性の高いエンジニアを採用できるのです。
フルスタックエンジニアの需要と将来性
フルスタックエンジニアは1人で多くの分野の作業をこなせるため、企業はフルスタックエンジニアを雇うことで効率アップやコスト削減を実現することができます。
大きな企業ではそれぞれの分野に専門エンジニアを置いて質の高い開発を目指す傾向が強いですが、予算が潤沢でないベンチャー企業やスタートアップ企業、中小企業などではフルスタックエンジニアの存在は大きな助けとなります。
IT業界は現在も人手不足が大きな課題ですが、これからの成長に伴ってさらに多くの人材が必要となります。最近では日本でもIT系のベンチャー企業が増えており、フルスタックエンジニアを必要とする企業はこれからも増えていくと予想されます。
高単価のフルスタックエンジニアを目指すには
フルスタックエンジニアが器用貧乏と言われる理由について理解できました。全てのフルスタックエンジニアが器用貧乏というわけではなく、フルスタックエンジニアとして活躍し、高収入を得ている人もいます。
では、器用貧乏と言われず、フルスタックエンジニアで高年収を得る秘訣は何なのでしょうか?
誰にも負けない得意分野を1つ以上持つ
フルスタックエンジニアとして活躍するためには、何か1つ得意分野を作っておくことが重要です。例えば、フロントエンド開発に強いフルスタックエンジニアであれば、大規模プロジェクトにおいて、高単価で採用される可能性があります。
さらに、バックエンド開発やインフラ開発ができるとなれば、リーダーとして採用され、さらに好条件を提示される可能性が高まります。中途半端ではなく、何か1つに秀でたフルスタックエンジニアを目指すことを頭に入れましょう。
フルスタックエンジニアから先のキャリアパスを描くことが重要
フルスタックエンジニアになることは憧れであるかもしれませんが、その先のキャリアパスを描いておくことも重要です。
幸い、フルスタックエンジニアはキャリアアップを図りやすい立ち位置にあります。プロジェクトマネージャーなどのマネジメント系・CIO・CTIなどの経営系・ITコンサルタントなど、様々な可能性があります。フルスタックエンシニアのハードルは決して低くはありませんが、その先も見据えた上で目的意識を持ってチャレンジしましょう。
キャリアアップのための転職や、未経験からフルスタックエンジニアを目指すには企業選びが肝心です。数多い求人から自分に合う企業を探すのは困難です。
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