フルスタックエンジニアを目指す前に
フルスタックエンジニアはスーパーエンジニアとも呼ばれ、ITエンジニアの職種の壁を超え、何役もこなせるエンジニアを指します。他のIT職種と比べて高年収が期待でき、目指している方も少なくないでしょう。
では、どうすればフルスタックエンジニアになれるのか、その方法やロードマップをご紹介します。また、フルスタックエンジニアになるために、取得しておくべき資格なども解説していきます。現在就職や転職を検討中の方はぜひ参考にしてください。
フルスタックエンジニアになるための心構え
まず、フルスタックエンジニアを目指す理由は何ですか?高年収を得たい・ステイタスを得たいなどの理由だけでは、フルスタックエンジニアを目指す動機としては弱く、挫折する可能性があります。プロのエンジニアを目指すなら、しっかり目標を定め、それに向かって粉骨砕身努力する気構え・心構えが必要です。
フルスタックエンジニアの目標イメージを明確に持つ
フルスタックエンジニアは万能エンジニアと言われますが、全ての分野を担当できるわけではありません。それぞれ得意分野、活躍分野があります。Web系の開発なのか、AI系の開発なのか、あるいはビッグデータなのか、自身の興味や適性なども考えながら、目指すフルスタックエンジニアの目標イメージを明確に持つことが必要です。
フルスタックエンジニアになるための3つのロードマップ
フルスタックエンジニアへの具体的な目標が定まったら、どのような手段・ステップを経て目標に向かうのかを考えてみましょう。大きく分けると次の3つの道が考えられ、それぞれ一長一短はありますが、自身に最も相応しい方法を選択してください。
下積みから始めてステップアップしていく
多くのエンジニアは下積み時代を経験します。まず、ITベンダーに就職したとしましょう。最初に教育を兼ねてプログラマーからスタートします。ある程度慣れ、開発プロジェクトへの参加を通じて、システム開発について学びます。設計工程を担当し、人によっては、運用部門やインフラ系の部門を担当する人もいます。
ジョブローテーションを通じて適性を見極めながらステップアップし、要件定義などの上流工程を経験後にプロジェクトリーダーになる人もいます。複数のシステム開発工程や領域を担当していく中で、次第にフルスタックエンジニアへと近づいていくのです。
経験が重視される世界なので、これが最もオーソドックスな道なのです。もちろん、フルスタックエンジニアを目指すという強い意志は持ち続ける必要があることは言うまでもありません。
独力でシステムプロダクトを開発する
クラウドが普及した今日は、独力でシステムプロダクトを作るというのが、最も現実的な近道です。クラウド技術の進展によって、自らサーバ構築やネットワーク構築を行う必要や手間を省くことができ、従来よりもプロダクトを開発しやすくなっています。
きちんとした将来設計を行い、明確な目標を持って、プロダクトを作っていきましょう。これによって、システム開発の全ての工程を経験することができます。プロダクトを幾つか開発しながら実務を経験し、スキルを磨くことができます。
【参考】:AWS
教育機会を利用して資格を身に付ける
基礎がないのにいきなりプロジェクトに参画したり、自らプロダクト開発をしたりするのは無理だと考える人もいるでしょう。専門学校や大学などでプログラミングやITの基礎について学んだ方であれば、前記のような選択も可能ですが、そうではない人にとっては、まずは基本が大切です。
今は、フルスタックエンジニアを目指す人に向けたオンライン講座などもありますので、そういった講座を利用して、資格取得を目指すのも1つの方法です。
フルスタックエンジニアの仕事内容
フルスタックエンジニアは複数の分野における技術や知識を身につけたエンジニアのことですが、具体的な仕事内容はどういったことをするのでしょうか?
そもそもフルスタックエンジニアという明確な定義はなく、その資格要件もありません。世間的にはまだ新しい概念で、「フルスタックエンジニア=〇〇な仕事をする」といった決まりはなく、オールマイティにエンジニアの業務ができる人のことを指します。
フルスタックエンジニアが担当する領域
通常システム開発において、プログラマー ・システムエンジニア・インフラエンジニアなど、各工程においてそれぞれ担当するエンジニアがいますが、それらのフェーズを全て1人で担当するのがフルスタックエンジニアです。具体的には、以下のような領域を担当します。
・フロントエンド開発 ・バックエンド開発 ・モバイルアプリ開発 ・インフラ周り
システムの要件定義をし、プログラムのコードを書き、Webサイトのみならずアプリに落とし込む技術、それに伴うインフラの整備なども行います。
フルスタックエンジニアの仕事内容はとても多岐に渡り、そして重要なポジションでもあるため、責任感を伴う仕事です。また、エンジニアとしてかなり能力が高くないと務まらない職種でもあります。
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フルスタックエンジニアの年収
前述の通り、フルスタックエンジニアには明確な定義がないため「フルスタックエンジニア」と限定した求人情報がなかなか出てきません。年収については他のエンジニア職の年収を参考に算出してみましょう。以下に、システムエンジニア・サーバーエンジニア ・社内システム企画・社内SEの平均年収を記載します。
システムエンジニア:443万円 サーバーエンジニア:465万円 社内システム企画・社内SE:516万円
(※2023年2月執筆時点)
【参考】:IT・インターネット・通信 年収ランキング:マイナビIT エージェント
フルスタックエンジニアの担当領域は、上記に挙げた職種にも含まれます。フルスタックエンジニアは企業によって年収の振れ幅が大きいと考えられるので、具体的な数字を出すのは難しいですが、他の専門職種と比較しても高い年収が期待できます。
【参考】:マイナビIT エージェント
フルスタックエンジニアのメリットとデメリット
このように、フルスタックエンジニアには、高年収が期待できるなどのメリットもありますが、「フルスタックエンジニアはいらない」「器用貧乏」と言われてしまうこともあります。ここではフルスタックエンジニアのメリットとデメリットについて解説します。
フルスタックエンジニアのメリット
フルスタックエンジニアという言葉はベンチャー企業やスタートアップ企業が多い海外で生まれたもので、日本でもそのような新しい企業や中小企業で高い需要があります。若い企業や中小企業では、限られた人員とコストで高い生産性を実現しなければならないためです。
フルスタックエンジニアはトラブル対応なども含めシステム開発のあらゆる場面に対応できるため、複数のエンジニア間でのやり取りなどを省き効率的に仕事を進めることができます。
また、フルスタックエンジニアになると仕事の選択肢も増えます。「フルスタックエンジニア」という名前で募集している求人は少ないかもしれませんが、どの工程も担当できるのでより良い待遇の仕事を選ぶ機会が増えます。高年収が期待できる理由の1つでもあります。
フルスタックエンジニアのデメリット
フルスタックエンジニアになるには複数の専門領域を持つ必要がありますが、複数の分野における高度なスキルを習得し、それを維持するのは大変なことです。特にIT企業は変化が激しいので、一度習得したらそれで終わりという訳にはいきません。
フルスタックエンジニアと名乗れるだけのスキルを持つまでのは何年もかかりますし、その後も継続して努力する気力や根気がないと、どの分野も中途半端になり、結果として「器用貧乏」と言われてしまうような状態に陥ってしまうかもしれません。
ネットなどでは、高度なスキルや深い知識がなくフルスタックエンジニアになりきれていない状態を「フルスタックエンジニア 笑」と表現することもあります。幅広い業務をこなしながら、スキル磨きも怠らないというストイックな姿勢が必要となります。
フルスタックエンジニアに必要となるスキルや資格
フルスタックエンジニアを目指す方法は分かりましたが、フルスタックエンジニアになるためには、どのようなスキルが必要で、どのような資格を取得すれば良いのでしょうか?
市場が求めるフルスタックエンジニアになるためには、幅広い技術や幅広い知識が不可欠です。また複数の領域の経験を持っていると有利です。
フルスタックエンジニアに必要なスキル
フルスタックエンジニアはスーパーエンジニアと呼ばれるように、多くのスキルが求められます。これからフルスタックエンジニアに必要とされるスキルについて、1つずつ解説していきます。
- プログラミングスキル
システム開発に関わる以上、フルスタックエンジニアにはプログラミング知識とその実務経験は必須と考えてください。フルスタックエンジニアは要件定義からシステム運用までを一通りこなせるエンジニアです。開発工程も担当しますので、最低限プログラミングスキルと実務経験が欠かせません。
また、システムテストやシステムの障害においては、プログラミング経験があると障害の切り分け、障害の原因究明、プログラムの修正などが迅速に行えるというメリットもあります
2.実務経験
システムは学んだ知識だけでは対応ができないケースもあり、その時に必要になるのは経験値です。実務経験を重ねることで、教科書だけでは学べないことを学ぶことが往々にしてあります。
そのため、しっかり実務経験を積むことが大事です。
3.Webに関する知識
今やユーザーの目に触れるシステムの多くはWebです。フロントエンドとも称されるWebは、そのデザインやGUIによってある程度評価が決まります。
実際に、バックエンドの仕組みが同じでも、Webの出来栄えによってユーザーの評価は180度変わります。これからのフルスタックエンジニアはWebに明るく、Webに強いことがさらに求められるでしょう。
4.OSに関する知識
フルスタックエンジニアが担当するシステム開発には、Windows系もあれば、Linux系やiOSやAndoroidOS系の開発もあります。プログラミング言語であるJava自体は仮想マシン上で動作し、基本的にOSには左右されない言語ですが、コマンドの操作はOSごとに異なり、サーバ設定やインストールなどもOSごとに異なっています。
あらゆるOSの下でのシステム開発を想定すると、フルスタックエンジニアにとってはOSに関する知識が必須といえます。
5.クラウドに関する知識
最近のシステム開発ではクラウドの利用が多くを占めています。クラウドサービスとしてはAWSやAzureなどが知られていますが、クラウド利用についての知識を持っていなければ、顧客に対してシステムの提案ができません。
フルスタックエンジニアを目指すには、クラウドに関する知識は大前提といって過言ではありません。
6.データベースに関する知識
フルスタックエンジニアはWebなどのフロントエンドに限らず、バックエンド系も知っていなければなりません。したがって、バックエンドにおいては必須となるデータベースに関する知識が必要です。
7.コミュニケーションスキル
フルスタックエンジニアは他の人の手を借りず、独力でシステム開発ができる人材のため、コミュニケーションスキルはさほど必要ないと思われがちですが、とても重要な要素です。
各工程間の調整や橋渡しだけではなく、時にはプロジェクトリーダーやPMを担当、あるいは兼務することもあります。また、上層部や関係部署、ユーザー(顧客)との折衝が必要となるケースもあります。したがって、コミュニケーションスキルはフルスタックエンジニアにとっては欠かせない重要なスキルの1つです。
フルスタックエンジニアが取得しておきたい資格
フルスタックエンジニアの職種の定義は定まっていないため、必要な資格というものはありません。資格よりも実践力が問われる世界です。
とはいえ、資格はスキルを有しているかどうかの客観的判断材料になります。自分のスキルの証明ができるため積極的に資格取得に努めましょう。
ITストラテジスト試験(ST)
ITストラテジスト試験は、情報処理推進機構(IPA)主催の国家資格です。情報技術を用いて事業改革を行い、競争優位を獲得するための戦略を練り、その策定や提案、推進できる人材をその対象者像としています。企業のCIOやCTO、或いはITコンサルタントを目指す方に適した資格です。
試験の合格率は15.3%と難易度はかなり高めですが、フルスタックエンジニア以外でも、取得することでさまざまなキャリアパスを描くことができますので、取得しておきたい資格の1つです。
【参考】:ITストラテジスト試験(ST) ~ 経営とITを結びつける戦略家 ~
システムアーキテクト試験(SA)
システムアーキテクト試験も、同じく情報処理推進機構(IPA)主催の国家資格です。情報システム戦略の具現化に向けた業務モデルの検討を行い、情報システムの要件定義、システム開発の主導などができる人材を対象者像としています。システムアーキテクト試験の合格率は15.3%で、こちらも大変難易度の高い資格です。
【参考】:システムアーキテクト試験(SA) ~ 業務とITのグランドデザイナー ~
プロジェクトマネージャ試験(PM)
こちらも情報処理推進機構(IPA)主催の国家資格です。その名の通り、情報システム開発プロジェクトの全体責任者を担える人材を対象者像としています。システム開発に関する知識や経験に加え、必要スキルとしてマネジメントスキルが求められます。
合格率も令和3年度秋期においては14%前後と非常に難易度の高い資格と言えますが、フルスタックエンジニアを目指す方にはぜひ最初に取得しておいてほしい資格です。転職時などにも大きなアドバンテージになります。
【参考】:プロジェクトマネージャ試験(PM)
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フルスタックエンジニアのキャリアパス
フルスタックエンジニアは人気の高い魅力的な職種ですが、望んですぐになれる職種ではありません。基本的には以下のようなキャリアパスを経る必要があります。
1.エンジニアとして、システム開発の4つのステップ(要件定義・設計・開発・運用)を経験する 2.開発においてはフロントエンド開発・バックエンド開発、インフラ、アプリケーション開発を経験する 3.別分野、別領域のスキルを習得する 4.幅広いスキルの習得に努め、フルスタックエンジニアとなる
ここまでのキャリアを積むには、最短でも3年から、人によっては10年ほどの期間が必要です。
また、フルスタックエンジニアとなった後のキャリアパスも想定しておくことをおすすめします。フルスタックエンジニアとしてスペシャリストを目指す道以外に、独立やITコンサルタントを目指すこともできるでしょう。企業内であれば、CIOやCTOという可能性もあります。
フルスタックエンジニアは最終目標ではなく、あなたの夢に向かう通過点と考え、より大きな目標を目指して自己研鑽に励んでください。
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フルスタックエンジニアは、システム開発におけるあらゆる分野を担当するエンジニアです。人手不足が叫ばれているIT業界において、大変貴重な人材であると言えます。そんなフルスタックエンジニアを目指して転職を検討している場合、定義が明確ではない職種の求人をどのように探せばいいのか悩まれることと思います。
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