システム設計とは
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システムエンジニアの主な仕事は、システムの開発です。システム開発とは、企業や組織が抱える課題を解決するために、コンピュータシステムを構築する一連のプロセスです。
具体的には、業務効率化・データ管理・顧客サービスの向上など、様々な目的に合わせてソフトウェアやハードウェアを組み合わせて新しいシステムを構築したり、既存のシステムを改修したりすることを指します。
システム設計とは、このシステム開発の一環として、開発するシステムの仕様や構造を計画し、全体像を描く工程です。この工程を通じて、要件定義を基に設計を行い、スムーズな開発と高品質なシステムの実現を目指します。
この記事は、システムエンジニアを目指す方に向けて、システム開発の中で非常に重要な部分となる「システム設計」について、理解を深めてもらうことを目的としています。
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システム設計とソフトウェア設計の違い
システム設計に似た語句として「ソフトウェア設計」がありますが、両者は何が違うのでしょうか?主な違いは、設計の対象や範囲、目的などです。以下にそれぞれの概要をまとめてみました。
■ システム設計 システムはソフトウェアとハードウェアを一体的に組み合わせ、人によって操作できる状態にしたものです。システム設計は、システム化する業務のフローを理解し、システムに必要な機能や仕様を決定し、仕様書や設計書の形にまとめていく工程です。主にシステムエンジニア(SE)が担当します。
■ ソフトウェア設計 ソフトウェアは、コンピュータ上で機能するプログラムで目には見えません。ソフトウェア設計とは開発するソフトウェアに実装する機能を実現するための、具体的な構造を決める工程です。ソフトウェアエンジニアが設計からテストまでを担当します。
他に機械設計という仕事もありますが、こちらはあくまでも機械・ハードウェアのメカニズム設計であり、ソフトウェア設計とは異なります。
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システム設計の流れ
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システム設計は、システム開発においてシステムの全体像を設計する重要な工程です。システム設計によってシステムの機能や性能、構成などが具体的に決まり、実際の開発へと進んでいきます。まずはシステム設計の流れについて、考え方を理解しましょう。
以下、システム開発の参考図書を挙げましたが、この中にはシステム設計や開発の事例が多く掲載されていますので、ぜひ目を通してみましょう。
【参考】:高信頼ソフトウェア領域 高信頼化のための手法 | IPA (独立行政法人 情報処理推進機構)
要件定義
要件定義とは、システムに何を実現させたいのかを具体的に定義する工程です。顧客やユーザとの密なコミュニケーションを通じて、システムの目的、機能、性能、制約条件などを明確にする工程です。
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基本設計(外部設計)
基本設計では、要件定義で定めた機能を、システムの外部から見た視点で設計します。ユーザがどのようにシステムとやり取りするのか、システムの全体像を具体的に描きます。画面設計、帳票設計、機能設計などが行われ、「外部設計」とも言います。
詳細設計(内部設計)
詳細設計は、システムの内部構造を設計します。外部設計で定めた機能を、どのように実現するかを具体的に設計します。使用するプログラミング言語やフレームワークはここで決定され、プログラマーがプログラムを作成するための詳細な手順書となります。プログラムロジック設計、データベース設計などが含まれます。
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その他
詳細設計以降は、プログラム作成(実装)、プログラム単位の単体テスト、結合テスト、システムテスト、受け入れテストと続き、運用移行となります。
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システム設計の重要性
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システム設計は、システム開発において建物の設計図のような役割を果たします。この設計の質によって、システムの品質や開発期間、コスト、さらには運用後の安定性まで大きく左右されます。システム設計が重要な理由を、以下に詳しく解説します。
品質向上
設計段階で問題点を洗い出し、修正することでバグが減少して完成度の高いシステムを実現できます。また要求仕様を正確に反映することで、ユーザが求める機能の確実な実装ができ、さらに、システムの負荷を考慮した設計によって安定した性能を実現できます。
開発期間の短縮
詳細な設計書に基づいて、開発者は明確な目標を持って作業を進めることができ、開発期間を短縮できます。また、設計段階で問題点を洗い出しておくことで、後工程での手戻りを減らし、開発期間の遅延を防げます。
コスト削減
無駄な機能を排除して必要な機能に絞り込むことで、開発の全体コストを抑えられます。また設計段階での誤りを減らすことにより、後工程での修正コストの削減にも繋がります。このように限られた予算の中で、効率的なシステム開発を進める上でもシステム設計は重要です。
円滑なコミュニケーション
システムの設計書をプロジェクトメンバーや関係者が共有することで、全員のベクトルが一致して、開発システムに関する共通認識を持つことができます。また設計書を基に、開発者間での意思疎通が円滑になります。
運用・保守の効率化
システムの設計書は、システムの構造を理解するための重要な資料となり、問題が発生した場合、設計書を参考に原因を特定し、迅速に対応することができます。このようにシステム設計書は、開発のみならず、運用や保守フェイズまで役に立ちます。
システム設計のポイント
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システム設計は、システム開発の成否を大きく左右する重要な工程ですが、精度の高いシステム設計を行うためには、以下のポイントを意識することが重要です。
ユーザ視点での設計
開発するシステムの対象となるユーザのニーズを正確に把握し、ユーザが何をしたいのか、どのような情報が必要なのかを深く理解し、システムに反映させます。また、直感的な操作で目的の作業が完了できるように、UI/UX※設計に力を入れることが重要です。
※UI(User Interface) と UX(User Experience) は、Webサイトやアプリなどのデジタル製品に関わる重要な概念で、UIは見た目や操作性、UXはシステムによって得られる体験を意味します。
拡張性と保守性の考慮
システムの規模が拡大したり、機能が追加されたりしても柔軟に対応できるよう、拡張性を考慮した設計を行います。また、システムの構造をシンプルにし、ドキュメントを整備することで、後の保守・運用を容易にします。
機能の明確化
全ての機能を盛り込むのではなく、本当に必要な機能に絞り込むことで、開発期間の短縮やコスト削減につながります。さらに各機能が連携し、スムーズな処理が実行されるよう、設計を行います。
性能の確保
大量のデータを処理する場合においても、システムが遅延なく動作するように、性能を考慮した設計を行います。またシステムに負荷がかかっても、システムが安定して動作するように、負荷分散やエラー処理などを考慮します。
セキュリティ対策
システムが取り扱う重要なデータを保護するため、情報漏洩を防ぐ適切なセキュリティ対策を施すとともに、不正なアクセスや侵入を許さない、堅牢な不正アクセス対策を講じます。
例えば、オンラインショッピングシステムでは、SSL/TLSによる通信の暗号化や、不正アクセスを防ぐファイアウォールの導入が必須です。
コストの最適化
機能の優先順位付けを行い、必要最低限の機能でシステムを構築し、開発コストの低減を図ります。また運用コストにも配慮し、システムの運用に必要なリソースの無駄をなくします。
ドキュメントの整備
システムの構造や機能を詳細に記述した設計書を作成し、システムの使用方法を分かりやすく説明したマニュアルを作成します。
その他
顧客との密なコミュニケーションを取りながら、柔軟に設計の変更ができる、アジャイル開発の手法適用を検討しましょう。また、新技術の導入によるシステム開発の効率化、品質向上にもチャレンジしてみましょう。
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システムエンジニアの年収
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ここでは、システム設計を担うシステムエンジニアの年収を見てみましょう。システムエンジニアになると、どの程度の年収が得られるのでしょうか。
一般的なシステムエンジニアの平均年収は「マイナビエージェント職種図鑑」によると、431万円(※2024年11月執筆時点)と算出されています。また、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」における「エンジニア/プログラマ」の平均年収を参考にすると、592万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円ですので、システムエンジニアの平均年収は一般の年収よりも、やや高めであると言えます。
システムエンジニアのキャリアパスは多岐にわたり、インフラエンジニア、Webエンジニア、セキュリティエンジニアなどの特定の分野に特化する職種があります。
また、プロジェクトマネージャーやシステムコンサルタントなど、顧客との折衝や企画立案を担う職種も視野に入り、高年収を期待できます。将来像を明確にし、システムエンジニアを経験した上でキャリアアップを図っていきましょう。
【参考】:マイナビエージェント職種図鑑/システムエンジニア ※【平均年収 調査対象者】2019年12月~2020年5月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
システム設計に関する学習法とおすすめの資格
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システム設計を学ぶ方法は多岐にわたりますが、ここでは書籍による学習、オンライン学習、資格取得を目指した学習法について紹介します。
書籍による学習
システム設計について書籍で学ぶことは、体系的な知識の習得、実践的なノウハウの習得など、多くのメリットがあります。また、自分のペースで学習を進められ、1度購入すれば何度も繰り返し学習できる点もおすすめです。ここでは、初心者向けにおすすめの書籍を2冊紹介します。
■ 1週間でシステム開発の基礎が学べる本 本書 は、システム開発の全体像を短期間で把握したい方におすすめの1冊です。IT関連書で多数の実績を持つ著者が、発注者と受注者、双方の視点から分かりやすく解説しています。図や表を多用し、実務でよく使われる用語や概念も解説されており、初心者に分かりやすい構成になっています。
▪著者:増井 敏克 ▪ページ数:272ページ ▪出版社:インプレス ▪発売日:2023年6月21日
【参考】:1週間でシステム開発の基礎が学べる本
■ この1冊ですべてわかる 新版 SEの基本 システムエンジニアを目指す方、またはSEとしての基礎知識を深めたい方におすすめの1冊です。本書は2009年の初版刊行以来、多くの読者から支持され続けているロングセラーで、2022年に最新情報にアップデートされた新版が発売されました。
システム設計、開発、プロジェクト管理など、SEとして必要な幅広い知識を体系的に学ぶことができます。
▪著者:山田隆太 ▪ページ数:417ページ ▪出版社:日本実業出版社 ▪発売日:2022年2月28日
【参考】:この1冊ですべてわかる 新版 SEの基本
オンライン講座による学習
参考者やテキストによる勉強が苦手な方には、オンライン学習がおすすめです。スマホやタブレットからアクセス可能なため、移動時間などのスキマ時間にも学習が可能です。オンライン学習で人気のUdemyから、ソフトウェア開発における超初心者向けのコースを紹介します。
Udemyの「エンジニアとして活躍するための知識・スキルを明確化!【現場を知る】」 は、システム開発の基礎をゼロから学びたい方におすすめしたい内容です。
システム開発の全体像を把握できるように構成されており、各工程(要件定義、設計、開発、テストなど)の詳細、プログラミングの基礎、バージョン管理、チーム開発、デバッグ、その他、エンジニアとして必要なスキルを学べます。
【参考】:【超初心者向け】【システム開発の流れから学ぶ】エンジニアとして活躍するための知識・スキルを明確化!【現場を知る】
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関連資格を取得する
システム開発関連の資格取得を目指した学習は強くおすすめします。資格取得という目標が明確であり、学習成果は試験合格という形で確認でき、さらに取得した資格はスキル証明として有効です。
システムエンジニアを目指す方におすすめしたい資格を難易度別に3つ挙げます。易しい資格から順次挑戦しましょう。
■ ITパスポート試験 ITリテラシーを問う最も基礎的な国家試験で、ITに関する幅広い知識が問われます。合格率が高く、比較的短期間で取得できますので、まだ資格を取得していないIT未経験の方は、最初に挑戦することをおすすめします。
【参考】:ITパスポート試験|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
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■ 基本情報技術者試験 ITエンジニアとして必要な基礎知識を問う国家試験で、ITパスポート試験よりも専門的な知識が求められます。ITエンジニアとしての基礎力を証明できますので、企業によっては採用や昇進の際に優遇されます。
【参考】:基本情報技術者試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
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■ 応用情報技術者試験 ITエンジニアとして高度な知識と経験を問う国家試験で、特定分野の専門知識に加え、システム設計や開発に関する総合的な能力が求められます。高度なITエンジニアとしてのスキル証明となり、大規模システムの設計や開発に関わる仕事に有利な資格です。
【参考】:応用情報技術者試験 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
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未経験からシステムエンジニアやプロジェクトマネージャを目指すなら
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ここまで、システム設計の流れや重要性、ポイント、システムエンジニアの年収、システム設計の学習法とおすすめの資格について解説しました。未経験からシステムエンジニアを目指すには、自社でシステムエンジニアを育成する企業に転職するのが早道です。
そうした自分にとって相性が良く、研修制度が整っている企業を見つけるのは簡単ではありません。システムエンジニア希望者の転職に関するノウハウや実績があり、転職サポートに優れた転職エージェントを活用することをおすすめします。
そこでぜひご活用いただきたいのがマイナビIT エージェントです。
マイナビIT エージェントは、IT・Webエンジニア向け、無料の転職⽀援サービスです。
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