ソフトウェア開発技術者試験とは
ソフトウェア開発技術者試験とは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)により平成13年度春期(2001年)から平成20年度秋期(2008年)まで実施されていた、ソフトウェア開発者向けの国家試験です。
2009年に試験制度が改定され、ソフトウェア開発技術者試験は「応用情報技術者試験」に移行しました。
現在行われている応用情報技術者試験は、ソフトウェア開発に限らず、幅広いIT技術の基礎を問う試験として、多くのエンジニアが受験しています。
この記事では、ソフトウェア開発技術者試験の後継試験である応用情報技術者試験の受験を検討している方のために、試験の概要や試験内容、難易度、勉強方法について解説します。
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ソフトウェア開発技術者試験の概要と変遷
ソフトウェア開発技術者試験は2001年に始まり、2009年に応用情報技術者試験へと移行しました。 ここでは、ソフトウェア開発技術者試験の概要と応用情報技術者試験への変遷、そして資格を活用できる職種の年収について解説します。
ソフトウェア開発技術者試験の概要
ソフトウェア開発技術者試験は、2001年に「第一種情報処理技術者試験」と「プロダクションエンジニア試験」の一部を統合して始まりました。
ソフトウェア開発技術者試験では、情報システム開発における設計、プログラム作成、テストまでの全プロセスを担う技術者を対象とし、高度なアルゴリズムやデータベースの知識、プログラム開発能力が求められました。
初回は年1回の開催でしたが、受験者の増加に伴い2005年から年2回実施されるようになりました。その後、2009年には試験範囲が拡大された応用情報技術者試験に移行しました。
この変更により、試験の対象者や範囲が広がり、ソフトウェア開発に限らず幅広いIT技術の知識が求められる試験になりました。
【参考】:旧制度の試験区分一覧|No.4 ソフトウェア開発技術者試験
応用情報技術者試験への移行理由
ソフトウェア開発技術者試験が応用情報技術者試験へと移行した理由は、将来のIT化社会を見据えて高度なIT人材の育成に対応するためでした。
応用情報技術者試験は、IPAが設定した共通キャリアスキルフレームワークに基づき、ITエンジニアとしての中難度のスキルを評価するものとして位置づけられています。
ITエンジニアとしてシステムの設計や開発、IT戦略の立案、運用管理などの幅広いスキルを持ち、経営戦略から技術的問題の解決までを担う能力を証明できる資格です。
【参考】:試験制度の沿革
資格を活用できる職種の年収とは
応用情報技術者試験は、ITに関する幅広いスキルや知識を問う試験として、プログラマーやシステムエンジニアをはじめとした様々なITエンジニアのスキルアップに活用できます。その中でも、代表的な職種であるプログラマーの年収を見てみましょう。
「マイナビエージェント職種図鑑」での平均年収は344万円(※2023年9月執筆時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から近い職種のSE・プログラマ(顧客向けシステムの開発・実装)を参考にすると、平均年収593万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、プログラマーは一般平均年収よりも低めからやや高めまで幅があることが分かります。
プログラマーがより高い年収を目指すためには、複数のプログラミング言語に精通している、主要なフレームワークを使いこなせるなど、様々なプロジェクトで活躍できる高度なスキルを習得することが重要です。
【参考】:マイナビエージェント職種図鑑 ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
応用情報技術者試験の内容
ここでは、応用情報技術者試験の具体的な内容について解説します。ソフトウェア開発技術者試験との形式の違いを含め、午前試験と午後試験の出題範囲やポイントを詳しく見ていきます。
ソフトウェア開発技術者試験と応用情報技術者試験の試験形式の違い
ソフトウェア開発技術者試験と応用情報技術者試験は、試験形式が異なります。
■ソフトウェア開発技術者試験 午前:9:30~12:00(150 分)/多肢選択式(四肢択一)/80問出題して80問解答 午後Ⅰ:13:00~15:00(120 分)/記述式/6問出題して6問解答 午後Ⅱ:15:30~16:30(60 分)/記述式/1問出題して1問解答
ソフトウェア開発技術者試験は午前、午後I、午後IIの3部構成で、全ての問題が必須解答でした。
■応用情報技術者試験 午前:9:30~12:00(150分)/多肢選択式(四肢択一)/出題数:80問/解答数:80問 午後:13:00~15:30(150分)/記述式/出題数:11問/解答数:5問
一方、応用情報技術者試験は午前と午後の2部構成です。午前はソフトウェア開発技術者試験と同じく多肢選択式で80問が出題されますが、午後は記述式で11問中5問を選択して解答する形式です。
【参考】:応用情報技術者試験
午前試験の出題範囲とポイント
応用情報技術者試験の午前試験は、150分間で80問の多肢選択式問題に解答します。
出題範囲は、IT技術に関する「テクノロジ」から50問、プロジェクト管理やシステム運用を問う「マネジメント」から10問、そして経営戦略や法務に関する「ストラテジ」から20問です。
テクノロジの問題が全体の6割を占めることから、IT情報技術に関する深い知識が求められます。 用語を正確に覚えておくことで素早く解答できる問題も多いため、しっかりと基礎的な学習を繰り返すことが重要です。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
午後試験の出題範囲とポイント
応用情報技術者試験の午後試験は、150分間で全11問の記述式問題から5問を選択して解答します。まず、情報セキュリティに関する問題は回答が必須です。
残りは、経営戦略/情報戦略/戦略立案・コンサルティング技法、システムアーキテクチャ、ネットワーク、データベース、組込みシステム開発、情報システム開発、プログラミング(アルゴリズム)、プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント、システム監査の10問から4問を選んで解答します。
午後試験では、設問の内容は具体的なシナリオに基づくものが多く、長文の問題文を読み解く必要があります。現実の業務に即した判断力や応用力が問われるため、試験対策には実務的な知識も重要です。
【参考】:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 試験要綱
応用情報技術者試験の難易度と受験のメリット
次に、応用情報技術者試験の難易度や合格率を、前身であるソフトウェア開発技術者試験との比較も交えて解説します。また、応用情報技術者試験を受験するメリットについても考察します。
応用情報技術者試験の合格率と難易度
応用情報技術者試験に合格するためには、午前・午後の試験それぞれで60点以上を取得することが求められます。
■応用情報技術者試験の合格率 ・令和元年度秋期 23.0% ・令和3年春期 24.0% ・令和4年春期 24.3% ・令和5年春期 27.2% ・令和6年春期 23.6%
最近5年間の合格率は、おおむね20%台前半から中ほどで、難易度は高めと言えるでしょう。
ソフトウェア開発技術者試験との合格率の比較
参考としてソフトウェア開発技術者試験の合格率も確認しましょう。平成16年度春期から平成20年度春期では概ね15%前後と、合格率は低い水準にありました。
■ソフトウェア開発技術者試験の合格率 ・平成16年度春期 16.1% ・平成17年度春期 14.8% ・平成18年度春期 14.1% ・平成19年度春期 18.2% ・平成20年度春期 17.0%
後継の応用情報技術者試験では、合格率が若干高めとなったことが分かります。ただし、応用情報技術者試験では出題範囲が拡大され、より幅広いITスキ問われるため、合格にはしっかりとした勉強が必要です。
【参考】:応募者・受験者・合格者の推移表|平成13年度春期~平成20年度秋期(PDF:27 KB)
応用情報技術者試験を受験するメリットとは
応用情報技術者試験はIPAが主催する国家試験のうち、基本情報技術者試験の上位に位置し、ITエンジニアとしての基礎から応用までの広い知識を評価するものです。
また、さらに高度な知識や技能を問われるスペシャリスト向けの試験へのステップとなる試験でもあり、合格することでエンジニアとして必要とされる十分なスキルを持つことを証明できます。
試験を通して実務でも役立つ知識が身につくため、業務の幅を広げることができ、転職を希望する場合にも役立てられるでしょう。
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応用情報技術者試験に向けた効果的な勉強法
ここでは、応用情報技術者試験に合格するための効果的な勉強法について解説します。 参考書やオンライン講座の活用、過去問の学習や時間配分の重要性など、試験対策に役立つポイントについて説明します。
参考書やオンライン講座で勉強する
応用情報技術者試験に合格するためには、参考書やオンライン講座を活用した学習が効果的です。
例えば、「令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午前】」や「令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】」は、最新の試験内容に対応した問題集で、午前と午後の両試験に対応する問題を網羅しています。
これらの参考書を繰り返し解くことで、出題傾向を把握し、効率的に知識を定着させることができるでしょう。
■「令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午前】」 ▪著者:大滝みや子 ▪ページ数:448ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2023/12/27 【参考】:令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午前】
■「令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】」 ▪著者:大滝みや子 ▪ページ数:672ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2024/3/22 【参考】:令和06-07年 応用情報技術者 試験によくでる問題集【午後】
さらに、各種オンライン講座を利用することで、時間や場所にとらわれず、自分のペースで学習を進めることが可能です。
特に、動画講座などは文章だけでは理解が難しい内容も丁寧に学べるため、独学では分かりづらいところも理解を深めることができます。
過去問を活用して勉強する
応用情報技術者試験の対策では、新しい知識の習得に加え、過去問を通じて試験の形式に慣れることが重要です。
過去問を繰り返し解くことで、設問パターンや出題傾向を把握しやすくなり、知識を定着させながら試験に対する実践力を鍛えることができます。
特に午後試験は長文問題や記述式問題が多く出題されるため、過去問を通じて回答のコツを掴むことが重要です。
【参考】:過去問題
合格を目指す勉強の進め方とは
応用情報技術者試験に合格するために特に意識したいのは、問題を解く時間配分です。 問題集や過去問を利用して、実際に時間を計りながら解答することで、自分のペースを把握し、効率的に問題を解き進める方法を身につけましょう。
午後試験は特に難易度が高く、150分の制限時間内で長文問題に取り組む必要があるため、時間配分の練習を行っておくことで余裕をもって問題を解くことができます。
また、「情報セキュリティ」が必須問題として出題されるため、この分野は確実に得点できるよう、優先的に学習すると良いでしょう。
試験に挑戦してキャリアアップに活かそう
ここまで、ソフトウェア開発技術者試験から応用情報技術者試験への変遷や試験の内容、勉強方法について解説してきました。
応用情報技術者試験は幅広いITスキルを評価する試験であり、合格には過去問を活用した対策や時間配分の練習が重要であることが分かりました。
応用情報技術者試験に合格すればより業務の幅を広げることができ、キャリアアップにもつながります。
試験に向けた学習を通じて得た知識や経験を活用して、自分の理想のエンジニアを目指せる企業に転職を考えるのも良いでしょう。
しかし、転職活動を1人で行うのは想像以上に大変なものです。現在の会社で働く時間の合間に、職務経歴書の作成や面談の対策をしっかりと行う必要があります。
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