AWSでWordPress(ワードプレス)を運用する
AWSは世界最大のクラウドサービスですが、WordPressサービスをAWSで運用できるのでしょうか?結論から言うと可能であり、むしろベストプラクティスと言えます。
この記事では、WordPressをAWSで運用する場合のメリットとデメリット、既存のサービスをAWSに移行する方法や注意点について解説します。
WordPressの開発やサービスに関わっている方、AWSを利用してWordPressのWebサイト構築を検討している方、サーバーレスを検討している方はぜひ参考にしてください。
AWSとは?
エンジニアなら誰もが知るAWSですが、改めてAWSの特徴について確認しておきましょう。AWSにはさまざまな特徴がありますが、主な特徴としては以下の2つが挙げられます。
■ クラウドコンピューティングの基本 AWSはクラウドコンピューティングプロバイダーであり、世界中の企業や個人がインフラストラクチャやサービスを提供するために利用しています。クラウドコンピューティングは、物理的なサーバを購入・設置する必要なく、必要なリソースをオンデマンドで利用できる仕組みです。
■ 200以上のフル機能を提供するAWSの特徴 AWSは幅広いサービスを提供しており、仮想サーバ(EC2)、データベース(RDS)、ストレージ(S3)、AI/機械学習(Amazon SageMaker)など、さまざまな用途に対応しています。これらのサービスはスケーラビリティ、信頼性、セキュリティを重視して設計されています。
また、AWSはネットワーク環境とメールアドレスさえあれば、誰でも無料枠を利用してAWSの世界を体験できます。本格利用の前に、さまざまなサービスを試せるのは利用者としてはありがたいでしょう。
【参考】:アマゾン Web サービス(AWS クラウド)| ホーム
WordPressとは
WordPressは、Webサイトやブログを公開するためのツールです。元々はブログ作成用のプロジェクトとして2003年に誕生しました。その後、コアコードの変更や、多くのプラグインやテーマを提供するWordPressのエコシステムのおかげで活用範囲が広がりました。
WordPressはブログ以外にもECサイトやフォーラム、SNSなどさまざまなタイプのWebサイトを作成できます。オープンソースソフトウェアであり、誰でも無料で使用または修正できるGPLv2ライセンスのもとで提供されています。
コンテンツ管理システムは、プログラミングの知識がなくてもWebサイトの重要な側面(例:コンテンツ)を簡単に管理できるツールです。結果として、WordPressは開発者でない人々にもWebサイトの構築を可能にしています。
【参考】:ブログから大規模サイトまで作れる CMS | WordPress.org 日本語
AWSでWordPressは運用できる?
AWSではあるゆる目的に対応したクラウドコンピューティングサービスで、WordPressをAWSで運用することは大変理にかなった選択であり、ベストプラクティスと言えます。
ここでは、レンタルサーバとの比較、Amazon Lightsailを活用する方法について解説します。
【参考】:AWS での WordPress に関するベストプラクティス|AWS
レンタルサーバーとの比較
AWSはWordPressの運用に適しています。レンタルサーバと比較すると、AWSは柔軟性が高く、必要なリソースを自由に調整できます。また、スケーリングやセキュリティの面でも優れており、アクセスの急増などによるリソース増強などを気にする必要がありません。
Amazon Lightsailを活用した方法
Amazon Lightsailは、AWSのエントリーレベルのサービスであり、WordPressの運用に適しています。簡単にセットアップでき、コスト効率は高いです。Lightsailを使用することで、サーバーレスのような感覚でWordPressのインスタンスを簡単に作成し、運用できます。
【参考】:WordPress - Amazon Lightsail | AWS 【参考】:Amazon Lightsailでの構築手順 | AWS
Amazon Lightsailの料金例
Amazon Lightsailを利用してWordPressでWebサイトを世界に向けてホストした場合、料金はどの程度掛かるのでしょうか。以下はAWSの料金見積もりツールを用いたシミュレーションです。
オプションのロードバランサ(18USD/月)やデータベース(15USD/月)を除いて、月額42.68USDという結果でした。以下、「 Lightsail 機能:Lightsail Virtual Servers」を選択した場合の見積もりです。
① Linuxサーバー×1 ▪見積もり条件:Bundle:0.5GB、Storage: 20GB、vCPU: 2、Memory: 0.5GB、Data Transfer Quota: 1TB、サーバ使用率730時間/月 ▪計算結果:1インスタンス x 0.0047 USD毎時 x 730時間1か月あたり = 3.4310 USD(仮想サーバ設定)Lightsail仮想サーバのコスト(毎月):3.43 USD
② Linuxコンテナ(Medium) ▪見積もり条件:vCPU: 1、Memory: 2GB、Data Transfer Quota: 500GB ▪計算結果:1インスタンス x 0.053763441 USD 毎時 x 730時間1か月あたり = 39.2473 USD(コンテナの設定)Lightsailコンテナのコスト(毎月):39.25 USD
【参考】:料金 - Amazon Lightsail | AWS 【参考】:料金見積りツール| AWS
AWSでWordPressを運用するメリット
AWSでWordPressを運用する方法について紹介しました。ここでは、AWSを利用することでどのようなメリットを得られるのかについて確認してみましょう。
導入コストの抑制
AWSは従量課金制であり、必要なリソースだけを使用するため、コストを最小限に抑えられます。また、無料枠も提供されているため、初期費用を抑えられます。
自由度の高さ
AWSはカスタマイズ性が高く、自由にリソースを設定できます。WordPressのパフォーマンスを最適化するために、必要な設定を行えます。
高いセキュリティ信頼性
AWSのクラウドサービスはセキュリティに優れています。DDoS攻撃対策や暗号化などのセキュリティ機能を提供しています。WordPressの運用においても安心して利用できます。
AWSでWordPressを運用するデメリット
AWSを利用したWordPressの運用ではメリットばかりではありません。以下に挙げるデメリットもありますので、利用シーンを想定してメリットとデメリットを比較し、デメリットの回避策、低減策を講じた上で利用しましょう。
専門的な知識が求められる
AWSは高度な知識を必要とするため、初心者には敷居が高いかもしれません。運用にはAWSの基本的な理解や、AWSの特定のサービスやツールに関する知識と経験が必要です。
コスト管理の難しさ
AWSは柔軟性がある反面、コスト管理が難しい側面もあります。リソースの使用量に応じて料金が発生するため、トラフィックの急な増加や大規模なデータベースの使用により、コストが上昇する可能性があります。
AWS側の影響を受けるリスク
AWSは障害が発生することもあります。その際、WordPressの運用に影響を及ぼす可能性があり、定期的なバックアップと冗長性の確保が重要です。
また、「ログインできない」といったトラブルは、AWSのクラウドサポートエンジニアに質問したり解決を依頼したりできるため、不安に感じる必要はないでしょう。
既存のWordPressをAWSに移行できる?
AWSを利用したWordPressの運用が可能であることは理解できましたが、既にオンプレミスやホスティングサービスを利用している場合、既存のWordPressのAWSへの移行は簡単なのでしょうか?
ここでは、既存のWordPressをAWSに移行する手順と注意すべき点について見ていきます。
移行手順
既存のWordPressサイトをAWSに移行する際には、以下の手順と注意点を考慮する必要があります。
■ バックアップとデータのエクスポート 既存のWordPressデータベースとファイルをバックアップし、必要なデータをエクスポートします。
■ AWSリソースのセットアップ EC2インスタンスを作成し、必要なリソースを設定します。
■ WordPressのインストールと設定 EC2インスタンスにWordPressをインストールし、設定を行います。
■ データのインポートとテスト バックアップしたデータをAWSにインポートし、動作をテストします。
■ DNSの設定とトラフィックの切り替え ドメインをAWSに向けて設定し、トラフィックを切り替えます。
AWSでWordPressを運用する際には、これらのステップを丁寧に実行することで、スムーズな移行が可能です。
移行の注意点
WordPressをAWSに移行する際の注意点を以下にまとめてみました。AWSへの移行は慎重に行う必要がありますが、以下のポイントを押さえてスムーズな移行を実現できるでしょう。
■ 周辺機器の確認 移行元のオンプレミス環境で使用していた周辺機器がAWS上でも利用可能か確認してください。
■ 影響範囲の考慮 移行による影響範囲を評価し、必要な設定や調整を行います。
■ 非機能要件の確認 セキュリティ、パフォーマンス、可用性などの非機能要件も確認し、適切な対策を講じましょう。
■ コストのシミュレーション AWS移行に伴うコストを事前にシミュレーションして、予算を立てておくことが重要です。
AWSをうまく活用してクラウド化を図ろう
ここまで、 AWSでWordPressを運用するというテーマで、AWSの概要から、AWSのAmazon Lightsailを利用したWordPressによるWebサーバの構築、メリットやデメリットなどについて解説しました。
個人レベルでWordPressサーバを立ち上げ、運用する場合はレンタルサーバを利用する方が簡単ですが、ビジネス利用ではさまざまなリスクや責任が伴うことや、他システムとの連携、将来性を考えるとAWSの利用がおすすめです。
エンジニアを目指す方は、AWSの無料枠を利用して、ぜひさまざまなサービスを利用してみましょう。
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