PMPの勉強方法
国際的な資格PMP(project management professional)は、プロジェクトマネジメントに関する知識とスキルを評価する試験です。PMP資格を取得するには、一定の実務経験と公式研修の受講が受験要件であり、PMI本部が実施するPMP試験に合格する必要があります。
この試験は、受験テキストである「PMBOK®ガイド」を丸暗記すれば合格できるわけではありません。プロジェクトマネージャとしての資質や、幅広い関連知識が問われます。この記事では、PMP試験に合格するための知っておきたい試験概要、難易度、おすすめの教材を紹介していきます。
【参考】:PMP®試験について|PMI® 試験・資格について|一般社団法人 PMI日本支部
プロジェクトマネジメントとは
PMPはプロジェクトマネジメント資格ですが、そもそもプロジェクトマネジメントとは何でしょうか?プロジェクトマネジメントとは、定められた期日までにプロジェクトの目的を達成するために、その計画や管理を行うことです。
プロジェクトマネジメントは、次のようなプロセスで進めます。
1.立ち上げプロセス:プロジェクト目的やゴールを明確化し、関係者で共有し、実施承認を得る 2.計画プロセス:プロジェクトの成功に向けて詳細計画を立て、設計する 3.実行プロセス:プロジェクト計画に従って、必要な人材やリソースを調達し、実行する 4.監視・コントロール:プロジェクトの進捗や品質、コストなどをモニタリングし、必要に応じて対策を実施する 5.終結プロセス:プロジェクトの完了を確認して成果物を納品し、プロジェクトを終了する
【参考】:プロジェクト マネジメント プロフェッショナル (PMP)® 認定資格 | PMI
PMP試験の概要
ここでは、PMP試験の概要について解説します。出題範囲や出題傾向、実施概要は都度更新されている可能性がありますので、公式サイトから最新情報を確認しましょう。
PMPの試験内容
2021年の改定で、PMPの試験内容は、「人・プロセス・ビジネス環境」の3つのドメインになりました。
またドメインでは、「予測型プロジェクトマネジメント・アプローチ」について約50%、残りの半分は「アジャイル型プロジェクトマネジメント・アプローチ」と「ハイブリッド型プロジェクトマネジメント・アプローチ」から出題されます。
すなわち、従来「ウォーターフォール型」の出題がメインでしたが、アジャイル型にシフトした問題構成に変わっています。出題ドメイン(領域)の割合は次の通りです。
I. PEOPLE(人):プロジェクトを効果的にリードするためのスキルと活動に重点を置く(42%) II. PROCESS(プロセス):プロジェクトマネジメントに於ける技術滝側面の強化(50%) III. BUSSINESS ENVIRONMENT(ビジネス環境):プロジェクトと組織戦略の繋がりを明確化 (8%)
【参考】:PMP Examination Content Outline
PMP試験の実施概要
PMP試験は以下の要領で実施されます。
受験方式はCBT(コンピュータ出題)で行われ、最寄りのテストセンターもしくは自宅などでのオンライン監査試験のいずれかを選択します。テストセンター受験の場合はピアソンVUE、オンライン監査試験の場合はATA社と試験申込み先が異なりますので注意しましょう。
▪試験方式:CBT(コンピュータを用いた試験) ▪試験委託先:ピアソンVUE、もしくはATA社 ▪試験会場:日本各地(10カ所)のピアソンVUEセンター試験会場もしくは自宅 ▪試験予約:公式サイトから申込む ▪受験言語:日本語可 ▪試験日程:センター受験はほぼ毎日受験可能、自宅試験は月に2回 ▪試験時間:3時間50分(他に休憩時間10分) ▪出題数:180問 ▪合格ライン:ダミー問題5問を除いた内の60%以上の正答率 ▪試験結果:試験結果は5営業日以内にEメールにて連絡(2023年11月現在) ▪受験料:555ドル(PMIの会員価格は405ドル) ▪再受験料:375ドル(PMIの会員は275ドル) ▪資格維持:3年ごとの更新申請が必要(PMI公式の研修受講などが必要)
【参考】:Project Management Professional(PMP)試験内容の概要 – 2021 年 1 月 【参考】:ピアソンVUE公式サイト(PMI) 【参考】:PMP®監督付きオンライン試験|ATA 【参考】:PMI日本支部会員制度 | 一般社団法人 PMI日本支部 【参考】:資格の更新について | 一般社団法人 PMI日本支部
受験資格
PMP受験には2つの受験資格要件が課されます。IPAの情報処理技術者試験のように受験資格が設けられていない試験が多い中、PMP試験の資格要件はかなり厳しいものがあります。2つの要件は以下の通りです。
【参考】:PMP試験内容の概要ーP11 2021年1月試験更新
■ プロジェクトマネジメントの経験 ▪高卒・短大卒:60ヶ月の経験が必要 ▪大卒:36ヶ月の経験が必要 ▪大学院卒:24ヶ月の経験が必要
これらは直近8年間の経験が求められ、8年より以前の経験が認められないため、申し込み時に注意が必要です。虚偽申請がランダムに実施される監査で発覚した場合には受験資格はなくなります。
■ 35時間以上の公式研修の受講 PMIが認定した、公式のプロジェクトマネジメント研修について35時間以上の受講実績が求められます。監査対象となった場合には受講証明書が求められますので、受講時に発行手続きをしておいた方がよいでしょう。
【参考】:【個人・法人】PMI®公式認定eラーニング - 日本PMO協会|NPMO
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PMP試験の難易度
PMIはPMP試験の合格率を公表しておらず、難易度は推測するしかありません。厳しい受験要件が設けられていること、実践力が問われることなどから、難易度は高いと言えます。
ただし、出題範囲はPMBOKが中心で、IPAの「プロジェクトマネージャ試験」のように出題範囲が広くないこと、高いITスキルが求められないこと、論述試験がないことなどを考慮すると、PMP試験の難易度は「プロジェクトマネージャ試験」ほどは高くないと考えられます。
【参考】:プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
PMP試験合格に必要な勉強時間
PMP試験の勉強時間は、SNSなどで見る限り短い方で50時間、長い方で250時間とバラツキがありますが、公式研修の35時間を含めて100時間前後の方が多いようです。
プロジェクトマネジメントに関わっている方は多忙だと思われますが、休日やスキマ時間をうまく活用した短時間の勉強で合格している方も大勢いるため、あまり勉強時間にこだわらない方がよいでしょう。
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PMP資格取得者の年収
プロジェクトマネージャの平均年収は「マイナビエージェント 職種別平均年収ランキング」では670万円(2023年11月時点)、経済産業省2017年発表の「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から同じ職種のプロジェクトマネージャを参考にすると、平均年収891万円と分かりました。
国税庁2020年発表の「民間給与実態統計調査」における民間企業平均年収は433万円なので、プロジェクトマネージャは一般平均年収よりも、やや高めであることが分かります。
プロジェクトマネージャはシステムエンジニアをはじめとして、多くのエンジニアがキャリアパスとして目標とする職種です。またIT業界に関わらず、様々な業界で重宝される資格のため、高年収が期待でき、将来性の高い職種と言えます。
プロジェクトマネージャーとして活躍する上でPMP資格の取得は有効です。
【参考】:マイナビエージェント職業別年収ランキング ※【平均年収 調査対象者】2020年1月~2020年12月末までの間にマイナビエージェントサービスにご登録頂いた方 【参考】:IT関連産業における給与水準の実態① ~ 職種別(P7) 【参考】:民間給与実態統計調査-国税庁
PMPの独学による勉強方法
PMP試験の合格には100時間前後の勉強が必要だと分かりました。個人差がありますので、現在の自身の実力を見定めてから、学習計画を立てるとよいでしょう。
とはいえ、多くの方はオフラインのスクールに通う時間的余裕もないかもしれません。ここでは独学を前提に、おすすめの参考書や問題集、オンライン学習法について紹介します。
学習の流れ
プロジェクトマネージメントの経験はあっても、PMP試験対策を何からどのように進めれば良いのか、悩む方もいるでしょう。試験慣れしている方は自己流で進めて構いませんが、そうでない方は次の手順をおすすめします。あくまでも1つの例です。
1.バイブルとなるPMBOKの全体イメージを把握し、自身の現時点の実力を知る意味で、最初に試験問題集を解いてみます。自分の 実力が分かったところで理解度に基づいて学習計画を立てましょう。
間違えたところやよく分からなかったところは問題集の解説で確認し、さらにPMBOKの該当箇所でおさらいしましょう。PMBOKはいきなり読んでも面白くなく、和訳がおかしい箇所もあり、読んでも頭に入ってこない可能性がありますので、通読はおすすめしません。
2.一通り練習問題で基礎固めができたら、受験資格の1つであるPMIの公式研修(35時間)を受講しましょう。
3.自分専用のノートを作成し、練習問題で間違えたところ、研修で理解が進まなかったところなどをノートに記します。
以上の流れで学習を進めると、PMP試験に合格する可能性が高まるでしょう。
おすすめの参考書
プロジェクトマネジメント関連の書籍、PMBOKに対応した参考書は多数ありますが、ここでは大半の受験生が利用している評判の良い定番のテキスト、参考書を紹介します。
■ プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版 プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版は、プロジェクトマネジメントの国際標準となる書籍です。第7版では従来と比べて大きな変更があり、プロジェクトマネジメントの原理・原則とパフォーマンス・ドメインに焦点を当てています。
さらに開発アプローチの多様化に対応して、価値の提供と適応性を重視しています。PMP試験受験は必携のテキストです。
▪著者:プロジェクトマネジメント協会(PMI) ▪ページ数:569ページ ▪出版社:PMI日本支部オンラインショップ ▪発売日:2023/1/6
【参考】:プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準
■ PM教科書 PMP完全攻略テキスト PMBOKガイド第7版対応 本書はPMBOKガイド日本語版監訳も務めた著者により、最新の試験内容とPMBOKガイド第7版に対応した解説が行われています。PMP試験の概要や申し込み手続き、学習プランなども易しく紹介されています。
また各章末には確認問題、巻末には模擬試験が掲載され、学習効果を確認できる、初心者におすすめな1冊です。
▪著者:鈴木 安而 ▪ページ数:544ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022/02/21
【参考】:PM教科書 PMP完全攻略テキスト PMBOKガイド第7版対応
オンライン学習サイト
書籍並みの料金で受講できるオンライン学習サイトがあります。ここでは、オンライン学習で有名なUdemyのPMPに関する学習コースを紹介します。
■ 「PMP®認定試験」で一発合格を目指す! 効率的な試験対策のための戦略コース (2021) アジャイル対応 このコースでは、2021年1月から実施されている新しいPMP試験の内容とPMBOKガイド第7版に対応した試験対策の方法を学ぶことができます。
「試験準備の進め方や試験申し込みの手続き」から「PMBOKガイドの学習ポイントや知識項目の整理」、「アジャイル型アプローチの基礎知識」など試験突破に必要な知識が網羅され、確認問題や模擬試験で学習効果の測定ができるようになっています。
【参考】: 「PMP®認定試験」で一発合格を目指す! 効率的な試験対策のための戦略コース (2021)
PMP資格で得たスキルを次に生かすには
ここまで、プロジェクトマネジメント資格として業界を問わない人気を誇る、PMP資格試験について、試験の概要や勉強方法、おすすめの参考書などを解説しました。
AI化の進展により、エンジニアの領域もAIに置き換わるといった予測がありますが、マネジメント分野はAIが苦手な分野であり、プロジェクトマネージャは今後も高い需要があると見られます。
PMP資格の価値は高く、資格取得で得た知識やスキルは自社内でのキャリアアップはもちろんのこと、転職においても大きな力になるはずです。しかし、多忙な仕事を続けながら、数ある求人から希望に合う企業を探し出すのは困難です。
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