
データベーススペシャリストの勉強法

情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験の中でも、最難関のレベル4に相当する「データベーススペシャリスト試験(DB)」はITエンジニアにとって憧れの資格の1つです。
データベーススペシャリスト試験はITエンジニアの中でも、主にデータベースの設計者や管理責任者を対象としています。ビッグデータ解析などで注目されるデータベース分野での活躍を目指す方は是が非でも合格しておきたい試験の1つでしょう。
そんな方のために、ここではデータベーススペシャリストに関して知っておきたいこと、効果的な勉強法などについて解説します。データベーススペシャリストへのチャレンジを検討している方はぜひ参考にしてください。
【参考】:データベーススペシャリスト試験(DB)

データベーススペシャリスト試験とは

データベーススペシャリスト(DB)は1988年に誕生した「オンライン情報処理技術者試験」を起源として、1994年にデータベースに特化した試験区分として分割され、2009年に「データベーススペシャリスト(DB)」に試験名称が改称され、現在に至っています。
データベーススペシャリストはIPA(情報処理推進機構)が主催する国家試験の1つで、「データベースに関する固有技術を活用して、情報システム基盤の企画、要件定義、開発、運用・保守における中心的役割を果たし、固有技術の専門家として技術支援を行う者」が対象です。
データベーススペシャリストは情報処理技術者試験の中でも高度情報技術者試験に分類され、最高ランクのレベル4に位置付けられており、非常に難易度が高い試験です。
昨今、ビジネスの場でビッグデータの活用が重要になっていますが、この資格取得により、ビッグデータの活用をリードできる人材として活躍が期待されます。
データベーススペシャリスト試験は秋期(10月)の年1回開催され、合格条件は、午前試験・午後試験ともに60%以上得点することが求められます。例年、午前試験は55問(四肢一択)、午後試験は記述試験で3問選択します。
データベーススペシャリストの試験概要

データベーススペシャリストの試験概要について見ておきましょう。以下に、実施概要や難易度について解説しますのでぜひ参考にしてください。なお、試験の情報は日々アップデートされていますので、最新の情報はIPAの公式サイトより確認しましょう。
【参考】:データベーススペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA
試験の実施概要
▪受験資格 受験者に関する制限は特にありません。学歴、年齢を問わずどなたでも受験可能です。
▪受験料 7,500円(税込)
▪受験日程 年1回開催、秋期試験のみで10月第2日曜日です。 申込期間は、試験日の約3ヶ月前から3週間程度でインターネット申し込みのみです。
▪合格発表 12月下旬にIPAのサイトで公表されます。合格証書は合格発表の後に簡易書留で発送されます。 成績はIPAのサイトから、受験番号とパスワードで確認ができます。
▪試験会場 全国主要62都市で開催されます。
▪試験の構成 形式 出題数 合格ライン 時間 備考
午前1 記号選択式 30 問 60 % 50 分 概ね 18 問以上正答なら合格ライン 午前2 記号選択式 25 問 60 % 40 分 概ね 15 問以上正答なら合格ライン 午後1 記述式 3 問中2問 60 % 90 分 午後2 記述式 2 問中1問 60 % 120 分
【参考】:令和4年度秋期情報技術者試験案内書(PDF形式)|IPA
難易度や合格率
データベーススペシャリスト(DB)の公表されている合格率は、例年10数%前後と大変難関です。午前問題はトータルで四択問題が55問出題され、正答率60%が合格ラインです。受験対策をしっかり行っておけば、合格点は取れるでしょう。
特に2年以内にIPAの「応用情報技術者試験(AP)」に合格した人は、データベーススペシャリストの午前1試験が免除されますので、春期試験(4月)を受験して合格を勝ち取り、秋期実施のデータベーススペシャリスト試験に臨むという手もあります。
データベーススペシャリスト試験の午後問題は記述式であり、長文読解力が要求されるため、何が求められているのかを短時間で理解する能力が必要です。長文が苦手な方は普段から長文読解問題を繰り返して解き、慣れておくことが求められます。

合格に必要な勉強時間
その方の知識レベルやスキルレベル、実務経験の有無によっても異なりますが、SNSやネット掲示板などでの合格者の声から類推すると、未経験者では500時間程度、3年程度のプログラマー、システムエンジニア経験者で200時間程度が目安とされています。
未経験者であれば、試験日の1年前ぐらいから勉強計画を立てて準備をしておくことをおすすめします。
午前対策

データベーススペシャリスト(DB)の出題範囲は「応用情報技術者試験(AP)」の出題範囲と被っています。午前試験の出題範囲は非常に広く、まとまった勉強時間の確保が必要ですが、多忙な方には難しい相談かもしれません。
そこで満遍なく勉強するのではなく、過去の出題傾向から出やすいジャンルに絞り、重点的に勉強するといったメリハリをつけた勉強法をおすすめします。
午前1試験(50分)
午前問題は、応用情報技術者試験の午前問題から抜き出した30問で構成されます。出題範囲はシラバス※に記載のテクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系の全分野です。
出題形式は小問形式で、配分はテクノロジ系が約60%、残りの40%はストラテジ系とマネジメント系からの出題です。最近はセキュリティ関係の出題が増える傾向にありますので、重点的に学習しておくことをおすすめします。
合格には60%以上18問以上の正答率が必要ですが、2年以内の応用情報技術者試験に合格していると、午前1問題が免除されますので、先に応用情報技術者試験の合格を目指して勉強しておくとよいでしょう。他、高度区分試験の午前試験に合格してから2年以内の方も午前1の受験が免除されます。
応用情報技術者試験試験は春と秋の年2回受験チャンスがありますので、春期試験合格を目指して勉強し、春期試験以降はデータベーススペシャリスト試験の合格を目指すという二段構えの試験対策が有効でしょう。
【参考】:※データベーススペシャリスト試験(レベル4)シラバス|IPA

午前2試験(40分)
午前2試験は、午前1の出題範囲から「コンピュータ構成要素」「システム構成要素」「データベース」「セキュリティ」「システム開発技術」「ソフトウェア開発管理技術」の6分野が出題され、より内容が高度になっています。
出題範囲の80%前後(20問)は「データベース」分野から出題され、その半数近くが過去出題の問題から出題されています。このことから、午前2試験対策は以下の対策が有効です。
▪データベース分野を集中的に勉強する ▪データベース分野の過去問を反復練習する
午後対策

午後試験は午前試験の四択問題とは異なり、長文問題による出題で、回答は記述式です。長文問題は読解力が求められ、問題の意図を理解できないと正しい解答が難しくなります。午前試験がいくら高得点でも、午後試験で60%に達していないと不合格となりますので、真剣な対策が求められます。
午後1試験(90分)
午後1試験は大問が3問出題され、そこから2問を選択して解答します。それぞれ50点満点で、合わせて100点満点です。
1.データベース設計に関する問題 2.データベースの実装に関する問題 3.SQL の問題
出題パターンは上記の通り、遭遇した問題に対し、エンジニアとして具体的に行う対応や操作を問われます。時間配分に失敗すると、結果として1問を捨てる結果になりかねませんので、過去問や模試を時間を測りながら解く練習をしておきましょう。
SQLの問題は、構文を理解できていれば解ける問題が多くありますので、SQLを徹底的に学習しておくと点を稼げるでしょう。仮にSQLで80%を正答できれば、データベースの問題では40%以上正答で午後1試験は合格点に達します。
また、他の2問にもSQLに関する部分的な問題が含まれる可能性が高いので、SQLは必須問題と考えて対策を講じておいた方がよいでしょう。午後問題は全般的に、単語の丸暗記では解けない問題が中心です。
学習や過去問解答の際には、「この場面で○○の操作を行うのはなぜか」ということを常に考える習慣を身につけると理解が増し、試験の解答に役立ちます。

午後2試験(120分)
データベーススペシャリスト試験の中でも最も長時間の午後2試験です。大問の2問からどちらか1問を選択(100点満点)します。午後1試験のように、得意な問題で苦手な問題をカバーするという対策ができませんので、1問に全精力を傾けなければなりません。
問題文は10ページにまたがる長文のため、先に問題文を読むのではなく、先に設問に目を通してから問題文を読むと、問題文が頭に残りやすいでしょう。
この方法により、問題文と設問を行ったり来たりすることが減り、時間の短縮にもなります。
例年、「物理データベース設計」と「論理データベース設計」それぞれに関する類似問題が出題されていますので、過去問を解きながら、自分がどちらが高得点を得やすいか、知っておくと重点学習がしやすくなります。
試験時期が近づき、勉強時間が足りなくなった時には、苦手な方を捨てて得意な方に絞って徹底的に過去問の反覆演習、反復学習をするとよいでしょう。
独学でおすすめの教本と勉強サイト

データベーススペシャリストを独学で合格を目指すには、最低限参考書を利用した勉強と過去問の回答が不可欠です。ここではおすすめの参考書と、オンライン勉強サイトをそれぞれ1つずつ紹介します。
情報処理教科書 データベーススペシャリスト 2022年版
シリーズの累計売上250万部という、定番の教科書です。学習法と解答テクニックに100ページを割き、初めて学ぶ人でも学びやすい構成です。テーマごとの出題率が数字で示され、SQLの基本構文解説や長文読解のコツなどが充実しています。
過去20年分の問題も紹介されており、1冊で試験対策ができます。
▪著者:ITのプロ46、三好 康之 ▪ページ数:616ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022/03/22
【参考】:情報処理教科書 データベース
データベーススペシャリスト ドットコム(過去問道場)
情報処理技術者試験の過去問を反復学習できるWebサービスとして有名な過去問道場ですが、この中に「データベーススペシャリスト試験過去問道場」があります。データベーススペシャリスト試験の過去問が325問あり、そこからランダムに出題され完全解説が付いたWeb問題集です。
通勤や移動中などのスキマ時間を利用して、スマホやタブレットで過去問演習に取り組め、学習履歴の管理もできますので、忙しい人の受験対策に最適です。
「データベーススペシャリスト試験過去問道場」は午前2問題のみを収録しているため、午前1対策は「応用情報技術者試験ドットコム」の過去問道場を利用することをおすすめします。
【参考】:データベーススペシャリスト過去問道場|データベーススペシャリスト.com 【参考】:応用情報技術者試験ドットコム
データベーススペシャリスト資格をキャリアアップの足掛かりに

ここまでデータベーススペシャリストの試験概要と出題範囲、試験対策のコツや勉強法を中心に解説しました。データベーススペシャリストは情報処理技術者試験の中では難易度が高い試験ですが、試験対策をしっかり行うことで、確実に得点できる問題も少なくありません。
地道な勉強の成果が出やすい試験ですので、難しいからといって諦めることはありません。また、データベーススペシャリスト資格や応用情報技術者資格は人気の資格の1つであり、資格手当が支給される企業もあります。
ぜひこの記事を参考に、ぜひデータベーススペシャリストに一発合格して、キャリアアップや年収アップを実現してください。

編集部オススメコンテンツ
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから