Redmineとは
Redmineはオープンソースで公開されているプロジェクト管理ツールであり、読み方は「レッドマイン」です。プロジェクト管理ツールとは、チームで仕事の進捗状況やスケジュールを管理することを目的としており、システム開発などエンジニアの仕事においては必須とも言えるでしょう。
数あるツールの中でも、Redmineはオープンソースで自由度が高いという特徴を持っています。本記事では、このRedmineについてその歴史から使い方までを解説します。
【参考】:Redmine
Redmineの歴史
Redmineはフランス人であるJean-Philippe Lang氏によって開発され、2006年に最初のバージョンがリリースされました。オープンソースであるため、GitHub上でソースコードが公開されており、様々なエンジニアが開発に参画しています。
現在は2023年の11月にリリースされた5.1.1、5.0.7が最新であり、GitHubでは細かいアップデートが頻繁に行われています。
開発言語はRuby on Railsとなっており、ブラウザベースのプロジェクト管理ツールとして開発がされてきました。
【参考】:リリース履歴 — Redmine.JP
Redmineは無料で使える?
Redmineを利用するのに費用はかかるのでしょうか。
前述の通りRedmineはオープンソースソフトウェアであるため、全ての機能を無料で使うことが可能です。個人利用としてプロジェクト管理ツールを使いたい場合にも心強いと言えるでしょう。また、後述しますが、派生ソフトについては有料での提供です。
Redmineでできること
Redmineを利用することで、具体的にどういったことができるのでしょうか。ここでは、Redmineでできることについて3つ紹介します。
【参考】:5分でわかるRedmineの概要 — Redmine.JP
「チケット」でタスクを登録・管理できる
Redmineでは、トップページのデザイン案を作成するなどのタスクややるべきことを「チケット」として登録できます。チケットにはトラッカーやタイトル、担当者、ステータス、進捗率、優先度、バージョン、時間管理、説明などを登録でき、タスク管理を一覧でチェックすることができます。
また、ファイルを添付したり、親子チケットで複数のタスクを関連付けたりもできます。
ガントチャートで進捗管理ができる
Redmineでは、プロジェクトのスケジュールを視覚的に表示するガントチャートによって進捗管理ができます。このガントチャートによってタスクの進行具合やメンバーの割り振りなどを行いやすくなります。
Redmineのガントチャートは、各タスクの進捗度合いが色分けされて表示されるため、順調であれば緑になり、遅れているのであれば赤色になります。完了済みのタスクや進行中のタスクの管理が容易に行えるため、特に規模の大きいプロジェクト管理においては欠かせない機能です。
Wikiによって文書を作成・編集できる
Redmineでは、Wiki機能によってプロジェクトに関するマニュアルや仕様書などのドキュメントをまとめて管理できます。Wikiページの作成や編集は誰でも行うことができ、テキストの記入や画像の挿入が可能です。
また、ページ間をリンクで繋げたり、ページの変更履歴をチェックできたり、プロジェクトに関連する情報共有が容易になります。
Redmineを使うメリット
Redmineを使っていく上でどのようなメリットがあるのでしょうか。以下に紹介します。
オープンソース
Redmineの大きな特徴としてオープンソースであることがあり、これは無償で全機能を利用できることを意味しています。多くのプロジェクト管理ツールでは月額料金がかかる中でこれは大きなメリットであると言えます。また、有志によるプラグインも充実しており、使い勝手をさらに良くしています。
Webベースの管理
Redmineはブラウザ上で使用するWebベースの管理ツールであるため、余計なツールをインストールする必要もありません。表計算ソフトなどを利用したプロジェクト管理と比べても、同時に多数のユーザが編集を行える点もメリットです。
チケットを使ったタスク管理
前述の通り、Redmineにはチケットを利用したタスク管理があります。チケットを発行することでタスクをプロジェクトメンバーに割り振ることができ、タスクの詳しい内容も付加することが可能です。メーラーと連携して作業漏れを防げることや様々な種類のチケットを作ることができる点もメリットです。
バージョン管理システムとの連携
エンジニア向けのRedmineの特徴としてバージョン管理システムと連携できることがあります。SubversionやGitとの連携ができるようになっており、チーム内でのソースコードの共有が容易になることはメリットと言えるでしょう。
Redmineのデメリット
ここまでRedmineのできることやメリットを紹介しましたが、一部でRedmineは「使いにくい」などの声があり、デメリットもいくつかあります。ここでは、Redmineにおけるデメリットをまとめました。
Redmineは使いにくい?
Redmineの評判として使いにくいという声が聞かれることがあります。実際にRedmineを使っているユーザから、以下のようなコメントが挙げられています。
・サーバへのインストールが必要なためインストール手順が複雑 ・オープンソースゆえにサポート体制が不十分 ・トラッカーやバージョンなど独自の概念が分かりづらい ・ブラウザベースのUIに馴染めない
しかしながら、無料のオープンソースで使えるという大きなメリットを考えれば、そのような懸念は大きく気にならないとも言えます。また、プラグインを上手く使えばプロジェクトに合うように機能追加などを行うこともできます。
ITリテラシーが必要
Redmineの構築や保守・運用を行うには、バックエンドに関する知識が必要不可欠です。また、プラグインによってある程度のカスタマイズができますが、これを行うのにもITリテラシーが欠かせません。
オープンソースで無料で利用できるのは大きなメリットですが、それゆえに情報が少なかったり分からないことがあったりした場合は、自分で解決する必要があります。管理が難しい、またはITリテラシーに長けている人材の確保が難しい場合は、クラウド型の有料プランを利用するのがおすすめです。
【参考】:自社運用Redmine管理者向け Adminサポートデスクプラン|My Redmine
Redmineの利用準備
Redmineを利用するには、クラウドサービスを活用したり、ダウンロード・インストールしたりすることで使用可能となります。
【参考】:Redmine ダウンロード 【参考】:Redmine インストール
インストールして使用する場合は、Redmine、Ruby on RailsやMySQLなどが必要です。これらをセットで導入可能なAll-in-oneインストーラを使用するのが良いでしょう。例えば、Bitnami Redmineインストーラを使うと、ApacheウェブサーバーやMariaDBなどの関連ソフトウェアがまとめてインストールできます。
【参考】:Redmine packaged by Bitnami
Redmineインストーラのダウンロード
ここでは、All-in-oneインストーラであるBitnami Redmineインストーラを用いて、Windows PCにRedmineの環境をセットアップしていきます。
以下のリンク先に、Windows版とmacOS版のインストーラが掲載されていますので、リンク先をローカルに保存します。
【参考】:Redmine packaged by Bitnami Installer
ダウンロード時には、Google、Github、Microsoftのアカウントでサインインするか、サインインなしにダウンロードするかを指定します。
Redmineインストーラの実行
Redmineインストーラを実行すると、最初に言語の選択画面が表示されます。ここでは「Japanese - 日本語」をプルダウンメニューから選択します。
その後、セットアップウィンドウが起動し「次へ」をクリック、コンポーネント選択ウィンドウが表示されます。こちらも「次へ」をクリックし、フォルダ選択ウィンドウが表示されます。指定がなければそのまま「次へ」をクリックします。
管理者アカウントの作成
Redmineインストーラのステップが進み、管理者アカウントの作成を行います。次の画面が表示されたら、ログイン名とパスワードを設定します。
Redmineインストーラの残項目の設定
管理者アカウントの作成に続いて、Apacheの接続ポートを設定します。デフォルトで81ですので、通常は変更不要です。
次に、データベースの言語を設定します。インストーラ起動直後の言語設定で「Japanese - 日本語」を設定している場合は、データベースの言語変更は不要です。
続くSMTPの設定画面では、メールで通知を送信する際に使用します。最後にクラウドホスティングの案内表示のチェックボックスが登場します。ご興味がある方は案内表示をご確認ください。
「インストールする準備ができました」と表示されたら、「次へ」をクリックします。ここでインストールが実行されます。15〜20分程度のセットアップ作業が完了したら、以下の画面が表示されますので「終了」をクリックします。
インストーラの終了後、bitnamiが動作し、”http://127.0.0.1:81/redmine/”へブラウザからアクセスすると、Redmineが利用できます。
Redmine使い方入門
ここからは、Redmineの基本的な使い方を説明します。他のツールでは見られないチケットの概念や、進捗状況の確認方法を中心に紹介します。
Redmineで最初に行うこと
RedmineのURLにアクセスし、ログインすると作業用のメニューが表示されます。最初のログイン時にはパスワードの再設定が求められますので、指示にしたがってアカウント情報を更新します。
ログイン後、初期設定の値を変更しておきます。1つは認証設定です。安全のため「管理」「設定」の「認証」で「認証が必要」を「いいえ」から「はい」に変更しておきます。デフォルトではネットワーク上の匿名ユーザからアクセスが可能になっていますので、以下図のように変更しておきましょう。
Redmineを使ったプロジェクト管理
Redmineは、プロジェクト管理ツールですので、初期状態では何も表示されません。ログイン後プロジェクトを作成することで、各種プロジェクト管理機能が利用できます。
プロジェクト作成においても、初期設定を行います。「管理」「設定」の「プロジェクト」を表示し、「デフォルトで新しいプロジェクトは公開にする」のチェックを外しておきます。誤ってプロジェクトを公開しないために、次の画面のように設定しておきましょう。
実際のプロジェクト作成は、次のように「プロジェクト」をクリックし(①)、新しいプロジェクトをクリックして必要な情報を入力します(②)。
ここでは、操作画面の解説のためにプロジェクト「Test」を作成し、以降の図解で用いていきます。
チケットとは
Redmineにおけるユニークな概念に「チケット」があります。チケットとは、Redmine上でタスクを管理するために使われるもので、行うべき作業や修正すべきバグなど1件ごとに対応して登録されます。
チケットでは、タスクの内容・優先度・担当者・納期・進捗状況などの情報が登録でき、タスクの進行とともに各情報を更新することで、Redmine上で進捗状況を共有することができます。
チケットの作成は、下図のように「プロジェクト」をクリックし(①)、プロジェクト一覧から該当プロジェクトを選択します(②)。ここで「新しいチケット」をクリックし、入力します(③)。
Redmineではプロジェクトリーダーがこのチケットを発行し、各担当者に割り振ることでプロジェクト内のタスクを管理します。もちろん各担当者が個別にチケットを発行し、各々の作業内容や見つけたバグ内容を見える化するような使い方も可能です。
トラッカーとは
チケットについて語る上で最も重要な概念に「トラッカー」があります。トラッカーはチケットの大分類を表しており、チケットがどのようなタスクであるかを分かりやすく分類する役割を持っています。
ただし、単にチケットを分類するだけでなく、チケットの性質である「フィールド」や「ワークフロー」も変えることができてしまいます。
フィールドは、チケット作成や編集時に入力できる項目を表しています。フィールドの性質を変えることで、トラッカーごとに入力が必要な項目を表示させ、不要な項目を非表示にするようなことができます。
ワークフローは、チケットのステータスがどのように遷移していくかを決めるルールです。例えばバグを表すトラッカーであれば、調査中→対策検討→効果確認→修正完了、のようなステータス遷移を独自に設定するようなイメージです。
ワークフローはメンバーの役割を表す「ロール」ごとに設定することができ、担当者は「進行中」のステータスを変更することができなくても、管理者は「進行中」から「対応完了」に変更することができる、といった仕組みを作ることができます。
トラッカーはデフォルトでは、「バグ」「機能」「サポート」の3種類ですが、管理者権限を持つユーザであれば新しく作ることが可能です。
【参考】:トラッカー
トラッカーの作成方法は、次の図のように「管理」をクリックし(①)、トラッカーの画面から(②)、「新しいトラッカー」をクリックして作成します(③)。ほとんどのケースでは用意されている「バグ」「機能」「サポート」の3種類で足りますが、追加したい場合には以下画像を参照ください。
チケット管理
重要な概念を説明したところで、具体的なRedmine上での操作を説明していきます。
Redmineでまず行うことはチケットの発行です。チケットの発行を行うためには、Redmineのメイン画面から自分の担当するプロジェクトへまずは移動する必要があります。プロジェクトページに移動できたら、「新しいチケット」のタブを選択し、必要な入力項目を設定した後、作成ボタンを押せば完了です。
設定する項目として、必須なものは「トラッカー」「題名」「ステータス」「担当者」「開始日/期日」があり、後から編集することができない項目もあるので注意しましょう。
発行したチケットは、チケット一覧のページからアクセスすることもできますが、ガントチャートやカレンダー上からもアクセスすることが可能です。
チケットを更新する際は進捗状況に応じて「ステータス」や「進捗率」を変更し、「注記」にてメモや連絡事項を記載するようにします。ファイルを添付することも可能です。
【参考】:チケットの登録
具体的なチケットの作成方法は、「チケットとは」の図解を参考にしてください。
チケットの進捗状況確認
発行したチケットはRedmine上のチケット一覧だけでなく、視覚的に分かりやすいように図からアクセスすることもできます。Redmineでは以下の図がサポートされています。
・ガントチャート
プロジェクト管理でお馴染みのガントチャートは、もちろんRedmineでもサポートされています。おそらく最も使用頻度が高い図となるでしょう。作業の計画や進捗を横軸に日程を取って視覚化することができ、タスクごとのつながりやある日付における全体進捗を非常に分かりやすく把握することができます。
【参考】:ガントチャート
・カレンダー
カレンダーは、チケットの開始日と期日を毎月ごとのカレンダー形式で表示することができる図です。シンプルにチケットをいつまでに完了しなければならないかを把握することができるため、メンバー全員のタスク納期を把握することに優れた図と言えます。
【参考】:カレンダー
・ロードマップ
ロードマップは、Redmineにおけるマイルストーンを意味する「バージョン」を基準にしたチケット管理図です。バージョンごとにどのようなチケットがあるかが一目でわかるようになっているため、マイルストーンに対してどのようなタスクをこなさなければならないかがすぐに把握できます。
【参考】:ロードマップ
具体的なロードマップの表示内容は、次の「プロジェクトのバージョン管理」で図解します。
プロジェクトのバージョン管理
Redmineではプロジェクトにバージョン番号を付加し、管理することができます。バージョンを付加するには、「プロジェクト」をクリックし(①)、プロジェクト一覧から該当プロジェクトを選択します(②)。ここで「設定」を表示し(③)、「新しいバージョン」をクリックして入力します(④)。
上の図では、バージョン「1.0」と「1.1」を作成した場合を示しています。バージョンが加わったことで、各チケットにバージョンを紐づけることが可能です。具体的にはプロジェクトを選択して、チケット一覧から該当するチケットの「編集」画面でバージョンを設定するだけです。
バージョンとチケットとの関係が設定されると、各ツールは自動的に連携し、スケジュールに反映されます。次の図のように「ロードマップ」を表示すると、各バージョンの進捗や遅れ状況が一目でわかるようになります。
同様にガントチャートも、次の図のようにプロジェクトの線表が自動的に連動し、表示が変更されます。
Redmineの派生バージョン
Redmineはそれ自体がオープンソースであることもあり、いくつか派生バージョンが存在します。ここでは、その中でも名の知れている2つのバージョンを紹介します。
My Redmine
Redmineは社内サーバなどにインストールを行わなければなりませんが、クラウド化し、インストール不要でどこでも使用可能にしたサービスが「My Redmine」です。Redmineをそのままクラウド上で使える形になっており、自社で運用していたRedmineをそのまま移行することができる点が特徴的です。
ただし、有料でのサービス提供なので、スタンダードプランで月額10,000円の費用が発生します。一方、最大で1,000人まで使用可能であるため、プロジェクト規模が大きくなったとしてもそこまで費用はかかりません。
【参考】:My Redmine
Lychee Redmine
Lychee Redmineは「ライチレッドマイン」と読み、通常のRedmineの機能拡張版という位置付けです。ガントチャートを直観的に操作できるようになり、ドラッグアンドドロップなどが行えるようになったほか、カンバン機能が使えるようになり、より便利になっています。
こちらも基本的には有料サービスですが、月に10ユーザまで使用できるフリープランもあり、Redmineと使い勝手を比較しながら試してみることも可能です。
【参考】:Lychee Redmine
無料で使えるRedmineは気軽に使うのに最適
本記事で紹介したRedmineは、多数リリースされているプロジェクト管理ツールのうちの1つです。大きな特徴として、オープンソースであることによる無料利用があるので、自分たちのプロジェクトに合っているかどうかを試してみることも可能です。
多数ある管理ツールはそれぞれ異なる特色を持っているため、自分たちに合ったものをじっくりと探してみましょう。
編集部オススメコンテンツ
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから