OpenAI(オープンAI)とは
近年、AI技術が身近になり、様々なAIサービスを利用できるようになっています。その中でも特に話題となったものに、対話型AIのChatGPTがあります。ChatGPTの人間らしい自然な回答に驚いた方も多いでしょう。
OpenAIはChatGPTをはじめとした様々なAIサービスを提供し、AIの開発と普及を目指す研究機関です。
この記事では、OpenAIや同社が手掛ける生成AIに興味がある方のために、OpenAIの歴史や提供しているサービスについて解説します。
【参考】:OpenAI
OpenAIはどのような団体か
OpenAIはアメリカ・サンフランシスコに拠点を置き、様々なAIモデルを開発・公開している研究機関です。創立当初は非営利研究機関として始まりましたが、現在は利益制限付きの子会社を設けて研究を行っています。
OpenAIが開発した生成AIを利用することで、学習したデータから新たなテキスト・画像・音楽・動画・プログラムのコードなどを生成できることで注目を集めています。
OpenAIの社会への影響
OpenAIがAI技術関連の世界だけでなく広く一般にも知られるきっかけとなったのは、対話型AIのChatGPTでしょう。
2022年11月の一般公開以来、1週間に満たないうちに100万人以上の利用者を獲得し、2か月後には利用者が1億人以上を記録するなど、世界中に急速に浸透しています。
ChatGPTは、ちょうど近年の社会の動きであるAI技術の進展と、企業・個人のAI活用への動きがかみ合ったタイミングで一般公開されたことから、驚異的な速さで普及したとみられます。
ChatGPTは今や大規模自然言語モデル(LLM)を使用した代表的な対話型AIサービスであるといえるでしょう。
OpenAIは、単にテキスト生成系AIだけでなく、画像生成系AIや音声生成系AIなどの多様なAIモデルも開発しています。企業や個人がAIを積極的に活用する中、OpenAIの技術は今後、多くの人の仕事や会社の方針などにも大きな影響を及ぼす可能性があると考えられています。
OpenAIの概要
ChatGPTで一般にも広くその名を知られるようになったOpenAIですが、どのような団体なのでしょうか。ここでは、OpenAIの歴史や掲げている目的、そして手がけている生成AIの進化などについて解説します。
OpenAIの創業と歴史
OpenAIはサム・アルトマン氏、イーロン・マスク氏、グレッグ・ブロックマン氏などの世界的に著名な投資家や起業家が共同創業しました。
研究チームも機械学習の世界的専門家であるイリヤ・サツケヴァー氏を研究ディレクターとし、世界クラスの研究エンジニアや科学者をアドバイザーとして迎えて構成されています。
非営利研究機関として始まりましたが、AI開発による利益を世界に届けるための研究に必要な設備の構築・人材への投資力を高めることを目的に、2019年に利益制限付きの子会社を設立して開発を進めています。
【参考】:Introducing OpenAI 【参考】:Our structure
OpenAIの目的とは
OpenAIはその目的として、人類の利益のために安全で有益な汎用人工知能(AGI)を構築することを掲げています。そのために世界でもトップクラスのAI研究者やエンジニアを集め、革新的なAIモデルやツールを開発・公開しています。
高度で先進的なAI技術を開発する一方で、AIには誤用や事故などのリスクが伴うことも大きな課題としてとらえています。AIの革新がもたらす可能性とリスクを把握し、安全性を保ちながら活用できるAIの開発を通して人類の豊かさの向上を目指しています。
【参考】:Our structure 【参考】:Planning for AGI and beyond
OpenAIが手掛けるAIモデルの歴史
OpenAIは設立後、強化学習アルゴリズムを開発支援ツールキットの「OpenAI Gym」のベータ版や、AI学習プラットフォームの「Universe」の開発を行いました。
その後、2018年には自然言語処理モデルである「GPT-1」を発表しました。その後、2022年11月には、GPT-3.5モデルをベースにしたChatGPTがリリースされました。
2023年12月時点では「GPT-4」まで公開され、ChatGPTの有償版ではGPT-4の機能を利用することができるようになっています。
また、2021年には自然言語から画像を生成できる画像生成AIの「DALL·E」がリリースされ、上位モデルの「DALL·E 3」まで登場しています。
2022年には、膨大な多言語学習データに基づいてトレーニングされた音声からの文字起こしAIの「Whisper」も公開され、AIの新たな可能性を広げています。
【参考】:OpenAI Gym Beta 【参考】:Universe 【参考】:GPT-4 【参考】:DALL·E 3 【参考】:Introducing Whisper
OpenAIの主要なAIサービスと活用事例
OpenAIが開発した生成AIモデルは実際にどのように使われているのでしょうか。ここでは、OpenAIが提供しているAIサービスの内容と、その活用事例について解説します。
ChatGPT
ChatGPTはテキスト生成系AIであり、会話形式でAIとやり取りを行います。問いかけを入力すると、まるで人間が回答しているように自然で滑らかな文章を生成して返事をしてくれます。
GPT-3.5モデルをベースにしたChatGPTは無償登録で利用できます。さらに活用したい場合は、有償プランで最新のモデルであるGPT-4をベースにしたChatGPTや、企業向けChatGPT EnterpriseChatも利用可能です。
文章要約・メールの本文作成・議事録の作成など、テキストを用いたビジネス業務で幅広く活用できます。また、プログラミングのコード生成も行うことができ、業務効率化の大きな手助けとなるサービスといえるでしょう。
DALL·E
DALL·Eは、テキストから指示を受けて画像を生成する画像生成AIです。テキストで生成してほしい画像の内容を指示するだけで、その内容を反映した画像を表示してくれます。
指示したテキストによって、実際にはないありえない風景を描写したり、「ピカソ風」などの画風テイストで描画したりできるため、自由な発想で画像を生成できます。
DALL・Eのリリース後に登場したDALL・E 2やDALL・E 3では、テキスト指示からさらに多くのニュアンスや詳細を理解でき、利用者のアイデアをより正確に画像に反映することができるようになっています。
Whisper
Whisperは、音声データをテキストに変換する音声認識モデルです。680,000時間もの音声データを基にトレーニングし、会話から歌まで多様な音声データに対応しています。
会議や講演、歌などを録音したデータを読み込ませることで文字起こしができます。多言語認識も可能で、日本語の音声もテキストに変換できます。
OpenAIのサービスで行える業務改善とは
ここでは、実際にこれらのOpenAIのAIサービスを利用することで、どのような業務改善を行うことができるのか説明します。会議資料の作成やアイデア出し、プログラミングのサポートなど、多くの場面で自動化や省力化を行うことができます。
文書作成や会議資料の整理の効率化
生成AIは、文書を処理する様々な場面で作業の効率化を手助けしてくれます。
ChatGPTでビジネスメールや文書の自動作成を行ったり、会議の議事録をまとめて整理したりすることができます。
例えばビジネスメールでは、新商品のおすすめの営業メールやお詫びのメールなどのサンプルを作成してくれます。ブログの記事も、キーワードや内容を指定するだけで自動的に生成してくれます。
また、Whisperを使用し会議の録音を文字起こしして、ChatGPTの文章要約で議事録をまとめることも可能です。
アイデア出しのサポート
仕事を行う上で、新しいアイデアを出すのは大変なものです。例えば新商品のアイデアやデザインを考えるのには大変な時間と労力が必要ですが、生成AIツールを活用すれば、このようなアイデア出しを力強くサポートしてくれます。
ChatGPTに「新商品に取り入れたい特徴」について相談すれば、多様なアイデアを提案してくれます。それを元に膨らませたり広げたりして、アイデアの形を整えていくことができます。
また、DALL·Eは商品のイメージをテキストで伝えることで、イメージや条件を反映したロゴや画像を生成してくれるため、デザイン作成の下地にすることもできるでしょう。
プログラミングのスピードアップやノーコード化
ITエンジニアにとって、ChatGPTはプログラミングのサポートにも役立ちます。ChatGPTは、プログラミング言語と作りたい機能を伝えると、簡単な物であれば自動でコードを生成してくれて、プログラミングの効率化を図ることができます。
また、利用者が自分で作成したプログラミングのレビューも行ってくれます。エラーが出たコードをChatGPTに入力することで、エラーの原因を調べて、最適なコードの提案まで行ってくれます。これによりエラーの修正の時間が短縮できるでしょう。
OpenAIのサービスを活用する際の注意点とは
生成AIの便利な活用例について解説しましたが、利用する場合には注意すべき点もあります。
例えば、ChatGPTは最新の情報を学習していない場合や、誤った情報を提供することがあります。そのため、回答された情報の正確性は利用者自身で確認することが重要です。
また、DALL·Eで生成された画像を利用する場合は著作権や知的財産権に注意し、他で利用されているデザインや画像に類似するものがないか十分確認する必要があります。
生成AIが生み出した情報を問題なく利用するための責任は、最終的に利用者にあることを認識して活用しましょう。
OpenAIの影響とは
OpenAIが開発した生成AIを多くの人が活用できるようになり、様々な業務の効率化や自動化の推進にも大きな影響を与えると考えられます。ここでは、OpenAIのこれからの展開や社会的影響について解説します。
OpenAIの生成AIの展開
OpenAIは、世界中の人々が生成AI技術を活用できるように、ChatGPTなどのサービス提供とともに、研究・開発したツールをオープンソース化して提供しています。APIも提供して、アプリへの組み込みやビジネスでの活用も容易に行えるようになっています。
また、現在は日本法人はありませんが、2023年には日本がAI開発において重要な役割を果たすと述べ、将来のAIの活用のために日本での活動拡大に力を入れる姿勢を見せています。
このように、OpenAIは日本市場への進出を検討しながら、AI技術の普及を通した社会への貢献に力を注いでいます。
OpenAIの技術がもたらす社会的影響
ChatGPTの登場により、大幅な作業効率化やインターネットサービスの変革が期待されています。しかしその一方で、人間の仕事がAIに置き換わって雇用が減少する可能性や、企業における技術導入の費用負担増などの懸念も浮上しています。
OpenAIはこのようなAI技術の活用における問題点にも焦点を当て、そのリスクも考慮しながら社会に価値を提供する方針を打ち出しています。
今後、このようなAI技術を使った業務やビジネスの変革は時代の流れともいえるでしょう。利用者においてもその社会的影響を議論し、リテラシーをもって適切にAIを活用することが重要であるといえるでしょう。
OpenAIがもたらすAI技術を業務改善につなげよう
ここまで、OpenAIの歴史や提供するサービスの内容について解説してきました。OpenAIがChatGPTやDALL·Eなどの革新的なAIモデルを提供し、人類の利益に役立つAI技術の開発を目指す組織であることが分かりました。
ITエンジニアとして働く多くの方にとっても、日頃の業務の様々な場面でOpenAIの提供するAIモデルを活用することができるでしょう。適切なAIサービスの利用を通して、業務の高品質化や効率化を目指していきましょう。
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