プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは、IT業界における1つのプロジェクトを管理する仕事を指します。プロジェクトのスケジュールやコストを顧客と相談して決める、仕事内容を部下に割り振る、トラブル時に解決に動くなどが主な役割です。
プロジェクトマネジメントを行う仕事には、PMやPMOといったものがあります。PM(プロジェクトマネージャー)は大きなプロジェクトの管理を行う役割を担い、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)はプロジェクト内の小さい部門の管理を行う役割です。
SEとして現場でシステム開発に携わって評価された方がPMやPMOに昇格し、マネジメント業務を行うことが多いです。
プロジェクトマネジメントの世界標準「PMBOK」
プロジェクトマネジメントといってもさまざまな種類や手法がありますが、唯一どのような職種でも外せないのが「プロジェクトマネジメントの世界標準」である「PMBOK」です。
PMBOK(Project Management Body of Knowledge)とは、「プロジェクトマネジメントの知識体系」をまとめた参考書として、1986年に米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI)によって刊行されました。それから約4年ごとに改訂され、2022年4月現在では第7版まで刊行されています。
PMBOKの目標は成果物の納品やQCD(品質・原価・納期)の管理にあり、「立ち上げプロセス」「計画プロセス」「実行プロセス」「監視・コントロールプロセス」「終結プロセス」の5つのプロセスに分けられています。
また、プロジェクトマネジメントにおける必要な知識として「10の知識エリア」を設けています。これらは5つのプロセスにおいてすべて必要ではなく、プロジェクト内容によって取捨選択できます。
【参考】:PMI日本支部オンラインショップ
プロジェクトマネージャーに向いている人
プロジェクトマネジメントを行う上で、どういった性格や考え方を持った人が適性なのか以下の3つにまとめてみました。
▪コミュニケーションスキルがある人 プロジェクトを行うメンバーはもちろん、経営層・利用部門・ベンダー・関係部署・クライアントなど、さまざまな人とコミュニケーションを取らなければなりません。
時にはメンバーとクライアントの板挟みになることもありますが、双方の意見を聞きつつ円滑な人間関係を保つ必要があるため、高いコミュニケーション能力が求められます。
▪客観的、論理的判断ができる人 プロジェクトマネージャー(PM)は常に沈着冷静で、客観的・論理的な思考が求められます。プロジェクトの内容について説明・説得・調整を行う必要があり、その際に話の内容に客観性や論理性がなければ、理解や納得を得られません。物事を俯瞰的に捉えて判断できる能力が必要です。
▪トラブルを柔軟に対応できる人 プロジェクト成功までの過程において、大小関わらずトラブル発生は付きものです。特にシステム開発ではシステムが正しく動作しない・バグの発生といったことが起こりがちです。トラブルによってプロジェクトが計画通りに進められなくなった場合、状況に合わせて柔軟な対応力が求められます。
プロジェクトマネジメント初心者におすすめの本
ここでは、プロジェクトマネジメント初心者におすすめの本をまとめました。これらの本を読むことでプロジェクトマネジメントの基礎を身につけることができ、納期管理やトラブル解決などをそつなくこなすことができるでしょう。
マンガでわかるプロジェクトマネジメント
本書は、漫画で分かりやすくプロジェクトマネジメントのノウハウを解説しています。ストーリーがあるため途中で飽きずに読み進められる上に、用語の解説もしっかり網羅されているため、入り口としては最適でしょう。
▪著者:広兼修 ▪ページ数:232ページ ▪出版社:オーム社 ▪発売日:2011/06/25
【参考】:マンガでわかるプロジェクトマネジメント
プロジェクトマネジメントの基本
本書は、プロジェクトマネジメントの基礎を網羅した1冊です。「なぜプロジェクトにするのか」という根本的な部分の解説からはじまり、プロジェクトの活用事例やトラブルを乗り越える方法など、マネジメントとしてやるべき内容が一通り解説されています。
▪著者:好川哲人 ▪ページ数:288ページ ▪出版社:日本実業出版社 ▪発売日:2011/08/01
【参考】:プロジェクトマネジメントの基本
担当になったら知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座
本書は、イラストや図が多く使われており具体的にイメージしながら読み進められるのが特徴です。「実践講座」とタイトルにある通り、「この状況ならどうするのか」といった実例が書かれているため、得た知識をすぐに活用できます。
また、目標設定から計画、実行までの各プロセスがバランスよく解説されており、抜け漏れなく基礎をマスターできます。
▪著者:伊藤大輔 ▪ページ数:294ページ ▪出版社:日本実業出版社 ▪発売日:2017/01/28
【参考】:担当になったら知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座
これ以上やさしく書けないプロジェクトマネジメントのトリセツ
タイトルにもある通り、プロジェクトマネジメントについて非常に噛み砕いて書かれた1冊です。難しい言葉などを使わず誰でもわかるように解説されているため、本を読むのが苦手な方にもおすすめです。また、実際の現場で使えるノウハウも図で解説されており、試しながら読み進めることも可能です。
▪著者:西村克己 ▪ページ数:208ページ ▪出版社:パンダ・パブリッシング ▪発売日:2018/12/21
【参考】:これ以上やさしく書けないプロジェクトマネジメントのトリセツ
初めてのプロジェクトマネジメント
本書は、プロジェクトマネジメントを行う上で大切にすべきことがまとまっている1冊です。プロジェクトの立ち上げから、計画・実行・締結までの4つの領域を10プロセスに分解し、それぞれのプロセスを丁寧に解説しています。時系列順に書かれているため、プロジェクト進行中でも読みやすいでしょう。
▪著者:勝俣安朗、細澤新太郎 ▪ページ数:224ページ ▪出版社:みらいパブリッシング ▪発売日:2021/07/16
【参考】:初めてのプロジェクトマネジメント
ポイント図解 プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本
これからプロジェクトマネジメントを実施する人を対象とし、図やイラストなどで分かりやすく基本知識を学べる本です。知識・技術・思考といった84のテーマに絞った解説と、ガントチャートなどの基本ツールも実例付きで紹介しています。必要な要点のみを簡潔にまとめているので、理解しやすい構成になっています。
▪著者:伊藤大輔 ▪ページ数:192ページ ▪出版社:KADOKAWA ▪発売日:2021/08/16
【参考】:ポイント図解 プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本
PMBOKはじめの一歩 スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本
プロジェクトマネジメントを正しく進めていくための方法を体系的にまとめた「PMBOK」について解説している本です。さまざまな例に基づいてPMを導入した場合にどうなるのかについてコラム形式で掲載されています。PMPの資格取得を目指す人や新規プロジェクトに参加した人におすすめの1冊です。
▪著者:飯田剛弘、奥田智洋、國枝善信 ▪ページ数:256ページ ▪出版社:翔泳社 ▪発売日:2022/02/07
【参考】:PMBOKはじめの一歩 スッキリわかるプロジェクトマネジメントの基本
プロジェクトマネジメント中級者におすすめの本
続いて、プロジェクトマネジメント中級者におすすめの本を解説します。中級者向けの書籍を読むことで、トラブル時にも対応できたり問題のある部下にも対処できたりするでしょう。
プロジェクトリーダーとしてキャリアアップしたい方や、マネジメント関連の資格を取得したい方におすすめの書籍をまとめました。
外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント
外資系コンサルで働く著者が培った、実用的なマネジメント技術をまとめた1冊です。リーダーの立ち振る舞い方やプロジェクトの進め方などが詳細に書かれており、外資系に勤める方以外にもおすすめできます。また、プロジェクト序盤に注意すべきことやプロジェクトの着地のさせ方など、各プロセスごとのコツも伝授しています。
▪著者:山口周 ▪ページ数:232ページ ▪出版社:大和書房 ▪発売日:2016/03/25
予定通り進まないプロジェクトの進め方
本書は、プロジェクトが予定通り進まなかった場合の対処方法を教えてくれます。設計に不備があったり、納期の変更を顧客から要求されたり、思わぬバグが発生したりとプロジェクトは予定通りにはいかないことが多いです。そのような場合にどのようにリカバリーしていくのか、実用的なノウハウが解説されてあります。このような現実的な目線での本は珍しいでしょう。
▪著者:前田考歩、後藤洋平 ▪ページ数:252ページ ▪出版社:宣伝会議 ▪発売日:2018/03/28
【参考】:予定通り進まないプロジェクトの進め方
困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント
本書は、部下の力を最大限発揮させるにはどうすれば良いかが解説されています。プロジェクト内に生産性の上がらない部下がいる場合、多くの上司は叱咤激励しようとしますが、本書は部下に感謝の気持ちを伝えることで能力を上げさせる方法を推奨しています。「共感の力」によって部下を育成するマネジメント手法は汎用性があるのでおすすめです。
▪著者:中田仁之 ▪ページ数:232ページ ▪出版社:ユサブル ▪発売日:2018/01/25
【参考】:困った部下が最高の戦力に化けるすごい共感マネジメント
最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと
本書はリーダーシップとは何かがテーマとなっており、マネージャーとリーダーの違いなどについて明確に解説されています。各事例ごとにどのように行動するべきか具体的に書かれており、プロジェクトマネジメントを行う上でも参考になるでしょう。
▪著者:マーカス・バッキンガム ▪ページ数:320ページ ▪出版社:日本経済新聞出版 ▪発売日:2006/01/25
【参考】:最高のリーダー、マネジャーがいつも考えているたったひとつのこと
本物のリーダーは引っ張らない チームをつくる4つの感情スイッチ
本書は、これからの時代に求められるマネジメント手法を学べる1冊です。IT業界は変化が激しく古い技術がすぐに使われなくなるため、部下の方が現場で使われる技術に詳しいことも多いです。そのような状況下で、PMはどのようにチームを引っ張るべきか具体的な方法が解説されています。
▪著者:河合太介 ▪ページ数:298ページ ▪出版社:講談社 ▪発売日:2018/11/28
【参考】:本物のリーダーは引っ張らない チームをつくる4つの感情スイッチ
Project Management進化論 クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント
TOCの提唱者である故エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱した「クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)」を根幹としており、プロジェクトマネジメントの理論や手法を分かりやすく解説している本です。プロジェクトマネジメントに悩むリーダーや部長クラスを対象にしています。
▪著者:後藤智博、渡瀬智、西郷智史 ▪ページ数:200ページ ▪出版社:プレジデント社 ▪発売日:2022/01/28
【参考】:Project Management進化論 クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント
遅延ゼロのプロジェクト・マネジメント講座――納期に追われるプロマネとリーダーが読む本
遅延やトラブルのないプロジェクト運営を目指すべく、プロジェクト運営においてあるべき姿ややるべき行動などをまとめ、さまざまな現場に則した形で解説している書籍です。リスク理論・納期遅延のメカニズム・時間と品質のマネジメントなど、明日から役立つ情報が掲載されています。
▪著者:木村哲 ▪ページ数:208ページ ▪出版社:技術評論社 ▪発売日:2021/01/22
【参考】:遅延ゼロのプロジェクト・マネジメント講座――納期に追われるプロマネとリーダーが読む本
プロジェクトマネージャーの本を読むときに意識すべきこと
最後に、プロジェクトマネージャーの本を読む際に意識すべきことを解説します。ビジネス本は漠然と読んでも身にならないことも多いので、コツを意識して読むことが重要です。
線を引きながら読む
共感できる箇所や要点だと思う箇所に線を引きながら読むことで、より内容が頭に入っていきやすくなります。漠然と読んでいると重要な箇所を読み飛ばしてしまいがちですが、手を動かしながら読むと集中して最後まで読み通すことが可能です。最近は紙の本だけでなく電子書籍でも線を引くことができるので、重要な部分は線を引きながら読んでみましょう。
本に書いてある実例は実践してみる
プロジェクトマネジメントの本には「こういう場合はこのように対処する」といった実例が書かれている場合がありますので、そのような場面があったとき実践してみることをおすすめします。実践してみてはじめて分かることもあります。「ここはもっとこうした方が良い」というのも見えてきて、マネジメントの質を徐々に上げていくことができるでしょう。
何冊か並行して読む
プロジェクトマネジメントの本は何冊か並行して読むのもおすすめです。本によって書かれている内容は異なっており、稀に真逆のことが書かれているケースもあります。どれが自分に合うか判断するには、1冊だけでは足りません。何冊も読んでさまざまな意見を知った上で、自分に合った最適なものを選択しましょう。
プロジェクトマネジメントの本を読んで上流工程にキャリアアップを
本記事では、プロジェクトマネジメントのおすすめの本を紹介しました。部下に指導する際やスケジュール管理を行う際に、どういった本を参考にすべきかお分かりいただけたかと思います。
書籍にはプロジェクトマネジメントのノウハウが凝縮されており、着実にスキルアップすることが可能です。PMやPMOは高年収を得られる反面、責任が重いポジションであるため、本を参考にノウハウを学び、実践を繰り返してプロジェクト成功を目指していきましょう。
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