Pythonは平易な文法とシンプルなコードで、プログラミングの初心者にも学びやすいのが特徴です。今話題のAI関連の開発では、欠かせない言語として注目が集まっています。Pythonに興味があり、これから進みたい分野でPythonが役に立つのかどうかを知りたいという方に向けて、Pythonの用途について解説します。
【参考】Python.org
新しい言語のイメージが強いPythonですが、実はその歴史は古く1991年にオランダのグイド・ヴァン・ロッサム氏によって創り出され、リリースされました。
当時グイド氏が参加していた分散システム開発プロジェクトでは、開発が思うように進みませんでした。その打開策として、シンプルかつ使いやすい言語であるPythonを創り出したのです。
Pythonの読み方は「パイソン」で、ニシキヘビのPythonと同じスペルです。Pythonのネーミングは、グイド氏が好きだったTVのコメディ番組『空飛ぶモンティ・パイソン(Monty Python's Flying Circus)』に由来します。
ソフトウェアの品質評価や追跡を行っているオランダの「TIOBE Software」の2022年1月版「TIOBEインデックス」では、プログラミング言語の人気ランキングで「Python」が1位を獲得しています。2位はC、3位はJavaとなっており、定番のプログラミング言語を抑えて2年連続1位となっています。
【参考】index | TIOBE - The Software Quality Company
元々Pythonは統計処理や数値計算などを得意とし、AI開発分野の機械学習・深層学習(ディープラーニング)・データ解析処理などで利用されることが多いです。さらに、Webアプリケーション開発でもよく利用されており、世界でも有名なYouTube・Instagram・DropBoxは主にPythonで作られています。
また、最近ではWebアプリの開発でPythonのシェアが急上昇しています。その理由は、Webアプリは改変の頻度が高いため、読み書きしやすく少ないコードの記述で開発できるPythonが適していること、C言語との相性が良いことなどが挙げられます。
Pythonの利用範囲は幅広く、ほかにもゲームアプリの開発やデスクトップアプリの開発にも活用されています。
Pythonは汎用性の高いプログラミング言語であり、シンプルで使いやすいことから様々な用途で利用されています。ここでは、Pythonでできることと具体例について解説します。
Pythonは、AIに関わる機械学習や深層学習の開発に適したプログラミング言語というイメージが強いです。しかし、元々はWebサービスの開発分野で使われることが多く、特に大規模Webサービス分野において顕著な成果を上げています。Pythonによる開発事例では、YouTube・Dropbox・Instagram・Pintererstなどがあります。
PythonはWebアプリの開発に関するフレームワークやライブラリが充実しており、これらを活用することで更に開発の生産性を向上させています。またWebアプリは改変の頻度が高いため、コードがシンプルで判読しやすいことが重要な要素となりますが、シンプルで判読しやすいPythonはまさにその条件を満たしています。
Pythonは「AI = Python」というイメージが強いです。AIと聞くと、SF映画の影響からヒューマノイド型のロボットがイメージされますが、実は身近なところにAIが溢れています。以下はAIの一例です。
・Googleの検索エンジン
・画像認証
・SiriやAlexaの音声認識
・車の半自動運転(プロパイロットなど)
普段の日常生活にAIが多く使われており、AIは身近な存在であると言えます。
Pythonが得意とするAIでは、ビッグデータの処理が重要です。ビッグデータには大量の画像・Webページ・人物の画像などがあります。Pythonにはデータの大量処理に関するフレームワークがあり、効率的にAIの開発ができます。
データ分析工程は大きく分けると「クローリング(収集)」「スクレイピング(抽出)」「データ前処理(収集したデータの整理)」の3つがあります。それぞれの工程にライブラリが用意され、Pythonによるデータ処理や分析の助けとなります。
AIでは大量のデータを効率的に集める必要があります。Web上にある大量のデータを抽出するには、Pythonの特徴でもある「自動化」が効果的です。Pythonには自動抽出に関するライブラリがあり、AI開発のベースとなるビッグデータ収集に手間暇かける必要がなくなります。
例えばAmazonや楽天などは何千万、何億というユーザーを抱えていますが、AIを活用することでユーザー情報やユーザーの行動を抽出し、マーケティングやコンテンツ改善に役立てることができます。
ビットコインで一躍有名になったブロックチェーン業界でもPythonは活用されています。ブロックチェーンは「分散型台帳技術」とも呼ばれ、分散型のコンピュータネットワーク上に取引に関するすべての情報や履歴を記録するものです。ブロックチェーン技術は暗号通貨の領域以外にも、様々な分野で応用が期待されています。
・スマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組み)
・トレーサビリティ(商品の購買追跡や履歴の保存)
・本人確認、身分証明の簡略化など
上記のような技術によってインターネット社会は根底から変わる可能性を秘めており、Pythonはブロックチェーンの開発分野でも最重要言語となっているのです。
ここまでPythonの用途について述べてきましたが、様々な分野でPythonが活用されているということが分かったと思います。では、以降でなぜPythonの人気が高まっているのかについて説明します。
Pythonの人気の理由として、コードが少なくシンプルで書きやすいことが挙げられます。Webサイト・Webアプリケーションによく利用されるJavaと比べると、予約語の数がJavaの半分以下の35しかありません。覚えることが少ないため、初心者でも習得しやすい言語となっています。
Pythonは環境構築が簡単なことも人気の理由です。Pythonに対応しているOSとネットワークがあれば、すぐに開発・動作環境を構築できます。
Pythonの公式ホームページにアクセスすると、Pythonの環境構築のためのプログラムをダウンロードできます。画面の上部のメニューから「Download」にマウスを合わせるとメニューが表示されるため、メニューから使用するOSに合ったPythonをダウンロードします。ダウンロードする際は、必ず最新のプログラムをダウンロードしてください。ダウンロードしたファイルをダブルクリックするとインストールが開始されます。
【参考】Python.org
Pythonはシンプルで読み書きがしやすいだけではなく、ライブラリも豊富です。シンプルでライブラリが豊富なことから、コーディングがしやすいこともPythonの大きな強みです。他人が書いたコードもすぐに解読できるため、メンテナンスやバグ修正がしやすいことも開発者にとってのメリットとなっています。
PythonはWindows・MacOS・iOS・Android・UNIXなどのさまざまなOSで動作が可能です。また、クラウド環境ではブラウザ上で Pythonをコーディングし、直ちに実行ができるサービスとして「Google Colaboratory」があります。対応しているOSが多いこともPythonの大きな強みです。
Pythonの用途は幅広く、AIの機械学習分野・ビッグデータの収集と解析・Webアプリ開発・仮想通貨のプロックチェーンなどがあります。他にもAI技術によるIoT開発・ロボット制御・デスクトップアプリ・ゲームアプリなどで活用されており、あらゆる分野にPythonが浸透しています。
Pythonのメリットは多く人気が高いですが、Pythonにもデメリットがあります。Pythonを活用できるエンジニアになりたい方は、Pythonのメリットだけでなくデメリットも理解しましょう。
Pythonはインタープリター型言語です。つまり、実行時にコンパイル(機械語に翻訳)しながら動作するため、Javaといったコンパイラ型言語と比較するとコンパイルの時間分だけ実行スピードが遅くなります。
そのため、スピードが要求されるようなゲームや、処理速度が要求される基幹システム・大規模システムなどの開発には不向きとされています。
Pythonは世界的には大変人気の高い言語ですが、日本での歴史が浅いPythonには日本語でのサポート面が不足しています。JavaやC言語と比較して、日本語のPython関係サイトは少ないのが現状です。
しかし、日本でのPython人口の急激な増加に伴って日本語のサポートも整い、教材も充実しつつあります。Pythonは元々簡単な言語であることから、日本語のサポートが少なくても学ぶ上ではさほど不自由を感じることはないでしょう。
Pythonでは同じインデントを1つのまとまりと認識するため、インデントを揃えることが必要です。インデントとは行頭の位置のことであり、Pythonでは行頭の位置が同じ構文を1つのまとまりとして処理します。そのため、インデントがずれているとエラーとなり、プログラムが正しく動かないといったことが起こります。
ここでは、Pythonの学習方法について説明します。比較的簡単であるとされるPythonですが、プログラミング初心者にとってはどうやって勉強すればいいのかわからない方も多いでしょう。現在では、参考書のほかにオンライン学習やスマートフォンアプリといった様々な学習方法があります。自分に合った学習方法を選んでPythonを習得してください。
仕事や学業の合間に学習するなら、オンライン学習サイトが便利です。家にいながら学習できるため、時間がない人でも効率的に勉強できます。オンライン学習サイトは種類が多く、実際にゲームを作れるものや初心者向けに短い動画が用意されているものなど、さまざまな特長があります。
無料のものもあるので「学習したいけど何で勉強すればいいのかわからない」といった方は、オンライン学習サイトから学習をスタートし、そのあと参考書で理解を深めるといった方法もおすすめです。
Pythonを学習できるスマートフォンアプリは、通勤時間や休憩時間といった隙間時間で勉強するのに便利です。忙しくてまとまった学習時間が確保できない方も、スマートフォンアプリなら毎日少しずつ勉強できます。
しかしスマートフォンアプリは便利な反面、学習できる範囲が偏っていることが難点です。基礎に特化しているアプリや、応用部分が大半なものもあります。そのため、1つのスマートフォンアプリだけで勉強するのではなく、複数のアプリを使ったり参考書とセットで勉強するのがおすすめです。
基礎から応用までPythonをきっちり学びたい方には、参考書での勉強がおすすめです。参考書は初心者向けのものから上級者向けのものまで種類が豊富で、自分に合ったものを選べます。しかし、参考書での学習は独学になるため、人によっては挫折することもあります。
挫折しないためには、1冊目に簡単な内容の本を選び基礎を学びます。基礎知識がついたら、2冊目以降は応用編の参考書で実践的な使い方を勉強するという流れにすると良いでしょう。挫折しないためのポイントは、わからないことをそのままにせず、すべて理解してから次に進むことです。
Pythonの基礎から実務で通用する開発スキルまで学びたい方は、プログラミングスクールに通うと良いでしょう。プログラミングスクールでは様々なカリキュラムが用意されており、自分に合ったペースで学習できます。また対面式のためわからないことはすぐ質問できるため、疑問点をすぐ解決できるのも魅力的です。
しかし、学習サイトや参考書などに比べると費用が高いのがデメリットです。プログラミングスクールによっては無料体験や無料相談できるところもあるため、内容をしっかり確認してから入会するかどうか検討しましょう。
Pythonの人気の秘密、Pythonの用途については理解されたと思います。では、Pythonの将来性やPythonエンジニアとして活躍できる可能性は高いのでしょうか?エンジニアの皆さんには気になる点でしょう。
結論から言うと、Pythonには将来性があり、Pythonエンジニアの活躍の可能性は非常に高いと言えます。ここではPythonの将来性と、Pythonエンジニアの活躍の可能性について解説します。
Pythonエンジニアに対する求人状況を見ると言語別求人件数ではPythonはJavaやPHPの後塵を拝していますが、Pythonの求人件数は急激に増えています。その背景にはAIやDX、IOTブームがあると考えられますが、求人数の増加は将来性の高さを意味しています。
Java人気は依然として高いものがあります。しかし、Javaエンジニアは非常に数が多く、案件が豊富でも年収面では頭打ちという指摘もあります。Javaを取るか、Pythonにするか悩むところですが、できれば両方マスターすることをおすすめします。
第1言語のC言語やJavaに加え、第2言語としてPythonが扱えれば重宝されるでしょう。フルスタック・エンジニアも選択肢として検討してください。マルチ・バイリンガルが活躍しているのと同様、エンジニアの世界でもマルチ言語エンジニアへの期待はさらに高まっていくことでしょう。
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから
アンドエンジニアへの取材依頼、情報提供などはこちらから